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切ないというか虚しいというかそんな感じだった。自分が取り替え可能な存在。信じたくはないけどそうなのだろうなと思う。
どんなに技術や才能があろうが、周りから評価されたり認められてはじめて価値が出るものなんだなぁ〜
世間の価値観ばかりに合わせて生きていくと息苦しくなるだろうな。
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同名の曲を気に入り、興味を持ちました。
主題に迫るのは困難でしたが、
飛行機のモチーフや登場人物の丁寧な描写から、
読了後に空しさと爽快感という対極的な印象が残りました。
正しい解釈ではないと思いますが雑感。
飛行機や、コンピューターのように、この世界には、求められている機能を果たし、社会の支えとして動いているものが数多く存在しています。人間にもまた、周囲からの期待に沿った働きぶりを発揮して、誰かの日常を支えていると言えるでしょう。しかし、誰かの役に立つモノが出来上がるには、幾多もの試行錯誤と失敗品があるものです。
失敗品の存在を私たちは特に意識することもなく生活していますが、
そこには実現不可能なまでの設計者の熱意や希望が込められているのだと思います。
失敗品もまた、一人の人間が命を懸けて作り上げたものであることに代わりはないのです。
客観的に見れば地に足がついていないようにも見えるような、その情熱、執着こそが人間を人間たらしめるのかもしれません。
実用性ばかりに目を向けるのは虚しい。
登場人物の行動の理由、
言葉に隠された真意、
読書習慣がない自分には難解なところがあったので、
再読したいと思います。
以下ネタバレ
田久保とニムロッドが姿を消した理由が自分の中で釈然としていません。
社会の部品として生きることに抵抗があったのが一因であろうと思うのですが、
なぜ出会ったあとのあのタイミングで決意したのでしょう。
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芥川賞受賞作品
仮想通貨を通して、実体のないものの寂しさ、堕胎、離婚した外資系金融機関で働く彼女、そして鬱になり、小説家の夢を諦めてしまっている荷室仁……
それぞれの世界、駄目な飛行機、バベルの塔、なかなか理解に苦しむシーンが多かったが(^^;
読後感は、寂寥感と爽快感かなぁ
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サーバー機能を提供する企業でビットコインの採掘を任された主人公。
駄目な飛行機の説明と、自作の小説をメールで送り付けてくる友人、ニムロッド。
主人公は恋人の田久保紀子とニムロッドへの興味を共有してゆく。
サーバーの管理業務やビットコインの仕組み、駄目な飛行機についてほんのちょっぴり詳しくなれる。あっさり読める。内容は決して濃くはないけど、存在論や貨幣論のような考察も入ってきて面白かった。星3か4で迷う。
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『まさか、自分が取り替え不可能だと思ってるの?』
という問いが印象的
個として存在する私たちは視点を変えれば大勢の中の一つでしかない。
この本に出てくる仮想通貨は人間の揶揄であり、
みんなが価値をつけるからこそ存在できる。裏を返せばそのもの自体には価値はない。
人間の存在としての空虚さをとてもうまく書いてるなと思った。
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仮想通貨のように実体のないものに価値があると信じるのが人間。ブランド、仕事、人生まで、意味や価値があると信じるからこそ意味や価値が生じる。そうした虚しさに思い悩む瞬間は誰しもあって、荷室・田久保と中本は対照的に書かれている。意味がないから生きないのか、深く考えずに生きていくのか。そういった永遠のテーマとも言える内容を、ニムロッドの小説内小説のSF要素と絡めて問いかける。読み終わって、なぜだか新しく勉強を始めようと思って本を購入した自分は、きっと現実逃避か悪あがきをしようとしているんだろう。
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昔読んでも心には残らなかった気がする。
「小難しい言葉を使っていて、よく分からない小説だな。」で終わっていた気がする。
この歳になったからかは分からないが、
読んだ直後は久しぶりに自分の考えを頭の中で整理してた。瞑想してた。自分と久しぶりに会話したというか。
主題が読み手によって変わる本な気がする。
比喩的で曖昧で物語もフワッと終わる。
そこが、考えさせられて、面白い。
私が感じた主題は、「日常の空虚さ」「特別でありたいともがく姿」「実は何もない自分自身」こんな感じ。
上の言葉はネガティブなイメージはなくて、ただ事実として作者が捉えてる事を描いてる感じ。
だから、読み手によって受け取り方が変わるんだと思う。
登場人物はサーバー保守をやっている「僕」、その先輩で友人の荷室=ニムロッド、「僕」の恋人の田久保紀子。
「僕」は社長命令で仮想通貨の採掘を業務指示される。
仮想通貨は普通の通過と違い、信頼性という概念はない。日本という国が保証してるから成り立つ円だが、それと違い仮想通貨はただ存在しているだけ。ただ求める人がいるから価値が発生する。
ニムロッドは「僕」の1つ上の歳で会社の先輩。仕事と並行して小説を描いている。並行してと書いてはいるが、本人にとっては小説執筆がメイン。
新人賞に3度応募し、3度とも最終選考まで残ったが全て選ばれず、恐らくそれが原因で鬱になる。そして、「僕」と同じ東京支社から名古屋支社へ異動する。
田久保紀子は39歳、有名な外資企業に勤務。数ヶ月に1回は出張で海外へ行くようなキャリアウーマン。離婚歴があり、元旦那とは子供ができたがおろす決断を1人で下す事になったせいで亀裂が入り、今でもその傷が心に残っている。
話は3人の登場人物の会話や日常に、ニムロッドの書いている小説の内容を挟む形で構成されている。
空虚さやから回るイメージは、仮想通貨・ニムロッド・田久保紀子・ニムロッドの小説に出てくるダメな飛行機コレクションで感じるんだと思う。
ダメな飛行機コレクションというのは、今までの歴史上、今ある飛行機が出来るまでに造られた飛行機のこと。原子炉を積んでいたり、縦に飛んだり、そもそも飛べなかったり。様々な飛行機が登場する。「失敗があるからこそ今があるんだから、ダメな飛行機コレクションは愛らしい。」と書いてあった気がする。
荷室が書いている小説の中の人類の王ニムロッドはダメな飛行機を集めている。
小説の中での人類は寿命がなくなっている。寿命を無くすか、死を選ぶか人間は2択を迫られ、寿命を無くした人間のみが小説では生きている。
小説のニムロッドも寿命はない状態。
ニムロッドは自分の作った仮想通貨のおかげで資産は有り余り、昔から作りたかった世界一高い雲の上に突き出るくらい塔を建て、その中にダメな飛行機をコレクションしてる。
寿命の無くなった人類は次第に自分の欲望を満たし尽くして、より効率的に生きるためにひとつになり、人間であることを辞める。仮想通貨を運営する"あのファンド"という何かと一体化するらしい。
ここがすごく怖い。欲望を満たした人間は死ぬか個を無くすかしかないらしい。
ニムロッドと田久保紀子は、己の無力さに虚さを覚え、それが満たされない人生を過ごしているという自覚を持って生活してる。何のために自分が小説を描いているのか、働いているのかよく分からなくなっている。代わりはたくさんいると。
「僕」は自分を唯一無二と信じ、自分の周りを大切に思いながら過ごしているように感じる。
(→どちらかと言うと鈍感に生きているからそこまで深く考えてないと言えるかも。)
「僕」については詳しく小説内で触れてないが、ニムロッドと田久保紀子をより深く描写する事で対比させ、そう感じさせてるのかもしれない。
小説の中の人類の王ニムロッドは、帰還設計が考えられていないダメな飛行機で太陽に向かって飛んでいく最後で終わる。人間を辞めることはしない。
すごく小さな距離かもしれないけど、太陽に向かって飛び続けること、人間で居続ける事を辞めることは出来ない。
それがニムロッド(反逆者)が決めた事らしい。
空虚さなんて誰もが味わったことがある気持ちだと思う。自分が何者かも分からない。情報がありふれる現代で自分の気持ちも分からない。
色んなものに振り回されて、ある意味檻の中に自ら入っている感じ。
そんなイメージを小説で伝えたかったんじゃないかと思う。
あとこの小説で印象的だったのが、最後の方。
「僕」と付き合っている田久保紀子がニムロッドの小説を読んで気に入り、タイミングがあった際に3人で通話した後の部分。
「僕」は田久保紀子と連絡がつかなくなる。
そして、ニムロッドも田久保紀子もそれぞれ東方洋上にさるという描写がされている。
東方洋上にさるというのは歴史上の人物が自殺する前に残した最後の言葉らしい。結局生きて戻り、長生きするらしいが。
この3人の関係性が変わったのか、2人は東方洋上にどう去ったのかすごく気になる。一緒に去ったのか、それぞれ個別に去ったのか。
人間、そんなに大したことは出来ないんじゃないかな。歴史上に残る事が偉大ではなくて、些細な事をいかに自分事として感じ、自分の人生を過ごすかって事が私は大事だと思う。
自分の気持ちって見えづらくて、色んなものに隠されやすいから、
敏感に生きていきたいなとこの小説を読んで改めて感じた。
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こういう雰囲気ははじめて。
なんとなく読み辛く、なかなか進まない。
こんなに短い本なのにね。
僕の左目だけ流れる涙は
悲しみを含んでいると思ってしまいたくなる。
いつも何か考えているときに出ているから。
人類と一塊になりつつあるなにかの流したものかもしれない。
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「私の恋人」「塔と重力」に比べるとだいぶ読みやすかったが、この人の小説は、人類とか世界とか地球とかをあたかもひとつの生命体のように捉えていて、読み終わってから深く考えさせられるし、一度読んだだけでは理解できない気がする。
登場人物は、ビットコインの「採掘」をする僕と恋人で証券会社に務める紀子、会社の先輩で小説を書くニムロッドこと荷室。
紀子も荷室も高い生産性が求められ、効率化をよしとする現代に適応しきれず苦しんでいるように見える。紀子は、障害があることがわかって胎児を産まない選択をした過去に苦しみ、荷室はうつ病で休職したあと名古屋に異動した。
荷室が送ってくる「駄目な飛行機シリーズ」は、飛行機が完成し実用化した現代には全く価値がないもの。でもその不完全さ、ダメさは人間らしさの象徴であり、紀子はそれに癒やされ、荷室の書く小説の中でのニムロッドは高額でそれを蒐集する。
飛行機を売りにくる商人が、人類の行く末(効率を追求した果てに個であることをやめ、どろどろに一体化するという)を説明するくだりが衝撃的だった。
ラストで二人(生死は不明)と連絡がとれなくなった僕が、感情の伴わない涙を流す。彼は二人とは逆に人間らしい感情をどんどん希薄にし、機械に近くなっていくことで、何とか生きている気がしてやるせない気持ちになった。
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終始、無機質でドライでモノクロ、虚無の漂う、そして残酷なリアルさがある物語だった。
読み進めるうちに、実態としての人間が薄らいでいき、何か巨大なものに取り込まれていく危うさを覚えた。
「人間とは何か」 「すべてを手に入れたとき、人間は幸せになれるのか。人間はなぜ人間として生きていられるのか」
サクッと読み終えたけれど、後から、じわじわと迫ってくる。
私たちが生きている世界も、もしかしたらもう既に何か得体のしれない大きなものに飲み込まれつつあるのかもしれない。
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ニムロッド 上田岳弘
中本はサーバー運用会社に勤める。
ある日社長からビットコインの採掘する課の課長を任される。
そんな彼にはニムロッドという同じ会社の名古屋拠点で働く同僚がいる。彼は小説を書いている。そしてニムロッドは中本に駄目な飛行機コレクションのメールを日々送ってくる。執筆している小説も送ってくる。
中本には田久保という彼女がいる。彼女は離婚歴あり。子供をおろした経験もある。
3人を繋ぐのは中本が左目から流す涙の症状。
中本とニムロッド、中本と田久保。交互にやり取りが描かれている。その交互の移り変わりにある交差点が文章で表現されている
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直木賞・芥川賞の受賞作を今年から読んでいます。
最近は、ずっと直木賞を読んでいたので、久しぶりの芥川賞。
う~ん、よくわかりません。
登場人物は、3人。
ビットコインの作者と同じ名前を持つ中本哲史は、社長の指示でビットコインの採掘を業務につく。
恋人の田久保紀子は、前の婚姻時に妊娠しダウン症の検査をして子どもを産まないことを決意、それが原因で離婚した過去がある。
中本の元同僚、荷室仁(通称ニムロッド)は、小説家の夢の破れ、鬱になり名古屋支店の移動。中本に、謎の文章を送ってくる。
主人公の中本と2人の交流と、ニムロッドが送ってくる文章や小説を軸に、話が展開していく不思議な物語。
謎の文章は、最初、ダメな飛行機を列挙していた。
日本の特攻隊用の飛行機:桜花が書かれていて、これに意味を持たせるのかと思いきや、そうでもない。
そのうち、小説が書かれ…
主人公ニムロッドが高い塔を建てて、その屋上に、ダメな飛行機をコレクションしていく。世の人間は、不死を手に入れている。とうとう、買えるダメな飛行機が無くなる。
飛行機の売人は、言う。「人間は個であることをやめ、生産性を高めるために、個をほどき一つに溶け合ってしまった。より強く高く長く生き続ける欲望を達成するために、あのファンドと一体になった(要約)」
これって、人間の欲望を突き詰めると、滅びていくというのを示唆しているってこと?う~ん、わからない…。
解説の中で、「ニムロッド」は、旧約聖書の登場人物で、バベルの塔の建設を命じた王とされると書かれている。
文学を理解するのは、様々な知識がいるのか…う~ん、難しい…。
小説読了186冊目。ブクログ内で。
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仮想通貨・ビットコインのマイニング(採掘)や実用化に失敗した「駄目な飛行機」たち、そして高くそびえる塔といったモチーフを反射板みたいにつかいながら語られる物語。
デジタルの圧倒的な大波をざぶんと浴びせられ、そののちデジタルの破片をたくさん身体に受けたままアナログの立場で書いた小説、といった感覚でした。なんていうか、乾いていてシンプルで、それでいて割り切れないような生々しい複雑さの結び目のようなものがある。
主人公の中本哲史はIT企業の社員で、新設された採掘課の課長。運営するサーバーコンピュータの空きを使ってのビットコインの採掘を命じられる。主人公の名前はビットコインの創設者とされるナカモト・サトシと同じ名前です。このリンクがまた、この小説の乾燥した読み味に一役買っているような気がします。
恋人の田久保紀子は大手外資企業で、人には話せない企業秘密を抱えながらシンガポールへ飛んだりしながら大きな仕事をしている。
友人であり同じ企業の名古屋支社に勤務するニムロッドこと荷室仁は、小説家志望で新人賞の最終選考で3度落ちたことで鬱病をわずらい、そこからいくらか回復した状態で物語に登場する。
この中本哲史を中心としたこの三人だけの物語です。遺伝子のコードやプログラムのソースのように、小説がそれを読む人の心になにかを記載する作用を期待して小説を書いているのではないか、という仮説があります。それは夢想なのだろうけれど、この空っぽの世界を支えているのはそういった行為かもしれない、と。この部分に、僕はかなり同意しましたね。
150ページほどの中編ですが、その文体による読み心地が僕には好ましかった。帯に、「心地よい倦怠と虚無」とありますが、その倦怠や虚無は、この世界をそれまでよりも少しだけわかってしまったからこそ宿る種類のものなのではないか、と思いました。
著者の、他の作品もそのうち、読んでみたいです。
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ふっつーーに面白かった。
自分がエンジニア系なのですらすらっと内容が入ってきたのが、逆に目新しさがなかったのかも。。。
ビットコインと小説、なんだか正反対だけど、無から有を生み出すところは同じことなんだよなぁ。
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バベルの塔、ビットコイン、失敗した飛行機…それぞれのモチーフの組み合わせは選び取られてるなと思うけどストーリーとして腑に落ちるとか面白かったかと言うとそこまでではなかった。