エジプトが舞台のファンタジー超大作
2024/09/16 15:55
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投稿者:今井 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジン、天使、エジプト魔術省…。気になるワードが盛りだくさん過ぎて、読む前からこれは面白いと確信していたし、その期待は裏切られなかった。なんとも複雑で難しい舞台を選んだものだ。歴史、政治、人種、宗教など、様々な問題が折り重なる国に、魔法と科学の融合とは。物語の主題はシンプルだが、こうした背景や魅力的な登場人物が物語に凄みを与えている。一作で終わるにはあまりにも勿体無い。続編は出ないのだろうか。
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
人物像とかキャラクターが見えないんだよね。
これより前の作品を読んでおけば、もうちょっと入り込みやすかったと思うけど、
翻訳されてなさそうだし。
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こいつは文句無しの星五つ。特に後半、ページをめくるのももどかしく、まさに“貪るように”読み切った。ジンと総称される精霊(例のランプから出てくる青い魔神のような!)と人間が日常的に共存する19世紀のエジプトが舞台の歴史改変的スチームパンクSFといった風情だけど、まぁその世界観の魅力的なこと。
クールだけど、どこか生真面目な主人公、魔法省女性エージェントであるファトマが、恋人の蠱惑的な女性、シティに手玉に取られたりする場面や、相棒の新人ハディアの意外な一面(いや、多面か)に触れて目を丸くする場面など、クスリとさせられる場面も多くある。
全編通じて物語はとても映像的で、これはいつか映画化するんじゃないかというか、するべきという気持ちが読み進めるごとに大きくなった。スタイリッシュなファトマのファッションや、ジンのCG表現など、想像するだけで楽しい。主人公は誰だろう?
とにもかくにも、本棚に納めておくのが嬉しい、超絶おすすめの一冊となった。
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1912年のエジプト・カイロを舞台に、すさまじい想像力が爆発する幻想小説巨篇。
スチームパンクの世界観に加え、精霊(ジン)が復活し、魔法が支配している世界という設定だ。そこで起きた異常な大量殺人事件を解明するべく、エジプト錬金術・魔術・超自然的存在省の特別調査官ファトマが奔走する。
魅力的な設定に加え、キャラ造形がうまい。抜群のリーダビリティもあって、2段組本文408ページを一気に読んでしまった。シリーズの初長篇らしいが、他の作品もぜひ読みたい。
ネビュラ賞、ローカス賞、イグナイト賞、コンプトン・クルック賞の4冠受賞。
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エジプトを舞台としたファンタジー、というのは今まで読んだことが無かったのだけど、それに加えて本作は歴史改変ものであり、さらにはスチームパンクの要素まで取り入れている贅沢な作品だ。その点でジャンルミックス的な楽しさがあり、これ系が好きな人には大いにおすすめできる。
物語の始まりはこうだ。かつて20世紀初頭、エジプトでアル=ジャーヒズという人物が魔術と精霊(ジン)の扉を開き、その後世界は大きな変容を迎えることとなる。時は進んで40年後、カイロ西南の都市ギザで行われていたアル=ジャーヒズを称える秘密結社の集いで、メンバーがまとめて焼き尽くされるという事件が発生。これを受けて魔術・錬金術・超自然的存在に対処する特別捜査官ファトマが調査に乗り出すこととなる。相棒には新人だが優秀な能力を持つハディア。そして不思議な能力を持つファトマの恋人、シティ。その他、カイロ警察や、同僚のエージェント、神官アハマドなど、事件の調査を進めるにあたって数多くの人物が登場する。
何より楽しいのは「ジン」と呼ばれる精霊の存在で、彼らは人間とともに働き、生き方や考え方で異なる点はあるものの、協力し合いながら生活をしている点だろう。当然、精霊たちは特別な能力を持っており、それを活かしながら仕事をこなし、ときには「交渉」という形で人間ときわどい対話を行うこともある。ジンたちは人間の言葉を「言葉通り」に受け取る側面を持っており、言い方ひとつ間違えれば大変な事態となることもあるのだ。本作ではそのような「対話」におけるヒリつくようなやり取りが各所にあり、会話劇としても面白い。また、中には人間と精霊で愛を育む者のいて、混交した世界が出来上がっている。
ジンが持っている能力は様々で、例えば作中には「幻覚」のジンが登場する。その名の通り、幻覚を見せる能力を持ち、建物の外部よりも内部の方が大きく感じたり、見ている景色がまるで違うものに感じるなんて場面もあって、ファンタジックな描写にワクワクさせられた。これは『アラビアン・ナイト』なんかに出てくる「砂漠の真ん中にぽつりと存在する城や都市」に対する説明にもなっており、さらに言うと認知にかかわる話でもあるわけで、魔法が存在してはいるものの、科学的な根拠みたいな面も重視しているバランス感が独特。
作中ではジンの他に”グール(屍食鬼)”や”天使”と言われる存在も登場。大枠の話は「事件の黒幕を追いかける」というシンプルなものだが、エキゾチックで煌びやかな世界観と、それを見せる構成の巧さから読むほどにのめり込んでいくこととなった。また、アクションシーンが割と多いのも特徴で、魔術を使った大規模でビジュアル重視の場面があれば、格闘や身体能力を活かした場面もあり、「動」の楽しさも担保されている。
主人公ファトマのクールで意思の強い人物造形はかっこよかったし、相棒となるハディアが頑張りを見せ、その実力をファトマが認めることでバディとしての絆が深まっていく展開もとても良い。謎多き女性シティについては前半を読んでる時点ではあまり魅力を感じなかったのだけど、後半彼女の秘密が明かされて以降、ファトマの心情と同調するようにグッと距離が縮まった気がしてなんだか嬉しかった。
すべてのジンを操る能力とか、あらゆる人の認識を変えてしまう能力とか、「九人の王」というヤバい力を持った奴らとか、それらをすべて封印する指輪とか、後半になるとそれまで配置されていた要素を手加減することなく注ぎ込み、ちょっとインフレ気味なくらい壮大な展開となっていく。読んでいて「映像化向きの作品だなー」と思う場面が多くあったので、きっとそのうち映画化されるでしょう。『ハリー・ポッター』のエジプト版と言えばわかりやすいけれど、テリー・ギリアムの映画や『ワイルド・ワイルド・ウエスト』みたいなガチャガチャしたポップさもある作品なので期待しちゃうな。
あとエジプトが舞台ということもあり、食文化や衣装、歴史や地形など、エキゾチックな要素・描写も見どころ。個人的には作中で「架空の書物」が結構な頻度で出てくるのがツボだった。西サハラの王国で人気のファトマ・デルヘンマ女王の物語『デルヘンマ女王物語』とか、ティンブクトゥの王祇哲学を完全収録した十三世紀の大著とか……なんじゃそれ、読んでみたいぞ。
人が何を聞きたがっているか察し、恐怖や、偏見や、飢えや、帝国間に存在している不審などにアピールするという敵側の思惑は、いまも昔も行われている政治やマインドコントロールの話であり、対して主人公がどのように道を切り開くかは見どころとなるだろう。
架空のエジプトおよび世界情勢を描き出し、ファンタジックでエキゾチックでミステリアスな冒険を堪能できた。ファトマとシティの前日譚やスピンオフは作りやすそうだし(てか多分もう書かれてるんだろうな)、続編や映像化の期待が高まる。
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★5 精霊や魔法など超自然的存在と共存する幻想的な世界、女性たちの戦いが鬼アツ! #精霊を統べる者
■あらすじ
伝説の魔術師によって精霊との扉を開かれた世界。時は1900年代初頭、エジプトはギザの街、秘密結社の団長と仲間たちが黄金の仮面をかぶった謎の人物に焼き殺されてしまった。魔術省の女性エージェントであるファマトは、新人のハディアや身体能力に優れた恋人シティとらと捜査を始めるのだった。
■きっと読みたくなるレビュー
大好きな青崎有吾先生が大絶賛してたので、思わず手に取った一冊。また強烈な本を読んでしまったなぁ~、なんじゃこの傑作。
正史に一部基づきつつも、精霊や魔法といった超自然的な存在と共存するエジプトが舞台。ほぼエジプト史なんて知りませんでしたが、イギリスとの関係性や歴史の背景にある人種差別や弾圧、奴隷制など学ぶことが多い。
荘厳な歴史を感じつつ、主人公である魔術省のエージェントであるファマトを中心に事件の捜査が進んでいく。その中で人間たちの様々な宗教や団体が登場するのですが、決して人々は幸せになっている様子はなくむしろ自分たちを苦しめてるように見えるんです。
さらに、精霊、魔法、天使といった超自然的な存在がさらに事件を複雑にしてくる。特に精霊は敵なのか味方なのかよくわからず、主人公と同じように読み手も煙に巻かれちゃう。
ただこれらのスーパーナチュラルな存在がファンタジックながらありそうな設定なんですよ。描写も想像しやすいように書かれていて、迷子になることなく幻想的な世界に漂えます。
物語が後半に入ると問題が本格化してくるんですが、ここからはもう読む手が止まらない。黄金の仮面をかぶっているのは誰なのか、目的はなんなのか、世界はどうなってしまうのか。対決シーンなんか想像以上のアクションでドキドキするし、仲間たちとのやりとりなんて超激熱ですよ!
そうそう、本作は登場人物が素敵すぎるんです。百合っぽい要素もアリアリで「女性たち」の戦いも読みどころなんです。
●ファマト
お洒落さん、真面目で行動力もあるし、機転の利く女性。彼女の弱い部分が見え隠れするところに感情移入しちゃって、どこまでも応援したくなる主人公。
●シティ
めっちゃCoolで妖艶なお姉さん。重要なシーンでさっそうと登場する様子がまるで王子様のようで、身をゆだねたくなる人。私も甘えたい(男だけど)。ファマトと恋人でありながらも、立場や価値観、隠し事があったりと距離感が絶妙で好き。
●ハディア
新人女性エージェント、現代風な考えを持ちながらも信念は強い。先輩ファマトとの関係性が、まるでベテラン刑事&やる気満々新人刑事の二人組といったところ。価値観をぶつけ合うシーンは読む手に力が入った、カッコイイ!
久しぶりに壮大なファンタジーの世界に浸りました、スゴイ一冊。想像力をかきたてますし、日頃の疲れた脳みそが癒されるので、夏休みにぜひどうぞ。
■ぜっさん推しポイント
力を持ちすぎることは害悪でしかありません。特に人種差別や奴隷制度といっ���ものは、本当になくなって欲しい。本人の努力ではどうにもならないじゃん。
幻想文学とは言いつつも、本質的には実現世界の問題とあまり変わらないことに悲しくなりますね。人間ってどこまでも強欲だし非道な生き物、悲しい歴史は繰り返さないで欲しいわ。
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エジプトを舞台にしたスチームパンク!
もう設定からして珍しすぎる!
幻想文学と銘打たれているのは、人と精霊(ジン)が共存している世界観だから。
19世紀初頭、エジプトに大魔法使いが現れ、時空をつなげて、精霊を呼び出した。
さらに、その精霊たちの能力も掛け合わせて、機械工業化も進めたので、この世界ではエジプトは、アメリカ・ロシアに並ぶ世界三大強国となっている……。
それでも、女性蔑視や、エジプトが栄えたからこそ南北の人種差別問題が表面化している。
主人公も、その相棒も恋人も、主要キャラはほぼ女性♪
みんなステキな人たちで、フェミニズム文学としても傑作だと思う。
大国であればこそはびこる差別と、新しい宗教問題。
かつての強国であり敵国であるイギリスとの関係。それを取り巻く列強国の態度。
エジプトの世界各国の要人が集まるなか、かつての大魔導士を名乗る存在によるテロが起こる。
そのテロを食い止めるために奔走する主人公たち!
と、物語の展開はシンプル&スピーディーで、精霊やら魔法使いやらが入り乱れるバトルシーンは圧巻。めっちゃ迫力ありました。
歴史改変ものは、ヨーロッパ主体か、または日本人作家による日本史ものしか読んだことがなく、中東を主役としたときの視点が新鮮で、物語の完成度と合わせて、とても楽しめました♪
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奴隷制についてのテーマに第3次フェミニズム的なテーマが緩く関係したかたちで描かれている。
ただそのテーマを描くには、人とジンという関係性についての言及が弱く、またジンたちもキャラクターは立っているのだがもうひとつまとまりを持った人格という感じが伝わってこない。
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とっても好きな世界だった
イフリートとジン、魔法省がある世界
図書館で借りたけど、結局買いに行った本
4000円近くするのね
読み終わるのがもったいなかった
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これは面白いよ!と聞いてたから読んでみたけど、自分的にはそこまで刺さらなかった。
歴史IFと魔法とジンとの契約とフェミニズム?
2時間モノのアクション映画のような大雑把さ。
もう少し人間ドラマやミステリーが欲しかった。ちょっと物足りない。
スチームパンク大好きな人間ではないので、そこもあんまし。ジンの容姿もあんま想像できなかった。ずっとアラジンのジーニーだった。
契約に縛られるあたりはわからんでもないけど、なんかみんなウブだなあって感じ。天使のところは良かった。でもよくわかんないな。
主人公以外に有能で活躍出来る人はいないの?とも感じちゃって全然没入感を感じられなかった。悔しいな。いつ面白くなるんだろうと思いながら終わった感じ。続編が出て評判が良いなら読んでみたいかな。
女性同士の恋愛やバディとしてはまあ良いかなってとこ。
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ファンタジー。SF。
初めて読む作家。両親がトリニダード・トバゴ出身のアメリカ人歴史学者とのこと。
エジプトが舞台のサイバーパンク。
魔法が存在し、ジンと人間が共存する世界観が独特で面白い。
主要人物が、主人公ファトマとパートナーのハディア、恋人のシティと、女性ばかりなのも特徴的。
基本的には、冒頭の不可解な事件を主人公たちが捜査する、ミステリ的なストーリー。
派手な戦闘シーンもあり、映像化しても良さそう。ジンやイフリートたちの戦闘シーンは、文章でもなかなかの迫力。
世界観にハマリ、かなり楽しく読めた。
天使たちの行動の目的は明らかになっていなかったように思うし、続編やこの作品以前のシリーズの翻訳にも期待したい。
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まず何より舞台設定の勝利だろう。精霊と科学が共存しているエジプト。錬金術・魔術・超自然的存在省。やたらと人間くさいジン。アラビアンナイトの文学世界。すべてを統べる指環。機械仕掛けの天使。イフリート。ハーフジン。ストーリー自体はそこまで複雑ではないのだが、リーダビリティが高く楽しくあっという間に読み終えることができる、映画化必至の佳きアクションファンタジーに仕上がっている。エージェント・ファトマの日々の小さな仕事を描いた本も読みたくなってくるな。主要登場人物が全員女性というのは狙いだろうし私は嫌いではないのだが、少し読む人を選ぶかも知れない。そしてついつい想像してしまうのが、今現在の日本でアル=ジャーヒズの穴が開いたら最強国になるんじゃないかということ。八百万じゃ済まないからなぁ。神々、妖怪は当たり前として怪獣・怪人・超人あたりも実体化したら⋯(笑)。
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1912年のエジプトが舞台。私は第1章で物語に入っていけなくて苦しんだんですが、1章はモブ、サクサク読み進んで大丈夫。2章から名前頭に入れながら読みましょう。1912年とはいえ、ジン(精霊)や魔法が普通に顕現した世界観。イギリスだと妖精、ドイツはゴブリンなど、使い魔・よき隣人もお国で様々です。主人公ファトマは若くしてエジプト魔術省エージェント精鋭として活躍する女性。洒落たスーツを着こなし、帽子にもこだわりが。しかし、女性の地位が低いのは当時と変わらず、その苦労も描かれます。世界観と登場人物の個性的で正義感あって、チャーミングなところが魅力的な本でした。410ページですが上下2段の文字列で、かなり読みごたえあります。映像化したらとても楽しいだろうなぁという内容です。ちなみに青崎有吾さんがXでオススメされていたので手に取りました。アンデッドガール~でこういうの馴染みそう!(地雷グリコ面白かったけど既存シリーズも待ってます)
長いし、展開がすごく早いかというとそうでもなかったりするので、ベクトル合う人向けかな、という気がします。あとは私は男女の恋愛話が好きなんだ~っと熱く訴えたい。そっちなら★5つけちゃったかも…。ファトマはすごくカッコいいので感情移入して読みやすいです。
軽く閨事あり、中学校以上。基本は高校生以上。