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投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際こんな事件が起きたら、確かにネットではいずみが叩かれたりするんだろうなと思う。
何も知らないのに、知らないからこそ外から好き勝手に言いたい放題な人間にはなりたくないなと読んでいて改めて思った。
それと同時に、被害者だからといって必ずしも真実を語っているとは限らないし、自分がその立場なら全てを明らかにできるかは自信がないなとも…
考え込んでしまう内容です。
読ませる力がすごい
2023/02/27 14:48
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投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
多少話の展開に唐突さを感じる場面があったものの
先が気になってどんどんめくってしまいます!
呉さんの本は読ませる力がすごい。
これより後に書かれた本はもっと話が磨かれていて、
今後の作品も楽しみです!
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無差別殺人事件で生き残ったいずみは、他の人達を見捨てたとして、マスコミ、ネット、学校関係者などあらゆるところから非難を受ける。理不尽すぎる。被害者なのに、何故ここまで?
同じく生還した小梢は、保身の為とはいえ、何故いずみを告発するのか? いじめっ子が更にいじめる以上のものを感じるし、何故いずみは全て受け入れているのか?
徳下の真意は何か、いずみの真実や目的は何か。たくさんの理不尽と、何故?と、やるせなさが満載だった。
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投稿者:ミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
速いテンポで描かれる無差別殺戮事件は、映画を観ているような臨場感。しかし、本書はその後の
「お茶会」がメインテーマなのだった。すでに犯人は自死し、事件は解決したはずなのに。何が問題
なのか?いったい何が起きようとしているのか?もしかしたらこれはホワットダニットのミステリな
のか?
疾走感あふれるプロローグに比べ、その後の展開は精密な論理構築。同じ様な問いかけが閉鎖空間
で、かつ細部にわたる繰り返しに息がつまりそうだった。
それを補って余りある評価はやはり主人公いずみの独白。人間の二者択一の考え方に対する諦観と
それにオーバーラップさせながら踏む白鳥か黒鳥かのステップ。心の奥に隠された叫びは読む者の胸
を熱くさせる。このエピローグの数ページは奔流に呑み込まれそうだった。
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
無差別大量殺人を生き残った人々の苦悩を描いた作品でした。
タイトルになっている「スワン」は郊外にある大型ショッピングモールだ。
四月の初め、このスワンで三人の男たちによる無差別殺人が起こった。
三人のうち一人は内輪もめで殺されていたが、実行犯となった二人の男は死傷者四十名に迫る大惨事を引き起こしたのだった。
通常なら犯人の心理を分析していくか、犯行の中で助け合うヒューマンドラマが描かれるのだろう。
だが本作は被害者であるはずの人たちを責める世論という醜い現実を描き出していく。
大学を中退しそれでも親が送ってくれる生活費でトレーダーの真似事をしていた通称「ヴァン」、そしてもめ事を起こして警備員の職をクビになった通称「ガス」、それに未成年の引きこもり「サント」が犯人グループだ。
大量に制作した3Dプリントの拳銃は二発しか発射できない使い捨てだったが、それを六十丁も半年かけて作り上げる。
その労力を他に生かせばよかったのにとも思うが、不毛なことしかできない人間もいるものだ。
念入りな計画のもとに迎えた犯行当日、テンション上がりまくったサントは仲間の手で射殺され、ヴァンとガスはスワンの両端にあるモールの象徴「白鳥」と「黒鳥」からそれぞれ出発して次々に居合わせた客を撃っていく。
逃げまどい死傷者の血が流れる光景をネットで実況しながらの犯行だ。
自分をいじめていたクラスメイトであり同じバレエ教室に通っていた小梢に呼び出された高校生のいずみは、当日スワンのスカイラウンジでヴァンにつかまってしまう。
そこに取り残されていた客たちを順に打ち殺していったヴァンだが、いずみに銃を突きつけ彼女に語りかけながら銃を撃っていったのだ。
かなりのトラウマになりそうなシーンだが、事件のあとに小梢が「いずみが犯人に次に打つ相手を指示して自分が助かろうとした」と告発したことからネットで叩かれることになる。
学校にもバレエ教室にも行けず家にこもるいずみと、娘を守ろうとするあまり不安定になってしまった母親の姿が描かれます。
そんないずみが「お茶会」に誘われたのだが、主催者はスワンで母親を亡くした実業家の依頼を受けた弁護士だった。
いずみの他に四人の男女が出席し、当日起きたことをそれぞれの視点から語っていく。
お茶会を重ねるにつれて、被害者であるはずの人たちが抱え込んだ罪悪感が明かされる。
事件の被害者たちの抱えるトラウマと人間の弱さを浮き彫りにしていく話だった。
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ものすごく面白かった。
ただこの作品を"面白い"と表現することに後ろめたさも感じる。
銃撃テロの裏で、被害者一人一人に起こっていた事と、それによって抱えた秘密。
先の展開が気になって気になって一気読みしてしまった。
ミステリとしてはもちろん、白黒を明確にしろと求めてくる世界で、もがきながら生きる主人公の心理描写も圧巻。
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最初からクライマックスのようだったためか、途中、あまり不要な描写があるように感じてしまった。ただ、不要と思ったものもちゃんと意味があって素晴らしかったです。
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ショッピングモールで無差別殺傷、凶器は模造銃、生存者が糾弾されるなど、世相を反映した様な事件。。
事件後に、事件当時を振り返るストーリー。
出てくる全ての語り手が信頼できないことが明示されているので、モヤモヤしたまま進行していくが最後には真相が全て明らかになり、スッキリする。。
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ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃事件が発生した。被害者から一転して非難の的になったいずみのもとに、ある日1通の招待状が届いた。5人の事件関係者が集められた「お茶会」の目的は、残された謎の解明だというが…。日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞受賞。(e-honより)
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いじめられている女の子が、事件の被害者である女の子がいじめの張本人の嘘の告発のためにこの世から猛烈にバッシングされる様は本当に読んでいて辛くなる。いじめる側の女の子の保身のために主人公が苦しむ様も胸糞が悪い。終わり方も私的にスッキリするものでなく好みではない。
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4月8日の日曜日
ショッピングモール「スワン」
丹羽、大竹、中井により
無差別銃撃事件が発生する
死傷者40名
その年の10月
5人の生き残った事件関係者が集められた「お茶会」が開かれた
高校生のいずみも招待され
事件のことを聞かれる
お茶会は被害者の菊乃の最期の謎を明かすためだったが、、、
残酷な事件後に明かされていく真実
隠された悲しい真実
突然起きた残虐な現実に
人は冷静な判断ができるのか
マスメディアは現実の1部のみをとりあげ
それを知るものは独自の判断と脚色をする
真実は1つ
白か黒か
それだけが問題ではない
たまに真実が白が黒に黒が白に変わることがあるのだ
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ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃事件が発生した。
動機は「とにかくお前たちを不幸せにしてやろう」
事件の死者は21名。重軽傷者は17名。
犯人は3人の男だったがSNSでつながっただけの関係で、実行直前に1人の男が仲間に射殺されていた。
後日、その場に居合わせた女子高校生いずみは、事件の中の一つの「死」の真相を明らかにすると言う名目で開かれたお茶会に参加する。
参加者は5人。彼らが口にしたくない事とは何か。徐々に明らかになっていく事実。
次の展開はどうなるのか。ドキドキが止まらない。
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第73回日本推理作家協会賞 受賞作
第41回吉川英治文学新人賞 受賞作
第162回直木三十五賞 候補作
呉勝浩にはまり3冊目。
どの作品も、設定と構成が自分好みで、ぐいぐい引き込まれて読んでしまう。
web KADOKAWAの著者インタビューで呉勝浩は本作についてこう語っている。
「暴力とか悪意とかに、絶対ここだけは押し潰されてはいけないという何かを持っている登場人物が、それを守るために必死の抵抗をする。その姿をやっぱり僕は書きたかった」
それは、著者が小説を書く上での共通テーマなのだろう。
今回の主人公も、犯人から一方的に「正しい世界のあり方」を押しつけられ、マスコミや周囲の人々から心ない非難を浴びせられ、「どんな方法を使っても、ほんとうを正しく伝えるなんて不可能」p302 と諦め、息を殺して生きている。
だが、その胸には、犯人にも世論にも汚されることなく守り通した真実があった。
ショッピングモールでの無差別殺傷事件。
生死がかかった極限状態の中にあっても、人は、誰かを助けようとしたり、助けられなかったことを悔やみ続けたりする。恐怖と混乱の中で「反射のような決断」を迫られ、それでも「自分が最善と感じた道を選んだ」p301 にもかかわらず。
事件後、当事者の「抱える割り切れない気持ち」p302 は置き去りにされたまま、周囲は勝手な憶測で、彼らを黒か白かと決めつけ断罪する。
私たちは、日々報道される事件に対し、正しい部外者であるべきだ。
当事者にしか分からない真実があるということに思いを巡らせ、匿名性を盾に彼らを攻撃する権利はないということを認識しなければならない。事件を生き延びた彼らの、その後の人生を脅かす加害者になってはいけない。
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大型ショッピングモールで起きた無差別殺人。死者21名となった惨劇の実行犯2人はカメラ付きのゴーグルを装着し、反抗をリアルタイムにてネットへ配信。殺戮行為に及んだのち反抗現場にてそれぞれ自害。
パニック状況の中、人は被害者でありまた状況によっては加害者にもなりうる。
マスコミやSNSの怖さ、他人事であることの無責任の怖さ、究極の選択肢を迫られる怖さ、司法の怖さ、保身を見破られ暴かれる怖さ…そんな怖さが詰まった心理を揺さぶる一冊。
何が正しくて何が間違っていたのか…考えたところで起きてしまった事実は変えられない。
ーー犯人が悪いじゃいけないの?
多分、これが答えなのだろうと思う。
だけど、それでは心の折り合いをつけられない人たちがいる。
とは言え少々じれったい…遠回りというか先延ばしすぎというか中弛みというか若干の飽きは否めない。
同級生のいづみと小梢
2人の関係性についてどう決着がつくのだろうと思っていたけれど、長い告白が終わったあとも、私には小梢の気持ちが分からないままだった。
今年の32冊目
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'22年11月16日、読了。呉勝浩さんの小説、「爆弾」に続き、二作目。
夕木春央さんの「方舟」で、苦労しながらも久々に紙の本が読めて…勇気と感謝(大袈裟か!)を持って、僕にとっての呉さんの二作目、で、紙の本に、再アタック!
いやぁ…凄い!素晴らしい!うたれました!
「爆弾」にも出てきますが…「他人」であること、その「気軽な、悪意」とでもいうのかな…ズッシリきました。
僕には、登場人物中、「白衣の先生」が一番「他人」に思えました。僕とも、よく似てるかな…ちょっと、吐き気…。
チャイコの「白鳥の湖」が効果的、象徴的に使われていて、最後に主人公がモールで踊るシーン、眼に見えているようで…グッときました。美しいシーンだったな…。
呉勝浩さん、大好きになってしまった!でも…ちょっとハード過ぎますಥ‿ಥ少し、休憩…