人はバブル崩壊に学ばない
2024/09/27 16:53
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投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は在日中国人エコノミストであり、本書は中国における不動産バブルの歴史について日本人向けに説明している。 早いもので日本の不動産バブル崩壊はもう30年以上も前の話となったが、中国における不動産バブルとその崩壊は現在発生している話である。
共産主義と言うよりマルクス教毛沢東派の国家である中国では元々土地は国有財産であり、投機の対象とはなり得ない筈なのだが、中国共産党の偉いさんが日本の定期借地権制度を参考にして、土地の使用県の売買を制度化したことから、不動産バブルが発生し、現在は崩壊に入っていると著者は説明している。
マルクス教レーニン派の国家だった旧ソ連においても、スターリン時代に飢餓輸出により多くの餓死者をだしているが、中国における教祖毛沢東も大躍進政策の失敗により農村部で多数の餓死者を出した挙句に文化大革命により経済をどん底に落として亡くなっている。 毛沢東後の中国はどん底だった経済の立て直しを行うために、経済開放政策(改革開放路線)を共産党独裁体制の中で実施してきた。 つまり意味経済成長という成果の上に共産党独裁国家は維持されてきたという経過がある。
インドに抜かれはしたが、世界最多の人口を抱え、かつ都市における住宅難を背景とした定期借地権による住宅開発は作るそばから売れ、かつそれを資産活用するというバブルを産出したが、昨今における中国の大手デベロッパーの経営危機がバブル崩壊を物語っていると著者は説明している。
その人口故に需要が無くなることは無いと言われた土地バブルも、一人っ子政策を引っ張りすぎた結果として今後到来する少子高齢化社会、改革開放政策の結果として到来した共産主義国家とは思えない超格差社会(ただし、上層部は共産党関係者)、人権無視のゼロコロナ政策の結果としての海外脱出の増加等々を読むにつけ、中国の未来も薔薇色では無いという現実が見えてくる。
大躍進政策や文化大革命というやりたい放題だった独裁者である毛沢東を崇拝する方々が存在するのも、現在の超格差社会への反動として、かつての「誰もが平等に貧しかった時代」を懐古しているという背景があり、また習近平を中心とする現在の共産党指導部は文革世代として教祖を崇拝しているとなると有効な経済政策も余り期待できないということとなる。
そして中国が日本のバブル崩壊とその後の失われた四十年を分析しているかと言えば、全くそうでは無いというのも結局人間は他国のバブル崩壊に学ばないという事なのだろう。 日本のバブル崩壊の後にもアジア通貨危機、ユーロ危機、リーマンショック等数々のバブルが崩壊している。 考えて見れば、イギリスの初代首相であるウォルポールは南海泡沫事件というバブル崩壊の後始末によりその権力を確立することにより、責任内閣制度につながって行ったのを考えるに、近代社会以降において経済バブルの崩壊は常に発生していると思うのだが、それにもかかわらずバブル崩壊に対して過去の叡智を全く活かしていないのである。
本書を読みながら、かつてのバブル経済とその崩壊を思い出したが、既に崩壊過程に入っているのに「平成の鬼平」とマスコミからおだてられ、正義の味方気取りでバブル潰しの金融引き締めに没頭した結果、経済危機を招いたのを思い出した。 泡は必ず弾けるが、中国のバブルが弾けた結果として世界や日本の経済にも悪影響は出るわけで、やはり経済リスクの観点からも過度の外国依存は回避すべきだと痛感した。
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【?転換点?に立たされた中国経済】中国の不動産バブルの正体とは? バブル崩壊はすでに始まっているのか? 複雑怪奇で不可解な構造を分かりやすく読み解く。
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中国では土地はすべて国のもの。
中国の不動産業は、建設業のほか、建材や家具を含めてGDPの3割を占めると言われている。
バブルの原因はシャドーバンクと融資平台のせい。
シャドーバンク=金融機関のバランスシートに計上されないオフバランス取引。
融資平台=地方政府設立の投資会社
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本書を読んだ時点では、中国は不動産不況に陥ったようにマスコミ報道から感じられるが、崩壊しているとまでは感じられない。
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著者は「中国は不動産バブルが崩壊し、デフレに突入している段階だと断言できる」という。しかし、それに「中国が民主主義の市場経済だという前提に立てば」と条件を付けている。ということは崩壊していないと言いたいのか。不明だ。
データがあまりに少ない。中国の統計データなど信用できないということであろうが、この著者なら推測値ぐらい示して欲しいもの。
中国が固定資産税をいまだに導入していないというのは重要。さもありなん、ということか。
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中国不動産バブル
著:柯隆
文春新書 1452
本書は、中華人民共和国の建国にさかのぼって、中国不動産バブルを論じる書である
中国の不動産バブルの形成と崩壊は、中国社会に内在する制度的な歪みによるものである
2021年中国大手不動産デベロッパである、恒大集団が、負債総額48兆円、13兆円の債務超過にて、米連邦破産法15条の適用にて破綻した
中国14億人の人口を有して、土地資源が不足しており、不動産神話が破綻することは全体ないと信じられていた。
崩壊のきっかけは2つ
①習首席の「家は住むためのものであり、投機の対象ではない」という発言
②コロナ禍
1978 改革・開放政策 計画経済の破綻により、鄧小平は、段階的に経済の自由化を進める路線を選んだ
土地とは、国が所有するものであり、不動産開発を進めるためには、定期借地権という概念を持ち込んだ
中国経済、高度成長のピークは、2008年北京オンピック、2010の上海万博のころと思われている
2001 WTO加盟を機に、外資が中国に進出
2023.09 中国国家統計局副局長の賀鏗の発言、中国不動産市場は、供給過剰の問題が深刻でいま売りに出されている住宅は14億人が入居してもなお余るという失言からであった
バブルが崩壊して、多くの個人がローンの返済が難しくなっても、家を売って損きりすることすらできない。
地方政府が定めた価格以下では販売もできず、差し押さえられて競売にだされてしまうのだ
鄧小平の白猫だろうが、黒猫だろうが、ねずみをとる猫はよい猫だというたとえで、中国は、経済成長を実現できれば、社会主義だろうが、資本主義だろうがかまわないという方向転換をおこなった。
それは、毛沢東がめざした、苦しみに耐えて質素な生活をするという路線から決別であった
不動産バブルのもとになったのは、土地の定期借地権の価格を地方政府が決めていいという所から始まった。
疲弊していた地方政府の財政を補填すべき土地の価格政策は、腐敗と土地の高騰につながっていく
地方政府、デベロッパ、シャドーバンクが、土地の価格と吊り上げ、やがてバブルとなっていく
住宅を販売するには、
①高い土地代に利益を上乗せして、さらに高い価格で販売する
②上物である建物を手抜き工事をして販売をする しかなかった
中国では、賃貸は普及しておらず、法整備も進んでいないことから、不動産を所有するという習慣が根付いている。
若者が結婚のために、住宅を買うことは難しくなっていく、親から頭金を借りることができるものはともかく、住宅を買えないものは、結婚すらできなくなっていく
コロナでは、強制的に施設に隔離したり、強制的に移住させられたりした。労働市場を提供していた中小企業の倒産が進み、さらなる失業がすすんだ。また、防護服をきた役人たちが24時間監視するなど中国社会は大きな混乱に見舞われた
この結果、中国の訪日旅行者は、他の国の旅行者数が回復したにもかわらず、回復していない
また、コ��ナ以後は、海外へ移住しようとする中国人が多く、知識層などが海外へ流出している状況である
選挙による選択や、政策の自助努力がはたらかない。それは、共産党一党独占の政治体制の中でだれも上層部の意見に進言することはないからだ。だから、若者は絶望し、アイデンティティが失われていく。
<中国最高指導者>
毛沢東 1945~1976
華国鋒 1976~1978
鄧小平 1978~1989
江沢民 1989~2002
胡錦濤 2002~2012
習近平 2012~
目次
はじめに 不動産バブル崩壊の幕開き
第1章 中国の不動産で何が起きているのか
第2章 土地の公有制と戸籍管理制度
第3章 地方政府と都市再開発
第4章 「失われた30年」への道
第5章 絶望する若者たち
第6章 貯蓄・消費・投資の特殊性
第7章 マネーゲームと金融危機
第8章 イデオロギーの呪縛
第9章 コロナ禍が遺したもの
第10章 習近平政権の正念場
終章 チャイナ・リスクに備えよ
あとがき
主要参考文献
ISBN:9784166614523
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:1000円(本体)
2024年04月20日第1刷発行
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バブルだ、バブルだ、とずっと言われ続けているし、その通りなのだろうけど、なかなかハードランディングにはならない中国。こうなってくると緩やかな独裁というのも悪くないのかなとさえ思えてくる
貧富の差も凄まじくなっており、中国国家統計局発表のジニ係数は2006には0.49に達しており、2022でもまだ0.47。ジニ係数が0.3だと社会不安が起きないと言われているが0.4を超えると社会は極端に不安定化するおそれがあり、とっくに臨界点を超えている
・中国では庶民のことを野菜の「韮」と揶揄することが多い。韮は収穫するとき、根元を残して切って出荷するが、しばらくすると新芽が出てくるので何回も収穫できる。効率がいいという点で、中国の庶民は韮とよく似ているのだ。