「茄子の輝き」を彷彿させるゆるさと狂気
2023/04/18 09:02
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半は外国人と結婚した古い友人を訪ねて、夫婦で外国の山奥へ行く話。後半は手記の形式で語られる若い外国人との恋愛の話。全編通して、語りと描写がシームレスに入り混じる滝口さんらしい書きぶりなのに加えて、「茄子の輝き」を彷彿させるゆるさと狂気がとても好き。
特に後半の「窓目くんの手記」シリーズは「茄子」感がすごくて、分かっていたつもりでも他人のことは分からないことに気付くくだりも、不在の輪郭をフラットな気持ちでなぞるくだりも「あぁ、茄子の輝きで感じた"良さ"がある」と思った。加えて最終章のタイトル回収のくだりが面白くて切なくて笑った。
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【35歳。もう、若かった頃のように若くはないのだ】9.11、日韓WC、貧乏一人旅、サークル同期のあの子――青春の記憶はあらゆる所で飛び出して、あらぬ所へ誘いだす。連作短篇集。
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旅のなかで、芽生える友情や恋心。
その旅先で、どんな物語が出来上がるのか、そして、その物語が全部が良い物語とは限らない。
本作の登場人物たちも、旅先で、様々な体験を
目の当たりにし、新たな価値観を得る。
本作では、イギリスとイタリアにそれぞれ旅に
向かうのだが、茜と仁の夫婦は、仁の友達のけり子の結婚式が行われるイギリスに向かう。
その後に、今度は茜の友達が住んでいるイタリアのペルージャに向かうのだが、そこまでに行くのが大変で、バスの乗り換え、チケットの買い方等、
様々なトラブルに遭いながら、夫婦お互いの目線で、物語が語られている。こういう性格なんだとか、英語しゃべれるんだとか、普段あまり知らない部分が、慣れない土地での旅でお互いに見えてしまう。少し嫌悪感を感じてしまう部分も露わになるのだが、茜と仁2人の絆が垣間見れる、良い物語でした。本作は、連作短編になっていて、茜と仁のストーリーと、仁の友人の窓目の話も描かれている。窓目の健気さにやられました。優しさは
時に自分を傷つけてしまうのかと、あらためて実感しました。
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滝口作品と言えば、記憶、思い出。
今回は旅が(大きな意味で)テーマ。
旅を描くという事は、記憶を辿ることは必定。
滝口悠生作品の髄を存分に楽しめる。
後半は窓目くんが主人公。
『長い一日』などで存在感を放っていた彼がついに。
なんだかやっぱり、いいキャラクターだ。
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新刊が出れば必ず読む滝口さんの最新作。海外旅行記系小説でオモシロかった。2023年の今はだいぶ戻りつつあるが、海外旅行に気軽に行けて世界の距離が近かった時代の話として貴重なように思える。異文化交流の中で生じる喜びや悲しみが惜しげもなく表現されていて、自分の過去の経験を思い出したりもした。加えて最近はオンライン英会話で海外の方と月内に何回か話す中で自分の気持ちや意見が伝わらないときの切なさや悲しみ、一方できちんと通じて盛り上がったときの喜びを経験する日々を過ごしている。こういった感情の機微が逐一言語化されている感覚があった。
大きく分けて前後半あり、前半では夫婦での海外旅行の話。夫婦それぞれの視点があり旅行中にピリッとする感じが絶妙に表現されていて身に覚えがあった。あとはまさか滝口さんの小説でウィードの話が出てくるとは思わず、そこでテンション上がったし赤ちゃんの描写は植本さんとの共著『ひとりになること、花をおくるよ』に通じる部分があった。海外旅行での疲労感とかどうしようもなさを小説を通じて実感、その苦労も含めて旅に出たいなと思わされた。
そして後半は窓目君という人物の一大恋愛物語となっていて、いったい何を読んでいるか分からない良い意味で謎のメロドラマだった。この人物は『長い一日』で登場した人物であり、そこから地続きの物語のように読める。今回は特にこの窓目なる人物のすべてにおいてToo much、けど憎めない人物像が全面に展開されており読んでいて楽しかった。元は手記があってそれを滝口さんが語り直したらしく、手記ではないからこその蛇行があり、それがまさに滝口さんの小説らしさが存分に出ていてオモシロかった。また調理過程がここまで細かく書かれている小説を読んだことがなく、読んでいるとカレーをスパイスから作りたくなった。最近ビリヤニを作ったりしているのだがミックスされたスパイスを買ってそれを混ぜてるだけなので水野氏の書籍など読んでベースから勉強したい。文學界も買って読んだのだけど合わせて読むと本著の理解が深まってオモシロかったので両方読むのがなおよし。
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ずっと積読していたけど、滝口さんの本を読みたいゾーンに入り、グイグイ引き込まれて読んだ。おもしろかったー!!!他人やその人の生活を見る視点が、その見方と書き方が、独特。おもしろい。
窓目くんが愛おしい!
でもなぜか、滝口さんの本は、滝口さん読むぞのエンジンがかからないと、ぐいっと読めない。なんでだろう。おもしろかったな〜
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2023年2月
日常って人を癒す効果があるなぁと思う。旅行に行く"非日常"も含めて日常。事件も事故も起こらない。
普通の人が日常を振り返って書いたならばこうはならない。鮮やかさがすごい。まるでわたし自身がこの日常を体験したような気がしてきてしまう。そしてこの日常から浮き立ってくるものは幸福だなぁと思う。
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前半の話は、夫または妻が主語となっていてころころ主語が変わって少し読みにくく感じたのだが、なんか英語的な文章のように感じた。気のせいかもしれないけど。
後輩の窓目くんの手記はうってかわって読みやい文だった。
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本の説明にはないけれど、「長い一日」のスピンオフ版かしら。
その友達たちの旅の連作短編集なんだな。
ロンドンやイタリアペルージャでの出来事、コロナで遠ざかった世界が懐かしい。
窓目くんが相変わらず飄々として達観している姿が愛しい。
結局、タイトルのラーメンカレーってなんだっけと思いながらも、居心地のよい空間にいた感じでした。
紹介されていたカレーの本は、しっかりブックマーク!
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ダメや。
全然読めなかった。
結局、何の話やったんか、さっぱり分からん。
読解力のない自分を許してほしい。
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窓目くんの手記が面白かった。なかなかヘヴィなんだけど淡々としている。こういう連作があるから片っ端から読んでおかないとな。
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それぞれの章を読むたびに、誰の目線で書かれているのかを読みながら整理していく感じ。そして、それぞれの章がつながっている。登場人物の生い立ちや経験や選択が出会いや旅先に反映されていて、無意識にこなしてきた人生のアレコレって案外うまく回収されるんだなと自分の現状と照らし合わせても感じる。
久しぶりに海外旅行に行きたくなったし、何と言ってもカレーが食べたくなる!そして人と関わりながら生きて行きたいと思った。
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高校の同級生の仁と窓目くんとけり子。けり子のロンドンでの結婚式をきっかけに、出会いがあり再会があり。別れもある。結局人ってわかんない。人のことなんて自分を通してしか見れないから。他人は全く未知な別のもの。だから何も気にしなくていい。自分の見たいように見ればいい。人との出会いや別れも旅みたいなものか。
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はっきりと、こんなお話で面白かった、と言えない話だった。
例えば、知らない誰かの独り言をずっと聞いているような、お茶しながら友達の話を聞いているような気分になる。
それが面白い時もあれば、ふんふん頷きながら眠たくなってしまう時もある。
そんなお話だなあ、と言う感想。
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仁さんと茜ちゃん夫婦のイタリア旅行記風のお話と、後半はその夫婦の友人の窓目君の話。エッセイかと思いきや小説なんですね。視点があちこちに移っていく文体や窓目君の偏執的な語りといい、捉え所のない感じが面白かったです。登場人物みんな本当にどこかにいそうな感じがする。窓目君のあの感じは、そりゃ日本人で付き合える人はいないって言われちゃうよな…と思いつつもちょっと気の毒になったり。でも、彼女でもない大学の同級生に原稿用紙100枚の論文?作文?を渡しちゃうのはやっぱり気持ち悪い。むしろ、数年後に半年とはいえよく付き合えたな。窓目君の遠視的な恋の仕方は、なんか対象を過剰に神聖視してしまうところといい、寧ろ推し活とかに近そうで…あぁそういうタイプの人もいるよね…と分からないでもない感じ。
カレーは非常に美味しそうだった。