カサンドラの苦しみは誰にでも
2023/04/10 21:09
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
友梨奈はスタイリストの卵として憧れの人の下で働いていた。気を許した相手から友梨奈はとんでもない目に遭わされる。
未知はネットで漫画を発表している。漫画の内容や評判に、小説家志望の夫は罵声を浴びせる。
自己の正当性のために他者を顧みず、徹底的に非難する人間がいる。一方で、主観であったとしても自分の被害を訴えて信じても共感してももらえない人間がいる。その様相を描く。
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ものの数時間で読み切ってしまった…
装丁の綺麗さに惹かれて購入したので、内容にうんと期待していた訳では無かったのに、どんどん続きを読み進めたくなるような魅力のある人間関係やヒリヒリするような出来事が詰め込まれていた。
読んだあとは、大好きな人をぎゅっと抱きしめたくなるような優しさと強さを分けて貰えたような気がした。
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予知能力を持ちながらもアポロンの呪いによって誰からも信じてもらえなくなるトロイの女王カサンドラ。
事の大小によらず、誰でも一度くらいはそんな経験があるのではないか。でもいわゆる「カサンドラ症候群」にとらわれている女性の、その苦しみは、比べようもないほど深い。
女性が、パートナー(や、それに近い関係の男性)から心身に受けるDV。吐き出される罵詈雑言、人格を徹底的に否定する言葉たち。その暴力によって女性は「自分が間違っている」と思い込む。自分が至らないから相手を怒らせるのだ、と自分を責め続ける。周りがどれほど説明し説得しても、「それでも私が悪いからこうなってしまったんだ」という自己完結と無限ループ。
なぜ、きちんと「嫌だ」と「あなたが間違っている」と言えないのだ、と思ってしまうけど、そうなるべくした過去がきっとそこにはあるのだろう。その相手と出会う前からきっと。
たった一夜の関係で、それまで積み上げてきた人間関係も仕事も生きがいも全て失った友梨奈。恋愛時代から続く夫からの人格否定と不信と口撃によって身動きの取れなくなってしまう未知。
二人の女性の、それぞれの「対応」の違い。逃げられるか逃げられないか。その違いが呪いの深さを物語っているようで。
何も解決しないラスト。これからも続く関係。途中で放り出されたような気になる読後。
続きがどこかにあるんじゃないか、とページをめくる。茫然暗澹、どうしよう。
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カサンドラ、にピンときた人は読んでほしい。
圧巻の筆致。
最後までほぼノンストップで読んでしまった。
ラストは飲み込みがたい何かを無理矢理飲まされたのに、どこか爽やかで、晴れやかな気分もする不思議な読後感。
この複雑な妙味に、小説の醍醐味を味わう。
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ボリュームが少ないこともあって一気読み。
モラハラに思うところがあるので、ところどころ読んでいて苦しかったし、最後の未知の決断はどうなの?!って思うけど。
それでも、穏やかな文章は読んでいて素敵だったな。
ほかの作品も読んでみたい。
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この気持ちは何だ。全然納得してないんだけど心にはザクリと刺さった。友梨奈と未知という女性の話が軸となっている。個人的には友梨奈の章で共感とともに打ちのめされた。自業自得の部分もあるとはいえ、ちょっとした過ちが致命的なしっぺ返しをくらう様は他人事とは思えない。未知の章は複雑な気持ちで悩ましかった。純粋な気持ちには心打たれるものの、ルーズで浅はかで単純な性格は好きになれない。明るい未来は見えなそうだ。そして短い長編ながら構成がうまく、え!?と驚いた部分もあり読み応えがあった。今後も追いたい作家さんだ。
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自己愛性パーソナリティ障害の被害者、友梨奈と未知の2人のケースを描き、最後にそれでも愛しているからと立ち向かっていく強さを未知に与えて、加害者もまた被害者であったことに思いを馳せる。
モラハラ、パワハラ、DVなどのない社会はないのだろうか。
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自己愛パーソナリティー障害、モラハラの被害者女性2人の話。
キャリアや将来を奪われた友梨奈と夫からのモラハラに悩む未知。ラストの未知の選択は共感できないけど、もがきながらも必死に前に進もうとする女性たちが描かれててよかった。
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この作品を読んで、今まで形に出来なかったものの正体に気付き、救われる人はきっといるはずだ。
物語は夢半ばで男に陥れられた友梨奈と、夫のモラハラに苦しむ未知を中心に描かれる。
自分を優れた特別な存在であると認識し、承認欲求が強い自己愛性パーソナリティ障害。
そして否定されれば過剰な反応を引き起こしパートナーへモラハラを繰り返す。
友梨奈を陥れた男の巧妙さと、未知の夫が発する容赦ない言葉の暴力に怒りは膨れ上がり、彼女達が感じた孤独と苦しさに胸が締め付けられる。
未知の決断に甘さを感じながらも凛とした強さに感動を覚えた。
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自己愛性パーソナリティの2人の男性に対峙する2人の女性について描かれていた。
私の父がまさに自己愛性パーソナリティで、
とても魅力的な人ではあったけど
家庭内DVが酷かった。
そんな人を夫に持ち
大好きだからまず向き合ってみると決めた未知。
それは強さだと私も思う。
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憧れの人と働くため、手紙をかき、資格を取り、晴れて採用された友理奈、アシスタントとして働き、地道に勉強を続ける友理奈にあこがれの人からチャンスを引き寄せる「ピンキーリング」のプレゼント。ある日出会った、ファッション雑誌を手掛ける深瀬という男性、整った見た目で服のセンスもある、一見スマートな彼。彼と飲みに行き、一夜を共にしてしまったことで送った悲劇。あこがれの人からの大事なプレゼントを亡くし、彼からはストーカー扱い。警察に通報され、友理奈はこれまでの実績も人脈もすべてを失ってしまった。
変わって、明るく天真爛漫で子供みたいに感情を素直に表現する未知。
未知は頭が良くて、何でも知っていて、自分を導いてくれる夫健吾が大好きで、尊敬している。
けれど、未知が健吾との過去の喧嘩で起きた出来事についてSNSに書いたことで、彼は豹変。未知を何度も罵倒する。くず、馬鹿などの酷い暴言。未知を車から降ろして置き去りにする。同様のことは過去にもあった。何度も持ち出し執拗に攻める健吾。
恐怖、とまどい、傷つき、彼の怒りようが理解できない気持ち。
同じく傷つけられた経験のある友理奈と出会い、一冊の本を渡されたことで夫はモラハラの加害者だと気付く。気づいたはいいが、夫のもとへ帰る。大好きな夫のきれいな部分を信じたいという未知に友理奈や同僚は心配するが。
一見人当たりも良く、「モラハラ加害者には決して見えない」人と、彼らをとりまく人たちの物語
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一章は自分が経験したことのない内容だったので、読み物としてある意味楽しんで読めた。
二章は読んでいて、途中で気分が悪くなった。最後は泣いた。
私は「意地悪」されたことはないけど、上から目線で「あなたにはこういう欠けているところがある」と怒鳴られたことが複数回あるので、心がヒリヒリした。
それと同時に…私も父親から怒鳴られ否定され育ったので、同じように自分の子どもにも怒鳴りがちでそんな自分に絶望している。
だから、本書を読んで良かったけれど、読むのはしんどかった。
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モラハラ問題で
逃げる一択でないのは
評価できるけど
苦しい道だろうなぁ
理解してあげられない
自分が悪いんだ
っていう態度を辞めるだけでも
二人の関係性は
全く変わるはず
どちらかといえば
モラハラ旦那のほうが
我慢できなくなるのかなぁ
希望的すぎるかな
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ハラスメントを受けていること自体ももちろん苦しいのだけど、周りの人が加害者の言い分を聞いて自分のことを信じてくれないという状況は辛すぎる。
でも、外面が極端にいい人って実際にもいて、その人も…と思い出した。
3章で、友梨奈はこういう風に絡んでくるのかとびっくり。
ハラスメントには色々な解決方法があると思うけど、逃げ道だけはいつも確保しておかなきゃと思う。
未知が幸せになるといいな。
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頑張って努力して好きな仕事をする為に上京したが、呆気なく崩されたのは自分に人を見る目がなかったのか、隙があったのかそれとも…。
夫との関係は悪いというのか、それとも自分が至らないせいか…とても歪である。だが逃げ出すのは違うかも、なんとか修復できるならしたい。
この2人の女性は、自己愛パーソナリティである相手に悩まされていたということ…。
読んでいても苦しくなってくる。
所謂、カサンドラ症候群という…アスペルガー症候群のパートナーを持ったひとが、時としてその関係性のなかで陥るくるしみのこと。
障害であるのかどうかを判断するのは素人では難しい。
自分がおかしいのでは、怒らせてしまうことをしたのかも?と思ってしまうのだ。
逃げ出せば済むということでもないような気がして、後々思い出しては苦しむのでは…と。
とても難しく、悩ましいことだと痛感した。