大陸とは異質の社会である日本
2022/02/12 15:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒猫のJiji - この投稿者のレビュー一覧を見る
コンパクトにまとめたが故に、見えてきたものが興味深い。日本列島という地理的条件下にある日本人たちの学習の軌跡とも言える。
中国や朝鮮と対比すると明確なのは、支配が隅々まで行き届いたまとまった社会であり続けた。特に戦国時代以降その傾向が強まった。
一方中国は清の時代に下層の人口が膨れ上がった。社会の上層はそれほど増加し無かった。長い目でみると秦の時代に確立した支配論を清の時代まで変えずに来てしまった。だから、支配階層と庶民層の分離が著しい。
勝手な感想だと、宋の時代まで中国は世界の中でも最先端を行っていた。次の元は、世界史上の画期だった。ユーラシア大陸規模の大商業圏の誕生は凄いことだった。
で、明・清と、世界史上のでみると、停滞したのかな?と思える。株式会社という仕組みの発明の差かも知れない。
二つ目は日本人たちは政治において、権威と権力を分けることを好んで来た。
摂関政治。朝廷と幕府。
これは世界史的に珍しい。権力は一元化するのが世界の常識なのに、日本人たちは二元化した方が安定する。
そう思って院政の時期を考えると、日本人たちにとって政治権力の一本化は戦乱を招くというのは言えそう。
権力者の側近の重用となり、公正さを欠くとなる。
その意味では、曖昧さの代償として平和を得たとも言えるかも。
三つ目は舶来上等の精神。唐物(中国由来の品)や近代以降の西洋珍重など、素晴らしいモノ/コトは外からやってくる。
そして、それを自分たち好みにデフォルメする。元の文脈は考えない。2次創作する。
古事記で言うえびす様のような存在を感じて来たのかな?
こうしてみると、日本人たちの社会は、中国や朝鮮とはまるで違う。大陸での政治の難点は、全く違う文化圏を如何にして統合するか?
歴史をみても、日本人たちと大陸とが接触すると、争いになる。
唐・新義vs百済・倭、元寇、豊臣秀吉の朝鮮侵攻、韓国併合。
司馬遼太郎が「鬼胎の時代」と呼んだ昭和の前半。まさに大陸とどう関わっていくか?「帝国日本」の時代だった。{同時代の人たちにも、3つの道があると理解されていた。江戸時代のように、日本列島だけでやっていく道。広く国際社会の中の日本として振る舞う道。第三の道が、大陸に植民地を持つ帝国として道。}結局、多様な文化圏を統べることが出来ず、皇国として同化しようとして失敗した。「帝国」って日本の政治には合わないシステム。
投稿元:
レビューを見る
非常に面白い。中国史と相対化されていることで、日本の形成され方、特徴がより立体的に見えてくる。細かい差異にこだわらず、ざくっと大きく時代をくくっているのもいい。歴史の流れに集中して理解できる。
投稿元:
レビューを見る
コンパクトにまとめたが故に、見えてきたものが興味深い。日本列島という地理的条件下にある日本人たちの学習の軌跡とも言える。
中国や朝鮮と対比すると明確なのは、支配が隅々まで行き届いたまとまった社会であり続けた。特に戦国時代以降その傾向が強まった。
一方中国は清の時代に下層の人口が膨れ上がった。社会の上層はそれほど増加し無かった。長い目でみると秦の時代に確立した支配論を清の時代まで変えずに来てしまった。だから、支配階層と庶民層の分離が著しい。
勝手な感想だと、宋の時代まで中国は世界の中でも最先端を行っていた。次の元は、世界史上の画期だった。ユーラシア大陸規模の大商業圏の誕生は凄いことだった。
で、明・清と、世界史上のでみると、停滞したのかな?と思える。株式会社という仕組みの発明の差かも知れない。
二つ目は日本人たちは政治において、権威と権力を分けることを好んで来た。
摂関政治。朝廷と幕府。
これは世界史的に珍しい。権力は一元化するのが世界の常識なのに、日本人たちは二元化した方が安定する。
そう思って院政の時期を考えると、日本人たちにとって政治権力の一本化は戦乱を招くというのは言えそう。
権力者の側近の重用となり、公正さを欠くとなる。
その意味では、曖昧さの代償として平和を得たとも言えるかも。
三つ目は舶来上等の精神。唐物(中国由来の品)や近代以降の西洋珍重など、素晴らしいモノ/コトは外からやってくる。
そして、それを自分たち好みにデフォルメする。元の文脈は考えない。2次創作する。
古事記で言うえびす様のような存在を感じて来たのかな?
四つ目は近世の江戸時代に本格化した「職人」って気風。絶えざる工夫を凝らし、究極まで高めようとする。
戦後のアメリカからやってきた標準化の考え方とは真逆。
工夫を常にし続ける。
科学のように原理から乗り越えるのではなく、今ある中での工夫。いわゆる神業って域まで高める。
こうしてみると、日本人たちの社会は、中国や朝鮮とはまるで違う。大陸での政治の難点は、全く違う文化圏を如何にして統合するか?
歴史をみても、日本人たちと大陸とが接触すると、争いになる。
唐・新義vs百済・倭、元寇、豊臣秀吉の朝鮮侵攻、韓国併合。
司馬遼太郎が「鬼胎の時代」と呼んだ昭和の前半。まさに大陸とどう関わっていくか?「帝国日本」の時代だった。結局、多様な文化圏を統べることが出来ず、皇国として同化しようとして失敗した。「帝国」って日本の政治には合わないシステム。
投稿元:
レビューを見る
日本の歴史を大変緩やかに大きな時間軸で捉える良書。
冷静に、日本国民が広く西洋を意識し出したのは、江戸時代後半の蘭学以降の、ここ最近のことだし、それが急激に強まったのは、第二次世界大戦以降のアメリカの属国になってのことだ。
地政学的には、中国・朝鮮半島・沖縄の方が死活的に重要なのは言うまでもなく、文化的にも類似している東洋の視点で日本の歴史を捉え直してみたい方には大変オススメだと思う。
投稿元:
レビューを見る
<目次>
まえがき
第1章 日本史は中国の”コピー”から始まった…【古代~平安時代】
第2章 アジア・システムからの離脱…【平安時代~鎌倉時代】
第3章 「日本全体が入れ替わった」時代…【室町時代~戦国時代】
第4章 「国家」の成立…【江戸時代~元禄・享保時代】
第5章 「凝集」する日本…【享保時代~開国前夜】
第6章 開国と日中友好のはじまり…【幕末~明治維新】
第7章 朝鮮半島をめぐる外交と戦争…【明治時代】
第8章 アイデンティティの破滅へ…【大正時代~昭和時代初期】
結 現代への展望
<内容>
専門は中国近代史。その泰斗が中国を踏まえての日本史を描く。専門の近代史は面白かった。その視点から前近代史も日本史側が見ないようなことを指摘し、知的に遊ぶことができた。
投稿元:
レビューを見る
おおむね、序盤1/3が奈良時代から江戸時代まで、中盤の1/3が江戸時代、終盤1/3が明治から第二次大戦まで
細かい知識の羅列はなく、著者の考えが分かりやすく展開されているので、読みやすい
序盤1/3の記述はあっさり 遣隋使、遣唐使を通じて中国の知見を積極的に取り入れてたんじゃないの? 日本の仏教文化はこの時代に形成されたんじゃないの?と習った気がするので少し物足りない
中盤以降が著者の分析が面白くなってくる 戦国時代から江戸時代にかけての日本国内の経済状況、農村と都市の発展の拡大、幕府の経済政策など、とても説得的感じられる
終盤は日本と中国との関係に絞って江戸幕府・明治政府と清朝との関係、日清戦争→日中戦争について 日本と中国との関係に絞った説明なので、全てが説明されているわけではないが十分に説得的だし、面白い
続けて歴史の本が読みたくなる
投稿元:
レビューを見る
今では政治的にも経済的にも不可分な日本と中国。
ただその関係は常に複雑で、私自身は妙な「しこり」を感じていましたが、本書によって、しこりは大いに小さくなりました。
日本史・世界史と二分化し、学校教育の中でも不人気になりがちな学問も、このように整理されれば、とても面白く学べると思うのですが…
投稿元:
レビューを見る
前著「世界史とつなげて学ぶ中国全史」が面白かったので、読んでみた。
最近、昭和史の本を読んで、どうして日本は中国や米国との戦争に向かったのかというところを学んでいて、一つ一つの事件に含まれるなかなかに現実の複雑性を味わっているところで、いわばかなりミクロの視点を見ていたところ。
で、この本は、「日本全史」というロングスケールの時間軸で、かつ中国史、および中国との関係史のなかでの超マクロな視点で、その辺のところを論じている。
前著と同様に、だれがどう判断したとかみたいな話しではなくて、気候、人口、経済とかのマクロな要因を中心に世界史との関連のなかで議論が進んでいく。
なるほど、日本が中国から受けた影響、そして、日本が中国に与えた影響のなかで、近代においては、日中の対立がどう展開していったかが構造的に解明される印象。
そして、戦後においても続く日中、日韓関係の問題も一貫した視点で理解することを可能してくれる。
ちょっとマクロすぎる感じはするけど、この視点は大事だな〜。
投稿元:
レビューを見る
日本が中国から影響を受けているのはそうだよなという感じだったが、近代になって日本が中国に与えた影響もあるというのが興味深かった。国民や憲法という言葉は、西洋から日本経由で中国で広まったらしい。
日本はもともと為政者と一般ピープルの壁があまりなく、中国は完全に分断されてたから国民国家の目覚めも日本の方がハマりやすかった、というのも納得。面白かった。
投稿元:
レビューを見る
日本の歴史を中国との歴史との関連という点から捉えた一冊。本書の目的は中国史・世界史のひろがりの中で、日本とその歴史を体系的に捉えなおすこと、著者も述べています。
歴史をいろいろな視点から見ることのできる本は積極的に読もうと思っていますが、これもその一環です。
日本にとって中国は、古代から大きな影響を受けてきており、古くは遣隋使・遣唐使、日宋貿易や勘合貿易、白村江の戦い、元寇、朝鮮出兵、日清戦争、日中戦争など、いろいろな場面で関係が見えてきました。本書では、そのような表面上の関係ではなく、かなり深いレベルでの考察が多く、かなり興味深い内容でした。
著者は、本書をまとめた結果、今後も大陸・半島と友好関係を築くのは難しい、と結論付けています。一方で、歴史的な経緯をわきまえて目前をみつめなおすこと、自他の客観的な理解につとめ、それを粘り強く表現説明してゆくことが重要としており、私たち自身が歴史を学び、それを教訓に、今後どう行動すべきか、非常に大きな問題を提起された、考えさせられる内容でした。
<目次>
第1章 日本史は中国の“コピー”から始まった【古代~平安時代】
第2章 アジア・システムからの離脱【平安時代~鎌倉時代】
第3章 「日本全体が入れ替わった」時代【室町時代~戦国時代】
第4章 「国家」の成立【江戸開府~元禄・享保時代】
第5章 「凝集」する日本【享保時代~開国前夜】
第6章 開国と日中対立の始まり【幕末~明治維新】
第7章 朝鮮半島をめぐる外交と戦争【明治時代】
第8章 アイデンティティの破滅へ【大正時代~昭和時代初期】
結 現代への展望
投稿元:
レビューを見る
以前から日本史を理解するには、中国史との関係を探るのが一番ではと思っていて、この本のタイトルを見た時、これが求めていた本だと思った。
古代から近世までの中国王朝と日本の関係は想定内だったが、何より今まで脈々と続く、近代日本と中国の関係こそ、この本の真骨頂と言える。
国民国家になる素性を持っていた島国、日本と、大陸で多くの民族や国家との侵略、交流がらある多元的国家たる中国の関係は今まで思いもよらなかった視点で面白い。
投稿元:
レビューを見る
第1章 日本史は中国の“コピー”から始まった 古代~平安時代
第2章 アジア・システムからの離脱 平安時代~鎌倉時代
第3章 「日本全体が入れ替わった」時代 室町時代~戦国時代
第4章 「国家」の成立 江戸開府~元禄・享保時代
第5章 「凝集」する日本 享保時代~開国前夜
第6章 開国と日中対立の始まり 幕末~明治維新
第7章 朝鮮半島をめぐる外交と戦争 明治時代
第8章 アイデンティティの破滅へ 大正時代~昭和時代初期
結 現代への展望
投稿元:
レビューを見る
日本は客観的にみてどうだったのかがわかる。
島国発展遅い。文字を使うようになったのは6世紀ごろかぁ。いまもIT化もろもろで遅れをとっている。
日本が中国をコピーし、中国が日本をコピーする。
日本がバルブ崩壊後、中国もコロナ後くらいに崩壊している。日本もかつて鎖国をしたが、中国も情報を遮断している。GAFA製のほうが中国のよりもスマートで使いやすいかなと思うので、アメリカのIT技術が中国を完全に侵食してしまったら、中国の経済発展は見込めないだろう。とりあえず歴史は繰り返される。
福沢諭吉よ。
とりあえず日本人は日本にいて、中国人は中国にいて矛盾を抱えて生きている人も多いんじゃないかと思う。ほかの国はどうなのだろうか。
日本が中国と比べて、小さくまとまっているのは、いまも昔も変わらないのか。
世界史編とセットで読むと面白い。