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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりの月光荘です。
月光荘のイベントスペースとしての活動も軌道に乗り、大学を卒業してそのまま月光荘の管理人に就職した守人は母方の親戚との再会やゼミ生たちとの交流もあり人との絆を深めていっている。
浮世離れした雰囲気はそのままに、それでも他人と積極的にかかわれるようになったのは数々の出会いを通して学び成長したのだろう。
人との出会いはもちろんだが、家の声が聞こえるという特殊能力を持った守人には家との出会いもまた大切なものだった。
ゼミ仲間だった田辺の祖父母が暮らしていた家では昔の養蚕の光景が伝わってきたし、ゼミの教授とその友人で月光荘のオーナーでもある島田に連れて行ってもらった古民家を改装した蕎麦屋では昔機織が行われていたという話を教えられる。
店では「とんとん、からー」という機織の音が響いているのが守人の耳には聞こえてくる。
それは古民家が過去の記憶を再生しているかのようだ。
その古民家の特徴的な柱から、古民家に住んでいた「マスミ」という名の女性の子孫と古民家の縁をつなぐことができた。
蕎麦屋の閉店と共に取り壊しが決まっていた古民家だったが、気にかけていたマスミが何年も前にその一生を終えたこと、その子孫に会えたことで満足したようだ。
「イエ、ナクナル。デモ、イイ。モウ、タクサン、ミタ。モウ、カエル」という古民家の台詞に胸が締め付けられる。
月光荘に出てくる古い家の話を読んでいて思い出すのは祖父母の住んでいた家だ。
古い農家で中庭があって半地下には竈や五右衛門風呂にポンプ式の井戸があり、お米が入った大きな収納庫や台所、木の階段を上がると畳の部屋と水田が見下ろせる縁側、すりガラスの木の扉。
夏休みに何度か訪れただけだが、今でもガラスの模様まで目に浮かんでくるくらいはっきりと思い出せる。
その後改修したりもしたが、今ではもう取り壊されて近代風の家が建っているのだろう。
祖母を亡くし祖父が施設に入ってしまうことになった田辺が祖父母の家に執着する気持ちが自分に重なっていく。
消えていく家があり、形を変えて残る家があり。
そんな姿を形にしようと、守人はカイコの吐く糸に人の一生を読み取ることができる娘を主人公にした小説を書き上げた。
儚い糸でも織れば布になり、周りと繋がっていくことができる。
そろそろ紙屋も川越にやってくるだろうし、川越ワールドの今後が楽しみだ。
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シリーズ第六弾にして完結編。
川越を舞台に、“家の声”が聞こえる遠野守人と彼を巡る人々との繋がりを描いた物語。
完結巻の今回は、連作中編二話の構成となっております。
月光荘オーナーの島田さんと大学の恩師・木谷先生と共に、狭山市の古民家を改修した蕎麦懐石店「とんからり」を訪れた守人は、そこで聴こえた機織りの音と“家の声”から得た構想を物語にすることに・・・。(第一話「広瀬斜子」)
そして、コロナ禍で月光荘でのイベントが中止になり、動画配信やオンラインに切り替えていく中、守人の書いた小説が優秀作に選ばれて・・・。(第二話「光る糸」)
月光荘の管理人だけでなく、小説家としての道を歩む決意をした守人。
毎回、何もかもがトントン拍子に進み過ぎる気がしないでもないですが(オンラインイベントもすぐ収益化できているし)、人と人との奇跡のような繋がりやご縁が広がっていく様子がこのシリーズの魅力なのですよね。
新しい時代に対応しつつ、古き良きものを大切にしたいという思いが作品から伝わってきて、例えば、守人の友人・田辺さんの祖父母の家を、古民家カフェにして残したいという石野さんたちの構想も素敵です。
そして、“家の声”が聞こえるだけでなく“会話”ができるようになった守人と家とのやりとりも心温まるものでほっこりしました。
特に終盤での月光荘の
“モリヒト、トモダチ。ドコニイテモ、イツモイッショ”
という言葉に、なんて“いいこ”なんだろう・・としみじみした私です。
そして、この巻で急に守人が豊島さんへ好意を抱いていましたが、個人的には“え?安西さんじゃなかったんだ?”と意外な感じでした。
とりま、皆それぞれの道を歩き始める感じで終わった当シリーズ。
また番外編でもよいので、今後の彼らの様子を描いて頂けたらありがたいなぁ・・と思いました。
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シリーズ完結編。
月光荘の管理人となった守人はイベントなどと忙しい日々を送っていた。
そんな中、月光荘のオーナーと恩師である木谷と一緒に蕎麦懐石のお店をやっている古民家を訪れる。
その店で出会った不思議な音が、不思議な縁を結んでいき、守人はある決意をすることになる。
同じく家の声が聞こえた喜代の死後、落ち込むこともあった守人だが、その喜代の家の声に背中を押され、強く生きることを決意する。
シリーズ序盤から、主人公の性格に芯がないことが気になったいたが、守人がやりたかったことは、このことだったんだ、と言うのが正直な感想。
少し拍子抜けのような、そんな感じ。
今作が終わったら、もう川越のみんなの様子が読めなくなるのは、少し寂しい気がする。
あとは「ふじさき記念館」が川越にオープンするのを、どう絡めていくのか。
そちらを楽しみにすることにしよう。
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あー、私の大好きなシリーズがとうとう終わってしまったーという感じ。
肉親の縁薄く、内へ内へとこもりがちな守人が、川越の月光荘に住み始めたことをきっかけに、いろいろな人と親しくなり、自分の能力も認めることができ、自分の人生を生き始める様が読んでいて、胸に染み入るようであった。
家とは何か。入れ物としての家、一族、祖先という意味の家、あるいは家そのものの辿ってきた歴史。
その地域の、ひいては小さな取るに足りない人間一人一人の、たしかに生きた証。
そういうものの愛おしさ、美しさが確かに感じられた良作であった。
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遂に月光荘シリーズ完結です。
なんとなくこの先どうなるのか気になる事柄が多いまま完結となりましたが、その先は読者が自由に夢想してかまわないということなのでしょう。
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大好きなシリーズでしたが、今回で完結編。
守人の今後も他のメンバーの今後ももっと読みたい。
ジュウブン、イキロ。
心に滲みます。
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シリーズ完結編。
…と知らずに読んだ。
そうか、終わってしまったのか。淋しい。
それでも、彼らの未来は続いていく。
「ジュウブン、イキロ」
「ドコニイテモ、イツモイッショ」
いつかどこかの作品で、彼らとまた会えることを楽しみに。
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シリーズ完結。「活版印刷三日月堂」からのおつき合い。
これからもジュウブン、イキロ…優しいことばです…
守人くんの本を読んでみたいなぁ…
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完結編だったのね。いつもの柔らかな雰囲気で無事終了でした。川越はまた別シリーズで出てきそうだが、月光荘の声はもう聞けないのね
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完結したと思ってた月光荘に続きがあった!
大きな変化はなく流れるようにまとまっていく
落ち着いていって、またいつか旅立っていく
終わりのようにみえるけど、つながっていく
かたちがなくなっても、きっと何処かにある
手放したりなくなってしまうものがあっても
何処かに白い世界があって楽しそうにしている
…今は生きていかなきゃね
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かつては孤独だった守人だか、様々な人との繋がりを得て、充実した日々を送っている。仲間のシアターカフェ計画、自身の小説執筆、途絶えていた親族との関わりなど、明るい未来に満ちている。家の声を聞くことができる守人に、家は、「カラダガアルウチシカ、デキナイコト、タクサンアル。ダカラ、イキロ。ジュウブン、イキロ。タノシク、イキロ。」と言う。家も人もみんな、最後には明るいところに帰るのだろう。それまでは、一生懸命楽しく生きていこうと思えた。
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ほしおさなえの菓子屋横丁月光荘のシリーズ6巻の完結編光の糸を読みました。
まだ4巻と5巻は読んでいないのですが、図書館に6巻が入ったので、4巻と5巻はあとで読むようになります。
まあ一話ごとに完結するのでそんなに違和感は無いですね。
広瀬斜子は川越ではなく狭山市の蕎麦屋さんが舞台です。
広瀬斜子は知らなかったのですが、
斜子織は「白ななこ」と呼ばれ、白生地のまま売られていました。 当時の斜子織の生産農家は入間川沿いに多くありました。生糸を精練して入間川から引いた用水で洗うと、真っ白で光沢がある糸ができたそうです。
その蕎麦屋さんの建物からの声が聞こえ物語が広がっていきます。
光の糸は完結編らしく、纏まっていました。
主人公の建物の声が聞こえる意味生き方が、まとめてあります。
ドラマになって欲しいですね。
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三日月堂シリーズで、ほしお作品にはまる。
以来、現在刊行中の『言葉の国のお菓子番』も、『紙屋ふじさき記念館』も読んでいる。
古民家、和紙、織物、活版印刷、和菓子など、レトロな手仕事をテーマにしているので、ついつい、手が伸びる。
さて、本書は川越を舞台にした『菓子屋横丁月光荘』。
いよいよこれが最終巻とのこと。
家の声が聞こえる遠野守人。
大学院を修了した今は、月光荘の管理人としてイベントの企画なども行っている。
恩師木谷先生に連れられて行った料亭で、家の発する声から、その家でかつて織物をしていたことを知る。
広瀬斜子(ひろせななこ)という、今は途絶えてしまった織物。
いつのまにか守人のまわりにできていた人のつながりで、その家の持ち主の子孫が、取り壊されようとしているその家に帰ることができる。
広瀬斜子については全く知らず、興味深かった。
が、正直物語の枠組みの中でではなく、他の形で読みたかった気もする。
物語の登場人物の世界で何が進行していたか、時々見失ってしまった。
後半は繭の家、田辺くんの祖父母の住む家の物語。
喜代さんに先立たれ、弱っていく敏治さん。
祖父への愛ゆえに、弱っていく祖父を受け入れられない孫の田辺くん。
そういう葛藤はとてもリアルだと思う。
そして、施設に入るかどうか。
守人世代より、四十代、五十代の人にささりそうな問題だった。
最終的には、この家を田辺くんと石野さんが古民家カフェとして利用していく道が拓かれていくのだが…。
作品世界にもコロナ禍がやってくる。
守人がその中で小説を書き、世間に出ることとなる。
守人はまだ結婚しそうにないけれど、そのお相手が示されていく。
べんてんちゃんだと思っていたが、そうじゃなかったんだ。
あとは、ちらりと三日月堂のその後が垣間見えるのは、三日月堂ファンにはうれしいところ。
あの弓子さんも、お母さんになったようだ。
だとすると、他の作品の中で、作家になった守人がちらりと出てくることもあるのかもね。
また会える日を期待しよう。
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生きること、働くこと、人と繋がること。そういったことを考えさせられる話って、顎を摑まれて「ほら、見ろ、目を背けるな。」と圧を掛けられるような痛みを感じるものが多いけれど、このシリーズは、隣を並んで歩きながら「こんなことあってさ。」「そういうこともあるよね。」なんて話しているような小さな旅路のようでした。
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【収録作品】広瀬斜子/光る糸
シリーズ最終巻。
出てくる人たちがみな温かい。川越の街を歩いてみたくなる。