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読み始めて間もなく主人公の成長ストーリーだろうな、と思いゴールは想像出来たものの、そこへ至る心情や獣医学や畜産やペットをめぐるシビアな実情や課題が丁寧に語られていて何度も涙しました
他の作品も読んでみたいと思います
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あなたは、『言葉を話せない動物たちの怪我や病気を見つけて治す』職業のことを知っているでしょうか?
怪我や病気をすれば私たちは病院に赴きます。医師の診察の中で具体的な症状を説明することによって適切な治療を受けることになります。これは、言葉によって自分の思いを相手に伝えることができるからこそです。そんな怪我や病気はいつ何時私たちを襲うかわかりません。例えば海外旅行に赴いた際、万が一同様な事態になったとしたら、語学が堪能でない場合にそこにどんな未来が待っているのか、考えれば海外旅行に出かけることも怖くなってもしまいます。ただ、そんな事態でも通訳をしてくれる人の存在をもって最悪の事態を回避もできるでしょう。直接医師と話せずとも自分の思うところが伝われば手段は問われないからです。今の世の中、翻訳アプリの性能もそんな危機を救ってもくれるかもしれません。
一方で、身近にいる犬や猫、そして動物園にいる動物たちの中には鳴き声を上げるものもいるとはいえ、彼らの言葉を私たちが理解できるわけではありません。そんな彼らが怪我や病気の中にある時、そんな彼らを助けるには言葉以外に彼らが発するさまざまな事ごとを丁寧に診る中に原因を突き止めていく必要があります。そんな役割を果たす職業、それが『獣医』です。誰でも知る『獣医』という言葉。では、あなたは『獣医』が『言葉を話せない動物たち』にどのように接していくかを知っているでしょうか?
さてここに、『言葉を話せない動物たちの怪我や病気を見つけて治す』『獣医』を目指す一人の大学生を描いた物語があります。東京にある実家から遠く離れた北海道の大学に学ぶ主人公を描くこの作品。そんな物語の中に『獣医』のお仕事を見るこの作品。そしてそれは、そんな主人公が『自分たち獣医師は、動物も、人間と同じように、苦しみや痛みを感じていることを忘れてはいけない』という言葉を胸に『獣医』という人生へと歩み出していく様を見る物語です。
『おばあちゃん、疲れてない?』と『北海道の中部に位置する江別市に』ある『北農(ほくのう)大学に続く白樺並木を』祖母のチドリと並んで歩くのは主人公の岸本聡里(きしもと さとり)。『入学と同時に大学の女子寮「あけぼの寮」に入る』聡里の前に『新入生の方ですか』と『学生らしき女性が近寄って』きました。『私は静原夏菜です。あけぼの寮の寮長で、この春から獣医学類の三年生になります』と挨拶する女性に『うちの孫も同じ獣医学類なんで、いろいろと教えてやってください』とチドリが答えます。案内された『部屋は四人部屋』で同じ一年になる奥野美里と柳本乃絵の姿がありました。『同じ一年だからタメ口でいいよ』と言われるものの『私も聡里って呼んでね』という一言が言えない聡里。そんな聡里に『これはおばあちゃんが持って帰るからね』と『古ぼけた四角い箱』を手にするチドリに『だめ…。持って帰らないで。それはここに…置いていって』と懇願する聡里は『箱にしがみつ』きます。やむなく諦めたチドリは『じゃあ、おばあちゃんはそろそろ帰るよ』と部屋を後にします。それを追いかける聡里は『新千歳空港まで送ってく…』と言いますが、『無駄遣いは���きない…ここでバイバイするほうがいいの』とチドリに言われます。『仕送りしてやれるのは月に三万円』、『一日千円』でやりくりしなければならないこれからを諭すチドリ。『遠方の私立大学』に通うことになったことで、家を売って必要な費用を工面してくれたチドリ。そんなチドリは『四月分の仕送りとは別』に三万円を渡すと聡里の元を去っていきました。『母を亡くしたのは小学四年生の十二月』という聡里は父親と二人暮らしを始めましたが、『聡里が小学六年生の時に父は再婚し』ます。『父が勤めている会社の部下』だったという友梨と再婚して始まった三人の暮らしの中で実母の痕跡を次々と消していく友梨。そして、『友梨と父との間に赤ん坊が生まれ』るも転勤が決まった父は単身赴任をします。そして、始まった『聡里と友梨と赤ん坊の三人暮らし』の中でぶつかる聡里と友梨。飼っていた犬を『部屋から出さないで』と言われたことをきっかけに『不登校』になってしまった聡里。そんな聡里の『人生が再び動き出したのは、聡里が十五歳の誕生日を迎えた日のこと』でした。『聡里に直接渡したいものがある』とやってきたチドリは聡里を見るや否や『悲鳴を上げ』ます。『あんたが元気にしてるって思い込んでた』と言うチドリは『冷蔵庫のものを適当に食べ』、『サイズが合わない窮屈な子ども服』を着た聡里にショックを受けます。そして、『聡里を引き取らせてもらいます』と言い放つと聡里と犬を自宅に連れ帰りました。『泣いていいんだよ。ずっと我慢してたんだね?』と声をかけてくれるチドリによって高校に進学した聡里は『担任の先生』の勧めと祖母の後押しによって『大学進学のことを真剣に考え始め』ます。通い始めた塾の教師に『獣医学部を目指したらどうだい?』と言われ戸惑う聡里。『言葉を話せない動物たちの怪我や病気を見つけて治すなんて、他にない特別な職業だと目の奥までも熱くな』る聡里。そして、チドリの支えもあって、憧れの獣医学部へと進学を果たした聡里。そんな聡里が『獣医』になるための学びを進めていく様子が描かれていきます。
“2023年7月20日に刊行された藤岡陽子さんの最新作であるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2023年4月に近藤史恵さん「それでも旅に出るカフェ」、5月に深緑野分さん「空想の海」、そして7月には津村記久子さん「うどん陣営の受難」と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、看護師として働きながら私たちに数々の感動を与えてくださる物語を届けてくださっている藤岡さんの新作が出ることを知った私は発売日早々にそんな物語を手にしました。
そんなこの作品は、“動物たちが、「生きること」を教えてくれた。 家庭環境に悩み心に傷を負った聡里は、祖母とペットに支えられて獣医師を目指し、北海道の獣医学大学へ進学し、自らの「居場所」を見つけていくことに ー 北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた感動作”と内容紹介にうたわれています。藤岡さんの作品と言うと、看護師としての経験が活かされた「晴れたらいいね」や「満天ゴール」など医療の現場を描く作品に強い説得力を感じます。そんな藤岡さんがこの作品で描くのが”北海道の獣医学大学へ進学し”た主人公が『獣医』になるための道を歩んで行く物語です。私は今までに700冊以上の小説ばかりを読んできましたが、医療現場を描いた作品、もしくは動物が登場する作品は数多読んできましたが、そんな動物の命を守る『獣医』の視点から描かれた作品は初めてです。他にこのような分野を扱った作品があるのかどうか知識がありませんが、いずれにしても極めてレアな領域を扱ったのがこの作品と言えるのではないかと思います。
では、まずは『獣医』という視点からどんな物語が描かれていくかについて見てみたいと思います。物語は、『獣医』になるために『獣医学部』で学ぶ主人公の聡里が、その学びの中で目にする動物医療の世界が描かれていきます。その中から聡里が『初めて聞く言葉』に『首を傾げる』という場面からご紹介したいと思います。『きょうけつけん…?』という言葉が登場しますが、あなたはそれが何を意味するか知っているでしょうか?
・『供血犬というのは、献血をする犬のこと』、『犬にも輸血が必要な時はある』、『でも、いまの日本には動物のための血液バンクはない』
→ 『病気や怪我をした犬に、血を分けてくれる供血犬が必要になってくる』
→ 『若い犬であること、内臓疾患がないこと、体格が良く肥満体ではないこと、感染症や寄生虫症に罹患していないこと…』『といった基準を満たしていないといけない』
『供血犬』という言葉は全くの初耳でありとても驚きました。『他の動物を助けるために血を抜かれる』という役割の下に生きていく犬の存在。しかし、『供血犬になることで』『居場所ができ』、結果として『飼い主に見捨てられ』たような犬が『生き延びることができる』という現実があることを登場人物の言葉を借りて描いていく藤岡さん。読み始めて早々にこんな知識を得ることできて、すでにこの作品を読んで良かったという思いに包まれました。次は、『いまから実習を始めます』という中で『牛舎』へと訪れた聡里が体験する『断角(だんかく)』についてです。
・『除角とも言われ、文字通り牛の角を根元から切る処置です』という『断角』
→ 『除角が必要な理由は、角を切ることで牛がおとなしくなり、群れの中で強い、弱いなどのマウントの取り合いが減る』、『牛同士、角が当たって傷がつかないようにするため、流産を防ぐため、管理者の安全を守るため』
→ 『倫理的な観点から断角に反対する声があるのも事実で、だからこそ実施する際には牛たちに苦痛がないようにしなくてはいけない』
なるほど、群れで飼育するために必要な『断角』、その一方で『牛たちに苦痛がないように』という配慮についてもきちんと説明がなされていきます。物語では、『牛の頭部を固定し』、『線のこぎり』を使って角を切り落としていく様子が描かれます。そこには、まさしくリアルな動物医療の現場を描く表現が登場します。
『右角が生えていたくぼみから真っ赤な血が噴き出してきた』
そんな状況の中に『止血処理』を行う場面など『獣医』への道を歩む中で避けられない『血』との対峙が描かれていきます。
『自分たち獣医師は、動物も、人間と同じように、苦しみや痛みを感じていることを忘れてはいけない』
『言葉を話せない動物たち』と日々対峙していく仕事であるからこそ忘れてはならない考え方が強い説得力をもって読者にも伝わってきます。身近に愛でる動物たちのまさかの事態に対峙してくださる『獣医』というお仕事。そう、この作品の一番の魅力は、そんな『獣医』という職業のリアルを描く”お仕事小説”にある、そのように思いました。
そんなこの作品は主人公の岸本聡里が苦難の青春時代前期を乗り越え、祖母・チドリの支援の元に『獣医』への道を歩んでいく姿が描かれていきます。上記した通り、『獣医』になるためのさまざまな学びを経験していく中に確かな成長を見せていく聡里の姿はページを追うごとに力強くなっていきます。病弱だった母親の急死の先に、父親の再婚、そして継母からの冷たい仕打ちという流れ自体は、決して珍しいものではなく、よくある話とも言えますが、この作品で見るべきはそのような前提設定にケチをつけるところではないと思います。亡くなった娘が残した大切な孫を思うチドリの想い。そんなチドリの想いを感じる中に一つずつ新しいことを、そして新しい人間関係を経験し、『獣医』への階段を上っていく聡里。
『いつか自分も、誰かを守れるような強い人になりたい』
そんな風に漠然と自分が進む道を思い描いていく聡里ですが、世の中そんなに甘くはありません。また、命というものと対峙することになる『獣医』という職業を自らの未来とするには数々の試練が待ち受けてもいます。その一つが、聡里が告げられたこんな言葉にありました。
『無理だと思うなら、やめたほうがいい』
そんな風に突き放された聡里が窮地をどのように切り抜けていくのか、そんな行動によって何を得ていくのか。これは、決して『獣医』という職業に限られたものではないと思います。この世を生きていくには生半可な気持ちが何よりの障害となるものだと思います。そんな中でも命を取り扱っていく職業であるからこそ、大切にしなければならないことでもあります。
『助けるだけではない。動物の命の選別も獣医師の役割で、そしてその判断は簡単ではない』
命というものに対峙せざるを得ない場面の存在、そしてそれを乗り越えた先にあるもの。物語は『獣医』のお仕事のリアルを描く中に、そんな『獣医』の未来を自分のものとしていく聡里の健気な姿が描かれていきます。八つの章から構成されたこの作品は主人公である聡里視点で展開していきます。〈第一章 ナナカマドの花言葉〉で『北農大学』に入学し、すべての学びが見知らぬことばかりという中に数々の失敗と貴重な体験を繰り返す聡里が章を経るに従って逞しくなっていく様子は読んでいる読者も元気をもらえる展開です。しかし、人生山あり谷あり、そこにはさまざまな苦難も待ち受けています。そんな中に『獣医』という職業を目指す中で根源的な問いにもぶつかっていく聡里。
『救えない動物の命について考えたことある?答えはないんだから、そんなの考えても意味がないって思う?』
動物を救う知識を得れば得るほどに逆に湧き上がってくる根源的な問い。『獣医』という多くの方にとって知ることのない世界の裏側にある物語。命を扱う職業だからこその仕事であるが故の問いかけが読む手を止まらなくさせてもいきます。すべて花の名前がつけられた八つの章の最後を飾る〈第八章 リラの花咲くけものみち〉に描かれるその結末。自らも命と向き合う看護師でもある藤岡さんだからこそ描ける物語、動物の命を守る『獣医』という貴い職業を描く納得の結末がそこには描かれていました。
『いつか自分も、誰かを守れるような強い人になりたい』
そんな思いの先に『獣医』という未来の姿に向かって勉学の日々を生きる聡里の大学生活が描かれていくこの作品。そこには、藤岡さんならではの優しい筆致に満たされた物語が描かれていました。『獣医』の”お仕事小説”の側面も持つこの作品。そんな物語の中に、動物の命を守る『獣医』という仕事の貴さに感じ入るこの作品。
藤岡陽子さんの作品にまた一つ新たな傑作が誕生した、そんな思いに包まれた素晴らしい作品でした。
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ずっと主人公のことを応援しながら読んだ。主人公の父親は、こんなひどい人が実父なのかと信じられなかった。自分の進路を在学中に決めて授業に臨んでいる登場人物たちに感服した。第7章以降は読んでいて涙が止まらなかった。
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総ての章が心温まる話であった。もう一つ登場人物の名前にも温もりを感じられる。本書の題名を見た時は獣道とはあまり良いイメージは無かった。それにしても何でリラの花咲くとどう繋がるんだと思ってしまった。成る程女性の著者ならではの感動的な話であった。全編とても素晴らしかった。
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多感な時期の10代前半に、母の死、父の再婚、義母からのネグレクトで心を閉ざし不登校になった聡里が、祖母と暮らすようになり、勉学に励み、北海道の獣医学部のある大学に進み獣医師を目指す物語。
ストーリーもさることながら、獣医学部に関するところがとてもリアル。ペットブームにより、軽い気持ちで獣医師を目指す人も増えたかもしれないが、これを読んだら、獣医師って、こんなにもたいへんで、重労働なんだとわかるかも。
犬猫や小動物を診るだけが獣医師ではなく、牛や馬など大動物も診て、酪農家を支えるのも獣医師の仕事なんだと感心した。
ぜひ、中高生の獣医師に憧れる人たちに読んでもらいたい。
しかし、中高生に読んでもらいたい本って、なぜ女性作家さんが多く、女性が主人公の小説が多いのだろうか…。やはり、男子中高生はミステリーとかに行っちゃうのかな。それとも、私が女性だから、女性目線の本ばかり目につくのかな。
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感想
動物を救い救われる。言葉を通さないからこそ伝わるものがある。専門家の鋭い観察眼を持って見透す。それはいつの日か自分の心も救ってくれる。
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藤岡陽子さんの作品は久しぶり。
子供の読書感想文用に(もちろん自分も読むが)買ったけど、読むのが早い娘でも、夏休みで読んでから感想文を書く時間がなさそうなので、また、朝の読書用に娘には渡すことにする。
…ということで、私が先に読むことに。
岸本聡里(さとり)は、北海道の北濃大学へ進学する。
聡里は小学生4年で母を亡くし、父親は再婚、友梨が母親となるが、うまくいかず、友梨は妊娠してからほとんど聡里への対応は放置であり虐待だ。聡里は食事も作ってもらえず、冷蔵庫の中から適当に食べて暮らした。犬のパールを飼っていたが、友梨が犬アレルギーがあるから手放すように言ってきたので、聡里は留守中に勝手にパールが追い出されるのを防ぐために学校に行けなくなり不登校になる。
15歳の時におばあちゃんチドリが訪ねて気付くまで聡里はそんな状態で暮らしていた。その後、チドリに引き取られて暮らすようになり、塾や高校へ行き、大学に進学する。
聡里は友達をそれまで作れなかった…
聡里の大学時代の成長。
最も苦手なタイプだと、嫌われていたと思っていた同級生が親友になる。
実習でできなかったことが、一つ一つできていく。
私は聡里と娘(まだまだ大学生の年齢ではないけど)を重ねて、頑張れと読み進めた。
動物が好きだから獣医師になるというだけでは続けられない仕事だ。現実は動物好きだからこそ、余計に辛い決断もしなければならない。
聡里が最初に挫折しかけたものを仕事にする。
不思議なもので、苦手だったものが自分のものになる。
成長すると、意外な発見と素晴らしい面がある。
悲しみを乗り越え、苦手を乗り越え、成長していく様は美しい。
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周囲の人の関わり方や、目標を持つことで人は変われるのだなと一気に読み進みました。北海道の美しさと厳しい自然も描かれていて、最後は婚約者の言葉に涙が溢れてきました。
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小四で母親を亡くし、父とも継母との関係性も悪く不登校になった聡里が主人公。
最初から父親の不甲斐なさに怒りが募る。
ネグレクト状態だった聡里を救ったのは祖母のチドリ。
時に強く厳しく、でも心の中は聡里への愛情がてんこ盛りで、その大きな優しさに何度も涙が溢れた。
祖母の後押しで獣医師を志し、北海道の大学に進学した聡里。
挫折を味わいながらも、恋に友情に仕事に前進していく姿にずっとエールを送り続けた。
人の死、動物の死、たくさんの試練を経験し乗り越え、逞しく成長した聡里。
無償の愛を与え続けたチドリの微笑む姿が目に浮かぶ。
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Amazonの紹介より
動物たちが、「生きること」を教えてくれた。 家庭環境に悩み心に傷を負った聡里は、祖母とペットに支えられて獣医師を目指し、北海道の獣医学大学へ進学し、自らの「居場所」を見つけていくことに――北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた感動作。
獣医学大学に入学することになった主人公が、人と動物との出会いと別れを通じて、成長していく物語ですが、こういった作品だと最初の1年間を描いているのかなと思ったのですが、がっつり卒業までの6年間と➕αが描かれていました。その分、印象的な出来事をかいつまんで、トントン拍子に展開していくので、じっくり堪能といったことは少なかったのですが、年が経つごとに垣間見る主人公の挫折や苦悩など心の成長が際立っていて、とても凝縮されていました。
最初の入学と卒業した主人公の雰囲気が、別人と思うくらい全然違っているので、驚きでした。
大学入学に至るまで、どれほど辛かったか。主人公の葛藤も描かれていましたが、それとともに寄り添ってくれる祖母の存在感が大きく、祖母が発する言葉の数々や生き方は、読んでいて癒されましたし、勇気を与えられました。
獣医学を学ぶ場ということで、一部ですが獣医師の知識も紹介されています。
主人公が体験する動物病院の現場では、あまり知らなかった獣医師の一面や動物に対しての心の葛藤も垣間見れ、動物を飼うことへの難しさや心構えが、いかに大切であるか感じました。動物に対する命の重みも感じました。
安易に飼うのではなく、最後まで飼うことの責任を果たす必要があると感じました。
動物だけでなく、人との出会いと別れに心苦しい部分もありましたが、そんな時こそ「仲間」の存在が大きいなと思いました。
また、恋愛模様もあったりと色んな要素が詰まっていました。出来事の節々に「何でこの人が登場?」といった思わず突っ込みたくなる登場人物がいたのですが、その人がいたことによって、場の雰囲気を和ませてくれるので、良いアクセントになっていました。
この作品を通じて、獣医師を見る目も変わるかなと思いました。働く現場の裏側では、壮絶な状況、疲弊する心境に色んな苦労があると思うと、自分だったら心が壊れるかもしれないなと思いました。
命の現場で、どんな状況だろうとも、それでも救いたいと思う心に、尊敬するばかりでした。
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北海道の広大な景色、目に浮かべながら読了。生き物を飼うのは大変な覚悟が必要と、猫のアゴさすりながら文字を追う。大型動物の獣医の葛藤、半端ないだろうなぁ…頭が下がる。「なにもしなくても、一生大事にされる子もいる。いらなくなったからゴミのように捨てられる子もいる…」「仕方がない。動物は、運命に従って生きるしかないから」「獣医師の役割は命を救うことばかりじゃないし、時には命を絶つ選択をすることだってある」「逃げるのは悪いことじゃない。逃げなきゃ死んじまうことだってある。逃げた先で踏ん張ればいいんだ」「どんな不運にみまわれても、その中から幸運を見つけ出すのがチドリの才能」いろいろ考えさせられた。
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獣医師になるお話ということで興味深く読みました。若い頃、動物看護師をしていたことがあるので、獣医になって間もない獣医師を間近で見ていました。自身は、成人するまで動物に接したことがほぼなく、獣医という仕事があることすら知らなかったのですが、一度接するとその虜になりました。もっとその経験が早ければ、きっと獣医師を目指す人生もあったと思います。
そして、この本、読むと、獣医の大学がどれほど大変かということがわかり、それぞれで挫折もしながら成長していく姿が描かれていました。
動物病院で働いていた時にこの本を読んでいたら、もっと駆け出しの獣医さんにも尊敬の念を持って接することができたんだろうなと悔しく思います。
何せ、周りにいた獣医さんは、看護師のことを明らかに下に見て、感じが悪い人ばかりで、しまいには女医さんから酷いパワハラを受けました。結局、雇われとはいえ獣医より肩身の狭い看護師の私は、パワハラによりPTSDとメニエール病になり、その病院にはいられなくなりました。
動物がとにかく好きで、飼い主さんとペットが少しでも良い状態で長く一緒に過ごせるように、と自分なりに精一杯頑張り、勉強し、充実していたので、過労働でも全く気に留めてなかったのですが、とても残念な結果になってしまいました。
でも、後年思い返すと、自分の至らなさも大いにあったし、この本にあるように、ここまで苦労して獣医になり、動物の命を預かって気が抜けない状態だった彼らを、もっと尊敬と労りの気持ちを持ってサポートすべきだったと改めて反省しました。
文体が私には合わず、興味深い内容の割に読むのに時間がかかりましたが、獣医さんを目指す人たちの様子を垣間見ることができて良かったです。大動物の獣医さん、素敵だなと憧れます。
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P361
〈大動物の獣医師は、動物の生命の、その背後にある人の生命をも守っている〉
NHKのニュースだったか
「乳牛の健康チェックだけでなく熱中症対策も獣医師に相談をしている」と。
そこには女性の獣医師の方が映っていた。
(女性の獣医師さん、力もいるし大変そうだ)と思ったことを
本作を読み思い出した。
後半は酪農家の経営状態についてもリアルに書かれている。
聡里の一歩一歩を丁寧に描き
直面している酪農家の生活の今も届けてくれた。
残雪くんの鳥に関する解説も彼の人柄が滲み出ている。
多くの人に読まれますように。
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2023/10/10予約
母親を亡くし、父親の再婚相手とうまくいかず、引きこもり、祖母に引き取られた 聡里。
動物が好き、そんな気持ちから獣医学を学ぶため北海道の大学に進み6年間で成長していく、そんな話。
獣医の仕事、理想論では語れない飼い主や酪農家さんとの意見の相違をどう詰めるか、もちろん大型動物(馬、牛)は自分より大きいため体力にも事故にも気をつけなければならない。
馬の死産でショックを受け東京に逃げ帰った聡里に戻る気力を与えたのは、初日から寮の同室でいい感情を抱けなかった綾華だった。
同じように最初に出会ってから離れることなく側にいた残雪との結婚は、予想通りのベタな展開だけど、いいパートナーになるのだろうとうれしくなった。
そして、祖母のチドリ。
どんな境遇でも幸せなことを探す、よく言われることだけど、ここに描かれてるチドリはいい塩梅の幸せを求め、手に入れ、生ききった。
驚くような展開は無いけど、安心して最後まで読了。
いい本で、いい時間を過ごせました。
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獣医って想像よりも大変で甘くない世界なんだ。聡里の人間としての成長や雄大な北海道の自然、様々な動物の生態や獣医学のあれこれ。知らない世界を知るのは面白い。