投稿元:
レビューを見る
大河『平清盛』と百人一首の歌人を想像しながら読みました。貴族社会とは違った視点の平安末期の短編集、楽しめました^_^
投稿元:
レビューを見る
五編の短編ミステリー小説。平安時代(白河上皇〜二条天皇)
院政、武士台頭、藤原摂関家、河内源氏と伊勢平氏
平治の乱、保元の乱…色々とウィキペディアで調べながら読みすすめました。
歴史小説だけど現代の大人社会に重なることも多い。
「世は推移する」上つ方も不安定で権威も案外断固なるものでもないようで、皆必死なのよ。
最後の編 [鴻雁北]の、平清盛がなんだかクールでいい!
どの編にも強くて賢く頼もしい女性達が登場。
人はもがき生き抜くことは身分違えど誰しも同じと改めて思う。ぼちぼち頑張っていこうと気持ちが湧く。
投稿元:
レビューを見る
武士の台頭が始まる頃の平安末期の物語。こんなムダな権力争いばっかりしてたら、そりゃ武士も台頭するわ!と思いました。平清盛がなんだか素敵で珍しい。短編なので読みやすいです。
投稿元:
レビューを見る
netgalleyにて読了。
舞台は平安末期、平氏と源氏による武士の台頭が顕著になる時代、丁度今の大河ドラマの世界に繋がる時代といったところ。
不安定な世情を生きる、中流階級以下の男女を描く。
5つの物語は、それぞれ時を同じくして少しずつ違う場所、違う立場の者たちの心情が見事に描かれている。
どれももう少し先を知りたい、と思うところで終わっており、最終章でまとまるのかと思ったが、そうではなかった。
どの章でも、現代にも通じる女性たちの生き辛さのようなものが根底に流れている。
平安時代頃からの日本史は、名前が覚えられず苦手なため、人物相関図があればより一層物語が楽しめたかな、と思う。
2022.4.10
投稿元:
レビューを見る
ちょうどアニメ「平家物語」や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と時代的にもかぶるところがあるので、
この時代の人々の暮らしを多角的に眺めることができて楽しかったです。
歴史に名が残る人々の周囲で、翻弄され、賢明に生きた人たちの物語。
投稿元:
レビューを見る
白河の命で平正盛が討った筈の源義親が、鳥羽院政期の都に出現。それも二人…平忠盛の忠誠心がタヌキな鳥羽に試される表題作。死にそうな母の為に奉公中の姉の似顔絵をとの童の願いを叶えようとする僧絵師が、女傀儡に踊らされるのと絡む、プチ謎解きになっている。
藤原泰子の執念深い復讐がうすら寒い「白夢」。でも10代って、7歳年下に恋心を抱けるもんか??美福門院との新婚生活に邪魔な第一子を押し付けられても、刷り込まれた恋心が忘れられないもんかねえ…。使用人の動きや手紙や伝聞でしか登場しない待賢門院の人物造形が、むしろ効果的。
「影法師」は飛んで後白河院期。《平治の乱》秘話…でもないが、大河ドラマで猿之助演じるアルカイックな文覚の、若かりし時代のエピソード。映画《地獄門》とはちょっと設定が違う。個人的には袈裟御前と言うと、芳年《皇国二十四功》の一枚が思い浮かぶ。
次が三条院炎上の後日譚。後白河と二条父子の歪み合いに巻き込まれた父・信西の死の謎を探る澄憲と、夫・二条にトコトン愛想を尽かす中宮・高松院姝子が対照的な「滲む月」。
そして最後が、乱世に台頭しながら自分の立ち位置を見失わない清盛が眩しい「鴻雁北」。垣間見える、琵琶に傾倒して意外に強気な二条が印象的。
投稿元:
レビューを見る
短編集5編
白河、鳥羽、後白河上皇へと移り武士が台頭してくる時代、権力争いの陰で翻弄される下々の者たちを描いている。
公家たちの生き様の見苦しさと武士たちの潔さが対比されて、清盛もこの頃までは清々しい。つまりは権力が全てを堕落させるのかもしれないと思った。
投稿元:
レビューを見る
鎌倉殿の前日譚といった位置付けの、保元の乱前後の京を舞台にした様々な視点のドラマ。
討ち取られたはずの「鬼対馬」こと源義親を名乗る者が二人も現れた事件
鳥羽天皇に寵愛された美福門院得子を呪詛したとして待賢門院璋子が失脚した事件
後に文覚と名乗る武士・遠藤盛遠が人妻に懸想しその夫を殺害しようとして誤って妻女を殺した事件
平治の乱で自害した信西上人の息子・澄賢が、二条天皇の后で後白河院の異母妹・高松院姝子と密通した事件
勉強不足で知らなかったが、こうした様々なスキャンダルや事件が実際にあったらしい。それらを澤田さん流に解釈してあるのが面白かった。
ここに挙げていない、最後の琵琶の流派同士の争いの話は調べたが実際に起きたことなのかどうかは分からなかった。
この作品で描かれる平清盛が新鮮だった。武士よりは貴族になりたい人なのかと思っていたが、彼自身はあくまでも武士という立ち位置から揺るがない人だった。
一方の源義朝(頼朝の父)は二条帝と後白河上皇の争いに巻き込まれた形で敗北していた。平清盛と対立する気などなく、彼はただ武士として帝や上皇のために働いただけで可哀想な印象だった。
大河ドラマではただただ胡散臭い坊主だった文覚もこの作品では妙に格好いい。
一番印象に残った話は表題作ではなく「白夢」。
鳥羽上皇の寵愛を求める三人の女の三様の生き方が描かれている。
後白河という後ろ盾を失い、鳥羽上皇に疎まれる待賢門院。後ろ盾はないが鳥羽上皇に寵愛され次々と子を産む美福門院。待賢門院の勢力を削ぐためだけに皇后位を与えられたものの鳥羽上皇が通ってくることはない高陽院。
高陽院の主治医として派遣される女医・阿夜もまた子供が産めない。39歳になって輿入れした高陽院もまた鳥羽上皇の子を産むことはない。そもそも鳥羽上皇の心は美福門院にしか向いていない。
三者三様の人生を見て、阿夜は子供が産めなくても果たせる務めがある、年を経ても奪われぬ知識があると前を向く。
武士、僧、女、楽人(楽師)…それぞれから見える権力争いの醜さと残酷さ。簡単に摘み取られる命と明日はどの立ち位置になっているか分からない危うさ。一方で揺らぐことのないものもある。
『上つ者』たちに良いように利用され簡単に切り捨てられる存在であっても心があり矜持もある。
こんなことばかり繰り返しているから、後にひっくり返されるのも当然だと改めて思った作品だった。
とにかく人間関係が複雑なので、冒頭の人物関係図だけでは足りない。自分なりにノートに書きながら読み進めた。これから読まれる方もそうされることをお勧めします。
投稿元:
レビューを見る
平安時代末期の京を描く歴史小説短編集。
「漆花ひとつ」
「白夢」
「影法師」
「滲む月」
「鴻雁北」
の5編収録。
主人公は架空人物が多いのですが、ほとんど無名な実在の人物が絡むことで当時をリアル体験しているような気がしました。
ただ、言葉がべらんめえ調だったりして、公卿も京ことばを使わず標準語だったりするのでちょっと違和感ありです。
とはいえ、永井路子さん亡きあと古代・中世の時代を描ける作家がいないので、永井さんの骨太な歴史小説ではないにしても、大変うれしい著者です。