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「私たち、本当は何になりたいの?」
音大受験に失敗した名波陽菜は自信を取り戻すため、姉の住む自然豊かな奥瀬見にきていた。フルートの練習中に出会ったのは、オルガン制作者の芦原幹・朋子親子。同い年の朋子と〈パイプオルガン〉の音づくりを手伝うことに。だが、次第にオルガンに惹かれた陽菜はこのままフルートを続けるべきか迷ってしまう。中途半端な姿に朋子は苛立ちを募らせ、二人は衝突を繰り返す。そんな中、朋子に思いもよらぬ困難が押し寄せる! 絶望に打ちひしがれながら、オルガン制作を続けるか葛藤し、朋子は〈怪物〉を探しに森の中に入っていくが……。果たしてオルガンを完成させることはできるのか?
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オルガンとフルート、音楽に真剣に向き合う人の物語。
確かにオルガンや木管楽器の響きは、森の響きと似ているのかも。
バッハを脳内再生しながら、心地よく読みすすめた。
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音楽の表現や楽器の描写はとても良かった。
ただ登場人物にあまり感情移入が出来ず最後までと言うか後半に行けば行くほどちょっと流し読み的になってしまった。
音大受験前にコンクールで他の人との力の差を見せつけられてフルートが吹けなくなった浪人女学生と、小さな頃から天才パイプオルガン製作者の父の元でパイプオルガンを作ってきた娘。
この2人が出会ってお互いから影響を受けて前に進んでいくと言うざっくりした流れだけど、
正直この音大目指してる女の子がどの程度フルート奏者として凄いのか、今まで努力してきたのか、どれだけフルートが好きなのかが最後まで分からずで、とりあえず耳はいいと言う設定のみしか伝わらず…
もう1人のパイプオルガンを小さな頃から私は作ってきた!
と他人に牙を向いて自信満々で出てきた少女は途中唯一の肉親の父親が事故で亡くなってしまったと言うのもあるけど突然しょぼんとしてしまい読んでいても牙を向いてた割にあんまりオルガン作り分かってないやーん!と感じてしまった。
若気の至りと言う感じかな?
話の最後の方の展開もいやいや…と言う感じで、無理に森の奥にある怪物の正体を暴く展開は必要だったのか??
ともちょっと思ってしまった。
とても良い描写もあっただけに個人的にその落差が強くて終始『んー。』となってしまった。
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タイトルにある「怪物」という言葉からは想像もつかない世界がここにあった。
子どもの頃から身近にあった「オルガン」という楽器。けれど、「パイプオルガン」となるとなかなかに接する機会は少ない。
けれど、もし一度でもその姿を間近で見たら、そしてその奏でる音を直に聴いたら、きっと心のどこかに消えることのない記憶として残るだろう。パイプオルガンというのはそういう楽器だ。
十代の二人の女性。フルート奏者になるための音大受験に失敗した陽菜と、オルガンビルダーの父と暮らす朋子。
二人の出会いはたくさんの人の人生を大きく動かしていく。
音楽に関わる者の成長小説でありお仕事小説であり家族小説でもあるこの物語は、そういう小さな箱を圧倒的な力で包み込み絞り込み、そして一気に解き放つような魅力に満ちていた。
楽器を奏でる人と、楽器を作る人。二つの世界はつながっているようで離れているようで。
そのはざまで揺れる陽菜と朋子の停滞と苦悩。実力だけが全ての世界。己の未熟さに打ちのめされながらも踏み出す一歩の、その力強さに震えるラスト。
読みながら私も森の音を聴いた。風を雨を感じた。嵐のあとの雲間からの光。神々しいその光に包まれたとき全身が震えた。
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Amazonの紹介より
二人の十九歳が〈パイプオルガン〉制作で様々な人と出会い、自ら進む道を見つけていく音楽小説。
「私たち、本当は何になりたいの?」
音大受験に失敗した名波陽菜は自信を取り戻すため、姉の住む自然豊かな奥瀬見にきていた。フルートの練習中に出会ったのは、オルガン制作者の芦原幹・朋子親子。同い年の朋子と〈パイプオルガン〉の音づくりを手伝うことに。だが、次第にオルガンに惹かれた陽菜はこのままフルートを続けるべきか迷ってしまう。中途半端な姿に朋子は苛立ちを募らせ、二人は衝突を繰り返す。そんな中、朋子に思いもよらぬ困難が押し寄せる! 絶望に打ちひしがれながら、オルガン制作を続けるか葛藤し、朋子は〈怪物〉を探しに森の中に入っていくが……。果たしてオルガンを完成させることはできるのか?
逸木さんの作品というと、初期の作品はどこか現実的では無い空想的な要素があって、ポワンとした雰囲気があったのですが、近年は雰囲気を残しつつ、徐々に現実的に近づけている印象があるなと思いました。
今回の作品は、より現実的でありながら、軽い空気感を持ちつつ、気づいてみれば重厚感があった印象があって、今までの作品の中では、一番ダイレクトに伝わったなと思いました。
第1章と第2章で分けられているのですが、
第1章では陽菜が主人公となっています。音大を目指そうとするが、同世代の圧倒的な才能に打ちのめされ、挫折を味わいます。そこで出会う芦原幹・朋子親子。オルガンに魅了され、徐々に音楽を楽しんでいきます。
音楽に限らず、同世代の圧倒的な能力や才能を見たことにより、自分はダメなんだと思うことは誰しもあるかと思います。そうすると、どうしても主役だけを注目してしまいますが、人間それぞれ色んな個性があり、色んな役割を果たしています。
周囲の人達があってこその「主役」であり、同時に「脇役」にもそれぞれの魅力が詰まっています。
あるコンサートシーンでは、主役だけでなく、脇役は脇役として隠れてサポートしている所が印象的で光り輝いていました。それが心にグッとくるものがあって、感動しました。
それを超えての第1章の結末の1文は衝撃的でした。
第2章では、芦原朋子が主人公です。ある出来事で困難に陥っていきます。「本物」を追い求めていく描写は凄まじかったですが、その先には感動があって、壮大な物語になっていました。
二人の若者が挫折を味わった先に見えたものとは?演奏する人として、楽器を作る人としての苦悩や周囲との関係など、一人だけれども、一人だけでは出来ない要素が多くあって、そういった心理描写を垣間見ました。
そして、エピローグ。様々な困難を経ての展開は、感動するものがあって、壮大でした。
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パイプオルガンの記述が半端ない。あまり知らなかったパイプオルガンの魅力が間違いなく増した。
そしてソロ楽器としてフルートも知ることができた。
主人公は前半と後半でそれぞれ二人の若い女性。お互いが近づきすぎない距離感覚で物語が進む。そしてそれぞれの音楽に対する悩みや、楽器制作に関わる悩みが語られる。
大型のパイプオルガンを「怪物」と表現し、その手の込んだ構造や表現力を文字で伝えることは至難の技だったろうが、流れる音が想像できた。
最後に小さな謎が解決されていくが、それが自然の中で起こる怪物的な音。
構成にしても表現力にしても一級でした。
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怪物すなわちパイプオルガン。
なんかわかる。
あの圧倒的な存在感。
人間が作るんだけど、
そこから出る音色は人間を超える。
それに対する楽器が
フルートというのも面白い。
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パイプオルガンは、確かに楽器の『怪物”かも。その製作者をビルダーと言うのも納得。多彩な音の表現に引き込まれ、荘厳な気持ちに。「羊と鋼の森」「蜜蜂と遠雷」以来の音楽小説。賞レースに名乗り出ろにはタイトルにもうひと工夫ほしいところ。
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タイトルだけではまったく想像もつかないが、素晴らしい音楽小説だった。
フルート奏者の陽菜は、あることをきっかけに演奏することができなくなり、音大の受験にも失敗してしまう。失意の陽菜は、奥瀬見でカフェを営む姉からの誘いに乗りその地を訪れる。そこでオルガンを製作中の芦原と知り合い、協力することになる。
前半は陽菜の、後半は芦原の娘でオルガン製作者の朋子の視点で紡がれる。オルガンという特殊な楽器の構造や歴史、演奏法など、初めて知ることが多くて興味深く読んだ。2人の主人公の成長譚としても読み応えがあった。
いろんな楽曲が登場するが、オルガン=バッハとならない点も高評価。大好きだったサン=サーンスの交響曲第3番(オルガン付き)を久し振りに聴きたくなった。
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陽菜と朋子、2人の心の叫びと紡ぎ出されていく絆とが、そのまま物語を彩る音色となって、読み終えたあともその余韻が心地良いです。
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コンテストで力の限界を感じたフルート奏者陽菜、姉のいる奥瀬見でオルガン製作者芦原と出会う。その娘の朋子もオルガンビルダーを目指し、陽菜と反発しながらすこじずつ歩み寄りお互いに成長していく。
フルート奏者としての新たなる出発とパイプオルガンの完成にむかって進む物語。森の樹々を渡る風の音が聞こえ、バッハやサン=サーンスの響く読み応えのある1冊でした。
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陽菜はフルートで音大受験したが失敗してしまった。田舎でカフェをやる姉のもとでしばらく暮らすことにした。するとオルガンを作る工房の人に誘われ、バイプオルガン作りに協力することになった・・・
すごく面白かった。全く知らなかったパイプオルガンの世界の深いこと。楽器とか音楽に畏怖の念を覚える。
そして挫折した陽菜や、オルガン作りに没頭する朋子の人生の物語もすごく読ませる。
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いやぁ…なんと言いますか。すっかりのめり込んでしまいました…
映像として目の前に広がっていく感覚。
本を読んでるはずなのに映画を観ているよう。
セリフが聞こえ、音楽が聴こえてくる。
奥瀬見の自然が迫ってくる。
その中での人間の物語。
私の今年のベストワンかな。
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凄い良い作品に出会えました。
演奏者の心理描写や音や自然の表現…素敵でした。
登場人物の成長や、ひとつの事をやり遂げることの素晴らしさ。
タイトルからさ想像がつかない、とても優しい作品です。
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芸術を扱っている小説は、読者がその世界に入り込むことが特に重要になってくると思います。例えば音楽を題材にしたものなら、作中の音楽を表現する細かい描写、音の微妙な変化、質感など感覚的な描写が沢山出てきます。作者や登場人物と近い感覚で受け取れるかが、その小説の面白さに直結してきます。それは、読者側の心の有り様や好みが大きく関係すると思いますが、読者を引き込む何かを作者が持っているかにもかかってくると思います。
さて、この小説は、そういった面では、残念ながら私の好みには合いませんでした。主人公なその周りの人が好きになれず、あまり好意的に読めなかったというのもあります。
ですが、日本では馴染みの少ないパイプオルガンについて書かれており、そこがとても新鮮でした。森が放っている溢れる自然界の音、強風が森にもたらす神業のような音。それらが、パイプオルガンの音と結びつけられていて、今すぐ森に入って耳をすましてみたくなりました。
パイプオルガンというと、勝手に鍵盤楽器の面が強いイメージを持っていましたが、パイプから鳴らされる音は管楽器そのものであり、新たに管楽器への好奇心を持つことができました。
音楽は人間が奏でるものという意識を、自然が歌っている音という、壮大なものに変えてくれる一冊でした。