投稿元:
レビューを見る
身内を殺された人が犯人を許せるか?小説にはよくあるテーマですが、そこを突いて更に掘り下げようとする薬丸さんの心意気にまず感動しました。
とても面白く読んだのですが、最後だけ、あまりにさっと行ってしまって残念でした。物語としてはそう終わるとは想像つきますが、呆気なさすぎるというか、私としては納得がいかないというか、、
それでもとても読みごたえある一冊でした。
登場人物の女性たちの名前はちょっと苦手だったかな。
投稿元:
レビューを見る
またやられた!また難問を突きつけられてしまった。
私にはめちゃくちゃ可愛がって育ててきた息子と娘がいます。今でも可愛くてしょうがない子どもたち。さて、自分の子どもを無惨に殺されたあなたは犯人を許すことができますか?
私はもちろんNO。その犯人を許せないし、この手で殺してやりたいと思う。
さて、物語を読んでいきましょう。教誨師の宗佑には妊娠中の娘がいた。訳あって娘には父親とは名乗っていなかったが、近くにいて相談事を聞いたりと寄り添ってきた。
その娘が、ある日突然、残虐な犯行によって命を奪われてしまう。犯人は前にも同じような手口で若い女を殺していて、全く反省がないまま死刑を望んでいた。
宗佑は犯人に復讐するため、生きる希望を導き出し、最後に地獄に落とすべく犯人が入る拘置所に教誨師として入り込むが・・・。
犯人である石原は、初め若い女を殺すことに喜びを感じ、拘置所に入ってからは、その楽しみもなく、早く死刑を望んでいたが、宗佑の教誨を受けるようになり、次第に人間らしさを取り戻していく。
もちろん自分の身になって考えると許せるはずもないのだが、読み進めていくうちに、石原を許してしまいそうな自分が出てきてしまうものだから、薬丸岳の手のひらのうえで転がされていることに気付く。それにしても深い。そして思いっきり重い。
薬丸岳は2冊連続では読めそうにない。
投稿元:
レビューを見る
Amazonの紹介より
殺人犯と、娘を殺された父。 死刑執行を前に、 命懸けの対話が始まる。
娘を殺した男がすぐ目の前にいる。贖罪や反省の思いなど微塵も窺えないふてぶてしい態度で。
東京に住む保阪宗佑は、娘を暴漢に殺された。妊娠中だった娘を含む四人を惨殺し、死刑判決に「サンキュー」と高笑いした犯人。牧師である宗佑は、受刑者の精神的救済をする教誨師として犯人と対面できないかと模索する。今までは人を救うために祈ってきたのに、犯人を地獄へ突き落としたい。煩悶する宗佑と、罪の意識のかけらもない犯人。死刑執行の日が迫るなか、二人の対話が始まる。動機なき殺人の闇に迫る、重厚な人間ドラマの書き手・薬丸岳の新たな到達点。
「罪と罰」について色々考えさせられることで定評のある薬丸さんの作品。今回も重くのしかかって、考えさせられました。命を喪うことが、どんだけ重いことなのか。ヘビーな話で、怒りや哀しみといった気持ちが駆け巡りましたが、きちんと向き合わなければいけないなと思いながら読んでいました。
教誨師が、死刑囚と話す。それも、自分の娘を殺した人と対話をしていくことで、罪の意識を自覚し、死んでいくという何とも言えない状況にちょっとした復讐劇の解釈も出来て、新たな分野が拡がったなと思いました。
それにしても、この死刑囚といったら、胸糞悪い気持ちにさせられました。裁判シーンが描かれているため、その犯行の模様が殺人犯の口で語られるのですが、読むのを躊躇うくらい、詳細に語られています。殺された人の心理描写も含まれているだけでなく、罪の意識もなく、犯行を楽しんでいるように語られているので、まぁ辛かったです。
そんな死刑囚が、死刑執行に至るまで、どう心が揺れ動いていくのか。教誨師や刑務官、そして死刑囚の家族と向き合うことで変化していきます。
主人公は教誨師の方なので、この人がどのような人生を辿ったのかも描かれていますが、こちらも辛い人生を辿っていて、酷い一面がある一方、「罪」と向き合いながら今に至る姿に胸が苦しかったです。
そして、自分の娘が殺されたということで、その心情は計り知れないなと思いました。
どのようにして、死刑囚と出会っていくのか。トントン拍子に偶然が偶然を呼ぶような展開なので、ご都合的な感じもありましたが、そこは小説ならではということで目を瞑りました。
他の死刑囚にも触れられているのですが、どの殺人犯・死刑囚も「人間」であることを示していて、複雑な感情になりました。
みんな犯行を犯してはいるものの、徐々に見えてくる「普通」の感情。死刑執行になった時の死刑囚の感情。長い時間、死刑執行を待つ間だからこそ、生まれてくる本来の「自分」。
など読んでくるにつれて、死刑というものに疑問を持ってしまった一方、被害者達の関係者のことを思うと・・・と思ってしまうので、心の中ではぐちゃぐちゃでした。
死刑を執行する側も、辛いなと思うばかりでした。
死刑囚に首をかける。ボタンを押すなど「仕事」ではあるものの、その心情は計り知れないと思います。
死刑によって、心が蝕���れていく登場人物達の描写に何ともいえない複雑な思いに駆られました。
果たして、死刑囚は最後にどのように思うのか。
死刑が執行したとして、遺された人達はどんな心情になるのか。
読み終わった瞬間、焦燥感に陥りましたが、罪を犯すことがどんだけ周りに影響するのか。色々考えさせられた作品でした。
投稿元:
レビューを見る
薬丸岳さんの文章は相変わらず読みやすくて、重い内容だけどスイスイと頭に入ってくる。薬丸岳ハズレなく大好きな作家なんだけど、この作品はちょっと‥‥。
終始ふてぶてしい態度で反省の色もないのに牧師の教誨を受けるやあっという間に従順になった死刑囚や、娘を殺した男に復讐するために教誨を志望するというとんでもない牧師や、規則を勝手に曲げる刑務官など設定がかなり強引で、いかにも小説って感じは否めない。
そして作者は死刑反対派なのかな?
死刑に立ち会う刑務官たちの苦悩や、改心した死刑囚を殺す意味はあるのかとか、本来厳罰を望むはずの被害者遺族という立場の保阪に疑問を抱かせるあたり死刑への疑問を誘導しているよう。
最後にはなんとなくいい人のように描かれる死刑囚たちに違和感だし、なんとも後味の悪い作品でした。
投稿元:
レビューを見る
拘置所と刑務所のことや、死刑に携わる人のこと
教誨師という受刑者へのキリスト教の説教を行うボランティアの牧師
その世界を垣間見るのに良い作品だと思いました。
巻末に参考文献もあり、各職業に興味を持った際に自分の知識を深めたりする端緒になるのではないかなと。
5/22,23
投稿元:
レビューを見る
罪を償うこと、許すということの難しさを重たく訴えてくる小説でした。薬丸岳さんの小説に出てくる残忍な犯罪者達、全てに向けての筆のようにも感じます。最後があっけないとの感想も多いですが、自分は、主人公の石原、姉、宗佑、小泉の動きのひとつひとつが意味深く、静かに沁みてきました。
投稿元:
レビューを見る
自分の娘を惨殺した犯人の教誨師となり、どのような結末になるのか…とても気になり手に取りました。とても濃厚な内容で深く考えさせられました。これを読んだ後は死刑執行が報じられるニュースを見ると捉え方が変わると思います。教誨師だけでなく刑務官やその家族の心情を思うととても苦しかったです。
「あなたに伝えたいことを伝えることができる……それはあなたが生きているから」そしてエピローグ、犯人の贖罪の思いを知ったとき感極まりました。読んで良かった一冊です。
投稿元:
レビューを見る
今まで深く考えることがなかったそれぞれの役割を、奧深いものなんだなとつくづく感じました。厚い本ですが最後まで目が離せませんでした。
投稿元:
レビューを見る
娘を惨殺した犯人が反省も後悔もしていない。それどころか死刑を望んでいる。そして望み通り死刑判決を受けた。
死刑を受けるだけで本当の意味の罰になるのか。いやならないだろう。教誨師である自分なら、犯人の教誨をすることで犯人の心情に影響を与えることができるかもしれない。そうして犯人に生きる希望や救いを与えた後で、死刑執行のその時に絶望へと突き落とす…
というのが保坂の犯人・石原への復讐だった。
この復讐の行方はとても興味深かった。
後半から、保坂が石原を許す、許さないという話が出てくる。
私が保坂と同じ立場なら石原を許すことは絶対にできない。保坂のように石原の教誨師として彼と対峙するような精神力は持ち合わせていないけど、石原を憎んで憎んで、苦しみながら死ぬことを望むだろう。
保坂は最期に石原を許したと口にする。理解はできるが、私にはどうしても共感できなかった。
保坂の復讐は半分は果たされたことになるのかな。
でも保坂は最後まで石原の教誨師だった。被害者遺族ではなく。立派な牧師様だと思う。宗教の力はそんなにも強いのか。
ほかには保坂が抱える過去の過ちからの後悔や罪悪感とか、死刑囚に関わる人々の苦悶とか、ある日突然被害者遺族になり経験する辛い出来事の数々とか、細かな描写がとてもリアルで、重たい内容なだけに読んでいるだけでも苦しくなるほどだった。
投稿元:
レビューを見る
読後、放心状態。
途中呼吸する事を忘れ何度も胸苦しさを覚えた。
教誨師としての矜持と復讐。
激しく揺れ動く天秤のように、教誨師・保阪の葛藤が手に取るように伝わる。
娘を無残に殺害された保阪が、この世で一番憎い相手と対峙し、精神的救済をするなど、尋常では考えられない苦行だ。
犯人の生い立ちに同情する部分があっても、自分なら我が子を殺した相手に赦すという選択肢は存在しない。
死刑執行に携わる刑務官達の姿もリアルだ。
タイムリミットが迫る中、保阪はどちらを選択し行動するのか息を潜め頁を捲った。
ラスト十頁は胸が締め付けられる。
投稿元:
レビューを見る
正解のない犯罪心理と贖罪、教誨師と死刑囚の交流と執行の葛藤を描く長編ミステリー小説。長編と書いたが長さを全く感じさせない、重厚なのに頁をめくるのが止められない傑作。最後の最後まで読めないプロットも見事で、読後の納得感も十分で存分に楽しめた。
投稿元:
レビューを見る
死刑執行の場面がこれほど詳しく書かれた小説は、今まで読んだことがない。その描写は現実とはいえ、読み進めるのをためらうほどだった。
教誨師に心を開いて囚人が落ちついていくほど、執行日が近くなりやすい。改めて人が人を裁く、罰することの難しさを考えさせられた物語だった。
投稿元:
レビューを見る
とても重くて簡単に言葉で表せないほど。
死刑に直面する人たちの思いは、わかろうとしてもわかるものではない。
だからこそなのか、教誨師が必要なのは。
ひとりではなく一緒に悩んで一緒に考えてくれる人がいれば救いになるのだろうか。
保阪は、自身の過去を悔いることがあって牧師となり教誨師として人を救うために祈っている。
だが娘を殺した死刑囚に対しても今までと同様の教誨師としての勤めが全うできるのだろうか…。
ただ自分の殺したい欲望のために殺人を犯して、贖罪や反省すらない犯人に対して、罪の意識を感じさせて心に救いを与えることができるのだろうか…。
そして死刑執行のときには地獄に叩き落とす言葉を突き刺すことが…。
苦しむ保阪に対して少しずつ心を開いていく石原の変化に教誨師の凄さを感じる。
死刑執行のそのとき。
タイトル「最後の祈り」
投稿元:
レビューを見る
★5 死刑囚と教誨師の苦悩… 極悪非道でもなく清廉潔白でもない人間たちの命のやり取り #最後の祈り
■きっと読みたくなるレビュー
教誨師と死刑囚の物語。人間関係の設定やプロットの出来が素晴らしすぎて、小説としては文句なし。さすが社会派小説のベテラン先生で、感服いたしました。
本作は死刑制度や死刑囚、教誨師の現実を丁寧に書き記しています。しかも単に社会問題としての死刑制度ではなく、犯罪に関わったり巻き込まれた人たちの弱さや冷酷さ、そして深い繋がりを描いています。
人間だれしも清廉潔白ではない、はたまた極悪非道でもない。
ひとりひとりが背負った人生が、あまりにも辛辣で読んでいて息苦しいです。
作中にでてくる、強い強いメッセージ。
犯罪とは、死刑とは、人間とはなんなのか… 読み手に強烈に突き付けてきます。
・死刑判決を受けた人は、当然家族からも見放される。自分が抱えている問題に一緒に悩んでくれる存在すらいない。
・死刑囚の精神状態が乱れているときは執行されない、だから教誨師が必要である。
・殺害された人も、死刑囚も、教誨師も、死刑を執行する刑務官も同じ人間である。
なんといっても教誨師が苦悩がシンドイ。死刑囚を送る際、どんな語り掛けをすればいいのか。少しでも恐怖や苦痛を和らげるにはどうすればよいか…
教誨師から吐き出る魂の言葉は本当に身に沁みる。どんな人間であれば、正しい答えを導き出せるのでしょうか。
そして本作一番の読みどころは、主人公教誨師と死刑囚の石原が関わっていく中、二人の心に変化が生み出される部分。
恵まれない人生を通じ、凝り固まったしまった自らの基準や価値観は、そう簡単には解凍できるわけではありません。生きるのは難しく失敗ばかりですが、どんなに小さくてもいいので、希望の光や人の愛情を大切にしなければいけませんね。
この本を読む以前からなんですが、私は死刑制度が嫌いです(反対といっているわけではない)。
憎むべきは、犯罪や至ってしまった背景や環境や教育であって、その人そのものではないと信じたいからです。そしてあまりに刑罰や執行の負担が重すぎます。
とはいえ悲しい重罪が発生してしまう現実もあり、もちろん被害者も家族もいるわけで、大変難しい問題です。いろんな考え方がありますが、付和雷同することなく、ひとりひとりが考えなければならない社会問題であると認識すべきですね。
■きっと共感できる書評
物語を読み終えて、ふと父のことを思い出しました。
私の父は、すでに日本人男性の平均寿命を越えています。正直なかなか難しいところも多い父でして、息子としては苦労も多かったです。でも心根は優しく、大人になるまで育ててくれたことは、本当に感謝をしています。
これから父に対して何ができるか考えたい、そしてできる限りの恩返しをしたいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
被害者家族の辛さ、苦悩が伝わって読んでるだけで辛くなった
犯人から直接犯行の様子を聞かされるシーンは自分が保坂さんになった感覚になって激しい怒りを覚えた
とても考えさせられる一冊