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【リーダーたちの頭の中の地図を読む!】戦略を考える人たちが頭の中に持っている世界地図。それを読み解くのが地政学だ。六つのキーワードで戦略的発想を分かりやすく解説。
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今読むべき本
昨今、地政学についての関心が高くなってきていると思う。
ロシアによるウクライナ侵攻、ハマスのテロに端を発するイスラエルのガザ地区攻撃。そして、益々武力による勢力拡大の意図をあらわにしてきている中国の一帯一路戦略。
これら世界の覇権争いについて分析し、国家、独裁者の考えを理解する考え方が地政学だと思う。
奥山氏の新著は、この地政学の歴史的な流れと、理論の進展、そして実際に歴史がどのように動いてきたかを平易に紹介してくれる。
世界の地理は変わることがない。
その地図の上に成り立つ国家の考え方を考察する助けになると思う。
面白かった。
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『世界最強の地政学』 奥山 真司 著
「世界最強」かどうかは別にして、地政学の歴史や考え方、現在進行中のロシア、中東、中国、果ては宇宙の話まで、これ一冊で十分という感じです。地図が多用されていることから、眼で見てわかる工夫もされており、新書版としては「最強」かと思います。
日本は海洋国家であるはずなのに陸軍というランドパワーが強い理由、隣国とはどこも敵国、戦争に勝つ定義は何か(この定義ではロシアは敗戦状態)など、改めて考えさせられるところがありました。新聞やニュースなどで断片的に入ってくる情報を俯瞰することができ、これで1,000円チョットとはお得な一冊です。
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先週(2024.5)数日間ですが入院しました、前回入院した時には会社のパソコンや携帯電話を持ち込んで仕事をしながらでしたが、今回はそれは不要になりました。手術が終わって、まる二日やることがないので、入院前に近くの本屋さんで興味のあるテーマ:地政学について描かれたこの本を買いました。
著者の奥山氏の本は初めてでしたが、地政学をイギリスで勉強されたエッセンスを分かりやすく解説してあり興味を持って読むことができました。奥山氏は「地政学は学問ではない、考え方である」と言われていますが、地政学を学んでおくと、現代起きている戦争・紛争及び過去に日本を含めて様々な国が関わってきた戦争がなぜ起きたのか、なぜそのエリアに拘ったのかが理解できるような気がしました。
以下は気になったポイントです。
・地政学は学問ではなく、地理をベースとした国際政治・外交政策についてのものの見方、考え方である(p19)
・教科書に書かれている「国家」の条件は、1)一定の領土、2)国民、3)政府、である(p22)国家が置かれている環境の中でも、変化の少ない「地理」が、戦略を考える上での出発点とされる(p23)
・日本も、近代を迎えるまでは列島内の争いが中心で、メインは陸上戦力に置かれており、シーパワーではなかった。島国という地理的条件に加え、海洋での活動を国の主軸におくという国家としての「世界像」を備えて初めて海洋国家=シーパワーが成立する(p25)
・リアリズム(=衝突モデル)は人間は自分の利益の最大化を図るが、それは集団になると抑制されるどころか、一層顕著になるという考え方。軍事力・経済力などの「力」を持つものが、世界を動かす。一方、リベラリズムは強調モデルで、個人が協調して集団、社会を形成するように、国家は交易によって繁栄する、基本ルールに基づいた法、秩序を共有することによって、衝突のリスクを減らす(p29)
・現代でも輸送において海運は圧倒的に優位を保っている、世界貿易のうち、海上輸送が占める割合は、金額で7割、重量では9割を占める(p77)
・本国の領土も大きくなく、人口も世界各地を占領支配できる規模ではないイギリスが編み出したのは、世界中で自分たちの拠点となる港湾(点)を押さえ、それを結ぶ航路(線)を支配する「ネットワーク型の支配」であった(p78)これに対して、ランドパワーが目指すのは、面(領土)の拡大である(p85)
・陸の大国で国境を防衛するのは難しい、そのジレンマを解消するのが、馬や鉄道といった高速の移動手段であった(p87)
・冷戦期にはソ連(ロシア)の「内海」であったはずの黒海の西側が、NATO加盟国で囲まれてしまった。2008年夏にロシアはジョージア(クルジア)の南オセチアとアブハジア自治共和国に軍事介入する(南オセチア紛争)が、これを地政学的な観点で見ると、NATOの海化が進んでしまった黒海を取り戻そうとした行動である(p92)2022年ウクライナ戦争により、フィンんランド・スウェーデンのNATO入りが決定した、これは数少ない重要な南下ルートであったバルト海が「NATOの海」になってしまった(p93)
・中国の海洋進出(台湾、シンガポール、オーストラリア北端のトレス海峡)=アジアの地中海、をコントロールしようとしているのは、「内海の法則」に基づくもの。国が対外進出する際には、自国の周辺の内海を支配しようとするというもの。(p100)
・15世紀後期に、アフリカ大陸の南端を通ってインドに至る喜望峰ルートが確立するまで、アジアとヨーロッパを結ぶルートは中東地域を経由する陸上ルートであった。そのルートはアジアから始まって、それぞれの地域の商人たちがリレーしていくもの、なかでもイスラム商人の力が強かった、ヨーロッパ商人の出番は、地中海以降に限られていた。それが海のルートが確立したことで、船を出す欧州商人たちが主導権を握るようになった、陸から海への大逆転は、アジア・中東優位から欧州優位への大逆転であった(p110)
・国内でも海のルートは思いがけない場所を結びつける、和歌山県と千葉県には、勝浦・白浜・亀山・網代など共通の地名が多い、和歌山から千葉へ移り住んだ人たちが故郷の地名をつけたことに由来する。千葉の一部が安房と呼ばれたのも、徳島の国名=阿波がルーツという説もある(p121)
・京都に立てこもって勝利を収めたケースはほとんどない、源頼朝、徳川家康が幕府を開く場所として京都を選ばなかったのも、南北朝の争いや応仁の乱のような京都を巡る争いにいつまでも決着がつかなかったのも、攻めやすく守りにくい京都という町の地政学的特質が大きかったと考えられる(p113)
・比叡山延暦寺は、重要な軍事拠点であった、また琵琶湖の水運、そこから荷を運ぶ馬借、さらには土倉と呼ばれる京都の金融業者も、延暦寺が押さえていた。織田信長が焼き討ちを行ったのも、京都に自由に出入りするには、その入り口に塞がる比叡山を確保する必要があった(p114)
・大航海の時代に、陸から海にルートが変わることで、欧州内の勢力図も一変した、それまで欧州経済をリードしていた、地中海の商業都市。ベネチア・ジェノバが衰退し、大西洋にアクセスしやすい、ポルトガルのリスボン、ベルギーのアントウェルペン、オランダのアムステルダムが繁栄した、その意味で、これから注目されるのがロシアの北極海ルートである(p117)
・南米大陸横断回廊(ブラジル→パラグアイ→アルゼンチン→チリ)が開通することで、パナマ運河を使うことなく、陸路だけで太平洋側まで輸送ができる、輸送コストは3分の1となる試算がある(p120)
・大戦略とは、その国家にとって有利な状態を作り出し、維持するために、持てる力をいかに使うか、の指針や計画を考え行うレベルということになる、軍事的な戦略よりも上位に石する。技術→戦術→作戦→軍事戦略→大戦略→政策→世界観(p129)
・ナポレオン戦争の終結後、ウィーン会議において、イギリスは、フランスからマルタ島、オランダからセイロン島、ケープ植民地を獲得、イオニア諸島を保護国とするが欧州大陸には手を伸ばさなかなった、イギリスが求めたのは、相互協調体制(コンサート・オブ・ヨーロッパ)であった(p132)第二次世界大戦においてイギリスはアメリカに対して、負債返済のために、多くの海外利権をアメリカに渡さざるを得なかった(p134)
・アメリカは「封じ込め』=ソ連の拡大を抑え込むという、グランド・ストラテジーに従って、第二次世界大戦の敵国であった、ドイツ・日本を抱き込んで強国化させるという「同盟の組み替え」を行った(p143)
・スペイン継承戦争の最大の焦点は、フランス(ルイ14世)によるスペイン統合の是非であった、フランスとスペインが統合すると欧州に巨大な支配国が出現するので、それに反対する、イギリス・オランダ・オーストリアは同盟して戦った、オランダの都市・ユトレヒトで結ばれた条約において、キリスト教世界の平和を維持するためにフランスとスペインは統合を認めないと記された(p165)
・1980年代になって日米貿易摩擦が起き、日米構造協議があったは、アメリカが変心(アメリカに裏切られた)よりも、力のバランスが変化したことの表れであった、その証拠に日本のバブルが崩壊すると、アメリカからの圧力も徐々に低下した(p176)今起きている「米中対立」もパワーオブバランスの一つである、ライバルの衰退(中国)が必ずしも自国に有利になることにつながらない、これは地政学的なものの見方である(p177)
2024年5月17日読破
2024年5月21日作成
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戦略階層:世界観→政策→大戦略→軍事戦略→作戦→戦術
地政学≒ものの見方・考え方→思考のパターンのひとつ
世界観=頭の中の地図
リアリズム=衝突モデル
リベラリズム=協調モデル
6つのキーワード:世界観、シー&ランドパワー、ルートとチョークポイント(線と点)、グランド・ストラテジー、バランス・オブ・パワ、コントロール
ロシア:ランドパワーのジレンマ
中国:面の支配から脱却できず・帝国的過剰拡大
日本:あるがままを受け入れ最適解を模索
ラグランジュ・ポイント:地球と月の間の重力の均衡点
徳川家康・敵を殲滅しない←徳川家による支配の永続
4つの対外アプローチ:完全優越・選択的関与・オフショアバランシング・孤立主義
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205ページと小さな本だが、簡潔にまとまっており、世界史の解像度を大いに高めてくれる。
高校時代に世界史を選択していたが、ほぼ何も学ぶこともなく終わってしまった。
この本を世界史を学ぶ前に読んだら、知識の理解や吸収が全く違ったものになるだろう。
世界史と地理は一緒に学んだ方がいいのではないかと思った。
そもそも世界史を学ぶ意義は、本書に書かれているようなものの見方・考え方を身につけるためではないだろうか。
シーパワーとランドパワー
ルートとチョークポイント
バランス・オブ・パワー
という3つの章で説明されるものの捉え方が特に参考になった。
グランド・ストラテジーの章も勉強になった。
索引と読書案内(Further Reading)があれば、最高の地政学の入門書となったことだろう。
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地政学、という言葉を目にすることが多くなったが、実際には地政学という学問分野は存在しない。あくまで地理条件を踏まえた政治学であり、グローバル化に伴って各国や地域の情勢はダイナミックに変化し、そこに対応するための情報集積こそが地政学と呼ばれる研究領域である。
現在進行形でロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争といった現状変更に対する挑戦が行われている。これらに付随して、中国の台湾危機や中東・パレスチナのさらなる戦線拡大といった世界大戦に発展するリスクも指摘されている。この軍事行動に至る論理は、ランドパワー・シーパワーという大国を支配する世界観によって規定される。
世界には戦略的に重要な拠点がいくつか存在しており、平時は交易路・有事には平坦路となるルートと、その全体を支配するチョークポイントには現状ではアメリカ軍の基地が置かれている。そして馬から車、船舶、飛行機と戦術兵器が変遷していくにしたがって、これら地理的優位を保つ戦略は遷り変わっていくが、基本的な考え方は古来から変わらない。
そして地政学の観点からは、敵を殲滅したり圧倒的な勝利を目指すことは最適ではなく、むしろ戦後秩序をコントロールできる状況にいかに持ち込むかがもっとも費用対効果の高い戦略と考えられる。その意味でロシア・ウクライナ戦争でもイスラエル・ハマス紛争でもそのビジョンは不明確であり、泥沼化ともいえる状況となってしまっている。