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中二階の原理 伊丹敬之 日経
言わんとすることはわかったように思うけれど
どうもこの例えが最後までしっくりとこない上に
文章に引き込まれる面白みがない
そんなわけで
後半は流し読みになってしまった
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伊丹氏の書籍を網羅的に読んでいく中でたまたま出会ったのですが、本書の主張である「中二階」の重要性は痛感しており、まさに我が意を得たりという気持ちです。
私の場合は歴史ある企業におけるIPO支援、子会社の買収後のPMIなどを通じ、この中二階の重要性を痛感していました。IPOでは資本主義のルール、PMIでは買収企業のルールが二階に相当するわけですが、歴史ある企業では既にその企業の中の風土が二階のルールとぶつかり、それをただ押し付けても全くうまくいかないわけです。こういった中二階的発想がなく、ただ二階だけを押し付けることが日本においてはうまくいかないことは、今後日本における経営者にとっては重要な視点なのだと思います。
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中二階とは、組織を動かすときのある種の原理。二階は基本原理=建前、一階は現場、その間を調整するねじれを調整するための機能。
二階から見ると単にでこぼこにしか見えない場合もある。
二階の原理から考えることには限界がある。中二階が以外な働きを示した場合が多い、無視をすると正課がでない。
二階の漢字、一階のひらがな、中二階の仮名交じり表記。
和魂漢才、和魂洋才。
天皇制という中二階。二階の統治者を支えて一階を納得させる手段。
廃藩置県、秩禄処分=一時金支給による棒録の廃止。
幕末以来の武士の危機感が、廃藩置県を無理なく推敲させた。
戦後の農地改革=日本の発案による施策。価格が1950年まで据え置かれたために、タダ同然に買収された。
地主は、やむを得ないものと諦観して、改革に応じた。土地の引き上げ(小作人から取り戻すこと)で納得した。
日本の農地改革と同様の試みは、台湾を除きアジアでは失敗した。地主にとってはひどい施策だが、民主化理念(やむを得ないという空気)の中二階の原理が、それを中和した。
コロナショックへの対応。罰則なしの自粛要請は、中二階の原理から機能した。全体のためには、一手間一配慮は当然、という価値観=中二階の価値観。工場のコストダウン、サービスのおもてなし、の源泉と同じ。
中二階の原理のマイナス面。
共同体からの排斥圧力。中二階の暴走=自粛警察など。二階の原理への過度の従順さ。
オーバーエクステンション戦略=蟹が自分の甲羅よりも大きな穴を掘るのと同じように、自らの能力を超える戦略をとること。不利を承知で参入する。鍛えられる中で成長する。中二階の原理を応用した例=ホンダのオートバイのアメリカ進出。二階が、その戦略のサポートをしっかり行うことで、中二階が発憤し、学習を積み重ねる。
神の隠す手の原理=人間は困難予測能力はあっても、隠れた問題解決能力は見えない。あえて無理を承知で動くことで、解決の手段が見えてくる。
世界銀行の援助プログラムは、事前の想定とは違う語りで成功している例が多い。
大きな挑戦は、想定外の障害にぶつかるが動き出すと何かが見えてきて、さらに動くことで神の隠す手が出てくる。オーバーエクステンションと中二階の原理は同じ構造。
買収の論理は二階の原理。しかし現場は思った通りにはならないことが多い。日本板硝子によるピルキントン、東芝によるウエスティングハウス、野村證券によるリーマンブラザース、など。成功例はブリジストンによるグッドイヤー、川鉄と日本鋼管のJFEホルディングス、など。二階の論理を押しつけず、中二階への目配りを行うことが合併、買収の秘訣ではないか。
アウトソーシングによって、現場の技術者が手配しになっている。アウトソーシングを意図的に不完全に行うことで、現場の情報の流れと技術を維持することが中二階の原理。
感情の齟齬を中二階の原理を使うことで解決する。職場共同体としての中二階を使う。
ソニーのVTR開発チームは、エレクトロニクス技術とメカ技術の技術者を、同じ部屋で隔てずに机を並べて、間には本を置かないよう指示した。
二階の原理の取り違い、の例はQCサークル。もともとは小さな集団のサークルで成功していた=中二階の原理。これを二階の原理であるデミング賞受賞に向けた活動にすると組織のヒエラルキーが強調されてうまく行かなくなった。二階の偉さ、を強調すると中二階がうまく機能しない。
日本の村落を中心とした共同体感覚がその源泉にあるのではないか。
企業の主権者は株主といっていいか。
逃げないカネを提供しているはずの株主と、逃げない労働を提供している従業員。しかし、株主は本当に逃げないカネ、といっていいか。
株式会社によて、企業は自然人の死とは関係のないゴーイング・コンサーンが可能となった。資本多数決の原理で、発言権の大小があることが意義。
株主だけが主権を持つ、という二階の原理を追求することの矛盾が吹き出している。そこで中二階の原理として従業員に主権の一部を持たせられないか。
ドイツは、法律で、従業員に経営に関与できる仕組みがある。二〇〇〇人以上の会社は49%まで。2000人以下だと1/3の関与でいいので、ドイツには従業員1900人程度の企業が多い。ドイツは、共産主義と間近に対峙していた経緯からではないか。
日本では、現場の慣行の積み上げで、中二階の原理を取り入れた。雇用を守る、取締役は昇進者で占める、株式の持ち合い、など。
欠点は、経営者へのチェック機能が無力化すること。
三井組(越後屋)が二番目の株式会社になったとき、1/4の株式を番頭手代が持つことになった。従業員持ち株会の奔り。
成果報酬よりも、この会社は自分たちの物である、という意識のほうがインセンティブは大きい。
従業員中二階の落とし穴胃
従業員の反対が怖くて慣行に沿わない施策がとりにくい。従業員の利益が既得権益化する。
経営戦略、組織マネジメント、企業統治のそれぞれで中二階が存在する。
日本の市場経済システムの中にも存在する。
自由な取引、公正な競争を二階の原理とし、ヒトのネットワークの安定、を中二階の原理とした。
労働力というヒトの市場、原材料などの財の市場、製品の市場、のそれぞれで中二階がある。
労働市場では、パートナーシップ採用。演劇の作り方でもアメリカはオーディション方式だが、日本は劇団方式がある。年功序列型人事も中二階のひとつの帰結。
系列取引という中二階の原理。GMは下請け12000社ほど、トヨタは300程度、二階の市場経済原理を共同遺体的な原理に薄めて中二階の原理で運用している。
金融市場は、共同体的強みが発揮しにくいので、真っ先に二階の原理に移行した。
人本主義という中二階の意義=ヒトのネットワークを活かした行動原理。
反面で、ぬるま湯的安定をもたらす、決断の空白、中二階の不安定化の恐れ、などがある。
日産の経営不振の理由は、ぬるま湯の副作用によるもの。ゴーン改革は、ぬるま湯を排除したが、新車開発のための系列間協力を壊した。トヨタやホンダの厳しさのある系列の維持とは違った。
平成の間の日本企業の低迷は、人本主義の弱さが表面化しつつ、それを脱却する強い経営者が現れなかったこと。
二階の原理に対して、現場とのねじれを解消するために中二階の原理が生まれる。結果として二階の原理がスムーズに遂行される。しかし副作用もある。
中二階の原理には、二階の空白を埋める、二階の強化、二階を弱体化する、の3種類ある。
メンバーシップ型による組織への一体感の醸成、二階の原理の現場への応用当てはめ、一階が受け入れられるような形への変換、など。
中二階が日本に多い理由=普遍性の高い原理が外国から入ってきやすい。古くからある共同体原理との共存のため。曖昧さをよしとする土壌。
アメリカは多様な社会故に、中二階の原理は成り立ちにくい。