物言う株主といってもいろいろある
2023/06/26 20:27
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、敵対的買収やアクティビストについて、専門的すぎるものやトピックスとして表面的なことにしか言及されていない現実に対し、何が問題なのかという点を一般向けに書かれたものである。といっても、読めばなかなか大変な書である。具体的なことを取り上げることにより、わかりやすいといえばそうだが、当時の状況をそれなりに理解しておかないと理解しにくいテーマである。目次を見ると、
プロローグ
第1章 敵対的買収とは
第2章 アクティビストとは
第3章 敵対的買収の歴史 -アクティビストの登場から隆盛まで
第4章 買収防衛策とはどのようなものか
第5章 各国は敵対的買収をどのように規制しようとしているか -法的規制と判例の動向
第6章 敵対的買収と株主アクティビズムの将来
エピローグ
参考文献等
コラム
三角合併と敵対的買収
新聞社は敵対的買収の対象にならない
ウルフ・パックの語源と軍事用語
野蛮な来訪者
GAFAの「鉄壁の」買収防衛策
TOBに応募する方法
フロランジュ法と二倍議決権制度
動物愛護を唱えるようになったアクティビスト となっている。
新自由主義が広がったからであろうか、企業は利益のみ追及といわんばかりで、株主の利益第一という点から、ステークホルダーを見据えての制度を変えていく過程や、そもそも敵対的買収とは何か、良い敵対的買収、悪い敵対的買収についての議論、考えれば考えるほど結論を出しづらい。株主の利益と言っても短期的なのか、長期的なのかによって変わってくる。しかし、目先の利益を求め、企業を買収し、売り抜けていくことは排除しようとしている。だから、アクティビストは手を変え、品を変えてアプローチしてくる。狙われやすい企業はとか、第5章で法的にどう規制されてきているのか、判例の動向は。最終章は将来に向けた動きについて解説している。コラムも面白い。会社法の解説とともに、一読してほしい本である。
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敵対的買収に関してよくわかる。「敵対的」とは株主から経営を委託された取締(役会)に対するものであることを改めて確認した。よって、エピローグにもある通りに敵対的買収が一概に「悪い」とは限らない。取締(役会)にとっては、既得権益を失いかねないといった意味で常に「悪い」ということになる。
法律の専門家による書であるので、専門的過ぎてよくわからない「ラテン語」で書かれている部分も多い。ノートに整理しながら解読する必要があるであろう。
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超一流の弁護士が専門書としてではなく一般書として執筆した本、ということで、大変ありがたく読んだ。
日米欧それぞれの法理論と判例の変遷まで、大変分かりやすく書いてあって、一般書とは言いながら、実務の上でもしっかりした基礎を築くことが出来るかと思う。
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現在のわが国の裁判例は、大雑把に言って、企業価値研究会の第一次~第三次報告書に依拠して、「企業価値」を向上させるものが「良い」買収であって、そのような結果をもたらす敵対的買収こそが「良い」敵対的買収と考えているものと思われる。ただし、そこでいう「企業価値」の内実は、株主共同の利益を重視していることは明らかであるものの、どのようなものを想定しているのかについては、必ずしも明確ではない。
だから、例えば、「株主利益にかなうものが良い敵対的買収だ」とするステレオタイプ的な見方に陥ることに警鐘を鳴らす。(249~250頁)
以上の見方の背景には、株主資本主義からステークホルダー資本主義への大きな流れ、企業に求められる役割をどう捉えるか、すでに、アクティビスト・ファンドがESGやSDGsへの取組みをめぐる議案を株主提案として提出する中で、重要な視点である。
「買収防衛」とは、「一歩ずつ常に先手を打つことで、できる限り時間を稼ぎ、最終的に、会社の企業価値や株主共同の利益に照らして最善の解決策に辿り着くという試みに他ならない」(エピローグから)という著者が、アクティビスト、敵対的買収、買収防衛策、米国・欧州・日本の法的規制と判例の動向などを論じたもので、資本市場の見方について、示唆するところが多い好著である。
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弁護士が書いたより法律的な書籍。敵対的買収とアクティビストに関し、各国の変遷や具体的な事例を用いて紹介がしてあり、参考になった。
一方で特段目新しい内容というわけではなく、日々の情報収集の中で漠然としていたものが、ハッキリと理解させてもらえる内容と感じた。
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本の題名通りの中身でした。基礎的なところからはじめ、事例や判例等、コンパクトにまとまっています。勉強になりました。私は専門家でも実務家でもないので、後半に出てくる事例・判例の列挙は読み飛ばしましたが、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス等、主要国の諸法令は微妙に異なるということと(当たり前ですが)、日本は結構緩く、昨今改めて日本の株式市場が世界の注目を集めている状況を考えると、今後、日本ではさらに華々しい事例が出てくるのではないかという予感を感じるものでした。ワクワクします。
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敵対的買収にすごく興味があるわけでもないのだが著者の名前で読んでみた。税務関係の雑誌への寄稿で、リーガルの人はこのような考え方をするのか、と感心させられたことがあったため。敵対的買収はコーポレート・ガバナンスの何たるかがもっとも鋭く問われる場面であるため、知識を整理しておくのも悪くないだろうと。
実際に読んでみてまず思ったのは、日本でも最近になって敵対的買収の事例が多いこと。ひとつひとつの事例はニュースで知っていたものがほとんどだが、こうして並べてみると意外と多いと感じる。本書を読んだすぐ後にもニデックによる敵対的TOBがニュースになった。ここは認識をアップデート。
内容としては、日米欧の制度比較や敵対的買収の歴史が簡潔にまとめられており良かった。日米の制度実務のちがいを理解しておくと、この界隈全体の見通しがよくなる。もしかすると予備知識が多少ないと読みにくいかも。
また著者は基本的に防衛側を代理しているようで、本書の記述も概ね専門家として中立的ではあるものの、どちらかといえば防衛側の立ち位置からのものとなっている。ただ読者のほとんどには、そのあたりは違和感がないだろう。アクティビスト・ファンドで働いている人が今さらこんな本を読みそうにもないし。
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ある人に勧められて読んでみました。
が、自分には難しすぎて(この本を読むための基礎となる知識がなさすぎて)、読むのが辛かった…。
正直言って、「文字を目で追っているだけ」のところが多かったのですが、最終章である第6章になり、ようやく自分でも理解できる部分が現れ、最後まで読んでよかったな、と思いました。
ここのところ、実体経済と金融経済の関係がいろいろと気になっているのですが、今の世の中では、金融経済が幅を利かせすぎているように思います。
この本を読みながら、改めてそのことを感じました。
同時に、自分自身も、実体経済をもっと大切にしなきゃな、と思いました。
また、企業を買収する行為は、基本的には傲慢な行為であることも、改めて感じました。
ボード3.0の考え方にも、傲慢さを感じました。
企業は、外から見ているほど単純ではないので、企業の内部事情によほど詳しくない限り、買収はうまくいかない、というのが自分の感覚です。
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新書とは思えないほど丁寧で詳細な敵対的買収の入門書。
イーロン・マスクによるTwitter(現X)買収等、実際の敵対的買収の判例と交えて解説してくれるからとても手触り感あって読めた。
第5章のTOBを巡る各国の法規制·判例は、専門的な議論もあって理解が浅いままだから辞書的に今後参照していきたい。
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ニュースでよく聞く敵対的買収とは、対象会社の取締役会の同意を得ない買収のことである。また、アクティビストとは、対象会社の株式を取得して株価を上げ、売り渡すことで利ざやをえる投資家のことである。敵対的買収の背景には、経営能力の低い経営者を淘汰することで社会全体の厚生が改善されるという考え方や、株主が利益の最大化を望む以上、株価を上昇させられるポテンシャルのある第三者による買収を可能にしておくべきだという考え方がある。本書では主要な買収方法および防衛策が紹介されている。
最後に、筆者は良い敵対的買収と悪い敵対的買収、良いアクティビストと悪いアクティビストは社会がどのような資本主義を目指すか(株主に重きをおくか、ステークホルダーに重きをおくか)によると主張している。
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敵対的買収の歴史的な記述(近年の実例も含めて)を興味深く読みました。各国の法制度の説明については正直ついていけませんでしたが、法制度の違いが買収戦略・防衛戦略に影響を与えていることは、何となく理解できました
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敵対的買収、アクティビストにかかる、日本、欧米の事例が詳細に記載されており、現在に至るまでの一連の流れを学ぶことができる。
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人気弁護士による、敵対的買収をめぐるトピックを網羅的にカバーする一般向け解説書。一般向けとはいえ、企業価値や株主利益にそれなりの興味がなければ読みづらいだろう。個人的にはこれまでの敵対的買収の歴史を総括した箇所が知識の整理に役に立った。また、欧米との相対上、株主総会決議を重視し少数株主利益保護に重点を置く日本の会社法制が、今後のアクティビストの動きを活発化させる余地を含んでいることがよく理解できる。
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敵対的買収というのは、買収される側の企業の取締役会が反対している買収ことです。
日米欧の敵対的買収についての法律や歴史がまとめられていて、非常に参考になりました。