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アオハル感、増し増しな(4)である。
前巻で、全力の努力をしたものの、優勝を惜しくも逃してしまった棗たち。
負けてしまったのは、三年生である八草先輩に優勝旗を渡せなかったのは、自分の力が足りなかったからだ、と己自身を責める棗は、友人たちに合わせる顔がなく、学校に行けなくなってしまう。
そんな傷心の棗は、自分はヒーローになれないんじゃないか、この世にヒーローはいないんじゃないか、と自分の信念を捨てそうになった。
けど、ネガティブスイッチが入ってしまった棗の言動に、怒りと悲しみ、そして、棗への感謝を炸裂させ、彼を見事に復活させます、棗のヒロインになりたい夏目ちゃんが。
努力が実を結んで優勝したって展開でも、それはそれで面白かっただろう。けど、このストーリーを読んでしまうと、確実に劣っていたな、と確信できる。
言うまでもないが、勝利、それは大事だ。しかし、勝ち続けられる人間なんて、この世界には、きっと、いない。
強い、強くなれる、自分を変えられる人間は、敗北を知り、涙を流し、そこから立ち上がって、前に歩き出せた者だ。だから、夏目ちゃんのヒーローになる、その気持ちを取り戻して、ヒーロー道を再邁進し始めた棗は、きっと、もっと、強くなる。
復活した棗と、復活させた夏目ちゃんは、学生イベントの花形とも言える修学旅行へ。そこで起きたトラブル、これもまた、ヒーローになりたい少年と、ヒロインにしてほしい美少女らしいもので、ギュンギュンが止まりませんでしたわ。
不穏とまではいかないにしろ、何やら、緊迫した空気を出して、(5)に続いているので、こりゃ、気合をしっかりと入れた方が良さそうだ。
この台詞を引用に選んだのは、夏目ちゃんの棗へのキモチが、しっかりと詰め込まれてるなぁ、と感じたものなので。
憧れている相手に、こんなコトバをかけられて、自分の足で立ち上がって、前に進み直す覚悟を決めなかったら、もう、そりゃ、漢じゃない。
てめぇで、てめぇの金玉を落とせ、と鉈を投げたいくらいである。
しかし、何とも判断しがたいな、夏目ちゃんが抱いている感情は。
棗への「好き」が大きく、ピュアで、キラキラしたものであるのは、まず、間違いない。
ただ、これが、恋愛感情の「好き」と言い切って良い物か、が私には迷うトコだ。
私の人生経験が浅いってのも大きいんだろうが、恋愛って言うよりは、敬愛って呼ぶべきものなのか、これは?
まぁ、尊敬しているからこそ、恋心を抱く事もあるだろうから、その辺りは、ゆっくりと見守りたいものだ。
いずれにしても、この二人が尊いのは確かなんだから。
「わたし、お前の全部が好きだ。だから、いいんだよ、負けたって。失敗したって、落ち込んだって、それでも、前を見て歩くから、ヒーローなんだ。お前には、それができる。わたしが信じてる。だって、お前は、わたしのヒーローだもん。いつもみたいに、笑ってほしいよ。眉間に皴寄せてさ、フフフってかっこよく。そして、これは、わたしのわがままだけどさ、いつか、最高のヒーローになって、最後は―――わたしを、お前のヒロインにしてくれよ、棗」(by夏目ちゃん)
もう一つ、グッと来た台詞を。
先に挙げた棗ちゃんの言葉で、より成長したな、棗と、感じる事ができるものだ、これは。
やっぱり、最強のヒーローは、最愛のヒロインがいてこそ、最高のヒーローになれるんだなぁ、と思う。
ヒロインがピンチの時、真っ先に駆け付け、助けの手を差し出し、笑顔を取り戻させてこそ、ヒーロー!!
棗の何が凄いって、この言葉から、まだ、成長するだろうな、と感じさせるトコだ。
「フッ、フフフフフフフフフフ、いいのですよ、たくさん、はしゃいで。迷子になっても、心細くなっても、寂しくても、動けなくても。なぜなら―――俺がいます!!俺がまた、見つけます!!見てください、俺を。ここまで、まっすぐ、迷わず、まっすぐ、夏目を見つけることができたのですよ!!これは、きっと、俺が夏目のヒーローになれる、と暗示しているのですよ!?だから、そんなに自分を責めないでください。ここは、笑顔で、ありがとう!!なのです?」(by棗)