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目がさめるだけでうれしい人間がつくったものでは空港がすき
あかつきの君は洗濯機に告げる「おまえは六回ピーという!」と
たんぽぽの綿毛を吹けばごっそりと欠けて地球の居心地に酔う
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延々と挙げきれないほど好きな歌ばかりだった
自分だけの「かんぺきなせかい」を構築して、それを支配してる。
宇宙的なスケールから日常への落とし込み方。その妙にキレイで、浮遊感のある、かわいい世界観の徹底。そのためのモチーフの選び方や視点、スケール間を飛び越える表現。他の歌集も買う!
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美しすぎて眩しく、読み進めるのが辛い部分もあった。美しいものを素直に認められる美徳がある。短歌の句切れの前後で景色がガラッと変わり、イメージが結びつきづらいものもあった。多分それは自分の経験不足なんですが…。
おまえよく生きているなあと父がいうあたしが鼠にいったことばを
寄り弁をやさしく直す箸 きみは何でもできるのにここにいる
歩道橋にのぼってさけべ願いごとは轟音に溶けこませたら叶う
ホットケーキ持たせて夫送りだすホットケーキは涙が拭ける
変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く
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雪舟さんの短歌。なんだろねこの視点と感性。独特で繊細でユニーク。短歌をよむとほわんと映画のような映像が思い浮かぶ。世界は、おもしろい。
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あふれそうな「好き」と「愛してる」。
その向こうにある避けられない喪失と、絶望。
ああ、今すぐあのこを抱きしめて、好きって言わなくちゃ、という気持ちにさせられる。
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雪舟えまさんの歌集の文庫本ですね。
雪舟えま『ゆきふね・えま』さん(1974ー)札幌生まれ。小説家・歌人。
歌集『たんぽるぽる』の初版は2011年の春だそうです。この文庫版(新書サイズ)は2022年の2月発行です。短歌なのでこの新書サイズが良いですね。
とは言え、短歌を少し味わってみようという私の目論みは、ページを開いた瞬間に「えっ」となりました。こんな短歌あり、雪舟えまさんの世界の中に引き込まれる短歌ですね。
目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき
とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸にふせ立つ
美容師の指からこの星にない海の香気が舞い降りてくる
きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと
カステラの一本ずつに雷をしずめて通りすぎるあまぐも
妖精の柩に今年はじめての霜が降りた、 という名のケーキ
北風はほんとうに来てこの窓へ電車の音を運んでみせた
雪よ わたしがすることは運命がわたしにするのかもしれぬこと
風呂あがりあなたがパジャマ着るまでの時間がのびる春なのです
たんぽぽがたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は
はやく何か建てばいいって言われてる空き地を月が歩いているよ
手のなかで軋むデラウェアあの人の深層筋を吹きわたる風
解説の松川洋子さんは「若草色のシュールレアリスム」と言われています。
私には、短歌のメルヘンに思えます。よくわかりませんが、穂村弘さんが認めていらしゃるから確かなのでしょう。
文庫版には、詩が一篇『地球の恋人たちの朝食(抄)』も記載されています。
ちょっと驚いて、楽しめる歌集でした。
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「たんぽるぽる」。短歌研究文庫の新文庫シリーズ(新書サイズ)になります。
転がるような可愛らしいタイトルを囲むように、一面にたんぽぽ畑が広がっていて、何処か懐かしさも感じます。
雪舟えまさん。本名、小林真実さん。跋文で松川洋子さんが、21歳の時に北海道新聞に初投稿、1999年の夏に上京と紹介されています。
作品の中にはそれらの背景を思わせる歌もよく出てきます。
他であまり紹介されていない中から、少しだけご紹介させてください。
もっとも旅にみえないものが旅なのか
目覚めて最初に見るぬいぐるみ
部屋をとりかこんで落ちる稲妻の中に
羽毛の舞う国がある
傘にうつくしいかたつむりをつけて
君と地球の朝を歩めり
胸にわたし 背中に妹をくくり
父はなんて胴の長い天使
蓋とれば 相談にのりますという顔をしている
春のぬか床
サイダーの気泡しらしら立ちのぼり
静かに日々を讃えつづける
安心感であったり、穏やかさを感じたり、日常が愛おしくなるような作品が好きです。
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日常のなかに息を潜めている、きらきらしたものを見つける。とても視力のよい人だ。
世界への、あまりに強烈な愛に気圧される瞬間もあったが、そのぶん棘もあったことだし、これはこれで。楽しく読みました。
行くこともない島の名を知っていて
それが心の支えだなんて