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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の絵画における「動物」に注目した一冊。やや日本絵画のキッチュさが目立つ感じ。一方、鳥獣戯画に関する考察は、おもしろく読みました。
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<目次>
第1部 信仰と動物、失われた美術~古代・中世
第1章 海を越えて来た動物の絵
第2章 《鳥獣戯画》のどこがすごいのか?
第3章 失われた愉快な世界
第4章 鹿と竜~神の使いと仏の守護神
第5章 涅槃図に描かれた動物
第6章 禅宗と動物の絵
第2部 平和な社会と多彩な動物絵画~近世
第7章 獅子と鳳凰
第8章 縁起物から生まれる創作
第9章 図鑑に心を遊ばせる
第10章 本物に迫る
第11章 花開く自由な造形
第3部 動物の心と人の心~近世から近代
第12章 「禅画の虎」の遺伝子
第13章 絵の中の動物を愛おしむ
第14章 禅画の動物が教えてくれること
第15章 仏の国の動物
第16章 動物を使った風刺画
第17章 近代の芸術家と動物
<内容>
江戸絵画を専門とする府中市美術館学芸員。多くの日本の動物絵画の展覧会を計画、実行してきた。文中で江戸時代までは「かわいい」の視点などないが、仏教などの考え方はあったにせよ、見る側が楽しくなる作品が多い。ところが、近代になり西洋の美術思想が流入すると、その面白さ、楽しさが消えてしまうという。従ってこの本は、近世までに重点が置かれる。図版も多く、思わず頬が緩む作品の多いこと。また円山応挙の思想とか、それを飛び越えてしまった弟子の長沢蘆雪とか、そうした話も垣間見えるのがよかった。
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著者は府中市美術館学芸員の金子さん。毎年春の江戸絵画展で楽しい切り口の展示を見せてくれる人です。そういえば上様(徳川家光)のぴよぴよ鳳凰を最初に見たのもここだった気が。そんな著者による江戸時代以外も含めた動物を描く絵画の通史です。
動物を描く絵画を単に可愛いや可笑しいの視点ではなく仏性を絡めて評価しているのが斬新でした。確かに仏教絵画は動物の宝庫でしたね。
通史としては明治以降の分量が少ない気もするので(藤田嗣治の猫とかも気になる)、何方か近代編を書いてくれないかしら?
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面白かった、さまざまな日本の絵画モチーフになった動物たちについて。
宗教画、仏教絵画、禅画、縁起物、本草学
「鳥獣戯画」、若冲の「動植綵絵」、応挙の子犬、家光画伯作品。
ちょっと小さくて見づらくはあるが、フルカラー90点超、
コスパはすばらしい。
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日本絵画史の中で多彩に描かれた動物たち。
古代から近代まで、描かれた背景も伴い、
それらのカラー画像約90点超を添えて、解説する。
・まえがき
I 信仰と動物、失われた美術―古代・中世 第一章~第六章
II 平和な社会と多彩な動物絵画ー近世 第七章~第一一章
III 動物の心と人の心ー近世~近代 第一二章~第一七章
・あとがき
主要参考文献有り。
古墳絵画に描かれた、神獣。飛鳥時代の玉虫厨子の絵。
奈良時代の正倉院の御物。それらは海外渡来の美術の動物。
やがて仏教画の涅槃図や禅宗での水墨画にも動物が現れる。
「鳥獣戯画」の登場。禅の世界でのなんか可愛い動物も。
安土桃山~江戸時代初期の土佐派や狩野派の竜虎や鳳凰。
社会が安定し、美術が人々の身近になってきた時代、
縁起物から生まれた動物絵画の創作。鯉・鶴と亀・兎・鹿。
写実的でリアルな迫力。本草の高まりからの図鑑。
西洋の銅版画や油絵からの影響。
俳句の流行からの俳画と俳画のような可笑しな絵。
異色の浮世絵。描き方の自由と表現方法の自由。
そして人と動物の心を通わせる絵が登場する。子犬・雀・猿・猫。
63歳で亡くなるまで子犬を描いた応挙。
その弟子の蘆沢蘆雪はやんちゃな子犬を描く。
猫を愛でた歌川国芳。徳川家光の動物画への思い。
私の絵に法は無いと嘯いた仙厓の子犬。
仏教が人々の心に染み渡った時代の、動物の命の重さ。
明治時代初期の河鍋暁斎の蛙と風刺画。
西洋と日本では動物の立ち位置が異なっているし、
日本でも時代の変遷の中では同様。
それでも明治以降にも素晴らしい動物画が描かれたのは
嬉しいし、最近の“かわいい”で過去の動物作品が
注目されたことも有難いと思いました。
それ故に小さいながら多くの動物絵画が味わえたことに、感謝!
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美術史の一部として、動物を正面から捉えており、私の関心に合っていたので本当に良かった。アジアには、あるいは少なくとも日本には、キリスト教文化圏と異なる動物への考え方があるという歴史を垣間見た気持ちになった。他方で、この分野は研究があまり進んでいないのかもしれない、と少し感じる部分もあり、他の本も進んで読みたいと思う。
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ここのところの「かわいい日本美術」ブーム。
著者はその仕掛け人だったかな…?
本書では古代から近代にかけての、動物を描いた日本絵画を取り上げていく。
たしかに、古代と近代の記述が少ないとも言えるが…。
単に「かわいい動物絵画」を、自分が好きなように愛でるのもいいけれど、どんな文脈の中に位置付けられるのかを知ると、一層興味深く絵画に向かえるような気がする。
例えば、鳥獣戯画(鳥獣人物戯画)。
動物の描き方のお手本があったのではないかというのだ。
長屋王の邸跡から出土した、土器に落書きされた猿。
あるいは平安末期、奥州藤原氏の「柳之御所」から発掘された折敷(よく残っていたものだ!)に描かれたカエル。
仏画や美術品の意匠として入ってきた実在または空想上の動物も、ある種のアイコンのようになって、やがてささっと描ける人が生まれていく。
そういった流れの中に、鳥獣戯画もある、ということになるようなのだ。
禅宗寺院にある猿や虎の図は、なぜかかわいらしい。
筆者はそこに、仏教のすべての命を慈しむ考え方があらわれているのではないか、と言っている。
他の解釈の可能性もあるのかも?とは思うが、そんな風に考えたことはなかったので、面白かった。
筆者の専門である江戸については記述も厚く、さまざまな切り口が用意されている。
縁起物のお決まりの画題の中から、画家たちが個性を発揮していったりもする。
かと思えば、本草学の進展の中で作られる図鑑のこと。
幕府や大名たちのバックアップで作られ、写実的に描く技術が蓄えられ、そして時に美術品としても鑑賞される対象となる。
狩野派と将軍とはまた異なる美術と武家の関わり方に、文化の幅の広さを感じる。
一方、江戸期には「ゆるい」動物画も多数ある。
光琳のように図案化を推し進めた結果そうなったケースもあれば、当時流行った絵手本「略画式」シリーズの影響もあるという。
その嚆矢である鍬形蕙斎の『鳥獣略画式』は寛政九(1797)年初版で、明治期まで版を重ねたという。
本書に写真があるが、たしかに漫画的なかわいらしさにあふれていて、一度見てみたいと思う。
涅槃図も、動物画のメディアとして捉えられていて、そういう見方もあるのかと面白く感じた。
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書庫らでん
で知った一冊、誰かに薦めてもらうことが
自分の読書の幅を広げてくれるのが面白いです
色々と書かれているテキストもとても面白いのだけど
何よりこの本、絵画達がカラーで
掲載されているのが、ものすごいでず
ここで出会って
テキストで
いろんな背景を知った絵画達
本物を見に行けるのならば
行ってみたくなります
本に掲載されるサイズを超えた
リアルの持つ迫力を感じてみたくなります
誰かが何かをどう感じるのではなく
見た私がどう感じるのかが
楽しみになります