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大阪の商人文化の中心である船場。
そのなかにある「大鞠百薬館」を築いた大鞠家の創業者の長男・千太郎が行方不明になったのは明治39年のことだった。
その後、長女が婿をとり昭和18年にはその息子である多一郎は陸軍軍医となり、嫁として大鞠家に入ったのは美禰子だった。
そこから大鞠家に次々と起こる殺人事件。
もうこの一族の摩訶不思議な事件に夢中になってしまった。
殺人事件というよりも惨劇なのだが、いったい誰が何故⁇というのは…。
戦後に明らかになるのだが…。
いやぁ、これこそ正統派推理小説なのか、しっかりと堪能できた。
時代背景もその当時の言葉も遠いことなのに人間味を感じたというのもこの一族のなかで起こることだったからかもしれない。
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昔の船場独特の風習や戦争からくる悲劇を、本格ミステリーに仕立てたのは新鮮だった。きな臭くなりつつあるこの時代に向けて書かれたようにも思えた。恐怖を利用したプロパガンダに惑わされないようにしないとね。
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大阪大空襲の最中に大鞠家で起こった連続殺人。その前にも一家の嫡男が行方不明になったり、軍服の男が突然現れたりと、「どうやってこれらの謎を解くのか?」という風に読んでいたが、終盤の謎解きで明かされたトリックや意外な犯人などにすごく驚いた。そしてその動機はものすごく悲しいものだった。新年を迎えて読むに相応しい一冊だった。また、作中に出てくる海外の古典ミステリーのオマージュも凝ってて良かった。今度はそれらの元になった作品を読んでいきたい。
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正統派昭和時代の推理小説でした。
場所は船場、時代は明治から始まり、事件は戦中、空襲後の焼け野原の戦後が解決偏となっていて面白かったです。
探偵役の女性たちは著者の既存の作品の登場人物だったようで、その探偵の登場だけが唐突でしたが、後は映画にもなりそうな懐かしい設定のミステリーでした。
この手のミステリーでは謎解きが強引だったりするのは仕方ないのですが、そこも含めて王道を行っていると思いました。