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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
全く野理解不能な作品だけど、熱量はすごいと思う。
20年以上前の作品に続編を書くのもすごい。
それをきちんと評価してる解説者もすごい。
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人為的にサイキックを産み出す「レンブラント・プロセス」が実用化された近未来。黒髪の美少女アナベルがそのプロセスを経て得た能力は、あらゆるものを「変容」させる能力だった。人体をネオン灯に、鋼鉄の扉を生きた鱏に、大伽藍を海水に変容させることができるアナベルの能力は、彼女自身にも制御できず、その破壊力に恐れをなした35人の科学者によってアナベルは撲殺される。うち30人が返り討ちで命を落とし、生き残ったのは僅か5人だった。
しかし、最強にして最凶のサイキック・アナベルは、自らに関連する事物を依代にして何度も何度も蘇り、蘇るたびに世界を恐怖に陥れる。生き残った5人の科学者によって設立された対アナベル機関「ジェイコブス」は、アナベルに対抗しうるサイキック能力を持つ6人の障害者によるゲシュタルト「Six」を中心に、アナベルの掃討作戦に乗り出す・・・。
いやー、これ、すごいもん読んじゃったなー。
読了して巻を閉じた直後の、鴨の率直な感想です。
全編これゲロゲロのぐっちょぐちょで、血と脂と呪いと報復の連鎖で、これ以上なく醜悪で、しかしながら寄って立つ理屈がちゃんとあって、だからこそ、これ以上なくスタイリッシュな世界観です。
あらすじを紹介する限りではアナベルとSixの戦いがメインになるかと思いきや、アナベルもSixも、内面まで踏み込んだ描写はほぼありません。この作品で描かれるのは、アナベルとSixの戦いに「使い捨ての兵器」として投入され、生死の狭間で振り回される、凡庸なサイキックたちの生き様。この作品の世界観において、サイキックは単なる「工業製品」であり、ジェイコブスにとっては人間魚雷並みの消耗品です。そんな苛烈な世界観の中、消耗品として使役されるサイキックたちの闘い、そして思いが、この作品のメインテーマです。
この冷徹さ、虚無感と言ったら・・・鴨的には、日本SF第一世代並みの「針の振り切れっぷり」を感じた次第です。
そして、鴨的に一番印象的だったのは、ラストシーンの静謐さ。
これだけ派手派手しい独特の世界観を容赦無く読者の眼前に繰り広げながら、SFとしてきっちりと筋を通し、意図せずして世界を呪う存在となってしまったアナベルの魂の救済を描きつつ、物語の落とし前を付けています。
これは、神話ですね。寡作な作家さんだそうですが、他の作品も読んでみたいです!
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「獣のヴィーナス」★★★
「魔女のピエタ」★★
「姉妹のカノン」★★★
「左腕のピルグリム」★★★
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天災や人災、わざわいは、人びとの生活におけるモノやメンタルを容赦なく打ち壊す。その修復や治癒は個人差はあれど時間と共に前進する。そこにアナロジーとして禁忌が流布される世界は萎縮へと向かい、人びとの思惑と逆行してしまう。この物語はアナベルに翻弄される集団ジェイコブスが管理するサイキック・氾雨天の能力 "過去の人の記憶に侵入する" 局面で高潮する。悔恨だけでは生きる気力を徐々に失っていくのだが、一縷の望み、そこに未来という道程を見付け出そうと懸命になる。逆行と前進、この相容れない時間の様態に引き込まれていく。すこぶる面白いよ。
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世界を変容させる少女アナベルと、彼女を倒すために生み出された複合人格sixのサイキックバトル。
……が行われている世界で調査や後処理に駆り出される、捨て駒のような一般職員が主役で視点キャラクターの連作短編です。
何度も蘇るアナベルが巻き起こす超常の災害が、グロテスクで恐ろしいのにどこか鮮やかで美しさを感じてしまう。
むしろ彼女を生み出してしまった後も研究を続けて、生まれたサイキッカーを使い捨てにするようなジェイコブスという組織が恐ろしくなってしまうような……。