勉強の大切さが身に染みて分かる1冊
2021/07/20 11:58
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は高校の世界史の授業。実際に出題された東京大学の世界史の論述問題計15題に、生徒たちが果敢に取り組んでいく内容です。
読み進めてみて、勉強の大切さが身に染みて分かりました。当書では東大の世界史の問題に正答を書けるようになるのが授業の目的ですが、そうなるまでには語彙力や読解力、他にも様々な頭の技術を養わなければ対応できないことが、悪戦苦闘しながら成長していく生徒たちの姿を見て強く伝わりました。これらの能力は、東大に合格するしないは別にして、養うと今後の人生に大きく役に立つことが分かりました。
東大の世界史の論述問題に取り組む。これをすることで、人間の能力は飛躍すると思いました。世界史を学ぶ意義にも気付かされました。実に奥の深い1冊です。
難解な内容ですが、ぜひ多くの方々に手に取っていただきたい1冊です。
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出てくるキーワードは知っているんだけど、、、
それを繋げてストーリーにし、同じ時代の他の大陸での出来事と、横串を刺して、、、は、自分には不可能。。。
それなりに訓練するんだろうけど、改めて東大受験の凄さを認識した。
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・東大の問題は常に「国家」を主題にしている。これは東大がもともと官僚養成学校であったことが大きい。
・現在の「国家」つまり「主権国家」は、16世紀以降の絶対主義に形成され始め、17-18世紀の市民革命によって現在の形を整えます。当たり前のようにある今の「国家」は古代からあったわけではなく、われわれ日本人が作り出したものでもない。主家国家は、近代に入って以降、ヨーロッパによって作り上げられたものである。
(ウェストファリア体制・グロティウス)p.16
・ヨーロッパ諸国の原型は、中世にある。ヨーロッパにおける中世はゲルマン民族の侵入からはじまる(375年)。
・東大の問題は「歴史は、現在の『なぜ』に答えるものである」ということを教えてくれる。世界各地にはそれぞれ独自の秩序があったが、それは欧米によって否定され、欧米の秩序に転換すべく変容が求められた。その努力の末に「国家」としての自立を実現していく。東アジアには中華の概念があったため、特に中国が変化に苦しむことになる。現在、中国はかつての威信を取り戻しつつあり、無視できない動きを撮り始めている。p76
・日本は唯一欧米の秩序にすんなり適応した国家である。よくも悪くも、日本の目は常に外を向いている。卑弥呼、遣隋使・遣唐使の時代から変わらない。ある学者は、日本の歴史を「無限の適応過程としての進化の表象」と表現している。p87
・思考するというのは、具体的なものを抽象化する、抽象的なものを具体化するという作業によって結論を導きだしていくことを言う。その際に重要なのは「語彙力」である。したがって、思考の力は言葉を知っているかどうかで決まるということになる。p 128
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歴史を専門とする大学受験塾を運営している著者による、過去東大の世界史で出題された問題を題材に、世界史の本質に迫ろうとする一冊。
私も大学受験は世界史を選択したわけですが、当時、こんな問題だったら、全く太刀打ちできなかっただろうと思わせる、難しく、深い問題に対する、考え方、まとめ方、背景などを、講師と学生のやり取りから導いています。
「東大の問題は、暗記した知識を求めるだけではない。むしろ、暗記した知識をもとにして「新しいこと」に気づかせようとする。」と冒頭で述べており、東大の問題の特色を指摘しています。著者によれば、これは、東大がもともと官僚養成学校であったことによる、としています。
また、問題を紹介しながら、日本は、「国家そのもの、そして国際社会というものに対して意識が希薄」だからこそ、「国家の発展の歴史を知ることが非常に重要」という指摘をしているとおり、問題の解答にいたる過程で述べられる、著者が考える、歴史とは、思考とはといった指摘に納得します。
東大の出題傾向や思考方法を何度も称賛するような記載があるので、少し引っ掛かる読者も多いかもしれませんが、近代以降の歴史を、これまでとは違う視点で振り返るのにいい内容だと感じました。
▼東大の問題は、暗記した知識を求めるだけではない。むしろ、暗記した知識をもとにして「新しいこと」に気づかせようとする。学生たちは、試験会場で歴史の新しい景色を見ることになるのだ。
▼「東大の問題は常に「国家」を主題にしています。どのように国家が誕生して、国家と国家が関係を結ぶ社会、すなわち国際社会が形成され、そしてその社会がどのような問題に直面し、どのように問題の解決にあたったのか、常に東大はそういった視点で問いを立てます」
▼東大の問題は「歴史は、現在の「なぜ?」に答えるものである」ということも教えてくれる。現在の問題は原因を突き止めないことには解決できない。そして原因は過去にしか見出だせない。過去を学ぶことは、現在をとらえ、そして進むべき未来を談じることに役立つ。
▼東大は学問の垣根を取り払い、ものごとを表面的にとらえることを目指している。ゆえに、歴史にも、多面的にとらえる視点を求めるのだ。
▼「日本は唯一欧米の秩序にすんなり適応した国家です。良くも悪くもですが、日本の目は常に外に向いています。これは卑弥呼の時代から、遣隋使・遣唐使の時代から、変わらないことです。とある学者は日本の歴史を「無限の適応過程としての進化の表象」と表現しています。日本は常に外に適応しようとする歴史を歩んだので、可能だったんでしょうね。」
▼東大の問題は他の難関国立大学の問題に比べ、特に「思考力」を必要とする。歴史というのは、多くの事象が論理によって成り立っている。そして、多くの具体的な事象が抽象的な枠組みによって整理されることで、様々な結論が導き出せる。思考するというのは、具体的なものを抽象化する、抽象的なものを具体化する、という作業によって結論を導き出していくことをいう、その際に重要なのが「語彙力」である、したがって、思考の力は言葉を知っ���いるかどうかで決ま
る、ということになる。
▼「戦争は人間に最も知恵を絞らせます。残念ながら、戦争が科学を発展させ、科学が戦争を悲惨なものにした、という側面があるのです」
▼ヨーロッパの歴史は戦争の歴史である。その一方で、それは平和に向けての知恵を絞ってきた歴史ともいえる。日本の歴史はこういった戦争の歴史ではない。ゆえに平和に向けての知恵を絞ってきた歴史でもない。戦争と平和に関する感度が低い自覚をもつ必要があるかもしれない。
▼東大の問題は現在に即しても出題される。歴史を見るということは現在を見ることでもあり、進むべき未来を断じることでもあるのだ。現在も時が経てば歴史になるのである。
▼最近の学生の変化
①「世界」に対する経験の多さや意識の強さ
②「現在」に対する意識の強さ
③「発信」に対する意識の強さ
<目次>
第1部 国際社会の成立
第1章 革命によって国家は生まれた
第2章 アメリカとラテンアメリカ諸国の差異
第3章 イギリスを中心に展開された「侵略と抵抗」
第4章 「抵抗」する中華世界
第5章 「抵抗」の中心にはあの国がいた
第6章 技術革新に支えられた「抵抗」
第7章 民衆と指導者たちの国際体験)
第2部 国際社会の発展
第8章 戦争の助長と抑制
第9章 世界大戦は世界を変えた
第10章 「帝国」の終わり
第11章 戦争の苦悩と惨禍・平和の解放と希求
第3部 国際社会に残る問題とこれから
第12章 冷戦で分断された国々
第13章 植民地主義の遺産
第14章 経験なきアジア
第15章 女性の闘い
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これは当たり本。
東大の実際の世界史の過去問に挑む受験生とそれを解説する講師のストーリーを通じて、その難問を解決する。
東大の世界史の論述問題は指定のキーワードを用いて600字程度に問いに対する解答を略述する。キーワードが多岐にわたっているので、一つの国・地域だけではなく、同じ時間軸の他の国・地域についても論述しなければ正答にはならない。(こういう問題だなんて知らなかった)
ストーリー仕立ての講師の解説は見事で知らないうちに世界史に引き込まれていく。
単なる暗記学習では太刀打ちできない高難易度な問題の数々。こんな問題を限られた制限時間内で解こうとする受験生は本当に感服する。
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私立文系、英語・国語・社会だけで大学受験をしました。社会は世界史を選択していました。もともと得意科目ではなかったですが、合格した年には、足を引っ張らない程度にはなっていました。
当時、東大の世界史の問題を目にしたことはありました。自分が受験するわけではないですが、興味もありましたし、英語も国語も基礎固めと実力養成の観点から取り組んだのです。国語は十二分に太刀打ちできましたが、英語はかなり苦戦、そして英語以上にどうにもならなかったのが世界史だったと記憶しています。暗記ではどうにもなりません。
もっとも、早稲田も明治も暗記だけでどうにかなる世界史の問題はなかったのですが、そのレベルではありませんでした。本書を読んで、その感覚を思い出しました。
国語(現代文)もそうですが、東大が暗記型の秀才を合格させたいわけではないことが明確にわかります。クイズ王的な知識ではどうにもなりません。
そして、世界史の勉強をし直すのに、非常に優れた教材になり得ることもわかりました。近現代史をインターナショナル・グローバルな視点で押えないと、回答の取っ掛かりもつかめないと思います。
実際の受験生が対策本として使うには15題では少ないでしょうが、考え方は学べますし、社会人が教養として世界史を学ぶには最適だと思います。クイズ番組で勝ち上がることが目的なら別ですが、本当の意味での教養(言い換えるとリベラルアーツ)を身につけたいならぜったおすすめです。
途中まででも十分楽しめますが、せっかくなので全部読めるといいと思います。15問目が、現代的な意味で、SDGsの観点からも考えられる、とても重要な問題だからです。
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■「歴史って何の役に立つの?」と思う人へ
手放しに東大礼賛をするわけではないが、東大の世界史はどの問題も正直すごいし面白いしタメになる。
一般的に受験教科としての「歴史」は単なる暗記科目として捉えられがちだが、東大世界史の問題はむしろ暗記した知識をもとに「新たな視点」を気付かせてくれる。
受験準備万端で臨む学生たちは、試験会場で歴史のさらに新しい景色を見ることになるのだ。
例えば、東大世界史は「イギリス革命」「フランス革命」「アメリカ独立革命」の年号や関係者の固有名詞などは出題しない。
その知識を前提として、それぞれの革命の背後にある原因や目指した目標の違い、さらにはその奥に見え隠れする「国家」の在り方までを学生に問うてくる。
こうした比較の問題は難しい。ただ具体的な物事を並べて表面的に説明するだけでは比較とは言えない。それら具体的な事象の相違を、抽象的な概念や言葉で表現し、一段高い視点から俯瞰しなければならない。
ビジネスの現場においても比較は非常に重要だ。自社と競合他社とのビジネスモデルやコアコンピタンスの違いは常に意識しなくてはならないし、テクノロジーの進歩がとてつもなく速い現代においては、過去・現在・未来の比較の中で自社の立ち位置や方向性を正しく判断していかないといけない。
歴史学で学べる比較・抽象化は、こうした場面でも役に立つとても実践的な思考法だ。
また東大世界史は、技術革新や情報革新によって世界の一地域の出来事があらゆる国に影響を波及させていくグローバルヒストリーの視点を問うてくる問題も多い。
例えば1985年の東大世界史では、19世紀から20世紀初期に世界各地で展開された反帝国主義について、東京・漢城(ソウル)・北京・マニラ・カルカッタ・テヘラン・イスタンブル・ハルトゥーム・ペテルブルク・ハバナといった一見関連性のなさそうな都市を、ある共通事象で繋げる論述が出題されている。40年近く前から東大では国家を超えた物語を意識させる問題を学生にぶつけていることに驚いた。
■「いいね」を集めるために必要なことは?
「アメリカ独立革命」「フランス革命」が後にラテンアメリカの独立運動や19世紀ヨーロッパの自由主義運動に大きな影響を与えたのに対し、「イギリス革命」は他国へ特段の影響を与えることはなかった。
両者の違いは、革命の理念に「普遍性があるか、ないか」だ。
アメリカとフランスが目標に掲げた「自由・平等」の理念は、全ての人間に認められるべき基本的人権という普遍的な権利を求めたが、イギリスの目標は「国王への約束」という限定的な理念であったため、その後のフォロワーの出現に大きな差が出た。
より多くの人から「いいね」を集めて、より強力な影響を世界に発信したい場合、重要なのは「共感性のある理念」を掲げることだ。
企業や組織の理念についても同じことが言える。Amazonの「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」やユニクロの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」といった共感を得られ��普遍的な理念とその体現が、実際に人々から支持を得てフォロワーを増大させている。
■「主権国家、それは戦争である」
これはフランスのミッテラン大統領の言葉で、戦争の本質を言い表した見事な一言だ。
欧米は現在の秩序である主権国家や民主主義を進展させてきたが、一方でそれは帝国主義時代に世界を征服することで普及したという側面を見逃してはいけない。
主権国家には主たる国民・民族の主権が及ぶ範囲である「国境」が存在する。そこに住む国民・民族は、自分達の肌の色や話す言葉などの文化の違いから他国との差別化を始めるようになった。
これが主権国家同士の戦争の始まりであり、つまるところ「主権国家=戦争」なのである。
ロシアのウクライナ侵攻は決して許されるものではないが、主権国家を否定しないと戦争を回避できない現代において、戦争をなくすことがいかに難しいかということは、国際社会の前提として受け入れる必要がある。
東大世界史では、こうした国家と戦争についての関係性を考えさせる問題も出題されている。
■おわりに
本書は上記で述べたような論述問題について、先生と生徒が対話をする中で解答を導くという形式で展開している。東大入試なのでハードルが高そうだが、著者は予備校講師であるため、実際の授業の様子を思い浮かべながら生徒になった気分で読み進めることができる。
ただ、生徒役である京子ちゃんの学力レベルが割と高いので、自分の考えやツメの甘さに少し落ち込んでしまうかもしれないが、気にせず読み進めていくのが吉。
近代以降のテーマを15問取り扱っているが、どれも良問であり、我々が暮らす現代に根強く続いている問題ばかりなので、読み終えた時には世界情勢についてある程度の知見が身に付いているのではないかと思う。
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図書館で借りたけど。あらためて購入したい。
断片的な知識と知識が、どう結びつくのか、東大の入試という普通に生きてたらお目にかからない問を通して考えさせられる。頭の体操になる。
現在の国家の成り立ち、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスで起きた革命から始まり、現在のジェンダーに至る問題まで幅広く思考させられる。
自分では回答に至る思考をするのは難しいけど、東大受験生の発想の過程をトレースして閃きを共有されるのはとても刺激になる。
悲しいことには自分の知識が追いついてないため深く受け止められないことなので、しっかり知識をつけたらあらためて読みたい。
なお、構成メモはそれだけで価値があると思うので是非覚えて思考のベースに取り入れたい。(暗記は趣旨でないと思うが)
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東大入試の世界史は骨のある論述とは聞いていましたが、まさに歴史の見方について新たな線を与えてくれるものと思います。
答案の中で使用を促される各単語にはよく知らないものも散在し、深い知識も求められると思いますが、それ以上に問題の真意を理解し、事象を整理して共通項を抜き出す(または差異を明らかにする)ことの難しさ! この構成メモを作ることができるだけでも素晴らしいと思います。
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面白かった。東大の論述良く出来てるなと思った。こういう意図が読み取れていくアタマを持ちたい。つながりってかなり大事だと思う