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変身物語下巻。物語が世界創造からトロイア戦争、ローマ建国へと歴史の流れに沿って進んでいることに途中でようやく気付いた(笑)。トロイア戦争やローマ建国あたりになると叙事詩っぽくなり話にもまとまりが出てきたけど、ファンタジー感というかワクワク感はその分薄れてしまったような気もする。女ながら男として育てられ、女性を愛してしまったために神に願って自分の体を男性にしてもらい無事結婚する話が面白かった。
オウィディウスはその軽薄な文体から当時としては好まれず、恋愛の手練手管から性交の技法まで指南する「恋愛の技法」を書いたことが(少なくとも建前として)原因となって追放の憂き目にあったということだが、そうでなかったらもっとたくさんの作品を後世に残しただろうと思うともったいなく感じる。変身物語はほんとうに面白いし、天地創造からの叙事詩に寄せて変身譚を語りつくすという壮大な試みを成功させているのがなによりすごい。