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今年創立100年を迎えた中国共産党の歴史についてその誕生から今日までを辿った本作は、中国共産党内部の権力闘争を中心にその全体像を簡潔に描いている。通史的なものははじめて読んだので勉強になった。イデオロギー闘争の裏にある権力闘争について資料を巧みに組み合わせて叙述するのは想像よりもずっと難しいだろう。最終的に毛沢東や周恩来、劉少奇や林彪らが何を考えていたのかなかなか外からは見づらいからだ。とくに毛沢東は本当は何を考えていたのかよくわからない。しかし、中共中央の指導で辛苦を味わった中国人民はお気の毒としか言いようがない。大躍進や文革だけではなく……。
意外と毛沢東後の中国共産党の歴史は自分の中でも整理されていない部分があったので役立った。現在の習近平の立ち位置についても説得的な記述だったように思う。
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年間500冊を読破する知りあいの弁護士さんから、「興味深い作品だから」と薦められて購読し、年始の2日間で読破したものの鈍器本並みに重厚な内容で大苦戦。
ロシア革命に刺激され、コミュンテルンの指導を受けて2021年7月に13人で中国共産党が創立される。蒋介石率いる国民党や張作霖らの軍閥との軋轢の中で、ロシアの指示に翻弄される中国共産党。財政面ではモスクワに大きく依存し、1928年時点で中国共産党に12,820米ドル、日本共産党には1,025ドル(伊藤千代子らが検挙された3.15一斉弾圧の年に該当する)、朝鮮人に256ドルの資金援助がなされていたとの記録もある。一方で中国共産党の中でも独自路線の遊撃戦を展開する毛沢東の軍内民主制、三大規律と六項注意(後の八項注意)は人間としての規律や人権を尊重するものでもあった。後に、毛沢東の遊撃戦が発揮される16字句「敵進我退、敵駐我撹、敵疲我打、敵退我追」は、読書家だった毛沢東の三国志や孔子などの戦術を引用した叙情的戦術でもある。対日戦争には国共合作(国民党と中国共産党)で対抗するが、整風運動等で農村での中国共産党員拡大に成功した中国共産党は、一方で「革命アヘン」として大規模な交易として戦費に流用していた。日本の降伏による戦争終了後、国際世論は国民党と中国共産党の連合政権を主張するが、結果内戦状態となり、中国共産党率いる人民解放軍は国民党軍の蒋介石を圧倒して、1949年中華人民共和国成立。引き続きロシアの指導を受けるが、国家運営と中国共産党の2重の運営に混迷を極め、派閥争いと権力闘争、粛正は激化し、1949年に毛沢東が中央人民政府主席に就任した。中国共産党の結党から続く粛正は、以後も脈々と続き、各地区に割り当てられた数値・パーセントで粛正するという粛正ありきの恐怖政治、しかも粛正される側は撲殺等の辛苦の末の非命となり、辛酸を極めた。
毛沢東という個人崇拝を許し、紅衛兵の暴力を許容し、文化大革命や4人組により恐怖政治も結党時より「プロレタリアアート一党独裁」の思想が貫かれてきた所以であろう。毛沢東死後は、鄧小平の改革開放路線へ転換も、経済の疲弊は顕著で、各地で食糧難から餓死者が出る一方で、財産と権力を有するプチブルとの矛盾は激化する。一党独裁と急激なインフレによる経済苦といった矛盾の激化は、かつて周恩来が死去した後に自然発生的に生じた市民の追悼活動が、1976年の第1次天安門事件へと導いたように、人びとに敬愛される指導者の死去が、またしても大きな騒動の引き金となった。1989年4月に胡耀邦が急逝し、直後から北京の人びとは追悼活動をはじめたものの、周恩来が死去したときと同じ様に、人々の追悼活動は当局に対する抗議活動を含んでいた。新聞の自由、及びデモ行進に対する制限の取り消しなどを要求した運動になり、映像などでも知られる軍部による鎮圧と粛正が行われた。世界ではあたりまえの報道の自由や結社の自由が許されない中国と中国共産党の恐怖政治は、現代の香港問題にも続く。
分権統治を進めた江沢民や胡錦濤に対して、現習近平政権は、政治指導部を減員し、全ての権限を習近平に集中する独裁体制とも言える政治機構に変質している現状の評価は、もう少し歴史の経過を待たなければならな��。しかし、現在の経済、外交、軍事、新型コロナウイルス対応を見るにつけ、強権・恐怖政治からの改革を願うばかりである。
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中国共産党史の語り方
中国共産党の誕生
国共合作とその挫折
武装蜂起、そして大粛清
退却と分裂
日中戦争下での危機と成長
国共内戦とソ連への傾斜
新しい国家の樹立と社会主義建設
中国的な社会主義を求めて
大躍進の挫折
文化大革命への道
自己目的化した「革命」―文化大革命
毛沢東時代の終焉、そして文化大革命の終わり
改革開放への大転換
突進あるいは修復ー胡錦澁時代
凍結あるいは反動ー習近平時代
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【歴史的にみた場合に、この政党の発展を特徴づけているのは、頻繁に行われる組織上、イデオロギー上、そして路線上の方向転換なのである】(文中より引用)
創設から今日に至るまで、「壮大なる」躍進と挫折を繰り返してきた中国共産党。現代中国の歩みを考える上で欠かすことのできないその存在を、時の権力者の目線から振り返った一冊です。著者は、慶應義塾大学法学部教授を務める高橋伸夫。
現在進行形で形作られている歴史を、これほどまでのバランス感覚でまとめ上げた手腕に拍手。現時点の目線で歴史的評価を下すのではなく、当時の社会主義思潮や国際情勢をしっかりと踏まえながら論じている点にも好感が持てました。
なんだかんだ言って、やはり日本のしっかりとした中国研究はレベルが高い☆5つ