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投稿者:健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一気に読み終えた。面白かった。この時代の概説書は類書があまりなく、一般向けの書籍としても貴重だと思います。大学での講義を意識して、とても読みやすい構成になっています。
江南とそこから広がる水運で繋がる世界の話と共に専制国家と対置する民衆・アウトローの話についても著述
2020/02/20 14:33
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
劉邦は咸陽を落とした際に蕭何を使って秦の統治制度を支える図籍・文書を抑えた。長安のある帝国の西半分は郡県政、東半分は封建制とする現実主義的な郡国制をとったのは、旧六国への配慮だったが、功臣たちを王として処遇した後は、徐々に勢力を削ぎ(狡兎死して走狗煮らる)、劉一族を王に据える。やがてその王たちも封土を減らされ、反発した諸侯は呉楚七国の乱を起こす。アウトローの世界を感じるために副読として水滸伝は欠かせないな、と感じた。中国社会と欧州・日本社会との違いについても述べられていて改めて気付かされるところもあった。『侯景の乱始末記 南朝貴族社会の命運』(吉川忠夫、志学社)と一緒に読むと興味深い。
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史書、それも中国史の書籍は星の如くあります。本シリーズは、単にコンパクトで読みやすいだけでなく、歴史の縦と横を考えて構成されているのが良いです。歴史の縦は、時間の流れです。横は空間的(地域的)広がりです。本書は、シリーズ第2巻ですが、宋あるいは南宋(横)がメインでそれに至る歴史(縦)も説明されており分かりやすいです。第1巻の唐の時代などと重なることがありますが、また違った視点で説明されているので、復習にもなります。
江南の発展に由来する中国社会構造の独特さ
2020/03/08 17:43
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投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国社会の特殊性として一君万民的な社会が未だに続いていること、日本の村落や西洋のギルドのような一定の法治共同体が発達せず社会的流動性が高いこと、従って真の民主主義がないこと、一方人民は個々には極めて逞しく活力に満ちていることが指摘されている。中国の統治は中原から江南に次第に広がるが、実質的な統治権力は地方の郷党にあった。ただ郷党内は利益で結びついており、西洋の教会や日本の天皇のような権威はないからいざと言う時は脆い。その代わりに幇と言う横の繋がりが発達する。こうした中国社会の特殊性を江南を舞台に歴史的に叙述しており大変勉強になった。中国と言う国は一筋縄ではいかない。
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時系列ではない切り取り方で読む中国の歴史、第2弾。
そもそも中国史をよく知らない自分にとっては学ぶところが多く、かつマージナルな領域についても掴むことができるありがたいシリーズだ。
この第2弾は目まぐるしい政権交代による変遷を軸としながらも、市井におけるボトムアップ的な変化について語られる。
強烈なトップダウン、という印象のある中国だが、ここで見られるのは実に自由主義的な国民のありかただ。
歴史というものをおさえておくことで、現在の中国を読み解く際の目線も変わってくるだろう。
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備忘録メモ
中国の歴史を、①国家が垂直的・一元的な君臣関係を社会の末端まで貫き、横つながりを断ち切ろうとする中華帝国の「国づくりの論理」と、②それに対する、民衆が広げていった、いざという時に頼りに出来る仲間との間に横つながりの連携、「人つなぎの論理(幇の関係)」という2つの軸で読み解く。
「規制もしないが保護もしない」という中華帝国の王朝のあり方は、なかなか面白いし、「上に政策あれば、下に対策あり」という中国民衆のしたたかさも、今につながる。
相続のあり方が、家族のあり方、ひいては、社会のあり方につながっているというのも面白い。トッドの話にも通じるものがある。
今の中国を理解するうえでも、参考になりそうな軸を得た感じ。
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江南が発展するプロセスを主に政治的・経済的な面からまとめており、中国史における江南の役割を知ることができます。東晋における経済発展や中華王朝の正統性を確立する制度設計、それらの北魏への影響、そして隋唐への統合に至る過程は、南の意味がいかに大きいかを感じられます。また、唐後期から五代十国時代を経て北宋に至る過程で、中原の国家が江南の経済力を求めることで、「江南経済を基盤にして北方遊牧国家に対抗する」という政権の構造が確立したという点も興味深い。
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中国って、ヨーロッパよりも国土も人口も多い。歴史の叙述はどうしても統治機構の特徴や推移になりがちだけど、本シリーズは、中国の多様性にフォーカスする。日本の教育現場で示される中国って。実は彼の国の1/4の領域でしか語られていない。本書は統一国家はあまり出していないけど、文化と産業を形成してきた江南地区を中心に中国史をみていく。とっても新鮮。
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〈シリーズ中国の歴史〉の第二巻。
本シリーズは、巨大な中国、多元多様な中国の歴史を、グローバル化の現代にふさわしい形で叙述していくことを目指している。
本書の射程は、古代から南宋末に至る、揚子江周辺の江南地域を巡る歴史である。
これだけ長期にわたる時間軸なので、どういったところにフォーカスを当てるかがポイントとなるが、魏晋南北朝時代から、隋唐の統一王朝を経て、五代から北宋、南宋へと至る政治史上の主要な出来事には触れつつも、古典国制の受容と変容、南北朝時代の貴族制、宋代の科挙官僚の登場の意義、江南の農業、商業の発展状況等が、分かりやすくまとめられている。
特に、中国における中間団体の不存在が社会的流動性を高め、人つなぎの論理として、個人間の信頼関係の連鎖=「幇の関係」を作ってきた、そしてそれは日本やヨーロッパとは大分異なるものである、との指摘はなるほどと思った。それが、歴史の進み方から、社会構成の違いにも影響しているのかもしれないと思われるからである。
現在、中国においては、発掘等による出土資料の増加に伴い、中国史が盛況を来し、歴史の書換えも進んでいるという。そうした最新の成果にも一部触れることもできて、大変ありがたい。
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シリーズ中国の歴史の第2巻。第1巻では先史時代から中唐までの時代を扱っているが、本巻は南に目を向け、長江流域の古代文明から南宋に至る経済発展のあらましを語る。一元的な君臣関係を社会の末端まで貫く「国づくりの論理」と、同質的な集団が郷党や朋党、あるいは任侠集団など「人つなぎの論理」という2つの旋律をとおして、中国の歴史に新たな視点を与えてくれている。
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中国の通史をあつかうシリーズの一冊として宋代までの江南史を担当しているのだが、単なる地域史にとどまらず、中国という国の成り立ちにせまるようなスケールの大きい論考。新書でこういうのが読めるのは嬉しい。
あとがきによれば、士大夫、農民、アウトローのいずれにも共通する「人つなぎの論理」を表す言葉がなかったので「幇の関係」なる造語を提起したそう。そんなに大胆に要約していいのかちょっと心配になるところもあったが、やはり複雑に絡まった事象をスパッと切り分ける補助線を示すのが学問の力というものだろう。読んでみて腹に落ちた。
しかし、ここで描かれる国家と社会が乖離していて、社会的流動性が高い中国の姿は、ほぼほぼ現代社会と同じものである。ポスト近代社会での議会制の機能不全は中国史研究者には既視感があるとのことで大変に興味深い。
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前巻と重なる時代も多いが、視点を南に置くだけで印象が変わる。三国志で言うところの呉に当たるエリア。中原とは違い、海洋進出も含め全方位外交をしているのが印象的。
そして、中原から夷狄と見られていた江南地方が時代を経ていく中で古典国制の継承者となっていく経緯が語られている。
また、”一君万民”(国づくりの論理)と対立するのではなく相互補完してゆく”幇の関係”(人つなぎの論理)という人間関係に着目すると、現代まで続く中国の形が見えてくる。
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三国志を読んでいて、江南には何となく「しぶとい」イメージがあった。その理由を少し理解できたと思う。江南は中原とは地形や気候が異なり、交通の仕組みも異なる。孫呉の時代には海を通って朝鮮と交易していたというのが印象的だった。難しくて、読むのに時間がかかった。