生きている姿がたくましい
2023/02/01 15:51
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の芥川賞受賞でも、佐藤さんの作品と東日本大震災の関係がよく報じられているが、
この『象の皮膚』でも東日本大震災後まもなく営業再開した書店に押し寄せた
人たちの姿がうまく描かれている。
物語は、幼い頃からアトピーで苦しみ、友達ともうまく交われなかった五十嵐凛という女性が主人公。
彼女は仙台駅前の書店の非正規社員として6年働いている。
自分の肌のことで「心を自動販売機のように」して働き、
ネットの仮想世界のアバターが彼氏である。
本来なら彼女を支えるべき家族も何故か彼女を毛嫌いし、かなり悲惨な生活のはずなのに、
どうしてだろう、
五十嵐凛という女性は決してそんなに悲痛には見えない。
それは、彼女の務める書店で働く先輩であったり同僚を描き方、
あるいは書店に現れるクレーマーの数々の嫌がらせの様子の表現が
生き生きと活写されているからだろう。
つまりは、誰もがみんな「どっこい、生きている」のだ。
だから、震災後書店に押し寄せたお客たちもまた、
被災者であっても生の体現者であり、
生きているからこその面白さを生み出している。
本屋さんの従業員
2023/08/05 12:01
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
仙台市内の大型書店に務める凛は幼い頃からアトピー性皮膚炎に悩まされ、肌の状態から家族や同級生から疎まれて育ってきた。自分の肌を象のような皮膚だと思う。
震災と復興、書店員の人間模様が描かれる。
凛さんは身近にいるし、自分もです
2023/01/30 22:43
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投稿者:うなぎさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の凜さんが、私たちの日常を代弁してくれている。ふつうの人たちが、気持ちを押し殺しながら頑張っている。ずけずけした人たちが、我がもの顔でふるまっている。こんな世の中は変わらないと思うけれど、凜さんのように日々を送ろう。読み終えてすっきりしました。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
アトピー性皮膚炎を持っている人の苦しみがひしひしと伝わってきました。周りにも何人もアトピー性皮膚炎の親族や同僚がいますが、こんなに大変だとは……。もっとアトピー性皮膚炎の人が生きやすくなる社会だといいのですが
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面白いとは思えなかったが、考えさせられることはあった。
痒みの描写が上手すぎて、こう言ったら悪いのかもしれないけれど、どうしても気持ち悪かった。確かにアトピーは生命に関わる病気ではないが、人生に関わる病気であると思った。
アトピーひとつで、人の一生は、生き方は、こんなにも変わってしまうものなのか。アトピーさえ無ければ、凛さんにはどんな可能性が広がっていたのだろうと思うと、胸が痛い。
私自身、小学生の頃に軽度のアトピーだったことがあり、痒くて掻いてしまったために皮膚がただれて、それを友人に「掻くのが悪いんじゃん」と言われたことを思い出した。なかなか、自分に起きていない他人の事に思いやりを持つのは難しいことかもしれない。
人間、コンプレックスに思っていることは誰にでもあって、「ここがこうだったなら」「ここさえ良くなったらもう何も要らないのに」と思うことがあると思う。
私も容姿の悩みは尽きないし、他人からは分からなくても、私にとっては最重要事項で、病むほど気にしてしまう事もある。
ただし、自分が当たり前のように持っている健康な皮膚や、五体満足に関しては、幸せとも有難いとも、あまり感じる機会は無い。なぜ、持っているものには目を向けられないのかなぁ。
もう少し、自分の持っているものについて、目を向けてみようと思えた。
評価とは関係ないが、少し前に読んだ「推し、燃ゆ」となんだか似ている感じがした。
人生の不毛さ、それでも生きていかなければならない辛さとか。
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人にされて嫌だったことをしてしまうかもしれない。
人にされて嬉しかったことをできないかもしれない。
人の振り見て我が振り直せないかもしれない。
それでも、
めんどくさい人に負けず、
体の痒みにも負けず、
災害にも負けず、
どうにかこうにかもがいて生きてる。
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結局、最初から最後まで
あまり目立たず
迷惑をかけないよう
人と深く関わろうとしないから
いろんなエピソードがうすい。
なんだか気の毒…
で終わってしまっている。
変わっていく主人公も見たかった。
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幼い頃から重度の皮膚炎に悩まされてきた凛。つらい学生生活を経て、現在は仙台の書店で非正規社員として働いている。そんな彼女の日常をリアルに描いた作品。最低の同僚やカスハラのオンパレードで、読んでいて楽しくはない。そこに震災まで襲いかかり、この子は生きていけるのだろうかと心配したが、意外と図太いのでほっとした。人目から逃れるようにしていた彼女が、深夜の公園で思いがけない行動をするラストは意外性に満ち、一皮むけた今後を予感させてよかった。
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わかってもらえないってつらい。
しかも、家族にさえも軽くあしらわれてしまうなんて。
皮膚の病気は、性格にも影響を与えると思っている。
アトピー持ちで、明るく社交的な子を見たことがない。どちらかというと、やっぱり肌を隠したくて、人に自分を見られたくなくて、自分を隠したくなるような性格になると思う。
好きな服を着れない。好きな髪型にできない。好きなように振る舞えない。
肌のきれいな子がただただ羨ましかった。
私も子どもの頃アトピーがひどくて、この本を手にとった。(大人になった今もあるが、子どもの頃ほどひどくはない)
だけれど、期待していたものと違った。
子どもの頃のエピソードやかゆみの表現には共感したけれど
大人になってからは皮膚がどうこうではなく、書店員の仕事の大変さや、震災のときのごたごたが中心だった。登場するいろんな人にいらいらした。
限定のものに飛びつくというのは、誰もが持つ本性なのだろうか。自分はそれで大変な思いをしたのにもかかわらず、だ。
いろいろとりとめもなく書き連ねた印象。まとまりのない作品のように感じた。
最後の主人公の行動は唐突で謎だった。
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肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティ。
割と強めのアトピー持ちの五十嵐凛は、仙台の書店に勤める契約社員だ。出てくる客も握手会イベントにくる作家も同僚も家族も、出てくる奴らの大半が糞という設定。抑圧された人生を送ってきた凛が、真夜中の公園で自分を開放するシーンにはジンとくるものがあった。でもジーンズをコソコソと回収する姿を想像したときには笑えた。著者である佐藤厚志さんはジュンク堂の書店員だそう。だから話がリアルだ。
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淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。
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重度のアトピーで学校ではいじめ、家では疎まれて生きてきた女性が女店員として仙台で生きる物語。
痒みに悩まされ夜も眠れなかったり、何の良い思い出もない学校生活を過ごしたりなど、壮絶な人生を歩みながらも何とか生きている精神力の強さに脱帽した。
しかし少し過去の話とはいえ、当たり前にいじめや教師の体罰が横行していたり、震災直後にもかかわらず書店に多種多様なクレーマーが押し寄せたりと、仙台の人々を露悪的に描きすぎな気はした。(書店員をしている作者の実体験が多少は入っているのかも?)
一応白銀というオタク仲間の同僚がいたのが救いだが、もう少しスッキリするエピソードがあっても良かったと思う。
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生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。
まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアルなのだろう、という気にさせられる。
非正規で働き余裕のない生活、家族からも受け入れられない孤独感、アトピーで痒い身体を掻きたい、でも掻けない、という苦しみ、震災後、薬も食料も思うように手に入らないという辛さ、という主人公の描写から、この作品は震災後小説であり、光の当たりにくい社会の一片を切り取った作品だと感じた。
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地元仙台を舞台に描かれていることは楽しめた。
一方で、凛を取り巻くストーリーの方向性が分かりにくく、どこを目指してストーリーを展開していきたいのか、著者が本著を通じて何を伝えたいのかが曖昧だった気がする。
アトピーの痒さが生々しかった。
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リアリティ溢れる筆致。自分とは全く違う境遇、性別、体質なのに、ページを捲る手を止められなかった。個人的には芥川賞受賞作よりこっちの方が好き。だから読書は止められない。