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道誉と尊氏の神経戦
2024/09/27 16:57
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投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が南北朝時代について最初に読んだのは中公文庫の日本の歴史シリーズの佐藤進一氏による「南北朝の動乱」であるが、佐藤氏は足利尊氏を「躁状態が多い躁鬱病(現在では双極性障害と呼ぶらしい)」とか息子の義詮について「何一つ取り柄の無い」とか今思えば書きたい放題だった。
著者である北方氏は、余り書く作家のいない鎌倉末期から南北朝という時代を主題とした小説を数多く世に出しているという点で珍しい(有難い)存在である。
本書における主人公は題名のとおりバサラ大名として有名な佐々木道誉であるが、バサラ大名と言っても目立ちたがりとか言うのでなく、何を考えているか分からないが、要所要所で極めて的確な行動を人知れず行い、室町幕府を支える得体の知れない人物として描かれている。
そして、それに輪をかけて分からない人物として尊氏が登場するのだが、軍事的天才として室町幕府を成立させながら、軍事以外のことには「塞ぎの虫に」憑りつかれ、政務については興味を持たず、結果的に弟の直義と執事の高師直が対立する結果となっても放置し、高師直の没落も冷然と見送るが、直義を排除して嫡子義詮を後継者とする非情さを見せる。
義詮については凡愚では無いが凡庸な人物として描かれるが、これも尊氏は武将として有能な庶子の直冬よりも義詮を後継者とするが、これは直冬の母親に対する尊氏の嫌悪感に根差しているという設定となっていて、直冬は排除しようとすることが、直冬を養子とする直義との対立となり、観応の争乱につながるという流れが皮肉である。
佐々木源氏(宇多天皇の子孫)の庶流にして、京極氏(嫡流は六角氏)の祖となる佐々木高氏(出家して道誉)は近江という京都と東国を結ぶ要衝を領地とし、商業や流通を重視した点において他の大名とは視点が異なり京都においては祇園社の宿舎である高橋屋で教養人として悠々自適に過ごし、自領を攻めやすく防御しづらい京都からの南朝から攻められた際の将軍家の避難先とする等、足利将軍家と密接な関係を構築し、室町幕府の有力大名としての地位を確立する姿が描かれているが、同時に何とか道誉のあらさがしをして切腹させようとする尊氏との神経戦が展開する物語となっている。
北方氏は本書において尊氏と直義兄弟の争いの原因を直冬に求めているが、中国の宋王朝では初代太祖と弟である太宗の兄弟では、政務は太宗が握っており、太祖の急死の後即位した太宗は太祖の子供を皇位から退けている例もあり、尊氏は直義が幕府の実権を掌握することにより、直冬が後継になるのを嫌ったという筋書きとなる。 そして義詮を後継者とするために動いた結果として直義と高師直の対立、師直滅亡後の尊氏と直義との兄弟相克となり、最後に直義の死となるが、直義と最後に面会し涙を流した後に部下に対して冷酷に直義暗殺を命じる場面が印象深い。
また、優れた武将でありながら、時代を見ない南朝方の命令により、使い捨てのように死に追いやられる楠木正成とその一族が、主に恵まれない武士の姿としてこれまた印象深い。
道誉と尊氏との神経戦は、尊氏が病み衰えていく中で変わっていき、尊氏の死とともに終焉を迎えるが入れ替わりのように誕生した義詮の息子(後の義満)に新たな希望を抱いていく結末となっている。 なお、道誉の時代に本家の六角佐々木氏に対して優位に立った京極佐々木氏だが、戦国時代には六角氏の方が優位に立ったものの、織田信長と対立して没落した六角氏に対して、家臣の浅井氏に実権を掌握されながら、その浅井長政の娘(初:常高院)を妻と迎えた高次が大名としての京極氏を残している。
近江佐々木氏
2024/10/27 07:14
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
室町時代南北朝時期に活躍した婆娑羅武将の生き様。紆余曲折で掴み所がない人物を小説で描く。
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