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投稿者:スマートクリエイティブ - この投稿者のレビュー一覧を見る
代々奉行を担当する草壁家の藤右衛門が行方不明になり、父から引き継ぎ奉行となった子の18歳総次郎と引退して料亭に隠居した祖父の左太夫が藤右衛門を捜すうちに、藩の不正を 暴いていく長編。冒頭から、総次郎の章と左太夫の章が交互に表れるのに引き込まれた。総次郎の章。「孫のことが気になって様子を見に来たのだとすれば、日ごろ素気なく振舞いたがる祖父の一面をみたようで、唇もとに笑みさえ浮かびそうになった」。左太夫の章「どこか肉親の情に溺れることを恐れる気分が長年かけて身のうちに巣食っている」
祖父の長年仕える喜兵衛への言葉。『望むままに生きられる者などおらぬ。そなたとて、そうであろう』
「若い生きものが発するまばゆさに目を射られそうになり、いっぽう、おのれはできていたことができなくなっていく」
砂原節健在。
冬来たりなば春遠からじ
2024/01/24 15:56
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
砂原浩太朗さんの「神山藩」シリーズ待望の第三弾の書名『霜月記』では
「霜月」を「そうげつ」とルビがふられているが、
「しもつき」と読むことの方が多いのではないだろうか。
旧暦11月の異称で、冬の入り口を指す。
作中でもこんなセリフが交わされている。
「ひとの生涯を一年に見立てるなら、そろそろ霜もおりてくる頃合いかと」
主人公は父の謎の出奔によりそのあとを継ぐ形で町奉行となる、18歳の草壁総次郎。
そして、もう一人、総次郎の祖父でかつて名奉行として知られた左太夫。
左太夫はすでに60歳を超え、今は隠居となって知り合いの小料理の離れで暮らしている。
現代風にいえば、「定年後」の「悠々自適」の暮らしであろうか。
この二人の視点で、交互に描かれていくが、『霜月記』とあるくらいだから、
やはり祖父・左太夫の物語と読むのがいいだろう。
つまり、この作品は藤沢周平さんの『三屋清左衛門残日録』を意識したものかもしれない。
奉行としての経験の浅い総次郎に、藩の大店の元番頭の男が殺されるという事件が起こる。
続いて、その妻も殺され、もしかしたらこの事件に出奔した父が関係しているかもしれない。
総次郎は祖父のたすけを求めつつ、事件の深層に迫っていく。
事件の謎を解くミステリ仕立てになってはいるが、
この物語は親子の関係を静かに描いて、読むものの胸をうつ。
仕事にしか目がいかず、出奔した息子と会話した記憶すらない、祖父。
その孫もまた父の姿がおぼろだ。
「霜月」はこれから冬に入ろうという頃合いだが、
物語の結末は凍てついた親子の関係が解けていく様が描かれていて、
早春のようでもある。
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好評神山藩シリーズ最新作、親子三代の謎にせまるミステリー仕立ての時代小説、謎か謎を呼び楽しくておもしろい、あなたもぜひ読んで時代小説を堪能して下さい。
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架空の神山藩シリーズは安定の心地よさ。今回は奉行職を世襲する武家の親子三代の物語。この親子が親子関係においては絵に描いたような不器用な親子で、その悔恨や(遅まきながら)関係性の構築を軸に、殺傷事件の謎を追っていくうちに、、、とあとは読んでのお楽しみ。相変わらずの文章の清廉さが心地よい。今回はかなり意図的に、各章の冒頭に庭の草花や鳥、虫、気候などの描写が入れられていて、それが登場人物の心理とシンクロして、読む者としてすっと世界観の中に入り込む手助けとなっているように思われる。語調が良いのだろうか、とにかく読みやすく、一文字残らずきちんと読んでも苦にならない(最近のネット発の作品はこの点大いに劣っている、それはいいとして)。
仕事や生活に疲れている時に読むと、デトックス効果があると医師が薦めたらいいのにと思うほど、心地の良い作品だった。また次作までじっと待とう。
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「神山藩シリーズ」の最新作です。読み始めた途端「あれ?これってもう読んだことあるんじゃね?」と既視感がすごいんです。でもそんなことはよいのです。砂原浩太朗さん「神山藩シリーズ」の空気感そして登場人物の魅力を永遠に堪能したい!!シリーズ続編を期待しています。
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時代小説の新刊をこれほど待ち遠しいと思ったのは初めてのことだ。
待望の神山藩シリーズ第三弾。祖父、父、息子、の物語、読み終わって満足のため息をつく。
名奉行と呼ばれた祖父、その祖父を見上げて奉行職に就いた父の突然の失踪によって、まだまだ先のことだと思っていたその職に就かざるを得なくなった孫息子。
父の失踪の理由は。その裏にある藩を揺るがす事情とは。
いつの世も、父と子には越えられない線と、ゆるぎないつながりがあるのだろう。
偉大な父を持つ息子の苦しみ。尊敬と嫌悪。それは父を喪うまで消えることはないものなのかもしれない。
言葉を介しないで分かり合うことの難しさ。踏み込めない距離の遠さ。ぎこちなさの向こう側にある思いを、私が伝えてあげたいっ!と思ってしまう。
それにしても、砂原さんの時代小説の父と子の複雑な思いの深さよ。
この時代ならでは、と思いつつも、これは今の世も同じなのだろうな、とも思う。
もしかすると、父親とか息子とか、男同士のぎこちない関係を少しでも埋めたいと思う人がいたら、これはそういう人にとって最高の物語なのでは?
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安定した予定調和の世界。
時代物は殺伐したミステリとか、展開や設定がめちゃくちゃなSFの合間に読むと和むなあ。
この作者の神山藩シリーズは、読んでてほっとできます。
それが別の時代小説と似た設定でも、これでいいと思わせるものがあるのが不思議。金太郎あめみたいかな。
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よい時代小説というのは、ある意味、マンネリ(というほど数を重ねていないが)を楽しむところにある。それもきちんとした文章があってこそのことで、砂原作品にはそれが備わっている。神山藩で代々奉行職を担う草壁総次郎は、突然行方をくっらました父に代わり町奉行となる。経験のないまま奉行になってしまった総次郎が、かつての名奉行であった祖父によって成長していく。
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静かな雰囲気に季節の花の描写が美しかった。一膳飯屋「壮」に4人が揃うシーンが好き。ついに揃った!と思った。
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「高瀬庄左衛門御留書」「黛家の兄弟」に続く神山藩シリーズの第3弾。3作とも面白さに間違いないが、続くにつれ感動が薄くなってきている。1作目があまりに素晴らしかったとも言えるが、流麗な文章と展開は変わらないもののプロットが今一つの感ある。物語を紡ぎだすことが容易でないことは重々承知しているが、少し観点の違う作品もお願いしたいものだ。
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祖父は引退父は行方不明孫は奉行として駆け出し勤務、殺人事件発生の解決に謎解きに東奔西走やがて解決の糸口に辿りつけ父の件も解決していく。小生は著書の中では本題より気になることがある。それは出てくる野鳥の鳴き声や鳴く虫の声草花の花の名前や花の色を描写が欲しかったな。
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「藩邸差配〜」に続き、その後刊行された「霜月記」を読む。
地方のある藩。
代々町奉行職にある草壁家。
突然父親である草壁藤右衛門が行方しれずとなる。
であるが、父は隠居願いを出しており、すでに受理されていた。
18歳の総次郎は、藩校に通って勉学が好きだったが、突如奉行とならなければならなかった。
それを家から出ている先先代、総次郎の祖父、名奉行で名を馳せた草壁左大夫に、戸惑いながら相談に行く。
この物語は殺人事件がそれだけにとどまらず藩を揺るがす大きな事件になってゆくのだが、祖父、父、孫の三人の男たちの言葉足らずの関係性が主題。
少しざわつきながらも読み進め、良い読後感だった。
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神山藩シリーズの第三弾、「そうげつき」と読みます。
父の失踪により18歳にして町奉行になった草壁総次郎が、名奉行と言われた祖父・左太夫や古参与力の小宮山喜兵衛 近所の幼馴染の日野武四郎らと共に事件を解決して行く話です。
内容的にはやや小ぶりな感じもしますが、じっくりと丁寧に物語は進んでいきます。登場人物は特別個性的では無いのですが、色を添える女性陣とともに、それぞれに良い持ち味を出しています。最後に登場する黒幕の後悔も、無理やりにこじれた人間関係に片を付ける訳でもなく、どこか淡々とした味わいがあります。武家のキリっとした生き様の中に、しっとりとした情緒を注ぎ、なかなか味のある良い話でした。
神山藩シリーズは藤沢周平の海坂藩に似ています。同じ架空の藩を舞台としているだけで、時代も登場人物も異なり、続き物ではありません。城下から数日の行程にある富由里湊に蝦夷からの北前船が1ヶ月ほどで到着することや「突然長い冬が訪れるのだ」と言った描写から福井県あたりではないかと想像しています。しかし、砂原さんは神戸うまれなので兵庫県の日本海側かもしれません(海坂藩は藤沢さんの故郷の鶴岡市)。海坂藩と同様に「城下町図」でも描ければ面白そうですが、地理的描写は少ないのでちょっと難しそうですね。
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ストーリーとは別に季節感あふれる色と光に鳥の囀り描写、砂原さんの文章癒される。「零れるような夕映に照らされてる」こんな表現思いつかない…「望むままに生きられる者などおらぬ」「すまぬ思いの百や二百抱えたままあの世へ行くのが大人というものであるわえ」「誰しもさまざまな枷に搦め取られて日々を過ごしている。その人がどうかより、いかなる立場にあるかということで物事が決められてゆく」人生訓もさりげなくたっぷり。
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町奉行の父が行方不明となり若くして後を継いだ総次郎。名奉行と誉れ高い祖父と大商人の番頭殺害事件を解決する。
父失踪事件との関連など、ミステリーとしても巧く、時代物としても渋く面白い。