投稿元:
レビューを見る
新刊を買うな。
東京駅構内の本屋で、違う本を探していたら偶然目に入って購入。原作楊海英、これは!漫画になってる!と即買い。楊海英のチベットに舞う日本刀の衝撃、大体そこにも満州国から内モンゴルにいたる悲劇は書かれていて墓標なき草原という作品は未読ながら、漫画だと顔がついていてコンパクトに人ごとに話が分かれているので分かりやすく整理できるかと期待した。その期待は叶った。しかしやたらと漢人漢族中共の比類なく例外もない悪人ぶりと、それに対置される日本軍日本人のモンゴルの人たちへの善人ぶりみたいなのがあからさまでだんだんあれ!?なんかおかしい?!となってきて、帯の折り返しにネトウヨアホ雑誌WILL のYouTube広告などあり、しまった、自分でお金を出して新刊で買ってはいけないものであったと後悔と反省しながらとりあえずよんだ。
例のチベットと日本刀の文庫本で読んだ話、人物のこと、当時のモンゴル人の政治組織のこと、はよく理解できた。チベット日本刀で楊海英さんの取材、研究、調査の粘り強さ精緻さには脱帽していたのでそこに敬意を表する、楊海英がワック出版、正論清水ともみに謝辞述べるのも当事者であるから致し方ないかもしれないが、チベット、ウイグル、モンゴルの問題について日本人がこのような無自覚無批判を垂れ流し保身と憎悪に終始するのはいかがなものか。岩波版では楊海英は、本書にあるような、日本との関係は清々しく、とか日本とモンゴルが創出した世界史、などとそこまで無自覚無批判出会ったとは思えない。清水ともみという名前はウイグルのことで見たことがあったがヘイトするダメな人のようだ。
モンゴルその地で行われたことは深い悲しみ哀しみなんてレベルではない、悲劇悲惨そのもの、命がけであり、実際命の喪失も文化の喪失も本当のことだが自分たちは彼の地に神社を建ておなじことをしなかったか、ご都合主義植民地主義でなかったかと自分で考えながら読まねばならないからこれは欠陥本。モンゴル騎兵とチベットの本は中公文庫だったと思うし原作墓標なき草原は岩波の本なのでやはり安直に漫画などで読むとバカになりバカが調子に乗るだけだなと反省した。なるほど小林よしのりがでてきたころのあの変な感じは、バカを増殖するためのマンガというヘイターシステムのスタートだったのか、と思い至った。
再度言い訳する。移動予定時間がありめちゃくちゃ急いで本屋をうろうろしたので初出正論とか、willの広告とか見逃し購入は猛省反省反省反省。でもモンゴル分断、モンゴルも南北問題がありそこには日本も一因といして大きく関与しておりまた内モンゴルの惨状、問題はチベットやウイグルより長きに渡り自然に拡充されてきたのでより不可視化されていて歯痒く悔しい問題。星は楊海英氏の執念と困難の調査にのみつけたもの。しかし楊海英がこの漫画も良しとしているわけだしやはり満州国や日本軍に対しどうなのかは留保せざるを得ないので、全面的に肯定できない。
チベットウイグルモンゴルのこととなるとつくづくネトウヨの陰がちらちらして、思い通りに行かないもの。本当に嫌だ。