学者の視点による小説とは異なる興奮
2001/11/20 11:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松尾雍正 - この投稿者のレビュー一覧を見る
継体天皇に関するこの著作は、考古学と文献考証学、すなわち遺跡文物の検討と記紀・中国史書や過去の古代史論文との徹底的な比較という、まったく気の遠くなる作業をわかりやすいかたちで説明したものである。読書のポイントは王族や中央・地方豪族の位置付けを踏まえることと、継体天皇が越前から樟葉、そして奈良に至る経路を検討することの2点。古代史に興味のない方は無理をして読まなくてもよいと思うが、興味ある方には価値があるだろう。学者の視点による小説とは異なる興奮を味わうことだと思う。
投稿元:
レビューを見る
萬世一系といはれる我が國の天皇のうち、もつとも出自が怪しいのが、この繼體天皇である。
なにせ、皇統の正しさを傳へることを意圖したあの日本書紀ですら、繼體天皇を應神天皇の5世孫だと記してゐるのだから。
5世孫と云へば、假に1世を25年として凡そ120〜130年も離れてゐる。
そんな昔に血の繋がりがあつたと云ふことは、ほとんど血の繋がりがないと云つてゐるに等しいのではないか?
もしかすると、天皇家とは異なる地方豪族が天皇になつたのではといふ疑問が湧いてくる。
この本は、さう云つた疑問に答へてくれるのだが、いかんせん面白くない。
著者によれば、ほとんど史實は日本書紀の記載通りであるらしい。
なにより解りにくいのは、著者のオリジナリティーだ。
先達の説を紹介して、私もさう思ふ、とか私はさう思はないとか・・・
あなたの結論はどういふことなのか、と問ひ質したい氣分にしばしばなつた。
話が枝葉末節的なことに入り込んで、著者の説の全體像が見えてこないのである。
私の理解力の乏しさのなせるわざかもしれないが、お蔭で、この本を讀み始めるとすぐに眠たくなつてしまひ、なかなか讀了できなかつた。
2003年7月11日讀了
投稿元:
レビューを見る
大和朝廷の歴史に燦然と異彩を放つ継体天皇。
今までの大和育ちではなく、近江の国に生まれ即位後も20年かけて大和に入る事ができた彼の生涯とその歴史的意義を解き明かしていくとても興味深い本です。
記・紀に記されている事とその裏側にある思いを読み解きながら継体天皇が即位する事になった理由や彼の権力構造、そして彼の即位が後の武家政権による天皇擁立につながっていく事等、歴史の教科書からは読み取れない古代の実像がその元になる出典と著者の解説でわかりやすく書かれています。
地方の時代と言われている現代に地方から中央に駆け上っていった彼の事が注目されている中で入門書としておすすめです。
投稿元:
レビューを見る
謎に包まれた人。
結局なにものなんだろう。
万世一系?
継体がいるのに?
名前がものがたってるよね。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
武烈天皇が跡継ぎを残さずに死んだあと、畿内を遠く離れた近江・越前を拠点とし、「応神天皇五世の孫」と称する人物が即位した。
継体天皇である。
この天皇にまつわるさまざまな謎―血統・即位の事情、蘇我・物部・葛城などの大氏族との関係、治世中に起きた「筑紫君磐井の乱」との関わり、「百済本記」に記録された奇怪な崩御のありさまなどを徹底的に追究し、さらに中世の皇位継承にその存在があたえた影響までをも考察した、歴史ファン必読の傑作。
[ 目次 ]
第1章 継体新王朝説
第2章 継体出現前史―雄略天皇、飯豊女王の時代
第3章 継体天皇と王位継承
第4章 継体天皇の即位と大和定着
第5章 磐井の乱―地方豪族との対決
第6章 辛亥の変―二朝並立はあったのか
終章 中世以降の継体天皇観
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
古代史学者である筆者の研究成果がまとめられた本書。物語的な脚色はほとんどなく、歴史的文献の研究や考古学の知見から継体天皇の来歴や当時の政治状況についての推論が積み重ねられている。その意味で、読み手を選ぶ本ではある。
単なる歴史好きでしかない自分が読んでみたわけだが、それでも興味をつないで読み進められる程度に話の流れは整理されていて、1つの読み物として成立している。最後の継体天皇の人物像についての筆者の見解には、長年の研究対象である継体天皇への愛情というか敬慕というものを感じた。
投稿元:
レビューを見る
武烈天皇が跡継ぎを残さずに死んだあと、畿内を遠く離れた近江・越前を拠点とし、「応神天皇五世の孫」と称する人物が即位した。継体天皇である。この天皇にまつわるさまざまな謎―血統・即位の事情、蘇我・物部・葛城などの大氏族との関係、治世中に起きた「筑紫君磐井の乱」との関わり、「百済本記」に記録された奇怪な崩御のありさまなどを徹底的に追究し、さらに中世の皇位継承にその存在があたえた影響までをも考察した、歴史ファン必読の傑作。
投稿元:
レビューを見る
出自がハッキリしない継体天皇について、論点を整理しながら進めていて読みやすい。エピソードも知らないものが多く、例えば、葛城氏の凋落と蘇我氏の台頭は、古代にあった下克上じゃないの。他にも、早くも、母系外戚による政治運営など知的好奇心が刺激された。
投稿元:
レビューを見る
万世一系の天皇と言われる系図の中で、古事記・日本書紀とも応神5世の継体が皇位継承したという記事を書いており、古今疑問を抱かれてきた。その継体に焦点を当て、出身地近江・高島の豪族・息長氏出身説を論証。そして大和王朝の実力者・葛城氏が対抗勢力であったと推論。確かに記紀の記述には当時の政治情勢が隠されているはずで面白いものでした。そして後々まで天皇の代替わりの一つのモデルになったということは、現在の皇室に男子がおらず、女子天皇がささやかれている中で時宜を得た出版だと思います。
投稿元:
レビューを見る
王朝交代説もある謎の大王、継体天皇とはどのような人物だったのか。即位の経緯や出身母体などを探ることで、古代社会の考え方や大王のあり様が見えてくる。エキサイティングで興味深い内容だった。特に、その後、継体天皇の故事を引いて、天皇の即位を配下が決められるようになったという指摘は、古代の出来事がその後の歴史に大きなインパクトを与えたという鋭い観察だった。
投稿元:
レビューを見る
2001年刊行。著者は堺女子短大非常勤講師。
記紀おいては応神天皇五世孫とされ、後世の歴史家が王朝交代説を唱える要因となった継体天皇。また、彼の死後は二王朝が鼎立したとの疑問まで生まれている。
著者は、この謎多き継体天皇について、その前史から死後の大和朝廷内の混乱まで解説する。
本書の最大の長所は、自分と異なる見解について丁寧に内容紹介した上で、批判検討をしている点だ。これは研究者としては極めて良心的な叙述態度で、好感度大。
もとより陵墓の調査検討が不可な中で、文献解読のみでは説得力ある叙述は難しい。結論よりもその思考過程を味読したい。
投稿元:
レビューを見る
古代史好きならみんな気になる継体天皇。日本書紀の記述が不自然すぎて、今までの王家とぜんぜん血縁ない人が王位を簒奪して天皇になったんじゃないの?という学説が唱えられるなど、もっとも歴史ロマン溢れる天皇だと思う。万世一系を否定する学説なので戦前なら大問題だろうけど、とにかく興味深い。
そのあたりも含め、日本書紀や古事記を丹念に読み解いて、継体天皇の正体を探っていく。ごく限られた資料から当時の政治体制や勢力関係を紐解いていくのは古代史の醍醐味だと思う。
投稿元:
レビューを見る
中世以降、問題のある皇位継承が起きるたび、「このような先例もある」と引き合いに出される天皇がいる。その名は継体天皇。皇位継承者が居なくなる異常事態を受けて、はるか地方、はるか遠縁から、群臣に乞われて即位した天皇。その継承の異常さから皇位の簒奪者との説まであるこの人物、しかしその伝承はどこまでが真実なのか? 古事記、日本書紀その余の文献を検討しながら、継体天皇の真の姿を推定する。やや古い本ですが、同著者の本を読むための基礎として。