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新感覚の世界観でした。
百合というものにあまり触れていなかった私なんですが、女性同士の恋愛をここまで、美しく描けるんだなと感嘆しました。アンソロジー集となっていて、それぞれ違う作家が、自分の世界観を描いています。男女では描けない、恋愛模様が百合では、描けれるので、読む前は、この感覚に慣れるのかなと心配したのですが、読んでみてこの感覚にハマりました。全作品を読んで感じたのが、女性同士の恋愛の方が、男女の恋愛と比べて、より強く、深く結びついているイメージがあって、読んでて、美しいを通り越して、高い芸術性を感じました。
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それぞれにけっこう違う味わいの構造、物語。現代から戦争、魔術師、物語の内側。
ど正面な感じなのは『選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい』(斜線堂有紀)。タイトル通りの主張を持つ女と、正式に結婚したいから投票に行き、デモにも行く女。好き合って一緒に暮らしているけれど、熱意の量も向かう先も違いすぎてケンカする。
「ズルい。それが私の根源的な気持ちだ。――こんなパレードをしなくても普通に結婚出来る奴らはズルい。――怠惰な自分が赦されないのに、そっちは問題にもならないのがズルい」
『エリアンタス・ロバートソン』(宮木あや子)では、一途な想いがあるとき表裏ひっくり返って暗闇におちてしまう。
「綺麗なものだけ食べて育った感受性のうさぎたちも、親の監視下にあった三年間で一匹残らず死に絶えた。」
自分の元から去った恋人との思い出を、ピアノの音色が弔ってゆくのが哀しくも美しい。
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表紙の雰囲気から「舞台は現代。中高生、あるいは20代~30代くらいの女性同士の恋をえがいた作品」と勝手に期待していただけに、本作は自分には刺さらなかった。
すこし特殊な設定が多く、(作中の舞台が戦時中のヨーロッパだったり、登場人物が『ここは小説の世界なんだ』と認識しているメタ目線のお話だったり)個人的にはもっと王道展開なお話が読みたかったかな。
普通の百合作品に飽きて、ちょっと変わった作品をよみたい!という人には本作は刺さるかも。
ちなみに作中では作家さんごとにおすすめ百合作品が紹介されていて興味深かった。
ついでに自分のおすすめも紹介しておくと、
綿矢りささんの『ひらいて』、『生のみ生のままで』
百合小説アンソロジー『彼女。』
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全体的に上手くまとまっている雰囲気。
『選挙に絶対行きたくない(略)』はセクシャルマイノリティによるヘテロセクシュアリティへの反旗の話でもあると感じる。だって確かに選挙にも行かず期日前投票の日すらダラダラ過ごしてても、好きな人との日々を確約されてるなんて、それこそ""ずるすぎる""。二人をすれ違わせたのは結局信条の違いなんかじゃなくて、いつまでも同性婚を認めない政府の方針なんだなと思った。
ガッツリめのファンタジーが苦手なタイプで、ちょこちょこ挟まるファンタジー要素たっぷりのお話を読み進めるのが大変だったので、この評価。
宮木あや子さん目当てで買ったけど、やっぱり宮木あや子さんの書く愛の話は強烈で鮮烈で、それでいて儚く強く、最強だと思う。
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アニメや漫画や映画に関しては百合大好物だが、百合小説には疎い。
カバーイラストを「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関わるめばちさんが描いているので、手を伸ばした。
気になっていた作家さんも多かったし。
ネット発の作家さん多し。
とはいえ、カバーイラストが具体的にどれかの作品を表しているかといえばそうではないし、むしろ半分くらいがファンタジーや歴史モノやメタモノなので、イラスト詐欺といえなくもないが、まあ変化球を含んでいるということ。
絵はいい。断然いい。→このイラストの路線を求める方には、むしろ漫画の「エクレア あなたに響く百合アンソロジー」をお勧めしたい。
以下、私的好み度をA、B、Cで。
ちなみに帯の
〈名前をつけたい関係も、
名前のいらない紐帯も。〉
は名作。
■斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」
B
それこそ「スタァライト」の古川知宏監督と、脚本としてタッグを組んで「ラブコブラ」というか「タイトル未定作品」を待ちわびている。
本作はギスギスというか、彼我の政治意識差が、読んでいて辛かった。
今鑑賞中の「私の百合はお仕事です!」もそうだが、私が個人的に百合にギスギスを求めていないということなのかしらん。
■小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」
A
独特……。そしてそこが面白い。
西尾維新とか舞城王太郎とかの文体芸を思い出した(もはや古いか)。
■櫛木理宇「パンと蜜月」
C
純文学風な舞台立てか? やや類型的な印象。
■宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」
ー
スピンオフらしいので、いったん保留。
■アサウラ「悪い奴」
B
「リコリス・リコイル」のストーリー原案として知ったが、実は「メルヘン・メドヘン」の脚本も手掛けられていたのだった。「ベン・トー」は未見。
タイトルの意味が都度都度判明するのが面白い。
■坂崎かおる「嘘つき姫」
A
これはいい小説だ……。
皆川博子的本格西洋ではないが、スピリットは通じ合っている。
■南木義隆「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」
S!
以前からネット上の記事で気になっていた作家さん。
「アステリズムに花束を」収録の「月と怪物」を読みたいと思っていたところ。
今野緒雪「マリア様がみてる」をもじって、〈僕は自分で百合小説を書くとき、「これは『マリみて』のシェアード・ワールドです」と時々言うんですよ〉〈もちろん冗談ですよ(笑)。けれど、僕は『マリみて』も僕の作品も、同一の世界で起こっている話なんだとしばしば思い込んでしまうことがあるんです。同じ世界なんだけど、「マリア様が見ている」部分で起きているのが『マリみて』。対して、僕が書くべきなのは、そこからこぼれ落ちた「マリア様が見ていない」「マリア様が見過ごしている」部分の話だと思っているんですよ、勝手に。〉という発言で、信用度を高めていたところ。
津原泰水の小説講座を受講していた���いう経歴も目を引いた。
で、実際読んでみたら、文体のマジック! たとえば【薔薇子1】冒頭部の、
《家は帰るべき場所ではないから街に午後五時を告げるチャイムが鳴り響くのを背にきみは、他に人影のない冬の海に佇んで空になった猫用缶詰を片手に煙草をくゆらせている。歳は十三。》
とか、まさに津原泰水の文章を読んでいるかのようで、嬉しくてちょっと涙ぐんでしまったわ。
津原全作品の冒頭部分を最近読み直したので、この感想は間違いない。
会話文の粋さも通じている。
作者ご当人はおそらく、過剰に津原の弟子みたいに言われたら嫌だろうけれど、題材や筋もさることながら小説って文章の芸よねと再確認させてくれた点で、やっぱり津原泰水を強烈に思い出してしまったんだから仕方がない。
また、たとえば、宮崎駿「魔女の宅急便」とか新房昭之「魔法少女まどか☆マギカ」とか、典型的魔女描写という点で「魔女の旅々」とかを連想させておいて(たぶんわざと)、別ベクトルに読者を拉致せんとする豪腕さ。
さらに、冒頭と終盤で「痛み」の意味を別次元に転化された、驚きと、嬉しさとで、うっとりしてしまった。
敢えて大袈裟に言ってしまうが、この小説は額装して部屋に飾っておきたい。
■深緑野分「運命」
B
このアンソロジーに深緑さんが加わるのは確かにと思ったのは、「オーブランの少女」という弩級の名作をものした作家さんだから。
が、むしろ坂崎かおる「嘘つき姫」に深緑っぽさを感じた。
かたや本作は今敏ふう?
油圧カッターという無骨なモノを持って走る姿は、実にいいが。
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恋愛小説読みたくて手に取ったら、すごく好みで大正解でした。アンソロジーなので、色々摘み食いできます。
男女の恋愛よりも面白く感じるのは、やっぱり2人を隔てる障壁があるからでしょうか、日本って舞台がその障壁になっていたりして、改めて日本は海外に比べて不自由なのかもと思ったりしました。
舞台が海外の作品もあって、翻訳された外国の小説の雰囲気も楽しめました!
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冒頭から女版ひろゆきみたいな性格悪い女が出てきて良かった でも必死こいて選挙に行きたくない気持ちめちゃ分かる この世はマイノリティ向けにデザインされてないから
シンプルに気になる作家に出会えたので得した気持ち
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初めて読んだ百合小説。ドロドロ系から社会派、ファンタジーまでこんなにいろいろあるんだな〜〜という率直な感想。おもしろかった!
どの女の子にも影があるのが、性的指向に関係なく現実を生きる私たちにとってリアルで、そこに百合がはやる理由があるのかなという気がした。特に斜線堂有紀さん「選挙に絶対行きたくない〜」と、小野繙さん「あの日、私たちはバスに乗った」が好きだった。
あと帯キャッチも素敵。「名前をつけたい関係も、名前のいらない紐帯も。」
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巻頭の斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」を河出書房新社のサイトで全文公開していて(太っ腹!)、それがすごくよかったのでその勢いで文庫本を買ってしまった(出版社の思惑にまんまとハマった…)。
小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」と坂崎かおる「嘘つき姫」は2022年「pixiv」初出、ほか6編は書き下ろしというぜいたくアンソロジー。
2篇目「あの日、私たちはバスに乗った」もまためちゃくちゃおもしろくて切なくて、この本は一篇読んではしばらく反芻して余韻に浸って、そしてまた次にとゆっくりゆっくり味わうべき宝石箱だと思う。
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どうしてもペアみたいに思ってしまうBLが異様に輪郭が鮮明なジャンル(なにがBLでなにがBLでない)だけに誤解をしてしまいがちになるが、百合ってジャンルの輪郭が極めてあいまいなのね。そのせいか、ものすごく肩に力の入った「こういうのが百合です、あんなのは百合じゃない」的力作が多くて読んでて疲れる。アニメ界隈なんかで「尊い」の同義語として使われる「百合」を「百合」だと思ってるような人間は戸惑うばかり。個人的ベストは「噓つき姫」。
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楽しみにしていた百合アンソロ。
一番好きな作品は櫛木理宇さんの「パンと蜜月」。現実味があったし、当事者同士が一番幸せそうだったので。
斜線堂有紀さん宮木あや子さん深緑野分さんはやっぱり安定感ある。
アサウラさんの「悪い奴」そうくるか!って唸る学生百合でよかった。
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百合短編小説のアンソロジー。一番好きなのは『あの日、私たちはバスに乗った』。ユアのぶっ飛び具合がいい。『魔術師の恋その他の物語』も裏魔女宅みたいで面白かった。
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百合って何ーっ!?という気持ちになった。
海外が舞台だったり、ファンタジー設定だったり、メタフィクションだったり、バリエーション豊かな短編集。ちょっとラノベっぽい作品が多いような。BLの女性版みたいな作品を想像していたら、全然違った。表紙から抱いていたイメージとも違った。性描写が激しい、というわけではないけど、なんだか感情が重くて読んでいてちょっと疲れてしまった。
斜線堂有紀の「選挙に絶対行きたくない 家のソファーで食べて寝て映画観たい」と宮木あや子の「エリアンタス・ロバートソン」がよかった。
また、著者の紹介や、それぞれの著者による百合作品紹介のページが充実していて、興味をそそられた。巻末の河出文庫作品のラインナップも見事に百合作品で、こだわりがすごい!
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かなり好き。特に斜線堂有紀さんの「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」、南木義隆さんの「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」、宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」の三編が好き。心中したり不幸になったりしない、でも社会的な背景も踏まえた百合小説で好感度が高い。百合小説というよりビアン小説と言ってもいいなもしれない。わたしはふわふわした王道女子高生百合にどうしてもハマれないたちなのでこういうのはとても趣味に合うし、日々異性愛前提の社会に生きていると心が救われる気持ちになる。
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――
アメリカの俳優ニック・オファーマン出演作品について、「なぜ同性愛者の物語にする必要があったのか?」と訊かれて「そういうくだらない質問するやつがいるからだ」って言い返したというニュースを気に入ってたんだけれど消えてる…フェイクだったのかな?
久々に百合アンソロジーなどを。百合でなきゃ得られない養分が…とかってわけではないけれど、やはりなんというか、この関係性じゃないと生まれない痛み、のようなものがある。でもそれって普通の恋愛小説と何が違うの? と思うことも。純度の問題なのだろうか? LGBTQに配慮も忖度もしないオレのような者が、しかしなぁ。
全8編。特に気に入った(そして気に入らなかった)ものだけを掻い摘んで…と思ったけれど毎度、ほとんど全部。それだけ良作揃いではあるのだけれど、残念な部分もあります。
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選挙に行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい/斜線堂有紀
普通に考えて頭がこれって失敗でしょう。1編読んで一旦お腹いっぱいになっちゃうよぉ←
やっぱりストーリーテラーとして飛び抜けているなぁと思う。面白いんだよなぁ…選挙を切り口に、これくらいの世代なら誰もが持っている素材をこんなふうに料理できる小説家はこの世代にはなかなか居ないでしょう。斜線堂全肯定botになりそう。嘘です。
エリアンタス・ロバートソン/宮木あや子
なんとも純度の高い百合小説だなぁ、と思ったらとても書き慣れてらっしゃるようで。流石だな、と思いました。こういう、自分の作品群の中に確固たる百合枠、みたいのを持っているひとが書くキャラクタはいいなぁ、と楽しく読んだ。
嘘つき姫/坂崎かおる
斜線堂が書いたのが日常の中の地獄なら、やはり戦争という真物の地獄の中での百合もまた、映えるもので。次に出てくる南木義隆が「ソ連百合」で名を馳せたように、大戦中を舞台にした百合小説は十指に余るだろう。
どうしても写実的になりがちな戦争ものでありながら、物語的な細工が全体に光るこれも良作。個人的に、おすすめの百合作品が萩尾望都『半神』で同い年、というのもまた痺れた…謎の嬉しさったら。
魔術師の恋その他の物語/南木義隆
エンタメばくはつ、という感じ。「月と怪物」、『蝶と帝国』など、重厚な作風のイメージが強くあったのだけれどこれはもう、逆のベクトルに突き抜けていてとっても面白かったです。中編程度の頁数の間、ずっとワクワクしていた。嬉しい。
運命/深緑野分
これだけはマイナス評価。
こういう、小説家を志す思春期の少年少女が必修で書きました、みたいな物語を直木賞候補になるような作家さんに書かせてちゃいけない。もっとあるやろ、というのが正直なところである。残念。
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ところで小説、漫画を問わず若いひとたちの作品を読んでいると、いまの世の中ほんとに何でバズるか解らないからペンネームだけはまじでちゃんとつけておきなさい、と思う。まじで。
粒���ろいのアソート。☆3.4