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「神山藩シリーズ」第3弾。
時系列的には前作「黛家の兄弟」から数十年後。黛壮十郎の忘形見の壮太(当時12歳)が、一膳飯屋"壮"の大将を息子・新三(新三郎に因んで名付けたのが嬉しい)に譲った頃合い。
町奉行を家職とする草壁家。
ある日突然致仕し、行方知れずになった父・藤右衛門、齢18にして町奉行を奉職することとなった息子・総次郎、総次郎を見守る祖父・左太夫、この三世代の父子の物語。
父と子の関係の難しさを通奏低音として、番頭の殺害事件を発端とした汚職事件が物語を引っ張る。殺害現場にあった父の物らしい根付に疑いを拭いきれない息子。息子と対面して話をせずにきたことを悔いる祖父。それぞれの想いが切なく苦しい。
物語に彩りを添えるのは、季節の移ろいや自然の姿を描写する趣きあることば。
そして、総次郎と左太夫それぞれの友との距離感がとてもいい。特に武四郎、茫洋としていながら腹が据わり、察しもよく、
友情に熱い。武家の四男坊という冷や飯食いの立場ながら、拗ねることもないなんとも魅力的な人物。彼の行く末がまた嬉しい。
このシリーズ本当に好き!
壮の美味しそうな酒肴と銘酒天乃河も含め、次はどんな神山藩を描いてくれるのか今から楽しみでならない。
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「神山藩シリーズ」
季節の移ろいやそれに伴う旬の花や食べ物の描写がとても良かった。祖父、父、子の三代のそれぞれの生き方。あの後『壮』で三人はどんな話をするのでしょうか…。
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自然を取り入れて季節を感じさせ、描写もきちんと読んでいないと何をしたのかわからない、何気ない動作などはぼかす事で柔らかい文章になっているのかなぁと読み返しをしないとわからない場面もあるがそれゆえこの本と長い時間一緒に生活を共にする作者の願望??思惑の一つで美しい文章だけで終わらない、繰り返し読ませる事でまた違う風景に出会う事ができるとこの作者の本を追いかけている自分はこの本で気づく。
まだ駆け出しな作者なのでもっと心に響く、美しい描写に出会うかも、そして一生物の本が今は別の作者の本なのだが、この作者の書いた本でも出会いたい。
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父、草壁藤右衛門の突然の失踪により、18歳で町奉行となった総次郎。無口な父とはほとんど会話もなかったため、失踪後、どこに行ったのか、原因は何か、さっぱりわからない。途方に暮れて、かつて名判官と言われた祖父の左太夫を訪ねたが、結局は、総次郎が町奉行をやるしかあるまい、と言われ、しおしおと帰っていく。
最初から、神山藩の世界に引き込まれる。総次郎が与力の喜兵衛や陰ながら見守る祖父や幼馴染の武四郎らに助けられながら、着々と仕事をこなして次第に奉行らしく成長していく様子が描かれていて、安心して読める。
それにしても武家でも四男となると、婿入りしなければ、肩身が狭いとは。いろいろなことに縛られて生きなければならなかった武士の暮らし。自由に生きたかった武士にはストレスも大きかっただろうと気の毒になってしまった。
主役は総次郎?左太夫?二人が交互に語り手となるので、どちらも主役か。個人的には武四郎が幸せをつかめそうでよかった(^^)
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砂原さんの作品はどれも一気読みをさせてくれる。凛とした静けさの中に、季節折々の鳥や虫の声、植物、酒の肴の魚などが丁寧に描かれている。日本酒が呑みたくなったわ。そしてミステリー仕立てに物語が進んでいくのだ。奉行の父は何故家族に黙ったまま職を降り、そして失踪したのか?18歳で突然、奉行とならざるを得なかった息子はどう立ち回るのか?ほんまおもろかった。
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「神山藩」シリーズの一つ。
シリーズと言っても、登場人物やストーリーには、
関係性はない。
この作品は、三代で町奉行を務める、祖父、父、息子、
の親子の、そして、人と人のつながり、葛藤、情、
やるせなさといった、動きはあるが、静かな物語である。
町奉行職にあった父、草壁藤右衛門が突然、職を辞し、
失踪してしまう。
息子である総次郎は、町奉行につかざるを得なかった。
父のことなど何一つ知らなかった…、
奉行職という重い荷物を背負った総治郎は、
さらに懊悩することに。
そして、もう一人、息子の突然の失踪に、息子の心の
うちを慮れず、苦悩する左太夫。
そんな中、遊里で殺人が起こり、総次郎は死体のそばに
根付を見つけるが、それは、父の持ち物だった…。
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「霜月記」(砂原浩太朗)を読んだ。
神山藩シリーズ三作目。
シリーズとはいえ主人公も時代もみんな違っているのだけれど、神山藩の自然の美しさと厳しさとそうして武士として人としての矜持を貫く生き様を静謐さの中に描ききる傑作だと思うぞ。
もうね、言うことないよ。
『左太夫は吐息をつき、瞼を開く。いつの間にか、闇の向こうから鶫とおぼしき声が聞こえている。あたりは塗り籠めたように暗かったが、思ったより暁が近づいているのかもしれなかった。』(本文より)
『松の梢が夜風に鳴り、それに驚いたのか、庭のどこかで梟が盛んに啼き声をあげる。とくだん聞いているつもりもないのに、その響きがたしかに耳のなかへ忍び入ってきた。』(本文より)
あーしみじみした!
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神山藩で代々奉行職を務める父子三代を描く長編時代小説
解りあいたいのに上手くいかない…親子の永遠のテーマが、名奉行だった隠居と孫の視点で丁寧に綴られます。
突然、家督を子(孫)に譲り行方不明になった二代目、絡む殺人事件、藩内の不穏な空気、殺伐とした中にも得難い友や幼馴染み、美味しい居酒屋…ミステリ仕立てで作家様の得意とする時代小説の魅力が満載の作品です。
自分的に2024年の推し10選に入れてます。
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〈 高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』に続く、「神山藩シリーズ」最新作。
名判官だった祖父・失踪した父・重責に戸惑う息子――町奉行を家職とする三代それぞれの葛藤を描く。〉
久しぶりの時代小説
自然、食べ物、人物 描写が美しい
とても静かで丁寧に物語の中へ引き入れてくれた
父と息子、そして孫
そこに「家」がのしかかる
「……あるいは、世のしくみそのものが罪であろうか」
総次郎の言葉
ラスト
すこし肩の力が抜けた
≪ 父と子の 無言の葛藤 酒を飲む ≫
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砂原浩太郎の神山藩3作目になる親子3代町奉行の物語は一家の主人たる男たちの生きる姿を描く。清々しさを感じられる姿もあれば、様々な問題に挟まれての葛藤、事件を解決すべく考えを巡らす奉行のその周りの人達。ミステリータッチの物語進行も早すぎず、のんびりしているわけでもなく、数日で読み切った。いつもながら食事のや酒の描き方も秀逸で味わい深く楽しめた。自分もうまい酒を出してくれる飯やでちょいと飲みたい気分だ。