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戦争をくぐり抜けた図書館と文学がテーマと思いましたが、バリ戦線を生きる女性の闇を描いてました。ほんのひと言がすべてを崩してしまう、そして取り返しがつかない、現代にも通じるそんな場面をまざまざと見ました。オディール主体のストーリーでもよかったかな。リリーパートが入ることで、腰が折れたようにも感じました。図書館での仕事ぶりが見てとれたのもよかったです。パリに行くことがあれば、アメリカ図書館見てみたいです。
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第二次世界大戦中、パリにあるアメリカ図書館の司書として働く20歳のオディールが信念にもとづいて行動し成長するが、ナチス占領下の余裕がない状態で嫉妬や裏切りが横行、それらを嫌悪する一方で自身の中にもその一部分を見つけ、後悔の思いから心の扉を閉じて40年が過ぎた頃、少女に出会い少しずつ解きほぐされていく。ナチス占領下の裏切り、ナチス占領から解放された後に生きていくためにナチスに加担せざるを得なかった女性に対する吊上げ行為などはどちらも根っこは同じように思う。それは今のSNSでの行き過ぎた誹謗中傷と同じでありそういうことをする人間がいつの時代も一定数いるということなんだと思った。憂うのは本作品のような話は、ついこの間まで過去のことでもう繰り返されないと思っていたが、そうではなくなってきていると肌で実感することだ。人種や国籍など関係なく隣にいる人を大事に尊重して暮らしていくことがいつまでも続いてほしいと思う。
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厚めの本だったけれど、あっという間に読み終えた。
第二次世界大戦下を舞台に描写される、裏切りや後悔、嫉妬など、決して綺麗ではない心模様は、とても印象に残った。
登場人物を通して、普段なら目を背けたくなるような感情に、向き合わせてもらった。あからさまに悪い人でなくとも持っていて、発動する感情であることを改めて痛感した。
「相手を恨まないように努力する、心の中のことはわからないから。」
ー リリーのスピーチより
本当にその通りだなと思う。
家庭を養うために働き、密告者の手紙を元にユダヤ人を取り締まるオディールの父、マーガレットへの仕打ちを許容したポールや、親友の秘密を暴露しようとしたリリーなど、彼らが私の心の中にも住んでいるという自覚と、上手に折り合いをつける姿勢を養いたいと思った。
最後の方で、オディールとリリーの出会いについて明かされるところ、良かったな。
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1939年パリ。新米司書のオディール。個性豊かな司書らと、図書館利用者たち。迫り来る戦争の影。
そして1983年アメリカ。孤独な老婦人オディールの過去に興味を持った少女リリー。
図書館で働く女性たちの生き様を描いた物語。
主人公は図書館の利用を禁じられたユダヤ人たちに本を届けたりもする。が、ナチスとの戦い的な部分はバックグラウンド的に描かれる。
家族と過ごす。友達と仲良くなる。好きな男性と結婚する。そんな当たり前の生活が、戦時では許されなくなる。日常が壊れていく。そんな物語。後半はかなりシンドイ。
何がイイって、まず表紙がいい。あと、扉絵が読後に見るとじわじわくる。
主人公はデューイ十進分類法でなんでも考えちゃう、ガチのビブリオフィリアで、このヒロイン造形もいい。
あれだけ図書館を愛した主人公が、どうして晩年をアメリカで孤独に過ごしているのか。終盤は一気読みでした。名作。
この話、舞台が日本だったら朝ドラにできそうだな。
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本と図書館を愛するパリジェンヌ、オディールはパリにあるアメリカ図書館に就職する。話は第二次世界対戦を軸に、人々に望む本を届けようと奔走する若かりし頃のオディール、その後アメリカで生活している年老いたオディールと近隣の少女との交流が交互に描かれる。何故オディールがアメリカにいるのか、心に何を背負ってしまったのか、次第に明らかになってゆく。実話をベースにして書かれた物語。
実際の発言であるこの一言が心に残る。
“ひとに他者の目を通して物を見せるような不思議な機能のあるものは他にない。図書館は異なる文化を結ぶ、本の架け橋だ”
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パリの図書館司書の、第二次世界大戦下での様子を描いた作品。
戦争が簡単に人を変えてしまう残酷さと、それでも文学が救いになることを噛み締めた……
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図書館が舞台の物語はそれだけでホッとするものがある。
オディールは心の傷を抱えて生きてゆくのだろうけれど、あなたを支えに生きてゆく人もいることを忘れないでほしい。
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物語は1940年から1944年の間、ナチスドイツの占領下にあったパリのアメリカ図書館ALPで司書として働くオディールの恋愛、友情、裏切りの日々と、1983年、モンタナの小さな田舎町に住むオディールと隣家のリリーというティーンエイジャーの交流の日々が並行して描かれる。
オディールの双子の兄のレミー、その婚約者で児童書担当の司書ビッツィ、英国大使館随行員の妻としてパリで暮らすイギリス人のマーガレット、オディールの求婚者で警察官のポール、占領下という極限の状況で展開する家族や友人、恋人との波瀾の日々。そして彼女がモンタナに住むに至った経緯が終盤にリリーに明かされる。
とても良い本でした。
いくつかの心に響いた言葉
リリーの母親の死後
「悲しみは自分自身の涙でできた海だ。塩からい大波が渦巻いている暗い深みを、自分のペースで泳いでいかなければならない。 元気を出すには時間がかかる。 両腕で水をかいていくと、物事が大丈夫なように感じられて、海岸は遠くないように思える日もある。 そこでふと何かの思い出が蘇り一瞬にして溺れそうになり、また振り出しに戻って、疲れ果て、自分自身の悲しみに沈みこみながら、波間に顔をあげていようとあがくことになる。」
“Grief is a sea made of your own tears. Salty swells cover the dark depths you must swim at your own pace. It takes time to build stamina. Some days, my arms sliced through the water, and I felt things would be okay, the shore wasn’t so far off. Then one memory, one moment would nearly drown me, and I’d be back to the beginning, fighting to stay above the waves, exhausted, sinking in my own sorrow.
リリーがオディールの過去を疑いオディールから絶交され、教会で神父に尋ねる場面
「どうして謝ることさえ、させてくれないのでしょう?」
「ときに、辛い時期を経験したり、裏切られたりしたとき、傷つけた人間を切り離すことがその後を生きるための唯一の手段になる場合がある」
“Sometimes, when people have gone through tough times, or been betrayed, the only way for them to survive is to cut off the person who hurt them.”
高校の卒業式でのリリーのスピーチ
「相手を恨まないように努力する、心の中のことはわからないから。 ひととちがうことを恐れない。自分の主張を守る。辛い時期には、永遠に続くものは何もないということを思い出す。ひとを自分が望むようにではなく、そのひとのままに受け入れる。ひとの立場に立ってみる。あるいは友人のオディールなら、“ひとの身になってみる”と言うでしょう」
“Try not to hold that against them; you never know what’s in their heart. Don’t be afraid to be different. Stand your ground. During bad times, remember that nothing lasts forever. Accept people for who they are, not for who you want them to be. Try to put yourself in their shoes. Or, as my friend Odile would say, ‘in their skin.’ “
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パリの図書館で働く人達の日常が、戦争によって人間関係までぐっちゃぐっちゃにされてしまう。占領とは、敵にも味方にも壊されるのかと……。
それでも生き抜く彼女達が素敵でした。
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1939年パリ。オディールはアメリカ図書館の司書に採用された。文学を愛する彼女は熱心に仕事に取り組むが、ついにドイツと開戦。図書館は戦地の兵士に本を送るプロジェクトを始める。だがドイツ軍がパリ市内に入り、ユダヤ人の利用者に危機が訪れる。利用者のために図書館員が考え出した方策とは――。戦下のパリと1980年代のアメリカを舞台に、オディールの波瀾万丈の人生と、ナチス占領下の図書館員たちの勇気を描く感動作!
オディールとリリーという二人の女性が主人公で交互に彼女たちの目線で物語が綴られていくスタイル。読者としてはリリーと一緒にオディールの過去を聞いているような感じになります。第二次世界大戦前のフランス、すごく素敵な雰囲気で始まるのに、いつの間にか戦争の足音が近づいてきて、気づいたときには全てが変わってしまっている怖さがありました。友人を裏切ってしまうオディールの行動は避難されるべきものだけれど、オディールのつらさや苦しみが分からないわけでもないから、苦しかった。言ってはいけないことを言ってしまうこと、私も今までの人生でたくさんあるから。でも傷つけた彼女のためにたくさんのものを捨てていけるオディールは強くて優しい人だ。
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1939年パリ。アメリカ図書館の司書になった20歳のオディールが、快活で小気味よい。本が大好きなのが分かるし、同僚や利用者と信頼関係を築いていく様子がすてき。仕事にこんなに楽しく一生懸命打ち込めるのは
うらやましい。ナチスに占領されたのち、人々が愛国的になっていく様子にひりひりする。
ボーイフレンドと会うことが彼女の心を支えていて、警官の彼が見つけてきた空き部屋でこっそり二人で会うのだけど、きっとそれ、家主のユダヤ人を失った部屋だよな、と気づいてしまって、ふたりの幸せの無邪気さがつらい。
オディールの親友のイギリス人女性は、敵性外国人として街角で捕らわれたたとき、自分を逃してくれたナチスと親しくなる。その秘密を告白されたオーディールは眉をひそめながらも、彼女が分けてくれる食料や嗜好品を受け取っている。きっと、ふたりとも誰かを思う気持ちで自分たちの精神を保てていることを知っているんだとも思った。誰かを好きになるときのきっかけや経緯って、他人には否定できないし、ただぼんやりとその気持ちへの共感があって、それが二人が親友である理由なのかな、と。
オディールは、ユダヤ人利用者に図書館の本を届けるレジスタンスをしているのだけど、彼女が大切にしていた利用者を、ボーイフレンドが逮捕していた。彼は素朴でナイーブで、自分の職務を全うすることが、そのユダヤ人を死に至らしめることを理解していない。
さらに彼がナイーブなのは、解放後のパリでナチスの協力者の女に暴力をふるったところ。ナチス相手に商いで利益を得ていた男が「フランス万歳」と寝返るのは構わないが、ナチスの雌犬になっていた女は許せないのだろう、街角でオディールの親友のことを襲撃し大けがを負わせる。
肩書きや価値観の暴力性に無自覚だ、「自分だってナチスに協力して、ユダヤ人を摘発したじゃないか!」と批判するのは容易だけど、被占領地で抑圧されてきた男性性が暴発するのは、どう評価すればいいんだろう。
オディールがパリを離れるときには、もちろん親友のこともあるけど、こういうシステムに裏付けされた無邪気な暴力を拒否したのではなかろうか。自分の幸せがこのナイーブさの上に成り立っていることに気付いて、その場にいられない気持ち。システムのせいなんだけど、それが自分の人生に紐づいているのって、本当につらい。
「ひどいことをしてしまったの」
「ああ、それなら、たいていのひとが理解できるな」
モンタナ州出身の負傷兵と交わしたやりとりは、パリでの幸せや苦しみを受け止めたのだと思う。胸のぬくもりを、綿シャツの柔らかさを感じた。安心できる気がした。彼女に必要なもの。なにか大きなことを乗り越えたあと、どんなに親しくしていた相手でも理解しあえないことは往々にしてある。アメリカ人の彼も同じような空白を抱えていて、そこにちょうどオディールが寄り添ったのだと思う。
このパリのアメリカ図書館、2020年に150周年を迎えた、実在する図書館。どんなふうにパリの街並みにあるんだろうか。行ってみたい。
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オディールとリリー
いつの時代も口が災いの素に・・・
それでも前を向いて行こう
このタイトルもいいけど
原題も捨てがたい
いいお話でした
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2つの時間軸で物語は進む。
一つは第二次世界大戦中。パリのアメリカ図書館。ヒトラーは占領した国の図書館からもユダヤ人を締め出しユダヤ系蔵書を没収した。敵の文化を根絶やしにするため。
それに立ち向かい、図書館を開け続け、ユダヤ人読者に本を届け、ユダヤ系蔵書を隠し、兵士に本を送った図書館司書たちの奮闘の記録。
もう一つは、1980年代、司書が歳を取ってから隣人の少女との交流。
次々と事情が明らかになって読むのをやめられない。愛情、友情、嫉妬、密告、後悔、学び。例えば嫉妬。人がやっていて、酷いなぁと眺めていても自分が同じ立場になったら?
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とても読み応えがある一冊だった!
ドイツとの戦争が始まり、図書館で働く人たちの普通の暮らしが少しずつ脅かされていく様子は読んでいて苦しく恐ろしい。
嫉妬に支配されて自分のことしか見えなくなって、大切な人に余計なことを言ってしまった経験は私もある。
だからオディールのやってしまった事はすごく身につまされたし、リリーが同じようなことをしようとした時にオディールが制止したところに希望を感じた。
自分の犯した過ちがきっかけで、友達も家族も婚約者も故郷も捨てることになったオディールが、再生していけるような希望を持てるラストで良かった。
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図書館員の物語でありシスターフッドの物語でもある。
オディールとリリー、年齢も環境も何もかも異なるふたりが初めて接した瞬間が実はどんな状況だったのか終盤で明かされたとき、涙が溢れて止まらなくなった。人はそんなにも不意に劇的に救われることがある、その瞬間は気付かなくても。