学際的であり、豊富な事例紹介にあふれた本
2015/12/10 00:22
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日常、なんとなく感じていることを、脳科学が脳活動の変化を客観的に指標化して証明する事例がたくさん載っている本です。
怖がっている人に、愛し合っている人が手を握ってあげると、島皮質という恐怖を感じる脳部位の活動が減るとか、事例が豊富なだけなら、こんなに人気は出ない。
面白いのは、思ってもみなかったけど、脳にはこんな機能があるのか!とか単純なようでいて、へんてこりんな作りでもあり、なんともアンバランスな脳。
例えば、ネズミの脳の報酬系のある部分に電極を差し込んで刺激し続けると、寝食も忘れて餓死するんです。マズローっていう人がいて、人間の欲求はいろいろあるけど、ピラミッド構造で、生理的欲求とかそういうのが満たされてから、安全の欲求とか、承認欲求に行くとか言ってましたが、そんなことなかったんですね。
でも、旧バージョンの知識がいまだに看護や福祉の教科書に載っています。薬物等のアディクションが生理的欲求よりも優先順位が高いってのは、もっとアナウンスされてもいいと思うんです。
苦さは本来、毒物の危険信号だから、ブラックコーヒーとかビールといった苦味に対して「リスクを侵す快感」があって子どもはそういうの、わかんないけど、学習によって後天的学習ってのができるってのは、大人な私にグッとくるものがありました。
この本で「他人の心が理解できるのはなぜ?」ってのがあって、痛みがあるからこそ、危険を察知する能力が長けて、無意識のうちに痛みを感じないように身体に過剰な負担をかけないようにします。
ここで実験があって、3人でバレーボールのテレビゲームをやって、対戦相手は見えない状態で、トスで3人全員でボールを回し合う。で、この対戦相手の2人がグルで、この2人がコンピューターで楽しくトスしあっていたのに、突然、本人だけがのけ者にされて、コンピューターの2人間でボールをトスしあうっていう「のけ者」状態にした時、その人の脳のMRIは、痛みに反応する脳部位と同じ領域が活動したとのことです。
だから心が痛いってのは、ホントに痛みがある。のけ者にされたくないってのは身体が損傷を受けるくらいに痛みを感知する感覚システムで、社会的な痛みってのは、ホントに痛いわけです。
仲間からの疎外を感知するために痛みが伴う。だから家族の人から愛情たっぷりに育てられた人からしたら、無縁とか下流とかいった他人の痛みを想像して、痛覚系回路が活性化することがある。だから、池谷さんは共感の心も痛みから生まれている、とします。
脳科学がすごく学際的な学問で、ひょっとしたら脳の分析によって、これからもっと研究が進んで、私たちの脳のクセがわかってきたら、もっとケアの場で、がんとかの社会的苦痛についても新しい知見が起こるかもしれませんね。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブルーバックスに於いて分厚い本ですが、面白すぎて(正確には興味深過ぎて)、一日で読了してしまいました。あまりに興味深過ぎて、随所でメモを取ってしまいました。誰かにアウトプットしたくなります。
著者が近しい年齢である点に親近感もあったし、また本の中身が高校生への座学講義スタイルなので、かなり専門的な内容でも話し口調風に易しく感じます。
講義を聴く高校生もレベルが高く、そのうちの一人が東大の理科三類へ合格したのも頷けました。
本書を読了して脳科学を勉強してみたくなりました。より正確に言うならば、池谷先生に教わりたくなりました。
最新の脳科学の成果から私たちの抱く心象イメージの生成について解説した画期的な科学書です!
2020/02/06 11:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、理科系の難解な知識をとても分かりやすく解説してくれると大好評の講談社「ブルーバックス」シリーズの一冊で、同巻は最新の脳科学の成果を理解できる画期的な科学書です。同書では、近年の科学技術、特に脳の研究によって明らかになってきた、私たちが抱く「心象イメージ」について詳細に解説したものです。内容構成も、「第1章 脳は私のことをホントに理解しているのか」、「第2章 脳は空から心を眺めている」、「第3章 脳はゆらいで自由をつくりあげる」、「第4章 脳はノイズから生命を生み出す」といった興味深いものとなっています。これで、脳と心の繋がりが分かります。
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池谷先生が母校の高校生に行った講義。
読みやすいし面白いんだけど、私の頭では一回読んだだけでは??
要再読です!
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人間が自然に動くため、意識外で行われている脳の仕組みはすごく高度で複雑で面白い…“視覚や聴覚からの刺激を認識するまでのタイムラグを、脳が未来を想定して補正”したり、“動かそうと意識する前から脳は準備”したり。。。けど個々のニューロンは意外に単純なルールで動作しているというのが奥が深いなぁと。一般向けの講義内容がベースなので素人でも読みやすい(^^;
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単行本版が好きすぎて、ブルーバックス版も購入。
いくつか変更・追加点があるけれども、
特に追加された次元の話が面白い。
また、数年前の本なので、
内容が古くなってないかと心配したけど、
まだ十分新しいものとして読まれ得る。
素晴らしい。
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講義形式がよいのか、さくさく読めるし、内容もそれほど難解ではなかった。脳の不思議をもっと知りたくなる本だと思う。
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我々は常日頃から、自分のアタマで考えてから行動していると思いがちだが、実は体を動かそうと意図する前に、すでに体の方は準備を始めているらしい。
つまり意識的に動かしているというのは思い込みで、無意識のうちに行動は決まっているということなのだ。
でもそれでは街中に身勝手な行動をする人々が溢れ、北斗の拳的な世界になってしまうはずである。しかしそんな光景が見られないのは、人間が人間らしい行動をするために、無意識の行動を意識的に抑制することができるからだ。
欲求から行動までのほんのわずかな時間に「自由否定」を行うことによって、辛うじて世の中の秩序は保たれているのだ。
人間の行動は脳の「ゆらぎ」に大きく左右されるらしい。プロゴルファーが簡単なパットを外してしまうのも、この「ゆらぎ」が原因というのが非常に興味深かった。
もし今度仕事でミスった時は、上司に対し脳のゆらぎについて滔々と語ってみようと思う。
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【目的】 最先端の脳科学の研究をもとに、「心」の動きについてどのようなことが言えるかを明らかにする。
【収穫】 普段は考えもしなかった脳の作り出す現象について、多くの初めてのことを知ることができ、自分の心を少し客観的に捉えられるようになった。
【概要】 本書は、著者が母校の高校で行った「脳と心」に関する全校生徒向けの講義、および少人数向けの集中講義の内容をまとめたものである。講義では、日常的な事例を使いながら、最先端の脳科学理論を紹介する。以下は取り扱う事例の一部。
・「好きになる」とはどういう作用か
・なぜ他者の心、感情を理解できるのか
・直感はどのように生まれるのか
・生物の定義とは何か
・記憶の役割とは何か
・自由の条件とは
・脳の「ゆらぎ」とは何で、何の役に立っているか
【感想】 色々なところで評判がよく、著名なビジネスマンも薦めていたため読んでみた。普段自分の意識に上らないような部分でも、脳の影響が働いていることをわかりやすく解説しており、非常に面白い。400ページ超の分量だが、高校生との対話形式で書かれているため読みやすい。たまにテレビでやっているような脳特集などより、はるかに多く有益な情報が得られると感じた。
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難解な脳科学について非常に分かりやすく書かれている良書である。大人だけでなく、中学生にも少し背伸びをして読んでほしいと感じる。
当たり前の物事が違って見えるようになる。本書の最後で述べられる脳の構造としてのリカージョンという入れ子構造の概念は、行き止まりや限界ではなく新たなる可能性の萌芽として見ていきたいと思う。
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自由意思ではなくて自由否定こそが人に与えられた自由だというのには衝撃を受けた。けど自由意思は認知されるから存在すると言えるだって!?脳ってホントいい加減。運動や思考も結局ゆらぎで決まっちゃうみたいだし。そのうちゆらぎ制御トレーニングが流行り出すんじゃないかな。
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自分はどれくらい世界を正確に見ているのかというと、かなり歪めて日々を生きている。
自分は簡単に変わるが世界はつねに同じ状態なんだなとより実感しました。
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池谷さんの本は凄く面白い。
でも、中身が濃すぎ。
還元前の200%オレンジジュースみたいなので、次からは上下巻にわけてほしい。
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脳科学者が母校の高校生相手に行った講義録。
脳と身体(行動)の関係、自由意志に先行する無意識、神経回路の働きの精密さ・単純さとゆらぎを利用することによる複雑な処理、リカージョン(入れ子構造)によるパラドクスなど、脳の働きの面白さと意外に単純で不合理なところもあるなど、脳の不思議や神秘的とされるベールをとってくれるような内容だった。
変えるのが難しい外的状況と心の状態が違うときには心の方を変化させるという脳の働きを読んで、心が沈んだ不機嫌の時も口角を上げ笑顔を作ってやることの意味を再認識した。
13-148
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持ち歩いて通勤や休憩中に読んでいる。高校生相手に話している内容なのでかなり分かりやすく、年を重ねた今、あぁ、あれはこういう事だったんだ…と思ったり。色々気づきがあって楽しい。個人的な今年読んだ本のベスト10には確実に入るお気に入りの一冊。
読み終わった感想。
ただただ、ひたすらに面白かった。
自由意思とは何か。本当に自由なのか。
自分の意思ありきの行動だと思っていたけど、実際はそうじゃない。
自分がそう思うより先に脳がすでに準備を始めているらしい。
なにそれ怖い。
私は何だか脳に操られているようで、どうしようもないと思ったあとにもう細かい事で悩むのはバカバカしく思えてきた。
何だこの投げやり感(笑)
著者である池谷裕二さんのHPで実験内容の映像などいろいろなコンテンツが楽しめます^^
さっそくブックマークしました!