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即興詩人のストーリーに沿って、画家本人が旅をしながら、イタリアの名所をスケッチした本。
即興詩人が読みたかったわけではなく、安野さんの絵が見たかったので買った。
物語のあらすじとともに、森鴎外の訳を引用しているので、なんとなくではあるけれど即興詩人がどんなストーリーなのかはわかる。でも画家本人は、これを読んだからと言って即興詩人を読んだ気になって欲しくない、と断っている。あくまで紀行画文集として楽しむ本だ。
画集としてはとても良い。安いし。即興詩人のストーリーを知らなくても、描かれている場所は有名なところがほとんどなので、絵だけ眺めていても楽しい。なんで表紙に中の絵を使わないのかが不思議だ。
美しいという鴎外訳の即興詩人を読んでみたくなったけど、引用されているような文章が延々と500ページ近くも続くのかと思うと読み通せる自信がない。
主人公のアントニオが初めてつくった即興詩を参考までに引用すると、こんな感じ。
「詩神は蒼茫たる地中海を渡り、希臘(ギリシャ)の緑なる山谷の間にいたりぬ。雅典(アテネ)は荒草断碑の中にあり。ここに野生の無花果樹の摧け残りたる石柱を掩へるあり」
美しい。でも、あきらめる。