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主人公ダニエルは女性が車に乗り込むところを目撃する。そのあとに女性が失踪した事件を知り、あの女性がそうだったんじゃないかという場面から始まる。ダニエルは一歳半の時にSMA(脊髄性筋萎縮症)という難病を発症し二十六歳の今まで車椅子生活をしている。常に命の危険のある生活のなかで友人や介助してくれる人たちとの交流を通して幸せな日々を感じている。その日常の描写がとてもいい。そこに入り込んできた失踪事件と、犯人と名乗る人物とのメールのやり取り。本当に犯人なのか、半信半疑のままやり取りを続けていく。女性を助けることができるのかとか緊張感が徐々に増していく面白さがあるけれど、ダニエルの性格、人柄、考え方にとても魅力を感じる作品でそこが特に読み応えと読み心地のいい物語だった。
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★5 難病を抱えた青年が、死と直面しながらも行方不明の女性を探す探偵小説 #車椅子探偵の幸運な日々
■あらすじ
主人公ダニエルは脊髄性筋萎縮症(SMA)を患っている青年。彼は電動車椅子で生活しており、常に呼吸停止状態になってしまう危険性があった。ある朝、彼が外を眺めていると、若い女性が車に乗り込む様子を目撃する。その後、その女性は行方不明になってしまったことが判明し、彼はSNSを使って独自の調査を開始するのだった…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 いい作品を翻訳してくれました。難病に苦しむ青年の切なさを、コミカルかつ生き生きと描いた素晴らしい作品です。
脊髄性筋萎縮症(SMA)という難病、聞いたことはあっても彼らの現実を私は知らない。既に彼は身体の一部しか動かせず、話すこともできない。そして咳ができないというだけで、すぐ死に直結してしまうという… そこまでは想像がついていませんでした。もし自分なら悲壮感漂った生活しか送れないと思うのですが、主人公ダニエルは違うんです。事実をしっかり受け止めながらも、日々前向きに明るく暮らしている。
つい健常者としては、なんて可哀想なんだ…と思ってしまいがち。ただそんな同情は彼らにとって何の利益にもならないし、苦しみや不自由な気持ちをわかってあげることも、同じ立場にならないと理解できることはないんです。ダニエルの茶目っ気たっぷりの日常を見てると、いかに自分の親切心がペラペラであったか思い知らされることになる。
本作のストーリーは、難病を患っているダニエルが行方不明の女性を助け出すこと。そんなの無理だろ、常識的に考えて… などと思いながら読み進めるんですが、SNSやメールなどを活用しながら彼は解決の糸口を見つけ出してゆく。そして強い意志をもって、我々健常者でもできないようなことに挑んでいくんです。死の現実を噛み締めながらも人のために尽くそうとする姿をみていると、何もしていない自分が恥ずかしくなっちゃう。
そして彼に関わる登場人物たちが真摯に向き合っていて、ホント涙がでてくるんですよ。友人のトラヴィスは一見悪友のようにも見えるのですが、間違いなく一番の理解者。まるで飲み屋で交わされるような低俗な会話が、彼との関係性が深さを教えてくれる。介護士のマージャニも仕事の関係性とは思えないほど献身的でひた向き。きっと彼の人間性がすばらしさが、素敵な人たちを呼び寄せるんですね。
本作は人間の心の底に眠っている、孤独、挫折、死の恐怖といった、あまり直視したくない現実を描いています。しかし一番に伝わってくるのは、人との絆、優しさ、幸運といった正の感情なんですよね。
ぜひ映像でも見てみたくなるハートフルな作品でした、映画館でも泣いちゃうだろうなぁ。
■ぜっさん推しポイント
私がかつて結婚したときのこと、たくさんの友人たちが結婚式や二次会開催に協力してくれました。何度も打合せしたり、会場の準備をしたり、必要十分な手間と時間とお金をかけてくれたのです。
あまりの協力ぶりに恐縮してたのですが、友人たちは「君たちの結婚���から協力したいんだ」と言ってくれたのです。私はこの言葉を一生忘れることはありません。
もしあなたが不幸のどん底だと嘆いているのであれば、是非この本を手に取って欲しい。間違いなく明るい未来が開けてくると思いますよ。
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女性の連れ去り事件を目撃したのは
車椅子に乗った難病を抱える26歳の青年だった。
この本の中で繰り返し発せられるダニエルの言葉、
「ぼくはラッキー」は、時に切なく、時にやりきれない怒りのようなものと共に、わたしの胸に迫ってきた。
疾患を持つ人に対する周りの視線や言葉がけや態度が
どれだけ本人を苦しめ、憤らせているか、
病気であるがゆえに、あたかも知能までもが劣っているかのような誤解を受けていることにも気付かされた。
ダニエルはただ普通に接してくれることを望んでいる。
そして彼の周りにはちゃんとそうしてくれる人たちが存在していることにホッとした。
物語後半はもう、つらいけど、その場にいて彼を応援しているかのような気持ちに。
生きていたい、こうしたい、ああしたい!という
wantがはじけるクライマックスにジーンとした。
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難病に苦しむ車椅子の青年が女性の連れ去りを目撃した事から始まる一人称のミステリー。
自分を見た時に表れる相手の反応や日常生活の様子が合間合間に語られる。友人や介護師との関係もほのぼのとして愛されている事が伝わってくる程、明るく爽やかなトーンが全体を覆っている。行方不明の女性探しを僅かに動かせる指先でトライする姿にハラハラしながら読んだ。素晴らしかった。
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女子学生が行方不明になったらしい、という冒頭からほとんど物語が動かない。最終的には決着がつくのだけれど、これ何? 面白くもなんともない。ポケミスで出版されたのだからと、信じて読み進めたが、、、がっかりだ。
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ダニエルは26歳。難病で常に呼吸停止の危険に晒されているものの、朝食後には電動車椅子で玄関ポーチに出て、外の空気を吸うのが好きだった。毎朝、家の前を歩く彼女を心待ちにしていたが、携帯を見ている彼女は気づかない。それでもある朝彼女は顔をあげ微笑んでくれたが、見知らぬ車に乗りこんで行ってしまった。数日後、彼女が行方不明だと知ったダニエルは誘拐を疑いSNSに目撃情報を投稿すると、謎の人物から脅迫メールが届きはじめて・・・・・・。
SMA(脊髄性筋萎縮症)という難病は、この作品で初めて知った。青春ミステリとしては平凡な仕上がり。
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『朽ちるマンション 老いる住民』(朝日新聞取材班)、『車いすにのったらどうなるの?』(ハリエット・ブランドル)を読んでいて、【車椅子の人の生活はどんなものなのか?】と気になった時に見つけた『車椅子探偵の幸運な日々』(ウィル・リーチ)。
学生の時に車椅子の体験(乗る側・押す側両方)をした事はあるけれど、そこから見えるものはまだまだ少ない。
それに乗る人を外で見る事が何回かあるものの、それもまたワンシーンを切り取ったものに過ぎない。
小説という物語形式なら、その描写が多少描かれているのではないか?と思って手に取ったのですが、
もうちょっとどころじゃなくてすごかった。
私が今までに読んできたお話の中で体が不自由なキャラクターって、その設定だけで止まっちゃってる事が多かったのですが、
本書は車椅子生活を送る人の細かい描写がストレートに書かれていて興味深かったし、そして現実世界としてのお話でこんなスリリングな車椅子の話、読んだ事がない。
そして同時にSMA(脊髄性筋萎縮症)と身近に存在する【死】を知れた事は大きかったです。
死が付きまとう進行性の病気を患いながらも家族のもとを離れて懸命に生きていこうとする主人公の様子に元気もらえたし、
日々のちょっとした事ですぐにイラっときて落ち込む事がバカらしくなった………。
「海外の人が書いた小説って、一つの事を説明するのに長い言い回しや例え話を持ってきがちで苦手」と思って避けてきたけれど、
今回みたいな大当たりは正直予想してなかったので、嬉しかったです。
食わず嫌いはあきまへんな。
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この本を読めたこと、LUCKYでした!とても優しくて素晴らしい作品。出来れば若い人や学生さんに読んでほしいかな。
乱暴なくくりだけど、ハンチバックが闇ならこちらは光。光を選びたい。