生きづらい現在に向けて
2021/07/29 23:16
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
問答無用で中学生に読んでもらいたい。大人だって読んでほしい。明治社会の生きづらさを描くものだが、この生きづらさは現在の日本社会のそれでもある。それだけ根強いこの状況を打破するには、まずはこの起源を知らねばならない・
「働けど〜」の世界観
2018/10/22 19:50
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
引用されているわけではないが、「働けど〜」の詩のような世界観。過酷な社会であったことがよくわかった。現代の方がマシだとは思うものの、「通俗道徳」的な価値観は今も根強いと思う。現代を強く意識した叙述で、いろいろと考えさせられた。著者は「成功者」であろうから、ことさらに自身を「臆病な人間」と卑下する記述がやや気になった。
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社会の最下層に置かれ、自力で抜け出すことなど不可能であった人々に、上の階層の人々が向けた目を明らかにする。
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「通俗道徳」(安丸良夫)のわな、というキー概念により明治期の日本社会を分析し、現代日本の問題を考えさせる好著です。
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そうか、ここまで遠くなったんだな。祖父母が幕末に対して持っていた距離感が今の明治より近いんだと妙に感心。
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明治とは一般庶民にとってどんな時代だったのか? 今,「明治の良き時代から学べ」というような言葉が政権側から盛んに出てきているような気がするが,ほんとうに,学ぶことはあるのか? 一度,立ち止まって冷静になって明治を学び直してみましょう。そんな本でした。
クーデターで政権を取った明治政府(薩摩・長州たち)でしたが,お金がありません。そこで,考えたのが「廃藩置県」。税金をすべて政府に入るように無理矢理やります。地租の3%。しかし,これは固定だったために,またまたお金に困ります。すると,今度は紙幣を増やすというなんとも考えられない政策をし,インフレ社会に…。
その後も,一般庶民にとっては,そんなにいい時代ではなさそうです。
明治維新が大きな時代の変化を起こしたことは間違いありません。が,今,この時代に,明治の人の生き方から学ぶことってなんでしょうか。
少々貧しくてつらくてもガマンして国家のために働く。そんな必要が今あるのか? もし,万が一あるとすれば,明治時代と同様に,どこかに無理が来ている証拠です。
「貧民窟」や「恤救規則」などという言葉は,本書を読むまで聞いたこともありませんでした。やっぱり,勉強はするもんですね。
本書で一番わかりやすかったのが「通俗道徳」の話です。「通俗道徳」は現代にも通じる日本人が持っている道徳心であり,現代もまた,ここをクリアしないと社会保障制度が立ちゆかなくなりそうです。実際,明治時代と同じような事を言い出している若者たちもいます。
ビジネス書のコーナーから,成功物語ばかりを手に入れて読んでいるようでは,すでにあなたは「通俗道徳」の魔の手にかかっています。
ビジネス書を読む前に,まずは,本書を読みましょう。
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近代の夜明けとして、美しく語られることの多い明治維新だが
そのパラダイムシフトにふるい落とされ
都市の貧民が激増した時代でもあった
この本では、ワーキングプアの現代にイメージを重ねつつ
その実像を解説している
新政府は、中央集権を強めるために廃藩置県を行い
まず税制から変えていった
しかし、村で納める形から個人で納める形に変わったことで
それを支払えず、土地を失う農民が続出した
西南戦争以降、増額の必要にかられた軍事費用の捻出に加え
諸外国の経済侵略に対する防御策として、デフレに転換した日本は
そこで迎える大不況の時代に対し
貧乏人は努力が足りぬといった自己責任論…
いわゆる「通俗道徳」でもって、国民の不満を抑えこんだ
そんな時期だ
日本の近代文学が本格的にはじまったのは
個人の努力をずるいと嘯く底辺層の悪平等主義が
下克上を恐れる富裕層のダブスタに利用されることもままある現実で
作者の主張に全面的な同意はできないけれど
いい本だと思う
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18/12/23読了
まさしく生きづらい明治社会。現代に重ねるのはややセンシティブすぎるような気もしたけれど、日々のニュースに触れているとうなずけるところはある
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江戸時代や明治時代は人間性とロマンに満ちた社会にも見えるが、実際は底辺の人たちに、特に女性とってとても息苦しかった。資本主義社会が生んだ「通俗道徳」による息苦しさである。よく働き、倹約して、貯蓄さえすれば、人間は必ず一定の成功を収めるという(通俗)道徳観。裏を返せば、経済的に失敗し貧困に陥っている人は、努力を怠ったダメ人間だという考え方で、底辺から抜け出せない人々を苦しめ、自責に追い込む。実際には明治も今も努力すれば成功するとは言えない。あがきながら未来が見えずに苦しんでいる姿が共通する。
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生きづらい明治社会 松沢裕作 岩波ジュニア新書
薩長による明治のか依頼政治依頼
西欧式の競争原理に基づく
信頼関係を放棄して現物に執着する
不安と恐怖の時代に民衆は翻弄されてきた
この具体的な実態を
現象面から捉えた歴史観
民主主義を唱えながら
搾取と支配へと民に依存するねじれた政治を
考える上で良い教材と成るかもしれない
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明治という社会が大きく動いた時期、その中での人々の日常はどうだったのかを紹介されています。そしてそれを現代社会との比較を通しての問題提起に結び付けられています。明治政府というのが生まれたばかりで力の無い(金の無い)存在であったことが、消極財政となり、社会的な弱者は後回しにされ、それを許容する社会風習があったこと。それは現代社会にも似たところがあり、それを学ぶことで、現代の闇を知ることにもつながります。そのうえで、現代社会の常識に対して、著者からの問題提起がなされています。
日本人は昔から変わっていないという根本的なところかもしれませんが、ひょっとしたら人間そのものの闇なのかもしれないなと思いつつ読ませていただきました。
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明治時代と現代を比較してみる、という発想が面白い。自己責任、失敗した者は努力不足、という傾向は明治からあったのだな、と。江戸時代という問題がありながらも安定したシステムが破壊されたこと。資本主義によって成功者と失敗者が明確に分かるようになったこと。それらが弱者厳しい社会となった原因な訳ですが…本書では行き詰まった若者の暴動も明治にあった、と指摘されている。
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生きづらい社会ってのは、何によって生まれているのか?
ってのを、明治時代から学んでみようの巻
生きづらい社会を生んでいるのは、みんなの認識(通俗道徳)のせいなので、これを通俗道徳の罠と呼ぼうとしたところが、良かった。理解を簡単にするには、名前をつけてしまうのは有効だからだ。(まぁ、有効すぎて間違った認識が広まることもあるけど)
作者はいったん現代を離れて明治の分析をすることにより、他人事として認識させることで、現代も未だ蔓延している、通俗道徳の罠に気づかせたかったのではないだろうか。
通俗道徳の罠の根底に、教育すれば誰しも勉強や仕事ができるようになると言う、教育万能説が流れていることにも注目したい。教育すれば誰しも勉強ができると言う前提があると、勉強できないのは全部個人の責任になってしまう。んなわきゃねぇよ。とおじさんは思うのであった。
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講談社のブルーバックス。なので中高生対象に書かれたものですが、日本社会でこれから大人になる人にぜひとも知り考えてほしい内容です。格差の広がる現代日本社会で「自己責任」が叫ばれるのはなぜか?その原因は明治の日本社会経済状況にあるのではとの指摘なのですが、明治と今の社会状況を比較するとあまりにも似通っている(つまり現代社会が明治時代まで後退している)ということがわかります。
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共同社会の一員であることを強要された江戸時代から個人主義の明治になって、自由になった一方で、セーフティネットが失われた。もともと資産なり身分なりを持っている成功者が「通俗道徳」を盾にしてセーフティネットを否定する、「生きづらい明治時代」を概説する一冊。
通俗道徳とは、勤勉、倹約、親孝行といった、これといった深い哲学的根拠に支えられるまでもなく「良いこと」と考えられる行為のことである。この通俗道徳によって「ある人が直面する問題がすべて当人のせいにされる」。ひいては社会保障の否定につながるという話である。(安丸良夫の指摘を紹介している)