歴史ロマンあふれるミステリー
2023/03/12 07:21
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
残虐で不可解な殺人事件を追う刑事が、真珠湾攻撃や太平洋戦争を経て、一つの陰謀にたどり着く歴史ロマンあふれたミステリーだ。真珠湾攻撃前の情報戦の末に日米の若者が惨殺されるのだが、それがなければ、悲惨な戦争の開始は避けられたかもしれないと思うと、史実であればと考え込んでしまう。殺人事件を追いながら、戦争がもたらす社会崩壊のむごさが伝わる。戦争の勝者は敗者の社会や文化をひどく蹂躙するが、個々の人々の心情には、勝者も敗者もないのだろう。没頭できるミステリーだった。
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読み応えあり。
凄惨で目を背けたくなる殺人事件から、このようなスケールの物語に発展していくとは。ハワイ、東京、香港など地理的にも大きく動き、また、さまざまな人種、立場の人物たちとも関わり合ううちに、何度か緊迫して息を詰める。東京大空襲のことも日本にいる視線で描かれていたのが印象的だった。
そして、ひとかけらの雪片のような美しいシーンへと辿り着く。
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ハワイ真珠湾から香港、東京と太平洋戦争の始まりから、終戦までが舞台の今までにないシチュエーションの小説でぐいぐい引き込まれるすごい読書体験だった。
欲をいえば大きく広げた風呂敷のほんの少し不明点が残ったかなというのが正直なところ。とくに今はやりの異常な殺害方法は少し前までは表現されなかっただろうと思うし、実際必然性はなかったので時代の背景を考えることよりも犯人を必要以上に憎ませ、個人的な性格異常に事件を矮小化してしまったように思う。
とはいえ、今までにない読書経験、もう少し長くジョーの冒険に付き合って、日本の戦後を体験したかった。
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1941年のハワイ。アメリカ人の刑事マグレディはある殺人事件の捜査を始める。そして容疑者が香港にいるという情報でそれを追うがその最中に真珠湾の攻撃、太平洋戦争の勃発。そこからマグレディの人生が狂い出していく。日本軍に捕まり東京へ。ここまででもすごく読ませるけどこの東京の日々やその後が本当に面白い。一人の女性との出会い、終戦を迎えてまた変わる日々。色々なものに翻弄されていくなかでハワイでの事件を追い続ける。戦中、戦後のアメリカや東京の空気感や価値観の変化。戦争が変えてしまったものとマグレディのなかで変わらなかったもの。そういうものが溢れてくる余韻のあるラストがいい。
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鬼★5 戦争とは人間とは何か? 命のやりとりを壮大なスケールで描く歴史冒険ミステリー #真珠湾の冬
■あらすじ
第二次大戦が始まる頃、ハワイにてある白人男性と日本人女性が殺害される事件が発生。主人公であるアメリカ人の刑事は、犯人を捜すため奔走するも、捜査はウェーク島や香港にまで及んでしまう。彼が香港で捜査を進めているとき、折しも日本は真珠湾を攻撃、第二次大戦が始まってしまって…
予想だにしない運命と、事件の動機と真相を大きなスケールで書き記す、歴史冒険ミステリー。
■きっと読みたくなるレビュー
またすごい小説を読んでしまった…
これは日本人なら読んでおいたほうがいい。
殺人事件の捜査から第二次大戦の背景に、人ひとりの人生がまるっと影響を及ぼしていく。あまりもスケールが大きい物語でした。
○戦争が人々に与える影響
もちろん本作はフィクションではあるのですが、似たような現実があったのかもしれませんね。日本人外交官や関係者の考え方やセリフがやたらリアルで、重大な歴史への影響を感じ、じわりと手に汗を握ります。
ハワイの事件から始まり、ウェーク島、香港、日本と太平洋をまたにかけ場面が展開、当然それらの国の人々と主人公が関わってくる。ただの事件捜査ではない、まさに命のやり取りが繰り広げていくのです。
特にラストシーンは、この壮大な物語を締めくくってくれる至極の名シーンでした。
○攻撃される日本
戦時下における東京、生活する人々の現実、そして大空襲。小さな幸せをすべて破壊する描写と叫びがあまりにも痛烈。
どんな犠牲を払って戦争が行われるか、現代に生きる我々も覚悟して見ておく必要があります。
○人々の戦争に対する思い
どこの国で生まれ、育った人も、戦争なんかしたくない。
しかしそれが許されなかった時代に、日本人、アメリカ人で生きる人々は、それぞれに何を思っていたのか。きっと本作のように、当たり前の考えをしている人は多くいたのでしょうね。
物語の後半、ある女性と事件を振り返る名シーンがあります。
戦争がもたらす罪と罰が切々と語れれていきますが、特に強烈なのは日本刀の鞘に入っていた手紙。
第二次大戦では日本は何百万もの戦没者がいましたが、そのひとりひとりに家族がいるんです。2022年、いまだに戦争をしている国があります。いますぐやめるべきです。
○恐ろしい動機と真相
犯人の動機、事件と戦争の関係性があまりにも恐ろしい。
たった一人の歪んだ価値観が、こんなにも悲惨な結果につながるのか。これから未来に生きる我々は反面教師にしないといけません。
さて2022年、最後の一冊になりました。
昨年末にも「同志少女よ、敵を撃て」を読みましたが、戦争をテーマにした小説は学びが多いですね。重厚感たっぷりの時代冒険小説、じっくりと読みたい作品でした。
■きっと共感できる書評
朝起きて、仕事をして、仲間とお酒を飲み、ほんの少しのご飯をいただき、就寝につく。何処の国でも、人種でも、宗教であっても、みんな��族や恋人、友人たちと幸せに暮らしたいだけです。
凄惨な事件と辛い戦時中の物語ですが、読み終わってからあらためて本書最初の引用文を見てみるとよいでしょう。
人を救うのは、人の優しさだけです。
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スケールの大きさに圧倒された。
犯罪だけを追う警察小説だけではない、スパイ絡みであったり、恋愛などの要素もある。
それが戦争を挟んで繰り広げられる。
国を行き来しながら…である。
しばし、物語の世界に没入してしまい何も手につかないほど。
まるで予想がつかないラストは見事。
1941年、ハワイで惨殺事件が起きその真相を明らかにし、犯人を追うのがマグレディ刑事。
だがその最中に太平洋戦争が開戦する。
香港で身動きの取れない状態だったマグレディが、囚人たちと乗せられた船で着いた先は横浜。
東京で匿われた理由も惨殺事件の被害者と関係がある。
日本が敗戦し、マグレディ刑事が4年を経て戻ってからも事件を追ううちに明らかになった驚愕の事実。
いのちをかけて繰り広げられる闘い。
ラストにマグレディが向う先は雪景色で見えないかのよう…美しい描写。
ことばにできないほど胸を打つシーンだった。
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ミステリーというよりも冒険小説。スパイ小説かな。昔の007映画を見ているような気にもさせられます。
真珠湾攻撃直前にハワイで起きた事件を追って東京に...。今なら15時間程度のフライトのハワイ⇒香港の移動や第二次大戦前・後の日本と日本人が描かれていて面白かった。
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1941年ホノルル、真珠湾攻撃直前、アメリカ人男性と日本人女性が殺害される。男性は提督の甥だった。刑事は容疑者らしき男を追いかけていた香港へ。そして思いもよらぬ人生に。
面白かった。殺人事件の真相よりもマグレディがまさかそんなことになってしまうという驚きの方がインパクト大だった。
※ネタバレ
真珠湾攻撃に関する文書を起草する東郷外務大臣の秘書としてタイプライターで打っていた女性が内容をアメリカ側をもらすかも知れないとして殺された。マグレディは香港で容疑者に迫るが、マグレディの上司から情報を得て、先にマグレディを香港警察に逮捕される。当時の香港は日本に占領され、彼の身柄は東京へ。外務省職員の高橋に救われる。彼の姪が被害者であり、殺人事件をマグレディに解決して欲しいから。高橋の家に匿われるが外に出られない。高橋の娘サチと恋仲になるが、憲兵に姿を見られたため殺す。サチは急にマグレディを受け入れられなくなり長野に疎開。戦後になってアメリカに帰国、謎を解いた。
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1941年12月、日本軍の真珠湾奇襲攻撃直前のホノルルを舞台に、白人青年と日本人娘の惨殺事件の担当となった合衆国陸軍あがりの刑事ジョ-・マグレディが、上司ビーマ-警部の差別的パワハラの軋轢下で、戦乱と死闘が渦巻く激動の太平洋沿岸に連続殺人犯を追う、炎の執念と鬼気せまる圧倒的迫力の警察小説。 本作は、太平洋戦争開戦から終戦までの5つの12月(原題:Five Decembers)の歴史的背景のもと、ホノルル、香港、東京に彷徨える魂の物語が紡がれた、エドガ-賞最優秀長編賞受賞の骨太作品。
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SL 2023.2.14-2023.2.17
太平洋戦争の直前に起きた殺人事件を、戦中は日本に隠れ住みながら終戦後も追い続ける刑事。
この戦争がなければ起こらなかったであろう事件。だからこそジョーは香港から東京を経てホノルルへ戻って来なくてはならなかった。東京大空襲を含めた戦争を描くことでさまざま考えさせられる作品。
ただ、犯人との対決後はない方が余韻が残るのではないだろうか。
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ほぼ一気読み。こんな壮大なミステリは初めて。事件に戦争と幽閉を挟むなんてすごすぎます。真珠湾や東京大空襲をこんな角度から見るのは実に新鮮。映像が目に浮かぶほどリアルだし、舞台となる地域が目の前に広がるようで、中身が濃すぎです。日本人である我々が読まないでどうするの、レベルの作品と断言できます。高橋氏がかっこいい!ほんとに、こんなことあったなら歴史が変わってましたね。
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2023私が読みたい本3選に選んだ1冊を読み終えました。
読み応え十分な作品で、タイトル通りに第二次世界大戦の前後、ハワイで起こった凶悪な殺人事件を追うマグレディ刑事の視点で描かれたストーリーです。
殺人事件と戦争?戦争のどさくさに紛れた殺人ではありません。
犯人を追うマグレディが戦争という苦難に巻き込まれながら、最終的には犯人を追い詰めるというのがざっくりとしたストーリーです。
開戦の色が濃くなってきたハワイ、犯人を追い訪れた香港の地で捏造された事件で勾留され、そのタイミングで開戦をむかえます。
そして物語の舞台は日本へ。
東京が焼け野原となっていく焼夷弾による絨毯爆撃、悲惨な戦争の姿からは残酷な殺人以上に目を背けたくなる。
基本のストーリーは殺人事件の犯人を追うことですが、戦争がもたらす悲劇が本作に深みと重みをプラスしていきます。
ハワイで殺された被害者の1人が日本人であった事、時代設定に第二次世界大戦を選んだこと、そこで日本の文化に触れ日本語を学ぶこと。
全てが計算され尽くしています。
休日に手にして正解でした。
説明
内容紹介
世界最大のミステリ文学賞エドガー賞最優秀長篇賞受賞作
太平洋戦争迫るハワイ、香港、そして日本。彼は真実を追い求めた――
1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めた彼はそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本軍に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く大作ミステリ。解説/吉野仁
《ニューヨーク・タイムズ》を筆頭に、各書評誌紙で年間ベストミステリに選出。歴代エドガー賞受賞作家が激賞した、屈指の傑作
「とんでもなく面白い物語だ。圧倒された」――スティーヴン・キング(『ミスター・メルセデス』『IT』)
「時代を超えた犯罪叙事詩である」――デニス・ルヘイン(『夜に生きる』『ミスティック・リバー』)
「なんという作品だろう! 没頭させられ、文章も美しく、ときにショッキングで、とても感動的だ」――エリー・グリフィス(『見知らぬ人』『窓辺の愛書家』)
著者について
刑事事件調査員など様々な職種を経て、現在弁護士としても活動中の作家。ハワイ在住。2022年に本作でエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長篇賞受賞。
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フォローしている方が絶賛されていたので。
ホノルル警察の刑事が惨殺された事件を追い香港へわたる。そこで真珠湾攻撃から大戦に突入した状況のもと、ままならない日々の中でも、犯人探しの執念を抱き続ける。
兎に角主人公マグレディがカッコ良い。常に筋が通っていてブレない。
香港、日本の描き方もとてもリアルでその街の匂いまでが漂うようだった。
読んで間違いはなかった。
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著者は日本取材をしたと称してるらしいけど、ただ観光しただけだろうと思えるほど、日本パートがデタラメ。
厳しい食糧の配給制限や隣り組制度があった戦時下の東京で、一人暮らしの女性が外国人を何年も匿うことなんてできるわけがない。
他にもストーリー全体にツッコミ処多数の駄作。
早川書房といえば、かつてはミステリ界において特別な存在だったけど、こんな酷い作品を出すほど落ちぶれたのかと思うと、とても残念。
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第二次世界大戦の太平洋戦争をテーマにして書かれたにしては今ひとつ重厚感がない。何より途中から大河ロマンのようになってしまい、ついていくことは難しいなと感じてしまった。また主人公についてもどこまでもご都合主義的で今ひとつのめり込めない。私とこの作風は決定的に合わないのだろう。