大王と称された王
2024/03/06 17:15
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界史の教科書で必ず見る馬に跨り突撃する姿。このアレクサンドロスの物語。王の中でも大王と呼ばれた若きマケドニア王がどのような教育を受け父亡き後、王に選出され父王が改革した軍隊をさらに強くし東征して行ったかを書き尽くしている。仲間を信じ裏切りを徹底的に糾弾しながらペルシアからインドまで遠征する姿。単なる征服欲だけでは成されなかった。国を離れ国に帰ることなく亡くなった大王。「歴史エッセイ」と著者は書くが歴史書そのものの物語。
世界史上、屈指の人物だが
2024/02/25 11:07
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界史上、屈指の人物だけあって数多くの伝記が出版され、多くの人が言及している。そのような超有名な人物を著者塩野七生がどのように料理するか楽しみであった。しかし読み終えてみると、他の多くの伝記作家の領域を大きく超えたとは言い難い、そんな感想を抱いた。世界史上 同様に政治 軍事の面で抜群の功績を残し、著者が全力を上げて描き出したカエサルとの差を感じてしまった。
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読み終えるのが惜しくて読み始めるのを遅らせていたのだけど、読み始めると遂々一気読みしてしまった。さすがは世界史上最大のヒーロー、と言って良いのではないだろうか。
恥ずかしながら、大王と呼ばれる王様が会戦で騎兵隊の先頭を駆けていたとは、想像もしていなかった。そんなリスキーな場所に居続けながら、生涯無敗というのは、神懸かっているとしか言いようが無い。
世界中に彼の名を冠した街(各地のアレクサンドリア、カンダハル、果ては宇宙戦艦ヤマトの惑星イスカンダル[フィクション])があるというのがすごい。
P26
(アリストテレスについて)
論理学の創始者というのに、次の一句でその乱用に警鐘を鳴らしている。
「論理的には正しくても、人間世界でも正しいとはかぎらない」
「知識」と「知力」のちがいを、痛感せずにはいられない一句である。
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2023/11/17 読了。
全巻を振り返って。――1巻では主に〈ペルシャ戦役〉を交えた民主政の確立を、2巻でアテネの覇権確立から〈ペロポネソス戦役〉での凋落を、3巻で王政の後進国マケドニアが台頭してのアレクサンドロス登場までを、4巻で、『閃光』の如きアレクサンドロス一代記を描く。政体がどうあれ、優れたリーダーの存在で国家は発展するものの、跡を継ぐものが駄目だと悲惨なまでに凋落する、という事か。――歴史は2000年以上この繰り返しなのか?
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21歳で東征に立つ。軍勢3万5千。敵の数はその何倍もいる。軍資金はか細いもの。緻密な戦術。自らが先頭で切り込む。連戦連勝の中、何度も負った重傷。未知の道。命の保証のない砂漠行。当たり前のように生き延びる。はるか東のインダス河。従う兵士が限界。南下してアラビア海の河口まで。海沿いを帰る。謀反の兆し。父王以来の側近の処分。その一方で敗者同化の融和策。親友を亡くし自らも病に倒れる。駆け抜けた33年足らず...壮大な世界史。わずか一つの各々の人生。こんな生涯もあったのだ。そして女史が筆を置く。通史はこれで終わる。
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アレクサンドロス大王をこれだけリアルに描いた小説は今まで無かった。どうして若造があれほど大きなことができたのか不思議だったけれど、腑に落ちた。
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アレクサンドロスの開拓するスピード感の見応えが凄かった。兵士からの人望が厚く政治、軍事面共に才能が長けていて判断力の正確さや行動への素早さは古代ギリシア時代のテミストクレスを
彷彿させる勢いだった。人情味もあり、それでいて突飛な行動でクスッと笑えるシーンもあり
読んでいて楽しかったです。
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アレクサンドロス大王ものすごい人でした。
まさに英雄だと思います。
若くして亡くなったのが残念です。
彼の続きを読んでみたかったです。
ギリシャ人の物語大変面白かったです。
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塩野先生の最後の歴史長編、最終巻の主人公はメーガス(大王)、アレクサンドロス。
財政難の国家を引き継ぎ、25歳でギリシアを統一、26歳でペルシアを制覇、32才でこの世を去る・・・
この英雄の物語が面白くないわけがなく、読み終わった時には軽い喪失感があり、すぐに再読してしまったほど。
また、本書には読者への手紙ともいうべきあとがきが収録されている。
「・・・これまで私が書きつづけてこれたのも、あなた方がいてくれてからでした・・・」
読者への感謝を示してくださる先生方は多いが、この一文は特に響いた。
塩野先生の目に触れることはないが、「歴史長編は最後でも、まだまだ新刊を楽しみにしていますからね」と書いておく。
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ギリシア人の物語4
文庫版
新潮文庫 し 12 49
新しき力
著:塩野 七生
第4巻は、アレクサンドロスの初陣からその死まで、ギリシャから、リビア、インドに至る大帝国を打ち立てるまで
カエサルや、ナポレオンが心酔した王の中の王、生涯一度たりとも負けることがなかった無敗の将がアレクサンドロスなのである。
気になったのは、以下です
・生涯の友、ヘーファイスティオン
・命を託す馬 ブケファロス
カッパロ・ダ・バッターリア 戦場に連れ行く馬⇒大切な場で命を託す馬
生涯の友を得たばかりか、生涯の愛馬にも恵まれた
・戦の師、スパルタのレオニダスによるスパルタ教育とともに、学問の師、アリストテレスにも教えを得た
・BC338 カイロネアの会戦 が初陣
・兵士の一人一人が、自分たちは犬死しなくてもよいと得心することほど、リーダの価値を決めることもないのである
・古代ギリシアやローマの抱く想いの1つは、日本でいう「武士に二言はない」という言葉は西洋でも通じるのである。一度口にしたことをひっくり返す武士は、もはや武士とはみなされない
・BC334 グラニコスの会戦 小アジア
・ゴルディオンの結び目 ほどけないなら、切ってしまえばいい
・BC333 イッソスの会戦 ペルシャ主力軍との衝突
・BC332 ティロス攻防戦 シーレーンを確保し、補給路、兵の補充を図るために迂回
・BC331 ガウガメラの会戦 ペルシア主力軍との2度目の激突
・BC326 ヒダスペスの会戦 インダス川支流でのインド軍との激突
かくして、アレクサンドロスの遠征は、インダス川に達した時に終わった
・戦場では、兵士は肉体で戦うが、総指揮官は頭脳で戦う
・兵站(ロジスティクス)を重要視しない司令官は戦場ではいかに勇猛果敢でも、勝利者には絶対になれない
・一方で軍事的に制覇した地域の、彼の支配下での再編成も忘れなかった
彼に一貫していた戦略は、前進を続ける自分の背後には、ペルシアの勢力が戻ってくる可能性を絶対に残さないだった
・占領地の現状維持とはいってもそれは、殺したり、追放したりしないということで、ペルシア時代の制度をそのまま温存することではなかった
・自分が信じる神しか認めないのが、一神教で、自分は信じなくても他者は信じているのだからその神も認めるのが多神教である。それもいやいやながら認めるのではなく、リスペクトするから許容するのが多神教だ
・広大な国の統治は、軍事力や警察力だけでは絶対に長続きしない
その地域の特殊事情にも配慮しない限り、大国の統治はできないのである
アレクサンドロスは、このこともまた、早くも理解していたのだった
・マケドニアの若き王は、次の3点でも優れていた
①現地人のガイドの活用に巧みであった
②自軍の兵を使っての偵察行動を完璧に組織化していた
③捕らえた兵の尋問は、それが兵士としては高い地位にある騎兵であればなお、アレクサンドロス自身が行った
・いずれにしても、アレクサンドロスは、一時に大量で、かつ、貴重な情報を得たことになった
・アレクサンドロスの考えるリーダーとは、部下たちの模範にならねばならない存在であり、率先してリスクを冒している様を見せることで、彼らが自分たちのモデルと納得する存在でなければならなかった
・大事業は、一人ではできない。他の人々の協力なしには、絶対にできない
それには、他者を信頼して明確な目的を与えた上で、任務を一人する必要がある
信頼に値するかどうかを精密に審査していては何一つ始まらないので、ある意味では直感によって大胆に一任するしかないのだ
・アレクサンドロスは、キュロスをはじめとするペルシアの王たちの墓所にはいっさい手をふれさせていない
破壊行為などは絶対にさせなかった
生前の行為がどうあろうと、死者への冒涜行為には絶対に手を染めなかったのも、彼の性格なのだ
・アレクサンドロスとは、相当な自己中心主義者だったが、相手の立場に立つことも知っていた男であった
・アレクサンドロスの評伝を書いた古代の史家は、この若き王の特質として
①速攻、②忍耐、につづいて、③人間性、を上げている
フマニタス、とは、ヒューマニティの語源となるラテン語であった
・インド王ポロスに向かって、「どのような処遇を望まれるか」
ポロス「死であろうが、生であろうが、王としての処遇を求める」
・敗者同化による民族融和というアレクサンドロスの夢は、彼の死とともに霧散してしまう、この夢が実現するのには、ローマを待つしかなかった
・列伝の著者プルタルコス:ローマを強大にした要因は、敗者の同化に成功したことにおいて、他にない
目次
読者への手紙
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界
十七歳の夏に 読者に
参考文献
図版出典一覧
ISBN:9784101181158
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:494ページ
定価:1000円(本体)
発売日:2023年11月01日
全体の構成
1巻
第1章 ギリシア人て、誰?
第2章 それぞれの国づくり
第3章 侵略者ペルシアに抗して
第4章 ペルシア戦役以降
2巻
第1部 ペリクレス時代
前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
第2部 ペリクレス以後
前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
3巻
第1章 アテネの凋落
第2章 脱皮できないスパルタ
第3章 テーベの限界
第4章 マケドニアの台頭
4巻
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界
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対比列伝でエパメイノンダスはスキピオ・アフリカヌスと(散逸…残念)、ペロピダスは〝ローマの剣〟マルケッルスと対比されてます。
クセノフォンもギリシア史をマンティネイアの戦いで筆を置いてますが、この「テーベの二人」が古代ギリシアの最後だと思うのです。
作中でも「そして、誰もいなくなった」とありますが…民主政というのは、つくづくリーダー次第なんだなぁ(遠い目)と思います。
そして、塩野先生、お疲れ様でした。
歴史に想いを馳せる時間をたくさんくれて、
こちらこそ、「一千回もありがとう」ございました。
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第1章 アレクサンドロス
●生涯の友「ヘーファイスティオン」と愛馬「ブケファロス(牛の頭I]に恵まれた。
●父のフィリッポス2世から、身体面ではスパルタ人のレニオダスからスパルタ教育を、精神面では、哲学者の「アリストテレス」から哲学を学んだ。
●哲学者は知識を得る学問ではなく、知力を鍛える学問であり、アリストテレスの教育を受けたことは、アレクサンドロスに大きな力になった。当時の哲学者は先人たちがどのように考えて行動したかを知るために歴史を学び、情報を偏見なく冷静に受け止める姿勢を確立し、3つ目は自分の頭で考えて自分の意志で冷徹に判断して行動する能力を得る学問だった。
●アレクサンドロス曰く「船上では主導権を握った側が勝つ。」
●アレクサンドロスの戦略・戦術を簡単にまとめると、
①騎兵の突撃で敵陣にくさびを打ち込み、敵の陣営を分断する。
②分断した敵陣を、防衛から攻勢に転じた歩兵(ファランクス)と騎兵と連携して包囲殲滅すること
●「ゴルディアオンの結び目」の話は、明快で単純で果断に対処することが最善な方法になるという解釈である。
●筆者の考えでは、アレクサンドロスが経験した4つの会戦(グラニコス、イッソス、ガウガメラ、ヒダスペス)の中で歴史的に見ても、最も重要なのは、イッソスの戦いである。
●兵站の重要性を理解しない司令官は、戦場でいかに勇猛果敢でも、最終的な勝利者には絶対になれない。
●アレクサンドロスが当代きっての名称とされたのは、無敗だっただけでなく、会戦の戦死者数を少なく抑えたことも理由のひとつである。
●アレクサンドロスは広大な領土の統治には、軍事力だけではなく、地域ごとの特性を配慮が必要であることを、早くから理解していた。
●「ガウガメラ」での戦いでは、ダリウス3世は、戦象と戦車を投入してきた。どちらも無力化された。戦象はファランクスの槍を嫌がり暴れて殺されて、戦車はかわされて方向転換中に殺された。
●「ダイヤの切っ先」アレクサンドロスは、騎兵隊が縦長のダイヤ型をなすその先頭に立って、いつも敵陣に突入していた。後世の名称、ハンニバル、スキピオ・アフリカヌス、カエサルさえもそこまでのリスクは負わなかった。それは彼の若さで一度も負けなかったからかもしれない。
●アケメネス朝ペルシアの中心部のメソポタミアの「スサ」「ペルセポリス」「バビロン」を制圧して、ダリウス3世が殺害されてても、なお、アレクサンドロスが東征を続けたのは、メソポタミアの東側の中央アジアは政情が不安定であり、ダリウス3世をかくまった地方長官がこの地域を拠点としていたため、中央アジアも征服する必要があったため。
●ヨーロッパを拠点にした国家が、中央アジアを征服したのは、歴史的に「アレクサンドロス」のみである。
●アレクサンドロスの評伝を書いた古代の歴史家は、若き大王の特質を「速攻」「忍耐」「人間性」を挙げている。彼の後に続く兵士たちも一人の人間として扱った。
●インドの王「ホロス」との闘いに勝利したアレクサンドロスは、インドの横断行を提案されて、彼の部下の兵士たちが��れ以上の東征への従軍を拒否されたので、アレクサンドロスは、東征をやめて、進軍した道とは別のルートでメソポタミア地方に戻った。
●ヨーロッパとオリエントの融合を図るため、マケドニア将校とペルシアの女性との合同結婚式を行い、アレクサンドロスは、ダリウス3世の長女と結婚した。
●アラビア半島を征服して、その後、カルタゴなどの西征を予定していたが、32歳の若さであっても、厳しい戦闘と負傷の積み重ねで過労のため、マラリアに感染してしまい、この世を去った。
●誰を帝国の統治を任せるのか、瀕死のアレクサンドロスに尋ねた側近に対して、「より優れた者に」と言い残したため、後継者争い(ディアドコイ戦争)になってしまった。瀕死の状態では「誰」にするかを明言する体力がなかったか、彼自身が独断で物事を進めてきたため、「より優れた者」を判断できなかったのかもしれない。
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図書館で借りた。
ギリシア人の物語、ようやく最終巻にたどり着いた。4巻はアレクサンドロスの話がメインだ。後世にとても広く伝わる伝説的な話だし、いくつかの諸都市は21世紀の今でもアレキサンドリアと名乗っていたりする。アレクサンドロスの生涯は非常にドラマチックだ。題名『ギリシア人の物語』ではあるが、アレクサンドロスの話なので、ギリシアをすぐ飛び出し、基本アジアを舞台とした話になっていく。
このシリーズは、歴史書ではないので人物の性格は鵜呑みにしすぎるものではないが、世界観を知る上ではいいスパイスになっていると思う。