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印象に残ったポイント
・企業は生き残りをかけて寡占を目指す
MAの目的は寡占形成にあると断じている点が印象に残った。ウェルチの#1, #2戦略ではないが、企業は生き残るために寡占形成に向かわざるを得ない。そのための一つの手段がMA。この説明は、すっきりと腹に落ちた。
・戦略は買収に従う
この変化の早い時代に、数年単位の中期計画に沿って、戦略、組織、MAを計画、実行、評価することに、違和感を感じていたが、著者の「戦略は買収に従う」という言葉が響いた。
グーグルに最初から大戦略があった訳ではなく、買収を繰り返しながら、市場を広げていったという指摘は面白い。
・MAと組織論
戦略は買収に従うとなると、戦略に従う組織にも大きな影響を与える。MA後の組織論には苦労するが、組織論、戦略論に踏み込んだ、MAの類型化は使い勝手がよさそう。
海外だけではなく、国内においても、MAを考える際、役に立つ考え方の整理になった。
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ー 企業経営のセオリーとして、買収は戦略を立てた後に実行すると考えがちである。しかし、実際には戦略と買収は相互に影響を及ぼす関係にある。
そもそも、買収は非連続な企業行動であって、計画できるものではない。たとえ、中期計画に買収による海外市場拡大を描いていても、対象会社の株主との交渉が不調に終わるかもしれないし、競合他社の手に渡ることもある。買収は企業にとって既存の成長戦略上にあるものではない。
それに、いったん買収を実行して新たな経営資源を手に入れると、競争の局面は大きく変わる。買収で市場占有率が拡大する、垂直結合で調達が安定する、生産拠点や販売網の補完が進む、現地に根ざしたブランドや魅力的な製品を開発するチームが加わる、などである。つまり、次の事業展開に向けた新たな戦力が整うことになる。よって、産業構造やポジショニングなど外部環境を重視する競争戦略論や、企業内部の組織能力に競争優位の源泉を求める資源ベースの戦略論のどちらから眺めても、買収は企業に新たな戦略を求めることになる。買収を実行した後、 業界地図を塗り替え、補強した経営資源を吟味して自社の戦略を新たにする、すなわち、「戦略が買収に従う」のだ。
過去の日本企業による海外M&Aが示すのは、買収後、悪い方向に走り出すと、想定を超える損失を被ることである。買収後に暖簾減損を計上するのは、買収前に描いた計画が実現せず、相乗効果の絵 に囚われて身動きが取れなくなった状態でもある。獲得した事業を買収前の小さな戦略や能 力に合わせるようなことをしては、成功しない。逆に成功した企業に共通するのは、買収後、外部環境に応じて自らの経営を進化させてきたことである。 ー
我が国におけるM&Aの成功事例、失敗事例を丁寧に分析した優れた作品。これは、参考になった。
理論的な分析も事例の分析もとても参考になる。
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2002〜2011年の日本企業の海外M&Aの成否割合は、139件中17件と2割に満たない
米国企業を対象とした研究によると、両利きの経営が最も必要とされるのは、企業が戦略的に新しい事業機会を狙うときに、その事業が既存の中核的な資産やオペレーションの組織能力から恩恵を得られる場合であるという。
成功した両利きの経営に共通するのは、探索を目的とする組織が、深化を目的とする既存組織の資産を活用して、それを競争優位につなげたことだという。
水平型の買収=同一製品やサービスを提供する事業を一体化し、規模を拡大すること
垂直統合の買収=三菱商事によるローソン買収や、伊藤忠商事によるファミリーマート買収など
混合型の買収=ヤマダ電機による大塚家具の買収
両利きの経営が成功するのは、新たな事業を探索する部門が、企業内で既存事業部門が有する顧客基盤などの経営基盤などの経営資源を活用するケースである。