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峠越えの山道にある古びたレストラン「ドライブインまほろば」。
経営しているのは一人娘の里桜を交通事故で亡くし、夫と離婚した比奈子36歳。
そこへ「義父を殺した」という小学校6年生の坂下憂が父親の違う妹の来海5歳を連れてやってきて「何でもするから8月いっぱいだけ置いてください」と頼まれます。
憂は8月の終わりに、十年にいっぺん現れるという十年池を見たいのだと言っています。
比奈子は憂が、おそらく親から虐待を受けていたことを感じ取り、勘によって憂と来海を警察には連れていかず、8月いっぱい匿うことに。
以下最後までネタバレしていますので、お気をつけください。
憂の義父の坂下流星には双子の兄の坂下銀河がいてヤバい系の仕事をしていたので、憂の盗み出したノートパソコンを追って探しにやってきます。
憂は来海を連れて逃げ出し、比奈子は銀河を包丁で刺し立ち向かいますが、かなわず、二人で憂の行った、十年池を目指します。
作者の遠田さんは今回も凄いと思いました。
最低の父親、流星と銀河の物語もちゃんと読ませてしまうところがなんといっても凄い!
そして、憂と銀河と比奈子さんは十年池で夜を明かし、一晩話をして、十年池の言い伝えにあるように、生まれかわります。
そして憂が生きる希望を見出したこと。
比奈子さんのおかげで銀河とその妻と子もやり直すことになったこと。
比奈子にも希望が見えたことは本当によかったです。
そして何といっても、遠田さんの作品の中でもまれに見る悪役キャラが再生したのは本当に凄い作品だと思いました。
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親に虐待されて育って「生まれていいことなんか何もなかった」と語る憂。極悪人に見える親やその兄も苦しみを背負い、そして大切にしたい存在を抱えている。
ストーリーに引き込まれて一気読み。
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★4.5
途中までは満点。ラストがややご都合主義でうまくまとまりすぎたハッピーエンド。人、殺してますけど…。そんな幸せでいいんですか?
伊坂作品のフーガとユーガみたいな、銀河と流星。どちらも虐待にあって深い絆で結ばれているけど、本作の双子は人に迷惑かけているぶん感じが悪い。それぞれ事情を抱えた登場人物たちの寂しさが共鳴しての十年池の魅せるファンタジーだった。
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山深い所にある「ドライブインまほろば」。かつては繁盛していたが、高速道路ができたことにより、客足は激減し、廃業していた。しかし、あることがきっかけで、比奈子は一人で切り盛りすることになった。
そんな時、突然お店に二人の幼い兄妹が現れた。「夏休みが終わるまで、ここに置いて欲しい」とのこと。その風貌に必死さが伝わったり、かつての亡くなった娘と重なった部分もあって、受け入れることになった。
時を同じくして、弟の息子が弟を殺害したということで、兄はその息子を見つけようと奔走する。
負の連鎖によって翻弄されるそれぞれの家族が、読んでいて心苦しい気持ちもなりましたし、怒りや虚しさなどあらゆる感情が渦巻いてきました。
自分の母によって子供が亡くなった母、弟が殺害された兄、養父を殺した息子。何かしらの暗い過去を抱えていますが、
絶望の状況からどう這い上がっていくのか。読み進めるたびに何度も誰か救ってくれと思わずにはいられませんでした。
遠田さんの描く「不幸」な描写は、良い意味で素晴らしく、心を揺さぶられました。不幸から幸福へと導く過程は、クリアではないですが、希望の光が灯されるような明るい方向へと進むので、いつも遠田さんの作品には期待が高まります。
たしかに一部には犯した罪など許せない部分もあります。それをどうカバーしていくのか。なかなか一人では答えを出せません。周囲の人たちがいることで、再生していくんだなと改めて感じました。
一度崩壊したら、完全に元には戻れません。読み進めるたびに心苦しい場面はありましたが、暗い気持ちだった分、最後は清々しく読めました。
それにしても、大人の身勝手さに子供を巻き込むなと何度思ったことか。読んでいて腹立たしさが何度もありました。
自分も気をつけなければいけないなと肝に銘じました。
そしれ最後に登場する「十年池」。描写は美しく描かれていて、心が浄化したような感覚もあって、一度で良いから、見てみたくなりました。
人々との温かみ充分に味わえた作品でした。
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202201/遠田作品は残酷なほどのリアルさと、うっすらとしたファンタジー加減が絶妙。感情描写がリアルだし読んでて胸が痛いことが多い。そして今作もつらい連続だったけど読む手は止められず一気読み。絶望と一筋の希望、見事な作品だった。
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優が月明かりの下で激しく震えながら泣く場面がいちばん切なかった。銀河、流星の双子の話には嫌な気持ちになったが、比奈子が愛娘を亡くした悲しみから目の前にいる子供たちを必死に守ろうとする強い気持ちが切なくも感動した。子供は死んではいけない。なにはともあれ優が生きてて良かった。
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幼い子供が店に転がり込んでそれを手伝うところに「アンチェルの蝶」を、酷い環境で育った兄弟というところに「オブリヴィオン」を想起させられます。
ただ、それらの作品以上に暗くて重い内容。憂の境遇はもとより、他の人物たちも何かしら過去に “傷” を負っていて、彼らには憐憫の情が芽生えてきます。
ただ、流星は凄絶な過去があるとはいえ憂への仕打ちがあまりに酷く、後半にその過去が明かされはしましたが同情の余地はないかな、と。
銀河については流星の過去を知らなかったことを差し引けば、流星に比べれとまだ救いがある方かとは思いますが、やはり過去に数多の女たちを売ってきたことを考えると、感情移入はしにくかった気がします。
そうした引っかかるところはありつつも、終章に至るまでがかなり辛い内容だったため、比奈子や慶子、憂、来海、光が希望を持てるような結末だったことには心底ほっとしました。過去に傷を負ったもの同士、何かを補い合う形で前向きになれているところがポイントなのかな?
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さすが、安定のクォリティ。タイトルの能天気な響きから、ひょっとして今回は軽い内容?とか思ってもみたけど、全然そんなことはありませんでした。やはり通底するテーマは贖罪。今回は子どもがメインということもあり、少し違った味わいも感じられはする。リーダビリティも高く、相変わらず読み進むうちに心打ち震えるんだけど、さすがに、初めて氏の作品に触れた衝撃は越えられませんわな。でも、きっと読み続けてしまうんだろうけど。
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少し前に話題になった「親ガチャ」という言葉を思い出す。
親は選べない。その絶望感に打ちひしがれながらも、どこかにまっとうに生きる道はないのか自問しもがく人々。
寂れた山間のドライブインに吸い寄せられるように出会った彼らの人生は再生されるのか。
こういう終章が邪道だとする人もいるかもしれないが、私は物語の行く末をはっきりと知りたいほうなので、ほっとした。
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少年が継父を殺害するところから始まる物語。
衝撃的な始まりから一気に読んでしまいました。
あまりにも登場人物達の人生が重すぎる…。
読んでいて辛くなる描写が多々あるのに、読むのを止めることが出来なかった。
負の連鎖を断ち切ることが出来るのか、この人達に救いはあるのか。
ーーいろんな親といろんな子供がいる。
家族だからこそ切り離せない、辛いけど我慢するしかないと思ってしまう。
子供だったら尚更。
逃げ出しても生きていってほしい。
重いけど、良い作品でした。
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どんどん読めていける展開です。
親と子の関係、一人ひとりの心をよく表現してます。
本文より
あなただけが不幸なんやない。でも、あなたの気持ちがわかるとも言えない。人の気持ちがわかる、なんてこと簡単に言ってはいけないから。でも、一つだけ確かなことがある。子供は死んではいけない。なにがあっても大人は子供を助けなければいけないの。
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生まれ育った環境は、考え方や性格に影響しているのだろうと思わされる。
環境に恵まれず、罪を犯してしまう、そして自分が親になった時に同じことを繰り返してしまう負の連鎖。
親子関係って実は他人よりも難しいと思うときがある。
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序盤から驚きの展開。
虐待を受ける子どもって逃げ道がないよね…
未熟な脳で必死に考えても大人を頼りに生きなくちゃいけないし、どうしようもない。
そして、その子が大きくなってまた虐待を繰り返すことが多いという。負の連鎖。
ドライブインというとレトロな響き。
物語の中で「ドライブインまほろば」は昔は流行っていたけど、別の道路ができたために廃れていった。
離婚して戻った女性が一人細々と経営している。その女性は娘を亡くしている。
その「まほろば」に逃げて来た幼い兄妹。
静かな3人の生活が始まるが…
親ガチャというが、親でその子の運命は大きく変わる。
親に翻弄された人生をある時点で大きく変えること=生まれ変わりだと思う。
登場人物たちもあることを転機に生まれ変わる。
遠田さんの描く物語は重くて辛いけど、時々面白い表現がある。
あだ名の付け方が秀逸だし、ウーパールーパーのウーちゃんには和んだ。
北海道に本当に銀河と流星の滝があるらしい。あの兄弟は一緒にそこを訪れ母親に会うことは出来なかったけれど、虐待の連鎖は止められた。「まほろば」によって。
瀧井朝世さん解説の"膿を出し切る"という表現がまさに!という感じだった。
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フィクションでよかった
遠田潤子さんの本を初めて読んだのですが、題名から勝手に
ナミヤ雑貨店の様な話しなのかなと思って読み始めて全然違う、、、と心して読みました。
もちろん涙です。
どんな事があっても、子供は死んだらいけない
生きるのに誰の許可もいらない
小説の中なのに、心に錘が置かれたような重さを感じました
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最初から最後まで読む手を止められなかった。
それぞれの立場で考えると、自分も決してそうはならないという自信がない。それだけに救いを求めながら読み続けた。
結末も無理なく、嫌な感じもなく読み終えることができてよかった。