0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
17歳の主人公マルセロは、発達障害です。そこで,ひと夏の間,法律事務所で働くことになリました。マルセロは.法律事務所での経験を糧に、次第に、気持ちが変化して行って………。高校生ならば、誰も経験しそうな不安と向き合います
投稿元:
レビューを見る
アスペルガーに近い症状を持つマルセロが、父の要望で、夏の間法律事務所でアルバイトをすることになる。知性は高いけれど物事へのこだわりが強く、コミュニケーションが苦手なマルセロにとって、これまで通ってきた養護学校の温かな環境から出てリアルワールドに飛びこむのは大きなストレスだ。
じっさい、行ってみると、アクの強い弁護士秘書たちやら、いけすかない弁護士のいけすかないどら息子やらがいたりして、摩擦のたえない日々。それでも同じ部署で仕事を教えてくれるジャスミンという少し年上の女性は、思ったことをずばずば言うけれど、包み隠すところがなく、マルセロにとっていちばん理解しやすい、気を遣わなくてすむ存在になる。
そうこうするうちに、事務所のゴミ箱から拾った1枚の写真をもとに、マルセロは事務所が闇に葬ろうとしている大きな問題があることに気づく。それを解決することは、自分の父親を危うい立場に追いこむことにつながる。人生ではじめて大きな板挟みにおちいったマルセロは、はたしてどうするのか……。
ゆるやかなミステリ仕立てのストーリー自体でもさることながら、マルセロが言葉の表の意味と裏の意味を深く考えながら、物事の真の意味を知ろうとする、その誠実な語り口調がとてもいい。わたしたちはふだん、とてもざっくりと、いいかげんに周囲のことをわかったつもりになって、適当に流しているのだけど、なにひとつゆるがせにしないようにすると、とても大変で、でも同時にほかでは味わえないおかしみや、正面突破ならではの痛快さが生まれてくる。
ストーリーには関係ないところにも美しいやりとりや場面がたくさんつまった、すばらしい作品だった。
投稿元:
レビューを見る
p190 「急坂」にわざわざ「きゅうざか」とルビが振ってある。一応「大辞泉」を引いたら、やはりこれは「きゅうはん」
投稿元:
レビューを見る
人生で最も多感な時期の一夏の経験の物語。
パターソンという特殊な学校に通い続けることを望み、家の中でもツリーハウスの中で生活しと、マルセロはいわば温室育ちだ。それが、夏休みの職業体験で「リアルワールド」を体験する。
マルセロは普通とはちょっと違う17歳ではある。どこがどのように違うのかが、自然な話の展開の中に織り込まれている。内なる音楽(インターナル・ミュージック)が聞こえるということ、脳の各部の働き方から、始まって、スケジュールを決めて、そのとおりに行動することを好むこと、人の目を見て話そうとしないことや、一度にたくさんの情報が入ってくると混乱することなど。
発達煩悩盛りの通常の17歳と異なり、マルセロの心の中は澄み切っている。すべてのことに真摯な態度で向き合う。「たりーから、シカト」といった考えはマルセロにはない。このひたむきさを応援せずにはいられない。マルセロに降りかかる問題に正面から向き合って、どうやって解決していくのか。そうして、マルセロがパターソンで身に付けたソーシャル・スキルを駆使して、リアルワールドを冒険するのを一緒になって体験することになった。
投稿元:
レビューを見る
主人公は発達障害(アスペルガー)
養護学校で牧歌的な日々を送るが、夏だけ父の法律事務所で働くことになった。
主人公視点で物語が進行するため、主人公の思考や感情が明確に文章化されている。
発達障害者の人々がこんなにも自分の感情を明確に感じ、言語化できるようにも読み取れ、違和感があった。が、主人公視点だから仕方なし。
そして、まさかのラスボス。
最低な奴め。
主人公よ、よくがんばった。
まだまだ発達途中。
まだまだ成長するさ。
2014.6.6
投稿元:
レビューを見る
アスペルガー症候群に一番近い主人公のマルセロと私は似てる部分が多いので彼に接する人たちの一挙一動に動揺していて、いつもよりも特定の登場人物たちに対して嫌悪感と憎しみを抑えることにかなり苦労しましたが同時に感謝と喜びも一入でした。日本の小説でも漫画でももっと見えない障がいの発達障害について取り上げるのが増えればいいのに。そうすれば自分との共通点と差異を知り理解して心ない言葉も思いも少しは減ってくれると私は信じています。
投稿元:
レビューを見る
認知障害をもつマルセロが、夏休みの間だけ父親の弁護士事務所で働くことを通じて、「リアルな世界」で生きることを学んでいくお話。
「リアルな世界」では当たり前にみんなが使う、表情や、皮肉や、暗黙のルール。マルセロはそう言ったことを理解することができません。なので、1つ1つを「なぜ?」と問うていく、その様子にはっと気づかされることが多い。
なぜ心が正しいと思うことをしてはいけないのか?自分の家族や立場を守るためなら、正しいことを無視してもいいのか?
リアルな世界に生きる身としては、何かを守るために正義を曲げることだってあるという言い分に、共感することは容易です。それでも、マルセロの「なぜ?」という問いかけは、忘れてはいけないもののように感じました。
自分が生きる「リアルな世界」を客観的に見るおもしろさ、そしてマルセロの成長を見守る面白さがつまった1冊。
投稿元:
レビューを見る
面白かった。
正しいことは怖ろしい。そう感じてしまうところがどこかあって、あるいはそれが主人公の言う「ぼくの醜い部分」なのかもしれない。「正しさ」は時としてそこにある「普通」や「秩序」を乱してしまうからだ。「普通」の人々は、この「リアルワールド」を生き抜く上で必要なことをしている。別に悪いことじゃない。それは決して正しいことではないけれど。
投稿元:
レビューを見る
151027読了。
千葉さんの訳は好き。『ひねり屋』で惚れて、『HOOT』『スターガール』けっこう読んだ。今回、たぶん15年ぶりくらい。
主人公マルセロは内なる音楽や「回顧」と呼ぶ瞑想が好きな17歳の、アスペルガー症候群もどきの少年。今まで守られた、安全で規則的な世界でのびのびと生活していたけど、法律事務所を共同経営している父から、この夏を法律事務所で働かないかと提案される。仕事ぶりが評価できれば、父の薦める一般の公立学校と、今まで通っている養護学校とどちらに行くか選べるという条件付き(もちろん、マルセロは養護学校に残りたい)。
働けマルセロのとまどいや苦労が自分のことのように感じられて、もっとゆっくり考えたいのに、もっと予想通りに生活したいのにという気持ちを常に感じさせられる。その中で、メールルームでの上司ジャスミンはマルセロの意識の歩調に合わさっている感じがして、最後まで最良の理解者だった。
マルセロは、法学生のウェンデルに言いつけられた仕事の途中、半分顔を失った少女の写真を見つける。マルセロの父やウェンデルの父が弁護している、フロントガラス会社の商品により傷ついたものだろう。この写真はどこで撮られたのか、誰なら知っているのか…。調べていくうちに、マルセロは内なる音楽や「回顧」を失っていきながら、自分で決意した正義を実行する。例えそれが、父を裏切ることになっても。
この話はインターネットや携帯電話が使える時代で、私たちの生活に近いけれど、どこか少しのどかだ。それが、マルセロがまとうオーラなのかしらとあとになって思った。マルセロが、リアルな世界に順応していくのに背中を押したい反面、なにかを失っていく悲しさも感じた。
マルセロが父を裏切っても正しいと思うことを全うできたのは、きっとアスペルガーや他のなにか特別なものを持った人々の才能なのかもしれない。
最後、彼が新学期からもリアルな世界で行き続けることを決めたときに、お腹にぐっと力が入った。
投稿元:
レビューを見る
発達障害のマルセロは弁護士の父親から夏休みに自分の弁護士事務所で働き、世の中を経験し迎える高校3年生を普通学級の高校へ行くように言われる。
リアルな世界を体験し、最後には自分で決めるように言われる。その弁護士事務所でマルセロは、事故で傷ついた少女の写真を見て父親の隠すある事実を知り、父親に向かっていく。
発達障害の少年の成長の記録は、厳しいものだった。
それでも、マルセロは強くたくましく成長していく。
こういう障害についてよく知らないけれど、こんな作品をとおして理解が進むといいな。
いろいろ、良かったなあ。
投稿元:
レビューを見る
発達障害の17歳マルセロが,「リアルな社会」を知るために法律事務所でインターンシップをする.
不安を覚え,トラブルを乗り越え,成長していくお話.
投稿元:
レビューを見る
発達障害をもつマルセロが、リアルな世界を経験して欲しいという父の望みから、ひと夏の間、法律事務所で働くという話。ジャスミンと言う仕事仲間がいい人に出会った感じ。この選択は親心があったのか?なかったのか?後半は急展開する事件があるが、物語全体でもすごく優しい目線。こうした多様化を受け入れると言う事を脳で理解するのではなく肌感覚で理解できるかどうかは、これからの時代大切な事なんだろうなあ。
投稿元:
レビューを見る
発達障害があるマルセロ。ピュアで信頼できる少年だ。正直すぎてまっすぐすぎるマルセロはリアルワールドでは障害がある、と括られてしまうのかもですが、わたしには障害には見えなかった。マルセロをマルセロのまま、受け入れ、理解し、一緒に生きていく、そんな人たちがいることがホッとしました。リアルワールドでも、そうあってほしいな。
障害のある子の話、というより、社会派ドラマの要素もあり、読み応えあります。
投稿元:
レビューを見る
マルセロが大好き。きっと実際に一緒にいると、イライラしたり、傷つけたり、傷つけられたりすることが多い人なのはわかるけど、でも好き。訳者のあとがきにあるとおり、「さまざまな彩りを放つ」虹のようなスペクトルを眩しく思います。
大きく自閉症スペクトラムとしてくくられる子と接する機会は多い方だと思うんですが、彼らは、少し理解できたかも!と思っても次の瞬間裏切られ、驚かされる。いい意味でも悪い意味でも。
ただ、この特性を持った大人と一緒に働くと、どうしてもイライラの方が多くなってしまって後で反省することがよくあります。ジャスミンのようでありたいと、切実に思う。
あくまで本なので、マルセロの思いや考えを理解した上で、彼の言動を追いかけることができるのは面白く、同時に歯痒い。
マルセロスペクトル並みにカラフルで強烈なキャラクターたちそれぞれが魅力的だし、喧騒、競争、私利私欲が溢れる法律事務所と、星や風や湖や動物たちの音に溢れ、「独立した旋律を演奏する場所」になり得るバーモントの対比も素敵です。
表紙に惹かれて手に取った本ですが、読み終わって改めて見ると、なるほどと思うデザインです。
ストーリーとしてはイステルの一件が大きなポイントなのだと思いますが、マルセロが表現するように、あくまでそれは火をつけるためのマッチに過ぎません。
殻を破り成長してゆくマルセロの通過点。ある意味では出発地点。
ジャスミンに手を引かれてツリーハウスを降りたマルセロは、リアルな世界で生きてゆくために1度はその手を離すんだろうけど、きっとまたあの星空の下で、離れた手は繋がるんだろうと期待します。
投稿元:
レビューを見る
マルセロの言葉が素晴らしかった。
いつもきちんと考えて言葉にしている。
そして正直である。
この物語の中の特別な事件や嫌な奴らよりも、マルセロのIMに身を委ねるのがいいと思った。
イステルに「あなたにもあるの?醜いところが」と聞かれ、
「自分に醜い部分が見つからないこと、他人の醜い部分を許したくないことがぼくの醜い部分なんじゃないかな」と、自己分析するマルセロが大好きだ。
「正しい音は正しくきこえるし、まちがった音はまちがってきこえる」
これはジャスミンの言葉。
美しいバーモントの丘や湖の描写も素敵だった。