ペリー来航と日本人
2016/08/14 16:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペリー来航前後の日本全体の動向を、当時の資料を基に描いた本です。
維新政府による幕府ネガティブキャンペーンにまんまと引っ掛かり、「無能な幕府」という決めつけで、必要以上に江戸幕府を貶めている本を散見します。本書はそうした一方的な偏見抜きで、客観的な事実を叙述している姿勢に好感を持ちました。ペリーと接するうちに、国際社会への関心が高まり、先端技術(蒸気船・電信機・汽車・写真等)への好奇心に満ちた日本人が生き生きと描かれています。驚いて腰が抜けただけではなかったのですね。当時の日本人の飽くなき探究心に関心しました。
ただ江戸幕府の対応の是非等の論評を避けている点には物足りなさも感じました。欧米列強によるアジア植民地化の流れが強まっていた中で、平和裏に交渉を進めた幕府の対応は、国力差を勘案すると適切だったのではないかと、私は考えています。
ところで、ペリーは琉球とも「琉米修好条約」を締結していたとは全く知りませんでした。そして、何とこの際に、日本人が3人負傷する発砲事件や女性暴行事件が起きたとのこと。今に続く沖縄の苦悩は、ペリー来航とともに既に始まっていたのです。また、ペリーは小笠原諸島を支配下に置く計画を持っていたとは驚きです。ただ、本計画は幕府の適切な対応により武力を用いることなく阻止され、領有権は守られました。このことからも、私は決して幕府は無能ではなかったと思うのです。
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本書は、外国船の日本への来航が目立つようになって行った経過から、ペリー艦隊の登場とその日本や周辺での活動経過、更に彼らの来航の情報の日本国内での拡がり方や受け止められ方を纏めたものである。
後段の彼らの来航の情報の日本国内での拡がり方や受け止められ方に関する内容が殊に面白かった…
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ペリー来航前からハリスに至るゴタゴタを庶民の日記や絵巻から解き明かす本。何より豊富な図版とその解説が当時の狂乱ぶりを伝えてくれて面白い。ただし、それ以外の基礎的な情報となる政治史の描写がどうも雑学的で表層的で十分な文献の読み込みがされていないように見え、蛇足にも思える。かと言ってその部分を差し引いたら100ページに遥かに満たない小冊となってしまうので、もっと図版を集めた上で体系化をして欲しかった。
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1854年に琉米修好条約が結ばれ、アメリカ合衆国は琉球と最初に近代的な条約を結んだ国となったことは、その後の沖縄とアメリカの関係を暗示しているかのようです。条約の内容はまったく違いますが、沖縄とアメリカは切っても切れない関係になってしまいました。これはその時どきの日米双方の為政者のなせる業でしょうか。琉球の民にとっては薩摩藩や清との交流時が一番幸せな期間だったかも知れません。
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ペリー来航と開国を扱った歴史学の書籍は数多いが、本書はペリー来航に至る経緯、来航当時の日本人の反応、徳川幕府の海防体制、神奈川条約締結過程について、非常にわかりやすく明快に叙述されており、現状入門書としては第一に推薦しうる良書といえる。特にアメリカの開国要求について、従来経済的要因に比して軽視されがちだった、漂流民(特に捕鯨船員)保護の観点を具体的な事例を通して示している点、やはり従来の一般的な通史では正当に位置づけられているとは言い難い琉球の開国過程について詳述している点は特に注目される。アメリカの砲艦外交や幕府の避戦外交に対して後知恵的な解釈や評価を行っていないのも重要であろう。
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著者の西川武臣氏は現・横浜開港資料館館長。横浜の歴史を中心に研究多数。とくに生糸貿易体制の研究で知られている。
本書は176ページと新書としては薄い部類だが、ペリー来航の政治史、経済史の叙述は最低限に抑えて、その「衝撃」を人びとがどのように受け止めたのかを中心にコンパクトにまとめている。ペリー来航の予告情報がどこからどのように幕閣に伝わったのか、そして実際に1853年の浦賀来航はどのように伝えられ、それが民衆にどう伝わり、彼らがどのように反応したのか。
「日本の近代化は、幕府や明治政府の主導だけで成し遂げられたわけではない。多くの人びとが次の時代に向けて活動し始めたからであり、その原点がペリー来航である。」(はじめに ivページ)
そして、その活動の広がり方が面白い。第4章では幕府が一般に意見を求めたのに反応して、さまざまな建白書などが出された経緯がその内容とともに一部紹介されているが、そこに登場する信州の内藤正義の建白書の話などは非常に興味深い。また、高島秋帆と在野の蘭学者のネットワーク、海防掛に任命された幕府官僚の影響力増大など要点が明快に指摘されている。