0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主政治を確立し経済を発展し、海軍力を増強しペルシアからの侵攻を同盟で防ぎ盟主となったアテネ。しかし多くの戦いで兵士や司令官を失っても何とか持ち応えていたが政治的派閥争いで相手を陥れたり冤罪や策略で追放したりしているうちに自分たちの国力が衰退していくのが見えなくなってしまっていた。最終決定権がある市民集会で市民を煽る用を足さない一派も出てくる。ごたごたしているうちにスパルタによって最強の海軍力までも失い自滅したアテネ。その経過を語り民主政治の在り方を考えさせている。
投稿元:
レビューを見る
2023/10/1 読了
ペリクレスによるアテネ民主政の絶頂期から、ペロポネソス戦役に敗北して全てを失うまで。
大局的視野に立った指導者がいながら、反対派の扇動者が足を引っ張り、民衆もそれを支持していく内に国の行き先が誤った方向に行く……しかし民主政である以上、国が方向を誤り破滅に突き進もうと、それは主権者国民の選んだ結果なのだ。ただ、現代の政治でも、そっくりそのままの光景なような気が……現状でペリクレスのレベルの政治家はいなさそうだし、状況はもっと悪いのかも。政治家って、2500年も経ってこんなに進歩が無いのか。
投稿元:
レビューを見る
ペルシア戦役からペロポネソス戦役まで、アテネがエーゲ海に覇権を築いてから失うまで、その間75年。前にも書いたが、明治維新から敗戦まで、ロシア革命からソ連解体まで、も、同じく70数年。爺さんが孫に言って聞かせる形での生き証人を失う年数が経てば人間は同じことを繰り返す。(そう考えると徳川家康はやっぱりすごい人なんだろう。)
この巻の英雄は、アルキビアデス。あのペリクレスが育ての親。市民から大人気なのだが、状況が悪くなると怨嗟と攻撃の対象となる、ポピュリスト政治家。事情によりスパルタについたり、ペルシアについたり、と忙しい。最後はアテネに返り咲くのだが、また民衆に裏切られる。政治家というのは大変な仕事なのだなあ、とつくづく思う。
投稿元:
レビューを見る
戦後の高度成長。絶頂期を迎え、バブル。その後の失われた30年。落ちていく悔しさ、惨めさ。経済学を称するいい加減な説が蔓延る。緊縮財政。官から民へ。世界一の純資産国が何故か外資に依存する。ガラパゴスと揶揄して成功の源を捨て去る…ペルシア戦役に勝利した後、エーゲ海の盟主となるアテネ。絶頂期はペリクレスの死後に終焉する。ポピュリズムの台頭。やめられぬペロポネソス戦役。無謀なシチリア増派と惨敗。崩壊するデロス同盟。スパルタへの全面降伏…民主主義が衆愚政治になるのは宿命なのか?いや、衆が愚にならなければよいのだ。
投稿元:
レビューを見る
民主政の最盛期を迎えたペリクレス時代と、ペリクレス以後。
「貧すれば鈍する」では無いが、状況が悪くなると冷静さを失い、間違った判断を繰り返してしまうのは、個人でも集団でも変わらないなと思う。
ペリクレスの死後、間違え冷静さを失い、また間違えるのループに陥り、まさに坂を転げ落ちるように衰退するアテネを見ていると、現代民主主義でも盤石とは言えず、冷静に政治を見ていく必要があるなと考える。
投稿元:
レビューを見る
塩野先生は「『民主政』も『衆愚政』も、銀で鋳造されているということなら同じの、銀貨の裏表でしかない」と書いておられるが、それにしてもと思う。
都市国家アテネの凋落ぶりは痛々しいほどで、バブル崩壊後に衰退の一途を辿っている日本の現状と重なる。ギリシア人(日本人)が突然バカになるということはありえないのだから、事実上、国の盛衰はリーダーの資質によって決まるのだ。
本書におけるリーダーの定義を書き留めておく。
民主政のリーダー/民衆に自信を持たせることができる人
衆愚政のリーダー/民衆が心の奥底に持っている漠とした将来の不安を、煽るのが実に巧みな人
投稿元:
レビューを見る
塩野七生 ワールド 最高
「人間にとっての最大の敵は、他の誰でもなく、
自分自身なのである」 言葉が染み入る
投稿元:
レビューを見る
塩野七生のすごいところは、要約能力の高さと文章のライトさだと思っています。
つまり、600ページ以上あるこの2巻を読んで、長いとは感じないんです。
古代ギリシアについては、歴史、哲学、文学、芸術などでたくさんの本が書かれてきているので、ネタには事欠かないはずです。
そんな中で寄り道したのは、プラトン『饗宴』を通じてアルキビアデスに触れたり、悲劇や喜劇を若干取り上げた程度で、あとは戦争と政治の話ばかりです。
その上、登場人物がかなり少ない。歴史ものは群像劇になりがちなのですが、極力一本道で語っていきます。
そんなふうに強力に要約されている反面、600ページもかけているので、ギリシア史について詳しくなった気になれます。
この長さは、結構大事です。
ペロポネソス戦争でアテネが凋落していくこと自体は読む前から知っていましたが、読書前は腑に落ちないところがありました。
しかし、本書はシラクサ攻防戦やエーゲ海の東における戦いについて、順を追って語っていくので、分かった気にならずにいられない。
ただ、普通長い文章を読むのは苦痛なんですが、要約とライトさで読ませてくる。
文体は、時々変な執着(作者がスパルタのエフォロスを嫌いすぎなことなど)があったり、違和感のある日本語になっているところはあるのですが、全体的にはスラスラ流れていくので不思議です。
作者はローマの衰退に文庫にして43巻をかけたわけですが、ギリシアについては4巻ということで、スピード感も高まっているかもしれません。
ところで、スパルタにおけるエフォロスと王による政体は長続きしているし、個人的にはアテネのデマゴーグも同じくらい有害だと思います。
アテネが凋落していく過程で使われるようになった、ストラテゴスに対する弾劾裁判は死刑直行も多いからアルキビアデスのように逃げるしかないし、議論をふっかけるだけのデマゴーグに有利すぎるといいますか。
とはいえこの問題は、程度の差こそあれ、現代でも解決できていないことでもあります。
投稿元:
レビューを見る
どこのポリスも繁栄と衰退を繰り返す戦争は一時的な手段に過ぎず結果的には負の概念しか生み出さない。
国家を築き上げるため民衆を生かすため戦争は避けては通れない事態背景がある事もあり人間の愚かさもあり、それを繰り返さないためには自分達がそこから学ぶしかないんだと思った。
その代表的な偉人として大哲人であるソクラテスが度々、登場するが精神や知的に豊かで優れても
先導する者がいなければ成り立たないのも国家だと感じた。
投稿元:
レビューを見る
ペリクレスすごい。
この人も英雄だと思います。
その後のアテネとても残念。
転がり落ちる速さがひどい。
ローマはすごかったんだなぁ。
投稿元:
レビューを見る
ギリシア人の物語2
文庫版
新潮文庫 し 12 47
民主政の成熟と崩壊
著:塩野 七生
第2巻は、ペルシア戦役後のギリシャ世界を描く
ペリクレスの元、アテネはデロス同盟の盟主として頂点を迎えるが
その死後、アテネも、スパルタも、何が何でも同盟国を守るという信頼も、
敗北した兵を許す寛容性も、失っていく。ギリシャ人の教養やゆとりがなくなっていく
興隆するアテネを支えたのはペリクレス
・アテネ市街とピレウス港をつなぐ高速道路
・パルテノン神殿の建設
・アテネ海軍の創設
ペルシャとアテネとの相互不可侵条約 カリアスの平和
外憂がなくなったギリシャ世界は、アテネとスパルタの2大勢力に
陸軍 スパルタ ペロポネソス同盟 ペロポネソス半島の防衛
海軍 アテネ デロス同盟 エーゲ海世界の防衛と経済的発展
アテネの植民都市の拡大 南イタリア、黒海へ
同盟の盟主、アテネとスパルタ同士は、直接対決をさけていても、
傘下の都市国家がトラブルを盟主へ持ち込む
⇒誰もが、現実を見ているのではない ほとんどの人は、見たいと思う現実しか見ていない
⇒アテネ・スパルタ間で、ペロポネソス戦役が勃発、いずれも戦闘には消極的、終焉まで27年かかる
アテネは基地設置欲はあっても領土拡大欲はない
スパルタも、一国平和主義であり、領土拡大欲はもっていない
⇒バランス感覚をもつ、ペリクレスと、カルタゴ王アルキダモスがとも不拡大を志向
ペリクレス後、アテネの衰退がはじまる
レスポス島の反乱⇒デロス同盟の盟主としてアテネ海軍が出兵、同盟国、プラタイヤを見殺しへ
アテネは、同盟関係の他の都市国家を助けるとはかぎらない という印象を同盟国に与えてしまった
ニキアスの平和 アテネとスパルタとの休戦条約
マンティネアの会戦
アルゴスからの支援要請で、アテネ・スパルタが会戦、アテネが大敗を喫してしまう
メロスの攻略
アテネは、降伏した男をその場で殺害、女子供を奴隷に
⇒覇権国にあるまじき行為、以後、エーゲ海では、このスタイルが踏襲されるようになる
シチリア遠征 シラクサ攻防戦でのアテネ海軍が壊滅
アイゴスポタモイの海戦 アテネ海軍の消滅
スパルタ王の武士の情けで、アテネは救われた
ペロポネソス戦争は、スパルタの勝利で終わる
目次
第1部 ペリクレス時代
前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
第2部 ペリクレス以後
前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
年表
図版出典一覧
ISBN:9784101181134
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:678ページ
定価:1200円(本体)
発売日:2023年09月01日
全体の構成
1巻
第1章 ギリシア人て、誰?
第2章 それぞれの国づくり
第3章 侵略者ペルシアに抗して
第4章 ペルシア戦役以降
2巻
第1部 ペリクレス時代
前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
第2部 ペリクレス以後
前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
3巻
第1章 アテネの凋落
第2章 脱皮できないスパルタ
第3章 テーベの限界
第4章 マケドニアの台頭
4巻
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界
投稿元:
レビューを見る
アレクサンドロス大王については、興味がありながら正直、名前くらいしか知らなったので、彼の生涯が分かったのは収穫。いつの世にも時代を変える英雄が出るものだが、ローマのスキピオにしろカエサル、オクタビアヌスにしろ、中世のフリードリッヒ二世にしろ、既成概念を崩すことでは変わらないし、敗者に対して寛容でありむしろ敗者をも最終的に味方にする点が共通している。そこは現代でも通じる気がする。
グラニコス
イッソス
ガウガメラ
ヒダスペス
の4つもの会戦でしかも相手有利の状況にありながら全て快勝をして、しかも味方の損害を最小限に抑えるというのはハンニバルが最高の司令官として褒めたたえるだけのことはある。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りた。
前作に続いて読んでみたが、文庫版2巻は「ペリクレス時代」と「ペリクレス後」という2部構成。ペリクレスは大学受験世界史でも主要人物として出てくるので大枠は知っていたが、1巻が目まぐるしく主人公が変わる面白さに対し、ペリクレスは長く感じて間延びしてる感があった。(実際長いのだが…)
さらに後半はアテネの衰退期とあって、元々よく知らないしイメージしにくい期間の話だ。ソクラテスが出てきたりするが、哲学教養の基礎知識にもなりにくく、私は全体的に興味が薄れてしまった印象。
アレクサンドロス(4巻)まで読みたいと思っていたが、図書館では他の人に借りられているようだ…しばらくは小休憩かな。