中国のデジタル化の先進ぶりに驚く1冊です
2022/01/30 10:40
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国が、いかにデジタル化に長けているかを著者が的確に示した1冊です。
あれだけ多くの人口を、よくぞデジタルで統制しているものだと、そのスケールの大きさに驚きました。やはりこの国はただ者ではない、と改めて思い知りました。
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「デマ大国」かつ「幸福な監視国家・中国」が「健康帝国」化する日。これは権威主義体制の「勝利」なのか?
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「中国「コロナ封じ」の虚実デジタル監視は14億人を統制できるか 高口康太 中公新書ラクレ 2021年 840円
第3章のデマと迷信を乗り越えてが面白かった。新書だからしょうがないけど、どれもトピックをざっとまとめた感じ。比較的最近の中国事情をざっと読むには良い。
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〇新書で「コロナ」を読む⑩
高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ、2021)
・分 野:「コロナ」×「中国」
・目 次
はじめに
第1章 14億人を封じ込めた大動員
第2章 デジタルに導かれる人々
第3章 デマと迷信を乗り越えて
第4章 摩天楼と城中村
おわりに
・総 評
本書は、中国におけるコロナ対策の「実態」を論じたものである。コロナ発祥の国として、一党独裁の国として、また、世界有数の「デジタル大国」として、中国に関する様々なニュースが飛び交っているが、その「実態」はよく見えてこない。実際に中国を訪れて取材にあたった著者は、千葉大学客員教授も務めるジャーナリストで、これまでも中国に関する著作を発表している。
中国は、どのようにして「コロナ封じ」を実現したのか――現地を取材した著者によれば、そのポイントは以下の3点にまとめられる。
【POINT①】「人海戦術×デジタル化」という戦略
中国では、コロナ対策の原則である「感染経路の切断」を、一党独裁の政治体制の下で「きわめて暴力的な手法」で貫徹した。だが、それを支えたのは、中国共産党員を中核としたボランティアや、地域密着型の公務員である「居民委員会」や「網格員」の存在であった。こうした大量の人員を動員する一方で、彼らの日々の報告をデジタル化することで、上級組織との共有や記録の保存が効率的に行われた。即ち、住民の中に入り込む制度とデジタルを組み合わせ、より精緻に現地社会を把握することができたと指摘する。
【POINT②】「インフォデミック」(=フェイクニュースの拡散)との戦い
多くの先進国がコロナをめぐるフェイクニュースに翻弄される一方で、日常的にデマ対策を行っていた中国は「インフォデミック」への備えも抜きんでていた。その手法は、デマ(または党にとって不都合な言論)自体を「不可視化」するものや、ポジティブな情報(「正能量」)でメディアを満たし、批判や罵倒などのネガティブな情報を封じ込めるものであった。果たして「フェイクニュースを含めた言論の自由」と「言論統制の副産物としての科学的に正しい健康情報」のどちらを選ぶべきか――と筆者は指摘する。
【POINT③】デジタル化が「人治の国」にもたらすもの
中国は、トップの一存で国を自由に動かせる権威主義体制でありながら、新型コロナウイルス感染症の原因となった食習慣(野生動物を食材とした料理)を変えられなかった。その背景には、中国が「人治」の国であり、特に末端では人間関係がものを言うため、一貫した法律やルールの運用(法治)が困難であるという事情が存在する。しかし、中国がデジタル化を進め、コンピューターが法を管理するようになれば、人々がどのような悪事善事を行ったかは透明化され、人治の弊害を克服できる可能性があると指摘する。
中国のコロナ対策を見ると、デジタル技術の活躍ぶりもさることながら、それを支える「社会規範」についても、いわゆる“民主主義体制”の国家とは異なる��理が存在することが分かる。中国が情報の管理・統制をさらに強める中、日本を始めとする“民主主義体制”の国家はどのように対応していくのかを考える必要があるだろう。ただ、コロナのような命そのものが脅かされる状況では「人権やプライバシーといった理念」は「分が悪い」とする著者の指摘は、冷静に受け止めなければならない。
(1242字)