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これからの時代に必要な説明力を高めるための本です。
ネットでのSNS、動画配信などの普及もあり、個人が情報発信する機会は多くなりました。
逆に言えば、情報発信における競合が増えたということでもあり、その中で生き残るには、説明力の高さが重要になっています。
相手が理解できない場合の原因を考えながら、7つのステップで、どう説明していけばわかりやすくなるかを、具体例の紹介を交えて教えてくれます。
普段、情報発信や会話をする中で、相手の反応が芳しくないと感じている方が、その解決のヒントを得られる1冊ではないでしょうか。
【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
「自分の興味・関心事を、その分野についてあまり知らない人にわかりやすく説明できれば、それだけで希少性が際立ち、情報の価値が上がる。必要となるスキルは、『難しいことをわかりやすく伝える説明』。」
「相手が深く理解し、相手が自分の知識と組み合わせて意見を言い、そこで議論が生まれ、また新しい知識が生まれる。AIにはできない。価値創造を、自分の説明から生み出すことができる。人にしかできない知識の創造こそがより一層の価値となる時代が、もうそこに来ている。」
「相手にわかってもらえない原因は、相手が説明を聴くための態勢をとれていない、そもそも自分自身が内容をよく理解していない、相手の持っている知識を自分が把握していない、の3つがある。」
→これからの時代は、AIとの差別化が生き残りのカギになるかもしれません。説明力を高め、相手と深い議論をすることで新しい知識を生む。これは確かにAIにはできないかもしれません。説明が通じない場合は、その原因がどこにあるのかを探ることが必要不可欠です。相手がわかってくれないのではなく、自分が相手の関心や説明対象を理解しきれていないことが説明が通じない原因となっていることは多いというのは、振り返ってみるとそうだと思います。
【もう少し詳しい内容の覚え書き】
・個人が情報発信しやすくなった社会では、専門分野での発言を、そうでない人に伝える機会が増えたが、これから活躍するには、それをわかりやすく伝える必要がある。どんなに一生懸命に身に付けた知識やスキルも、相手がわかってくれなかったら、ないに等しい。
・自分の興味・関心事を、その分野についてあまり知らない人にわかりやすく説明できれば、それだけで希少性が際立ち、情報の価値が上がる。必要となるスキルは、「難しいことをわかりやすく伝える説明」。
・デジタル時代において価値を生み出すための創造力を伸ばすには、頭の隅々まで浸透していく学習が必要不可欠。その学習は言葉や文字による、人と人とのコミュニケーションの中で生まれていく。その学習を促すコミュニケーションが、「頭のいい説明力」。
・相手が深く理解し、相手が自分の知識と組み合わせて意見を言い、そこで議論が生まれ、また新しい知識が生まれる。AIにはできない。価値創造を、自分の説明から生み出すことができる。人にしかできない知識の創造こそがより一層の価値となる時代が、もうそこに来ている。
◯なぜわかってもらえないのか
・自分と相手の知識や理解度のギャップを埋めるには、「理解の階段」を作るしかない。いくつかのステップに刻むと、その「つながり」が見えてくる。ギャップが大きいときは、できるだけ1つあたりの段差を小さくし、段差をたくさん刻む。
・相手にわかってもらえない原因は、相手が説明を聴くための態勢をとれていない、そもそも自分自身が内容をよく理解していない、相手の持っている知識を自分が把握していない、の3つがある。
・「わかる(理解する)」という行為は、「すでに持っているものと新しいものをつなげる」作業、情報同士のネットワーク化である。説明の中で新たに追加する情報と、相手がすでに持っている情報(知識)を必ずつながなければならない。
◯興味をひく(ステップ1)
・説明の前に、相手の「欲」は何かを徹底的に考えるクセをつける。聴き手が今持つ欲にかぶせ、それ以上の大きな欲にすると効果が大きい。
・相手の好奇心を刺激するには、①相反するイメージの言葉を同時に使い、一文に「矛盾」を入れる。②これまでオープンになっていないことを匂わせ「秘密」を醸し出す。人は変化するもの、希少性に興味を持つ。
◯聴き手の知識や認識にアクセスする(ステップ2)
・相手にしっかりわかってもらうための大前提として、これから伝える新情報につなげるための知識が相手の頭の中にないといけない。相手の頭の中で新たな「情報のネットワーク化」を起こすことが大事。
・手順は、徹底した相手のプロファイリング→実際の相手の知識や理解度のレベルを知る→相手の知識や理解度のレベルと到達ラインのギャップの見積、を行い、その後、そのギャップを埋める説明をする。
・特に「相手の興味関心は何か」が重要。相手に過度に期待すると、自分と相手のズレになかなか気づけなくなることに注意する。相手にしっかりわかってもらいたいという情熱を持っていると、その思いが相手に伝わり、結果的に相手の聴く姿勢を前向きにし、相乗効果で理解が深まる。
・相手に質問できる状況であれば、そこから始め、相手の持っている知識を言語化してもらう。①現状把握(どういうもの?)、②定義・分類・フレームの明確化(そもそも何?)、③全体と部分の把握(どこに位置する?)、④因果関係の理解(なぜそうなった?)、⑤目的と手段の判断(なぜやるの?)、⑥抽象化と具体化(つまりは?)、⑦エビデンスとメカニズムの提示(証拠、しくみは?)、の7つの質問で理解の深さを測る。
◯目的を示す(ステップ3)
・まず、本来の「目的」をちゃんと示し、目の前でやっている「手段」の本質的な価値をしっかり伝える。本来、目的と手段は連続的につながっているが、説明側が切り分けて話すことで、相手がしっかり理解してくれる。「目的」を「意義」と置き換えると、相手が自分自身を疑うリスクを回避できる。
・目的が明確な方が、手段(行動)は定着しやすいので、行動に変化が起こりやすい。
◯大枠を見せる(ステップ4)
・大枠(アウトライン)を説明に入れる目的は、理解してもらいたいことのフィールドを明確にすること、全体を俯瞰させることの2つ。相手の頭の中に説明を��解しようとする準備が整い、わかってもらいたいゴール(到達ライン)までの距離や道筋がはっきりする。
・全体を見渡しながら、相手にしっかりわかってもらいたいものの集合(全体と部分)、時系列(進捗)の2つを盛り込むと、相手の理解度は向上する。
◯つなげる(ステップ5)
・人は本能的に、関連づけたがる生き物。因果関係(原因と結果)、メカニズム(AのしくみはBである)、帰納法(バラバラのものをあるルールでまとめる)、周辺知識(外堀を埋める)、の4タイプを盛り込む。
・因果関係を、相関関係(Aが変化した時、Bも変化)と混在させないよう注意する。直接的な原因と結果の関係性を正確にわかりやすく伝える。「結果」を説明に入れた説明は、時間軸を未来に移す。
・何かのキーワードを説明する際、キーワード自体の語源や原義、社会情勢などの歴史的背景をあわせて説明すると、聴き手がより深く理解できる。
◯具体化、事例、証拠を示す(ステップ6)
・難易度の高い内容というのは漠然としており、頭の中に絵を描きにくい。具体化、事例、証拠の3つで、具体的なイメージを相手の頭の中に描くことができれば、わかりやすい説明になる。
・相手にわかってほしいことがあれば、証明する「動かぬ証拠」を普段から意識的にストックしておく。客観性や信頼性がある程度担保された公的機関が出しているデータ(特に数値)、自分の実体験や現場の情報、という2種類の一次情報は価値が高い。
◯転移(ステップ7)
・すでに身につけた知識や考え方を、他のシチュエーションで適宜使うことができるのが、わかってもらう説明の最終形。時間は有限であり、人が人に説明できる回数には限界がある。できるだけ少ない情報で、より多くのことをわかってもらうということが、情報が溢れている今の時代に大きな価値を発揮する。
・学んだ知識や理解したことをうまく転移させることができれば、思いもつかなかった新しいアイデアや発想をどんどん生み出すことができる。
・転移を、説明の中で意図的に相手の中に起こさせるには、まず説明する側に幅広い教養が求められる。特に、価値の高い「遠い転移」は、他のフィールだから引っ張ってくるか、他のフィールドに移していくかという作業が必要。
◯オンラインでの説明に強くなる技術
・聴き手にとっては、集中力の維持が負担となる。聴き手にあれもこれも身につけさせようと考えるのではなく、オフラインでの説明よりも成果を絞る。聴き手が身につけるべき能力に優先順位をつけ、高いものに絞って説明をデザインする。