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何が心をあらわにしたのか
2024/04/29 21:01
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
震災後の宮城県の亘理郡、津波で家族を失いはしなかったが、独立したばかりで仕事の資材を失った主人公。二年後妻はインフルエンザで亡くなり、幼い子どもを抱え、造園の仕事に打ち込んだ。
大きな災害に人は抗しきれない。果てに隠された歪さがあらわになってしまうのか。
人それぞれの苦悩の輪郭がある。
ラストシーンは圧巻
2023/09/18 08:27
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投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
直接的な被災者により、生活や人生そのものを破壊してしまったあの災害は「災厄」と表現される。町は物理的に復興しても、人の心は元に戻れない。人生の閉塞感は被災者であろうとなかろうと誰にでも付きまとう。人生の様々な場面を後悔と共に振り返りながらも、どこか自分事として腹落ちしていなかった(ように見える)主人公が、感受性の強さから悲劇を引き起こした友人から毒を受け、少し前向きな心境となるラストには、心を揺さぶられました。
あの日のことを忘れない
2023/05/18 15:53
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第168回芥川賞受賞作。(2023年)
作者の佐藤厚志さんが仙台で書店員でもあるということは、受賞後の報道から知られている。
前作『象の皮膚』は、2011年3月に起こった東日本大震災直後の書店での様など実にリアルに描かれていて読み応えがあった。
今回の受賞作も東日本大震災で大きな被害のあった仙台の海沿いの街で暮らす男とその周辺の人たちを描いて、深い感動を持たらしてくれる。
戦争にしろ天災にしろ大きな厄災があった時、死んでいく者と生き残る者が生まれる。
そのことはやむをえないが、生き残った者となった時、その人にはどうして自分が生き残ったのかという悔悟が生まれることほどつらいことはない。
作品の中にこんな一節がある。
「生者は時に闇をかき分けてでも失った人を感じたくて、すがるように光を追いかけて手を伸ばす。」
この作品こそ、佐藤厚志さんが伸ばした手かもしれない。
芥川賞選考委員の一人、吉田修一氏は「読後、胸に熱いものが込み上げてきた」と書いているし、それは多くの人の読書後の感想であるかもしれない。
その一方で、島田雅彦委員の「美談はしばしば、現実のネガティブな部分も隠してしまう」という言葉をおろそかにすべきではない。
それでも、佐藤さんには大きな厄災を経験した当事者として、臆せずあの日とあの日に続く有り様を書いてほしいと思う。
あの日のことは忘れてはいけないのだから。
なにも言えねぇ
2023/04/26 22:01
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投稿者:玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作品は、とにかく目を通しておきたい。
疲れるものもけっこうあるが、
本作は読みやすく、情景もめに浮かぶものばかりでした。
でも、感動はこみあげてはこなかったし、
もう一度読みたい、という気にはさせてもらえなかった。
なんでだろう?
芥川賞候補、仙台在住の作家
2023/03/17 22:32
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞候補と聞いて、読み始めましたが、一気読みとはいかず……というか、文章があまり流れてない感じで。やや読みにくく。この作家さん、初めて読んだかも?ストーリーは、40歳の植木職人である坂井祐治が主人公。彼は、あの災厄の二年後に妻を病気で失くし……
防波堤は人の心まで守ってくれない。
2023/03/10 22:03
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投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの災害はたくさんのものを奪っていきました。
復興しつつあると言っても、人の心は
そう簡単には癒されません。
大勢のうちのひとりにすぎなくても
そのひとりは誰かのかけがえのないひとり。
防波堤を見つめる主人公の描写が何度も出てきますが、
この防波堤ができあがったからといって
あの災害の記憶が思い出されるだけなのかもしれません。
何を守ってくれる防波堤なのか、
主人公の心は守ってくれない。
言いようのない辛さと、それでも懸命に生きる人々の姿が描かれています。
風化しつつある今、もう一度、今度は自分の身に降りかかるかもしれないという警鐘を鳴らしてくれるような作品でした。
心にしみる
2023/02/26 21:02
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投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災で命を奪われなかったものの、その後に生きていく男性が味わう苦悩をリアルな表現によって描く物語です。心にしみます。
最後の終わり方がすごく好き
2023/01/20 18:24
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投稿者:moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の機敏とともに巧みな風景描写が素晴らしい。あの日、普通の日常がいっぺんに失われた。災厄を境に元に戻ろうと四苦八苦しても、もはや元とはいったいなんなのか。もがけばもがくほど、遠ざかっているけれど、新しい日常もきっとそんなに悪くないと思わせてくれる。震災文学としてだけでなく人間ドラマとしても描かれているのが良かった。家族や仕事仲間、元妻など人の微妙な心情はいかんともしがたい歯がゆさがある。
また個人的に、一人親方(植木職人)として個人事業主の大変さもかかれているのも良かったです。一人一人いろんな仕事があって、いろんな復興の仕方がある。最後の終わり方がすごく好きです。鬱屈とした思考からの開放感があった。