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『#不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』
ほぼ日書評 Day621
良書。元々、広大な土地に、疎に人が住む北海道では、「内地」の大手小売業の常識が通用しない。さらに拓銀の破綻や、人口減、高齢化による商圏の狭小化等、多くの課題が立ち上がる中、したたかに生き残って来た企業には、立地の不利に鍛えられた共通の特徴がある。
それは、明確な経営ビジョン、言い換えると「バックキャスティング思考」である。一例としては、ニトリは既存2店舗時に100店、1000億売上の目標を掲げ、ツルハホールディングスはやはり5店舗時点で100店構想、アークスは10年以上前に1兆円目標を打ち出す等、「未来のありたい姿=高い目標」を掲げて、それを実現するための経営を行う姿勢だ。
そして、その実現の妨げとなる多くの課題の解決策が、経営の打ち手であり、それが独自の強み・ノウハウとして蓄積される。
冒頭で、道を代表するコンビニ「セイコーマート」の物流における例が示される。
同コンビニの、新得町(人口5700)店の次の配送先は37km離れた南富良野店。首都圏ならこの距離の間には6000店ものコンビニがある計算。当然、配送のみの一方通行、帰りは空気を運んだのでは採算が取れない。そこで、帰路はグループの製造工場からの荷を載せる等の工夫により、疎な配送網の不利を補っている。
そのルートは早朝、最北の稚内を出て、道央の旭川を経て、札幌まで行き来するという、驚きの行程だ。さらに、居酒屋チェーンのつぼ八や書籍取次の日販等も、同社の物流チェーンを頼ることとなり、トラックの積載率は90%(一般の大手コンビニは4-5割が普通)を誇るという。
北海道、小売、というキーワードが、むしろ自分の仕事には関連が薄いのではという誤解を生む懸念があるが、広くさまざまなビジネスの参考になる一冊である。
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タイトルから個人的なビジネスの参考になるような本かと思ったが、大手スーパーのビジネス戦略や買収の話など、スケールが大きい話だった。
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北海道という以外にあまり共通項を見いだせず、冗長に昨今の取り組みが書かれているように感じた。サツドラのIT内製化とか、もっと掘り下げたら面白そうな話は色々ありそうにも感じるけれど。
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5. 小売業は「地域産業」
8. 「ドラッグストアとスーパーマーケットはスケールメリットがはっきりと出てくるはず。さらなる再編が起こる可能性があり、持ち株会社から事業統合へとステージも変わってくる」 byプリモリサーチジャパン鈴木
24. セコマは全179市町村のうち4つを除く175市町村に店舗をもつ
26. 「戦術や戦略の前に「よりよい商品を届けたい」「暮らしに貢献したい」という「熱い想い」が不可能を可能にする。当然無理な場合があるが、どうすれば地域の要望に応えられるか、商品を届けられるかに常に知恵を絞っている」byセコマ丸山智保
26. 小売の主要コストは①物流費②水道光熱費・人件費③地代家賃④減価償却費
26. セコマは物流の効率化を追求し、24時間にこだわらない営業でランニングコストを抑え、地元からの補助金などを活用することで地代家賃も抑える。損益がギリギリのところで北海道の「地域」を守っている
28. 地元のタクシー会社が地域おこし協力隊員1人を雇用し、商品宅配とタクシー業務を行う「貨客混載」を担う
29. セコマは直営店中心に切り替えることにより製造から物流、販売までを一気通貫で手掛ける仕組みを強化した
29. 直営が増えることで店内調理の惣菜や弁当の販売(ホットシェフ)など独自の経営方針を浸透させやすい
29. 約600店に向けて毎日78ルートで商品を運び出す基幹拠点「札幌物流センター」。手間がかかり、コストを左右するピッキング作業は実にきめ細かだ。各品目の置き位置(ロケーション)を頻繁に見直し、取り出しからトラックへの積み込みまでの作業を練り直している。人件費を商品ごとにピッキングした点数で割って、1点当たりのコストを小数点第2位まで算出。月単位で目標をクリアしたら従業員にインセンティブを支給している
31. イワシは弱い魚だ。沖で獲って港に運んでくる間に大半が死んでしまう。しかし、あるところにいつも生きたまま水揚げする漁師がいた。不思議に思った仲間が船をのぞくと、いけすに1匹のナマズが。ナマズがいるいけすに入れられたイワシは緊張して死ぬ暇がなかった
31. 「私は必死で商売以外は見向きもせず、立ち行かない店は思い切って閉め、お客様に少しでも安い商品を提供するよう努めてきた。結果的に増収増益が続き、閉店する大手企業の店を引き受けたりしたので、「中古再生のスペシャリスト」なんて呼ばれるようになった。会社経営も道や国の運営も同じで、大きなナマズを頭に描いて、絶えず危機感を忘れないことだ」 byアークス横山
34. 「キャムズ理論/イノベーター理論」。商品やサービスの普及率が一気に上昇する分岐点のこと。爆発的に売れ始める直前の普及率や、事業を継続するのに最低限必要なシェアをいい、その数値は約16%とされる
35. 「富士山という単峰ではなくて、八ヶ岳のように連峰を成す経営が理想。それぞれが地域でクリティカル・マス(最低限必要な質量)を握れば全国チェーンや海外勢が来ても負けない」
40. コープさっぽろがフィンランド大使館からの協力で実現した「ファーストチャイルドボックス」事業では���第一子誕生予定者にベビーケアアイテムやベビー服などを贈る。組合員の事業を通して出た利益を再配分として新生児を産むお母さん組合員に還元しようという発想からだ
45. 「1対5の法則」。大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの名誉ディレクター、フレデリック・F・ライクヘルドが提唱。新規で顧客を獲得するためには、既存顧客を維持するよりも5倍のこすとがかかるというものだ
49. セコマでは停電の際は車を使って最低限の電源を確保することがマニュアル化されている。全店でガソリン車につないで、車を空運転させると発電できる非常用キットを常備。これでハンディ端末やレジを動かせた
52. ツルハHD「20倍理論」、5店舗ののき掲げたのが「100店舗構想」。さらに50店舗のときには「1000店舗構想」という目標を掲げた
53. 「If you can dream,you can do it.(もし、あなたが本気で夢を描くことが出来るなら、その夢はすでに実現されたと同じである)」by ウォルト・ディズニー
55. ツルハグループ「親切第一」
60. 「どんなに長くても5年くらいで投資回収できる範囲でしかM&Aはしない。買収先のキャッシュフローで買収代金を回収するのに何年かかるかを示す「EV/EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)倍率」」で高くても6倍、おおむね3〜4倍で買収している。そうすると3〜4年で投資回収ということになる。だから競争入札では、ほとんど勝ったことなく、相対交渉でのM&Aが多い」byアインHD大谷
65. PBRは、株式時価総額を純資産(解散価値)で割って算出する。倍率は1倍が目安。アークスの場合、多くの案件は1倍を下回る。つまり解散価値よりも安い価格で買収しているわけだ。
65. EV/EBITDA倍率は、時価総額と重有利子負債の和を償却前営業利益で割る。この倍率は買収した企業の資金回収に要する年数に換算される。スーパーマーケットのM&A案件は5〜10倍適度が多いといわれているが、アークスの場合は5倍以下
65. 「EV/EBITDA倍率」、企業が生み出す利益に対して、企業価値は何倍であるか示す指標。企業買収コストの回収期間を算出するときに利用され、「簡易買収倍率」とも呼ばれている
69. ツルハHDはキャッシュフロー経営を先取りしていた。創業以来の「現金主義」を貫いてきた。医薬品業界で当たり前の手形ではなく、仕入れは全て現金。これが取引先からの「信用」につながり仕入れ価格でも有利な条件を獲得。店舗展開も手持ちの自己資金で出店を続けられた
70. ビッグハウス1号店の太平店は、ダイエーの子会社の不採算店舗が売りにでたところを安く買い取り、最小限の手直しで出店した。商品数は1アイテム・1SKU(商品の最小管理単位=品目)で合計4000SKUと極限まで絞り込んだ。1個より2個、2個よりも箱買いのほうが単位的に安くなる「一物三価」の価格設定により、まとめ買いを誘導。当時、粗利益率15%、販管費率12%、経常利益率3%という驚異的な指標をたたき出し、低コスト経営はアークス成長の原動力となった