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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国のコロナ対策がどうして成功した(ように見えた)か。実際にどのような方法で対策がとられていたのかを地道にしっかり検証した本。
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「デマ大国」かつ「幸福な監視国家・中国」が「健康帝国」化する日。これは権威主義体制の「勝利」なのか?
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「中国「コロナ封じ」の虚実デジタル監視は14億人を統制できるか 高口康太 中公新書ラクレ 2021年 840円
第3章のデマと迷信を乗り越えてが面白かった。新書だからしょうがないけど、どれもトピックをざっとまとめた感じ。比較的最近の中国事情をざっと読むには良い。
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〇新書で「コロナ」を読む⑩
高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ、2021)
・分 野:「コロナ」×「中国」
・目 次
はじめに
第1章 14億人を封じ込めた大動員
第2章 デジタルに導かれる人々
第3章 デマと迷信を乗り越えて
第4章 摩天楼と城中村
おわりに
・総 評
本書は、中国におけるコロナ対策の「実態」を論じたものである。コロナ発祥の国として、一党独裁の国として、また、世界有数の「デジタル大国」として、中国に関する様々なニュースが飛び交っているが、その「実態」はよく見えてこない。実際に中国を訪れて取材にあたった著者は、千葉大学客員教授も務めるジャーナリストで、これまでも中国に関する著作を発表している。
中国は、どのようにして「コロナ封じ」を実現したのか――現地を取材した著者によれば、そのポイントは以下の3点にまとめられる。
【POINT①】「人海戦術×デジタル化」という戦略
中国では、コロナ対策の原則である「感染経路の切断」を、一党独裁の政治体制の下で「きわめて暴力的な手法」で貫徹した。だが、それを支えたのは、中国共産党員を中核としたボランティアや、地域密着型の公務員である「居民委員会」や「網格員」の存在であった。こうした大量の人員を動員する一方で、彼らの日々の報告をデジタル化することで、上級組織との共有や記録の保存が効率的に行われた。即ち、住民の中に入り込む制度とデジタルを組み合わせ、より精緻に現地社会を把握することができたと指摘する。
【POINT②】「インフォデミック」(=フェイクニュースの拡散)との戦い
多くの先進国がコロナをめぐるフェイクニュースに翻弄される一方で、日常的にデマ対策を行っていた中国は「インフォデミック」への備えも抜きんでていた。その手法は、デマ(または党にとって不都合な言論)自体を「不可視化」するものや、ポジティブな情報(「正能量」)でメディアを満たし、批判や罵倒などのネガティブな情報を封じ込めるものであった。果たして「フェイクニュースを含めた言論の自由」と「言論統制の副産物としての科学的に正しい健康情報」のどちらを選ぶべきか――と筆者は指摘する。
【POINT③】デジタル化が「人治の国」にもたらすもの
中国は、トップの一存で国を自由に動かせる権威主義体制でありながら、新型コロナウイルス感染症の原因となった食習慣(野生動物を食材とした料理)を変えられなかった。その背景には、中国が「人治」の国であり、特に末端では人間関係がものを言うため、一貫した法律やルールの運用(法治)が困難であるという事情が存在する。しかし、中国がデジタル化を進め、コンピューターが法を管理するようになれば、人々がどのような悪事善事を行ったかは透明化され、人治の弊害を克服できる可能性があると指摘する。
中国のコロナ対策を見ると、デジタル技術の活躍ぶりもさることながら、それを支える「社会規範」についても、いわゆる“民主主義体制”の国家とは異なる��理が存在することが分かる。中国が情報の管理・統制をさらに強める中、日本を始めとする“民主主義体制”の国家はどのように対応していくのかを考える必要があるだろう。ただ、コロナのような命そのものが脅かされる状況では「人権やプライバシーといった理念」は「分が悪い」とする著者の指摘は、冷静に受け止めなければならない。
(1242字)