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中国の仙人伝の代表的作品、劉向の『列仙伝』と葛洪の『神仙伝』の日本語訳。老子や彭祖、左慈や張道陵など仙人の伝記を多数収録し、不老不死にして神通自在の神仙の姿を紹介する。
本書は、古代中国の仙人伝である『列仙伝』及び『神仙伝』の完訳であり、平凡社「中国の古典シリーズ」『抱朴子・列仙伝・神仙伝・山海経』(1973)の『列仙伝』・『神仙伝』部分の文庫化である。現存最古の仙人伝であり前漢末の学者劉向に帰せられる『列仙伝』、西晋~東晋時代の仙道家にして『抱朴子』の著者である葛洪の『神仙伝』の二書を邦訳した本書は、道に通じ、不老不死の極に達し、神通力を以て奇跡を成した異能の者たちの伝記集である。老子や彭祖といった古仙人から左慈や壺公といった伝説に名高い仙人、果ては張道陵や劉安、郭璞といった歴史上の著名な仙道家たち――。仙道を会得した者たちの姿を描くことで仙人(ひいては仙道)の実在を証明しようとするこの2つの書は、読み物としての面白さはさることながら後に道教として結実する当時の仙道の姿を示すものでもある。
特に『神仙伝』にて紹介される仙人たちは実にバラエティに富んでおり、不老不死は追及するが「天の神々に奉仕するような苦労はしたくない」と昇天を拒む白石先生、神通力を振るって盗賊や妖魔相手に大立ち回りを演ずる劉憑、常に酒に酔いしれる酒狂いの離明(太陽子)など様々な仙人が紹介されている。西晋時代までの仙人の伝記を収めた本書は、まさにこの時代までの仙人の姿を一望できるカタログと言えよう。