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【それは、鉤爪や翼や魂が再びそなわった者たちの物語】老人の額から角が伸び、妊婦が翼を得て飛び立つその世界で、天から生み落とされた双子の運命が交錯する新鋭が放つ幻想長編小説。
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(以下あらすじをコピペ)
奇病が流行った。
ある者は角を失くし、ある者は翼を失くし、ある者は鉤爪を失くし、ある者は尾を失くし、ある者は鱗を失くし、ある者は毛皮を失くし、ある者は魂を失くした。
何千年の何千倍の時が経ち、突如として、失ったものを再び備える者たちが現れた。物語はそこから始まる――
妊婦に翼が生え、あちらこちらに赤子を産み落としていたその時代。
森の木の上に産み落とされた赤子は、鉤爪を持つ者たちに助けられ、長じて〈天使総督〉となる。
一方、池に落ちた赤子を助けたのは、「有角老女頭部」を抱えて文書館から逃げだした若い写字生だった。
文字を読めぬ「文字無シ魚」として文書館に雇われ、腕の血管に金のペン先を突き刺しながら極秘文書を書き写していた写字生は、「有角老女頭部」に血のインクを飛ばしてしまったことから、老女の言葉を感じ取れるようになったのだ。
写字生と老女は拾った赤子に金のペン先をくわえさせて養うが、それが「〈金のペン先〉連続殺人事件」の発端だった……
(コピペ以上)
と、いうあらすじをあまり気にせずに、半分くらいは掌編小説集として読んだ。
毎週末に限定して、ひとりで、矯めつ眇めつ、ゆっくりと、忘れたり思い出したりしながら。
そうしたら後半、いや掌編が、そして短篇が寄り集まることでできた、正しく長編小説なのだな、と全体の結構に嘆息。
具体的には何も言えないが、いい小説。
先日読んだ山尾悠子「仮面物語」が本格長編なのに対して、本作は「変格長編」……んな言葉ないけれど。
朝宮運河によるインタビューが深い水準に達していて、あ、この著者の作品だけでなく、インタビューやtwitterによる発信も、好きだな、と改めて思った。
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特異な美と儚さを具えた幻想長編。長編ではありますが緩やかな繋がりを持った掌編と短編が並びます。物語は奇妙なおとぎ話のようで、詩的な美しさとリズムが感じられます。妖艶なモデルを描く画家の話「顔に就いて」が特に良かった。
長編という事で一気に読んだのですが、どちらかといえばゆっくりと一編一編を別の物語として読んでいくスタイルの方が良かったのかなあと思いました。この本は再読してみたいです。
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素敵!ぐるぐる不思議に複雑に絡みあって、一読しただけではわからず何度も前に戻って読み返した。姿形の美しさ醜さとは。一見醜悪なような奇病だけど、常識のしがらみから飛び立つことができるパワーアップアイテムと思った。
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長編と聞いて読み始め、最初は連なる掌編集かと思ったが、今読んだ繋がりが次の物語ででき、進むかと思へば逆行し、行ったり来たりする中で時間が溶けて大きな流れになって只々流されていく気持ちよさがある。
奇病とはなんであろうか。最初は目に見える異物、異形のことかと思えば、それを持たないものにほど蔓延する病があるように見える。
最後に向かい、ここに結末があるのだと知った時の納得感が気持ちいい。
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これはいい!
読んでて久々に一駅乗り過ごした。
グロテスクでおぞましい「奇病」に満ち溢れた作品世界は、なぜか静謐で色艶やか。
「奇病」を得た者たちの穏やかな表情と、それを恐れる者たちの動揺、焦燥の対比が印象的だ。
不思議な想像力と独特の色彩感覚。
読書の楽しみを思い出させてくれる、今年の大きな収穫。
*「繭に就いて」の
「少年はいま、絡まりあった糸玉からみずからを引き出していく一本の糸なのだ」
画秀逸。
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時系列が前後するが読み終わると深く納得する。異形の者たちは元初に帰ったのか未来へと羽ばたいたのか!翼が生えたり鱗に覆われたり体内に真珠が出来たり角が生えたりもうあらゆるところが変化し人間はどこにいるのか状態。そんな世界の中で二人の子供が別々に育ち出会いまた別れるといった物語などがいくつか散りばめられ万華鏡のような面白さ。そして詩を読んでいるかのような美しい文章、世界観に堪能しました。
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グロテスクで美しい世界観と、歌人である著者特有の詩的な文体が合わさって、聖書読んでいるかのような読書体験でした。
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言葉遣いや文章が持つリズムが印象的で読む事の面白さを改めて思い出しました
目の前で次々に世界が切り替わるようでもあり
俯瞰的でもあり
「普通」と「異形」を分ける事の曖昧さや危うさ
失ったのか得たのか解放なのか
普通って何ですかね…
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少しずつ登場人物や世界がリンクしていくのは素晴らしかった。真夜中にひっそりじっくり読みたい本。
(ただし、きちんと集中して読まないと置いていかれる)
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とても短い掌篇で構成された幻想小説である。なかなか格調高い文体であるが(ゆえに?)、イメージをつかみにくい。山尾悠子さんの作品を思い出した。
描かれているのは現実とはまったく異なる異形の世界だ。“奇病”により、もともと身に備わっていたなにかが失われた。その後、長い時を経て彼らの子孫に再び顕在化する。それによって巻き起こる騒動が綴られていく。
一話完結なのかと思いながら読み進めていくと、意外な形で繋がっていくので油断できない。
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表紙の絵から連想するような、何とも奇妙な世界が本の中に広がっている。
物語は絵画に例えると、まるでダリやヒエロニムス・ボスの絵のようだ。
それぞれの語は奇病という共通点でゆるく繋がっている。
あるものは鉤爪が生え、あるものは角が、あるものは翼が生える。
そのものたちがたどった人生。
隠れたもの、旅するもの、自由を得たもの。
物語ははっきりと終わりもしないし、始まりもしない。幽玄、奇想、なんという言葉がぴったりだろう?
著者の言葉の選び方はわかりやすさとは正反対のところにある。
それがまた、この独特で奇妙な世界を作り上げている。
正解を、わかりやすい結末を求める読者には何を言っているかわからないから、つまらないだろう。
世の中には理解できはしないけれど、感情を呼び覚ますようなものもある。
短い章で区切られた奇病の庭園は、もしかしたら自分自身の心の中なのかもしれない。
私を私たらしめている私と言う人格ですら、完全には理解できない、もっと深いところの。
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たくさんの掌編が、少しずつ繋がっていく構成は好きだけど、ひとつひとつが短くて、どれがどれだっけ…となる。
文体はとても好き。
世界観は幻想的だけれど、現実を仮託しているようでときどき辛い。少年と少女のすれ違いが特に…
最後にたどりついた場所は、いつか帰るところだったんだろうか。
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川野芽生先生は掌編がいいな〜と思っていたのですが、これはもうドンピシャに暫定1位です。
恐ろしくて残酷な、世界の終わりを俯瞰するファンタジー。
いつの日か、人々はおぞましいのにどこか心惹かれる、奇怪で病的な姿に変化していった。
その姿はどれも、人と獣と虫と植物と何もかもが混沌としたものだった。信じられないし、信じたくない物語。だけど、誰しもがいつかは、そんなかたちに帰って行くのかもしれない。
悪夢のような世界の、最果ての記録。
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読書備忘録861号。
★★。
うん。無理。
読むのが辛かった。
理詰めで筋を読んで楽しむ、登場人物に感情移入して涙する、などの楽しみ方をするシンタローには無理だった。
作者が頭良すぎなんだろうと思う。しかも小説家ではないですね、作者は。
正直にゆっとく。おもろない。
ということで、ブクログの作品紹介をそのまま載せて終わりにするしぃ。
もう読まないしぃ。
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奇病が流行った。ある者は角を失くし、ある者は翼を失くし、ある者は鉤爪を失くし、ある者は尾を失くし、ある者は鱗を失くし、ある者は毛皮を失くし、ある者は魂を失くした。何千年の何千倍の時が経ち、突如として、失ったものを再び備える者たちが現れた。物語はそこから始まる——妊婦に翼が生え、あちらこちらに赤子を産み落としていたその時代。森の木の上に産み落とされた赤子は、鉤爪を持つ者たちに助けられ、長じて〈天使総督〉となる。一方、池に落ちた赤子を助けたのは、「有角老女頭部」を抱えて文書館から逃げだした若い写字生だった。文字を読めぬ「文字無シ魚」として文書館に雇われ、腕の血管に金のペン先を突き刺しながら極秘文書を書き写していた写字生は、「有角老女頭部」に血のインクを飛ばしてしまったことから、老女の言葉を感じ取れるようになったのだ。写字生と老女は拾った赤子に金のペン先をくわえさせて養うが、それが「〈金のペン先〉連続殺人事件」の発端だった……歌集『Lilith』、短篇集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌篇集『月面文字翻刻一例』の新鋭、初の幻想長編小説。